雑録2006.3.16 ネコのその後
    NPOが仕掛けたわなに、野良の子ネコ1匹が捕まり、ネコ好きの隣人と妻が去勢の手術をするため獣医に持ち込んだ。しかし小さすぎるため去勢はできず、飼い主がきまるまで隣人が預かることになった話を、以前書いた。

ほどなくして、親ネコは取り逃がしたが、残り3匹の子ネコを捕まえた。ネコ好きの隣家では、もとから飼っていた2匹と、捕まえて別々のケージに入れた4匹の子ネコ、計6匹を飼う状態になった。夜中に1匹が鳴き出すと、大合唱がはじまり一晩中続くそうである。1ヶ月して、さすがネコ好きの隣人もガマンできないので、一番問題のある一匹を当分のあいだ預かってくれと頼みに来た。一番(あと)に捕まえたオスの子ネコで、(あと)にちなんで“アド”と名づけたという。

 

連れてこられたケージのなかのアドは、人が近づくと、歯をむき出してシャー、シャーと声を発しながら威嚇する。ウンチの後始末やエサを与える時は、せまいケージの中から、シャー、シャーと発しながらネコパンチを繰り出し、子ネコとは思えない形相(ぎょうそう)になる。

連れてきてから何週間後かに、ケージに入れられたアドを見て、ネコ好きの私の姉は、

「これ飼いならすのは無理じゃない」と感想をもらしていた。

 

その後、妻はケージの中ではかわいそうだといって、家の中で放し飼いすることにした。スキを見ていつか家から逃げ出すかなと思っていたが、使わないソファーのうしろや、空き部屋の物陰に一日中かくれて、エサだけ食べに出てくる。ウンチはベランダの排水口や一度は流し台の排水口でしたこともあるが、使っていない3階の風呂場の排水口にしたことがあるので、そこにネコ用トイレを置いたらそこでするようになった。

 

それから4ヶ月くらいたち去勢のできる体重になった。エサをやる妻には多少()れてはきたが、それでも()でようとするとすっ飛んで逃げてゆく。姉からもらった“またたび”を使って、キャリーバッグの中にだましだまし入れ、去勢手術のため獣医のもとに運んだ。獣医がバックを開けたとたん飛び出して獣医を引っかき、部屋中を逃げ回り、大きな網を持った獣医と助手ふたりの三人が追い掛け回して捕まえた。

獣医は「こんなネコは始めてだ」と話していた。。

 

我が家に来てからこの3月で8ヶ月になる。最近よく飼われている小型犬などは、アドのひと(にら)みで、尻尾(しっぽ)を巻いて逃げるのではないか、ギネスブックに“大きなネコ”で申請できるぞ、というほど身長が大きくなった。寝そべっている姿は、ちょっとしたトラである。しかし、根は臆病この上もない。先日も、ベランダにいて、遠くのほうでカラスが“カー”とひと鳴きしただけで、脱兎(だっと)のごとく部屋にもどり、物陰に隠れてしまった。いまだに玄関のチャイムがなると、コタツにもぐりこむ。

妻には良く()れている。普段、寝ているか、一人で遊んでいるか、妻の後をついて歩いている。妻がトイレで用を足したり、入浴のあいだも、その前でいつまでも待っている。

しかし、私や息子には別である。特に、めったに顔を合わせない息子には()つかない。以前、レーザーポインターを使って、息子がネコと追いかけごっこをしたことがある(息子は遊んだつもりである)が、よっぽどこれが怖かったと見える。居間に息子が一人だけだと居間には入って行かない。こんなこともあった。ある朝、体が臭うといいながら息子が起きてきた。前日、息子の寝床に、ネコが盛大な世界地図を描いたのを知らずに、息子は、疲れた体をもぐらせたのだある。フトンの中は、体温で蒸発した・・・・!?。

その前にも、息子のフトンにおしっこをかけようとした前歴がある。これ以来、息子の部屋へは出入り禁止である。

 

アドが妻のそばに横たわっているときは、()でようとする私から逃げないが、その時は、すぐに尻を私に向けて、いつでも逃げられるスタンバイの姿勢をとる。先日、ネコの喜ぶのどを()ぜようと手をもっていったら、ネコパンチをくらい、手のひらにざっくり引っかき傷をつけられた。

ドアの隙間(すきま)からトイレに入り、ネコが閉じ込められたことが二回ほどある。どちらの場合も、パニックにおちいったらしく、唯一(ゆいいつ)明かりが漏れるドアの下の方にある木製のルーバー部が、ギタギタになるほど木片を引き散らかし()み散らかし、そしてスリッパを()いちぎっていた。私がトイレの前を通った時には、ダンマリをきめこみ、その後、妻がトイレの前を通った時には、盛んに鳴き声を上げ、助けを求めている。

最近の妻は、このネコがかわいくて仕方がないようだ。ネコ専門の月刊誌も定期購読している。

 
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