納得したこと、興味を持ったこと(11.7.30掲載
 

納得したことその1

人間の頭部の重さは、体重の1013%といわれていて、体重60kgの人だと68sになる(日医ニュース・健康ぷらざ 296)。私たちは意識していないが、これは大玉(おおだま)のスイカを首の上に載せているのと同じである。首の上に、大玉のスイカがのっかっていると想像すれば、首を傾けたり、載せている体の軸が垂直から外れると、余計な力が加わるし、バランスも悪くなるのは理解できる。

太極拳の練習で、体の姿勢の要領を示す常用語の一つに“立身(りっしん)中性(ちゅうせい)”がある。背骨(せぼね)を頭頂部から尾てい骨まで一直線にし、地面から垂直にした姿勢である。これも最も高い場所に位置するスイカを、バランス良く保つ方法と考えれば納得する。

NHKの「アインシュタインの目」というテレビ番組で、「バレリーナ・華麗なる躍動」が放映された。一流のバレリーナと途上のバレリーナを、ハイスピードカメラやモーションキャプチャーカメラなどを駆使し、両者の違いを映像から具体的に解析していた。頭の真上から、一流のバレリーナが回転するのを撮った映像では、頭部は少しもブレないで回転する。その回転する頭部を含めた体の軸も、途上のバレリーナと比較して、床に垂直でまったくブレていないことを、映像の中で示していた。バレリーナも体の軸がどこにあるかを確認しながら踊っている、と答えていた。

また、バレリーナの上半身を安定させる大腰筋(だいようきん)や、股関節(こかんせつ)で脚を外側に開くためのお尻の奥にある筋肉(梨状筋(りじょうきん))をMRI画像で検証していたが、ほっそりとしなやかに見えるバレリーナの、その両筋が非常に発達しているのを見て、専門家も驚いていた。

なお、先の『日医ニュース・健康ぷらざ 296』には、慢性的に首の痛みを訴えている患者には、ある共通点があると書いてある。それは、背中を丸めて首と頭を前方に突き出したいわゆる“猫背”の姿勢の人に多いという。

子供のころよく姿勢をただされたが、首の上に大玉のスイカが載っていると考えれば、日常生活でも姿勢を正しく保たねばならないことが納得できる。

 

納得したことその2

日本の伝統的な武芸や舞踊の立ち居振舞(身のこなし)と、太極拳とは共通することが多いという。太極拳の練習で、太極拳と西洋に起源を持つスポーツとの体の姿勢の違いを、立石先生はよく表現して見せて下さる。

毎朝、明治神宮でのラジオ体操に来ている熟年の女性がいる。趣味として、以前から能の仕舞(しまい)を習っている。最近、太極拳教室に通い始めたと話しかけて来た。仕舞の先生から、歩く所作(しょさ)などが似ている太極拳を(すす)められたという。

私は仕舞というものをよく知らないが、能楽のほうからアプローチがあったことで、共通するものがあることを納得した。

 

興味を持ったことその1

ゲストに白石豊氏を招いたラジオ(テレビ?)のトーク番組で、白石氏が経験談を話しているのをたまたま聞いた。白石氏は、一流の選手やコーチなどにメンタルトレーニングやイメージトレーニングの指導を行い成果をあげている。最後に司会者が、「それではこの春の大学、高校の受験生のために、試験を前にリラックスする簡単な方法を教えて下さい」と聞いていた。白石氏は、体をギュッと固め、そしてパッと(ゆる)める。この緊張と弛緩(しかん)を何回か繰り返すことで、リラックスできてくると話していた。興味を()き、書かれたものを読んでみた。

白石氏の著書には、ドイツのシュルツ博士によって考案された心理療法である自律訓練法やインドのヨーガをそのトレーニングに取り入れ、その成果を記述している。そのなかで次の箇所が興味を引いた。

日本の一流競技者のメンタルトレーニングの現状についての、あるアンケート調査を紹介している。精神力、技術、体力について、実際のトレーニングと試合に臨んでの、相対的な重要性についてのその順位を問うている。実際のトレーニングでは、技術面 → 体力面 → 精神面の順で重要であると回答している。これに対し、試合に臨んでは、精神面 → 技術面 → 体力面とまったく逆の結果になっている。そのことについて、

<<実際に選手とともに競技場に入るコーチであれば、「リラックスしていこう」とか、「深呼吸を23回しろよ。気持が落ち着くから」といった(たぐい)のアドバイスが、頻繁(ひんぱん)にとびかっているのはよく知っていることであろう。日頃のトレーニング場面ならいざ知らず、試合場に行ってまで、細かい技術的なポイントをアドバイスし続けるコーチはそう多くはないであろうし、ましてや体力面での不備をその場で指摘するようなコーチはいない。したがって、このような言葉を発するコーチも、あるいはそれらのアドバイスを受ける選手も、先のアンケート結果にみられるように、緊張した競技場面におけるリラックスや集中といったメンタルな事柄について、その重要性をまさに肌で感じているということになる。

しかしながら、コーチが「リラックスせよ」とか「集中せよ」といったアドバイスを送りさえすれば、選手がそのようにできるかといえば、結果はむしろ逆になることの方が多いようである。それは選手がコーチのアドバイスに耳を傾けなかったのではなく、日々のトレーニングの中で、リラックスや集中についての具体的な方法を身につけていなかったためである。

選手は練習したりトレーニングしてきたことについては、試合でその成果を発揮できる可能性を持つ。しかし、メンタル面についてまったくトレーニングを積んでいなければ、緊張した試合場面に直面して、リラックスや集中がうまくできなかったとしても、それもまた当然である。>>・・白石豊著『実践・メンタル強化法』

と書いてある。

選手が、日ごろの能力の最善を尽くしての成績であれば納得できるであろう。しかし、精神的な面から、日ごろの技術が発揮できなければ、悔いが残る。

欧米の選手が、試合前に十字を切っている。選手に聞いたところ、勝たしてくれと祈っているのではなく、自分に最善の能力が発揮できるように祈っていたのだ、という話を紹介していた。

白石氏は、イメージトレーニング、メンタルトレーニングを四半世紀以上前から研究し、実践してきた日本での先駆者である。

 

興味を持ったことその2

何年か前の新聞に、剣道で日本一になった人のインタビュー記事が掲載されていた。その記事で興味を()いたのは、日本一になった剣士の言葉である。

「私は、試合相手とは目を合わさないで()らしている。なぜなら、相手の目の動きで次の技を読むことができるし、逆に、自分の目の動きで相手に次の技を読まれてしまう」という意味のことが書いてあった。

「目は心の鏡」とも「目は口ほどに物を言う」ともいうが、紙一重(かみひとえ)の技で競っている人だから出る言葉だと興味を持った。

 

参考

日医ニュース・健康ぷらざ 296「体の仕組みがもとに?」平成21720

白石豊著『実践・メンタル強化法』大修館書店

白石豊著『東洋に学ぶメンタルトレーニング』株式会社サンガ

 
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