雑録2007.7.1 年金問題
 

2004年、社会保険庁のテレビCMで出演したタレントの江角マキコさんが、「将来、泣きをみてもいいわけ?」「国民年金がもらえなくなるかも、って言ったの誰?」と、押し付けがましい表情と声で、繰り返しテレビ画面に登場した。迫力の演技の故に目を付けられたのか? 週刊誌で江角さん自身が、国民年金保険料を支払っていなかったことが露見し、さらにテレビCMとポスターの制作費が話題になった。これをきっかけとして、当時の福田官房長官の辞任、菅直人民主党代表の辞任につながり、小泉首相の「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」の発言が出て、年金問題がよりクローズアップしたことが記憶を呼び起こす。

 

社会保険庁の年金保険料の無駄遣いを指摘し、新たに年金記録の紛失についても掘り起こしたのは、衆議院議員の長妻昭議員(民主党)である。長妻議員は、私が住んでいる(渋谷区)東京7区を選挙区としている。近くの公民館で開かれた、「長妻昭と語る会」「長妻昭応援定例会」などに参加し、話を聞く機会があった。その会合での話である。

各省庁の役人が外出する時、多くの人は、タクシーか、バスか、地下鉄・電車を使う。しかし、社会保険庁は、ほとんどの人が黒塗りの公用車を使用する。“なぜだろうか?”と疑問に感じたのが、社会保険庁とかかわる一つのキッカケになった

(長妻議員の3期目となる)2005年の郵政総選挙では、選挙区で落選した。このとき、社会保険庁では手をたたいて喜んだ。しかし、東京比例区で復活当選が決まると、ガッカリしていた、とあるテレビ局の人から聞かされた。私の得票数が3000票少なかったら、比例区でも当選できず、皆さんに今、このような年金の話もできないところであった

  課長決済で出された数字や書類が、今年に入って大臣決済に変更になり、数字や書類が出なくなった。問題が大きくならないように、露骨に年金の問題隠しが行われ出した。実態解明が必要なのに、安部総理も柳沢大臣も深刻さがわかっていない

かって所沢市に国民年金の保険料を納付した人の、所沢市が発行した領収書がここにある。下に、“この領収書は5年間保存してください”と書いてある。5年間保存してくださいと書いてあれば、5年過ぎれば捨ててしまってもおかしくない。領収書をもってこいと言うならば、当時から、受給のときまで持っていて下さいと書いてないとおかしい

 

次々と明らかになる社会保険庁の怠慢や不祥事、無駄遣いの続出が重なり、社会保険庁が意図しなくとも、その多くが記憶力の悪い私の脳裏から消えていく。

この怠慢や不祥事、無駄遣いを、最近発行された週刊誌や新聞の記事、またインターネットで検索し集めてみた。

 

消えた年金記録

072月:066月現在で、オンラインシステムに入力されていて、該当者不明の納付記録が約5095万件存在することが判明。内訳は60歳以上が約2850万件、60歳未満が約2215万件、生年月日が特定できないのもが約30万件。

076月:5095万件とは別に、オンラインに未入力の納付記録が約1436万件存在することが判明。内訳は厚生年金記録が約1400万件、船員保険記録が約36万件。

○さらには、納付した記録さえも不明になっている例が、多数報道されている。

 

年金保険料で賄われたものの一部を羅列する

13ヵ所のグリーンピア(大規模年金保養基地)は、建設費・借入金利息・管理費などこれまでに総額3700億円の費用を年金で支払っている。建設費1953億円に対し、48億円で売却(週刊朝日07.6/29号)。

○グリーピア以外に、全国に265の年金福祉施設がある。これにつぎ込まれた総額は約14千億円。民間並みの会計基準をあてはめると、265施設の97%が赤字に転落すると社保庁の試算でわかり(02年度末時点)、ほぼすべての施設の廃止または売却がきまった。これまでに24施設を売却したが、その建設費3073億円に対し、売却価格は182億円(週刊朝日07.6/29号)。

○社会保険庁のコンピューターオンラインシステムは、NTTデータと日立製作所が担当している。その開発・運用・保守にこれまで14千億円を投じている。そして毎年1千億円超の経費をかけている。ある国内システム会社の社長は「1千億円とはあまりにも巨額だ。少なくともひとケタは少ない額で十分だ」と話す(07.6/22朝日新聞)。

社会保険庁には、システムエンジニアが一人もいなくて、ソフトウエアの著作権も企業側にある。NTTデータは子会社を含めると天下りを11人受け入れている(週刊朝日07.6/22号)。社会保険庁のコンピューターの責任者は、よくわからないで処理をまかせ、おんぶにだっこで癒着して、言いなりの費用を払っているようだ。

5年間で購入した社会保険庁公用車247台、4億円。

○全国の社会保険事務所に導入した利用ゼロの印刷機921台、15030万円。

○千葉の社会保険大学校内にあるゴルフ練習場の建設・維持費1200万円、校内のテニスコートや体育館の維持費 計409万円。

○東京の社会保険業務センター内のテニスコート建設費422万円、バスケットコート建設費354万円。

○さらには、社会保険庁長官の県人会参加費1万円、職員の退官記念費3万円にも保険料を流用している(Sankei WEB 07/06/27)。

これまでに、年金の支給以外に6兆円もの年金保険料が使われているのである。

 

社会保険庁をめぐる近年の不祥事Sankei WEB 07/06/27

042月:年金保険料が議員宿舎建設費やカラオケセット代などに充てられていた無駄遣いの実態が判明。

047月:年金未払い、過払いが発覚。個人情報の不適切な閲覧で約500人を処分。

049月:事務機器リースの契約をめぐり社会保険庁課長を収賄容疑で逮捕。

051月:書籍の監修料受け取りで幹部ら処分。

053月:内部調査で職員約1500人が年金個人情報をのぞき見していたことが判明。

054月:事務機器導入の汚職事件に関連し、懲戒免職2人を含む76人を処分。

065月:社会保険事務所で国民年金保険料の不正免除を行っていたことが発覚。

075月:東京歯科大OBの歯科医師への指導をめぐり便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、社保庁指導医療官を収賄容疑で逮捕。

 

このようないい加減な省庁は不要であり、存在することは迷惑である。社会保険庁の改革・解体はやむをえない。年金制度は、国民の福祉に欠かせないものである。制度・組織の両面から慎重に論議を深めてもらいたい。選挙目当てのその場しのぎの対策では、大きな禍根になる。

 
 “雑録にもどる”

トップページにもどる