(てん) (09.1.9掲載)
 

太極拳の実戦上の特徴は(てん)接触)であるという(松田隆智著「太極拳入門」から)。

(てん)とは飛び込む間合いをつくらない、つくらせないことである。

太極拳には推手(すいしゅ)と呼ぶ組み手の一種がある。套路(とうろ)(型)が一人で学ぶものであるのに対して、推手は二人で行う。相手の力を接触した手によって感じ取り、防御を攻撃に転じ、攻撃を防御に転じる、攻防一体の技術である。これが武術としての太極拳が「柔()く剛を制す」と言われ、腕力・体力に勝る相手に対しても戦うことができる技法であるという。松田隆智氏は、次のように記している。

 

< 他派の拳法の多くは敵に対したとき、敵と離れた間合(まあ)いから(すき)をみつけて飛び込んで攻撃するのがふつうである。太極拳のばあいは、敵と対したとき、敵が手を出したと同時に接触してしまい、そのまま離れず敵が早く動けば、自分はそれ以上に早く動く。敵が遅くなれば自分も遅く動き、敵の動きに合わせつつ、けっして離れないで敵の重心をくずす。

たとえば敵が自分に向かって攻撃してくれば、敵の力に逆らわず引き流し、敵が手を引っ込めようとしたら、自分はそのままついていって敵の重心をぐらつかせ、即座に攻撃に転ずるのである。

このように、敵に粘着させることを(てん)という。この(てん)の練習は少林拳にも他派の拳法にもあって、部分的には行われているが、太極拳はすべての技法が(てん)からはじまる。>

 

参考

松田隆智著「太極拳入門」産報社

 
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