雑録2010.1.14 |
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三越デパートが昨年、35歳以上で1000人の早期退職希望者を募集した。これに対し、昨年の12月1日の発表で、従業員の4分の1にあたる1500人が応募した。日々業務に接し、自分の職場の将来性を 三越デパートの前身は、1670年代の呉服店「越後屋」に始まる。「呉服物現金 三越伊勢丹ホールディングスの石塚邦雄社長は、「百貨店自体がブランド価値に安住し、消費者が何を求めているかを見失った。小売の王者であると、あぐらをかいていた部分があった」と新聞の取材で述べている。(朝日新聞2010年1月5日) 社会状況の変化や、消費者の要求の変化により、いろいろな形態の 通信販売 2000年度には9兆円注1ちかい売上高のあった百貨店市場は、2008年度には7兆3000億円に減少している。これに対し、同じ年度で比較すると、通信販売市場(通販市場)は約2兆3000億円注1から8兆円を超える市場に急拡大し、8年度のコンビニエンスストア市場の7兆9000億円を超え、その通販市場の規模はさらに広がっている。通販市場はカタログ通販、テレビ通販、ネット通販に大きく分類されるが、特にネット通販は、ここ5年間の平均成長率は年率20%以上であり、通販市場全体の8割弱注1を占めている、と報じている(09.11.28発行『週刊ダイヤモンド』)。注1の数値は図表からの換算 ネット通販は、販路を持たないメーカー・個人商店・農林漁業者・工芸美術業者等々が、全国の消費者を相手に商売ができる大きな武器となっている。また同時に、拡大するこの分野には、既存の商社、小売業、食品メーカーなどが続々と参入しているという。 私自身は、カメラやパソコン、新書、古書を購入するため、ネット通販を何回か利用したことがあるくらいだが、その利用勝手のよさには感心する。 例えば、絶版になった本が必要になったとする。日本全国2300余店が加盟する全国古書籍商組合連合会が運営するサイト「日本の古本屋」で、書名や著者名などで検索すると、在庫を持つ古書店名と価格が一覧表となって出てくる。 あるいは、カメラを購入しようとする。価格比較サイトの「価格・com」でカメラのメーカー名・型式などで検索すると、販売価格の安い順に販売店のランキングが表示される。さらに、ユーザーのそのカメラに対する評価、価格変動履歴なども表示するコーナーもある。 メーカー品の家電製品や書物などはどこで買っても変わらないから、現物を見ないでも不安はない。しかし、衣料や靴などのファッション性やサイズが問題となるものなどは、現品で見て確認しないと買う気にはなれない。しかし、私の息子などは平気で注文しているようだ。この不安をなくすため、「返品保証」や「返送料無料」などを強調するネット通販もあるという。 家から10分ほど歩いた場所に、カタログ通販の大手である「カタログハウス」の本社がある。その地下階にカタログで紹介した商品を展示販売するコーナーがあった。この展示販売コーナーの商品には、なぜ自社がこの商品を選択し、消費者に テレビ通販で有名な“ジャパネットたかた”がある。私は、まだここで買い物をしたことはないが、この会社が放映する商品紹介番組は見ることがある。それこそ立て板に水のごとくの商品紹介である。 「皆さん、これだけの機能が付いて、しかもこれだけではないですよ。これとこれとこれを付けて、この値段ですよ。分割支払いの場合は、その手数料は“ジャパネットたかた”が負担しますよ」とのセリフで商品紹介が終わる。 フーテンの寅さんではないが、そのリズムのある話し方は、聞いているだけでも買いたくなる気持ちにさせる。 なお、“ジャパネットたかた”の2008年度の売上高は1370億円。2009年11月28日発行の『週刊ダイヤモンド』にはその内訳として、 <<ジャパネットといえばテレビ通販というイメージが強いが、じつはメディア別の売り上げ構成比を見るとカタログや新聞折り込みといった紙媒体が43%で最も多く、次いでテレビ(29%)、ネット(23%)、ラジオ(5%)の順になっている。しかも、今年度はネットの売り上げがテレビを抜く公算が大きい。>> と書いている。 現在、テレビ通販・カタログ通販を主力としていた各通信販売会社もネット通販にも力をいれだしているという。 巨大家具店 昨年、横浜市にあるイケア港北店と東京のニトリ赤羽店で買い物をする機会があった。どちらも家具店の ニトリの創業は北海道である。ニトリ赤羽店で印象に残ったのは、各フロアーの所々にテレビ受像機の端末が置かれている。客がこの端末を操作して、在庫の確認をすることができる。そのほかに、同じ家具で、キズなどのあるいわゆる“ワケアリ品”が在庫としてあるかどうかも、そのワケアリ理由とともに確認できる情報端末を兼ねている。もちろんそのワケアリ製品はかなりの割引で購入できる。妻は、買おうと思った製品にワケアリ品があるかどうかをまず検索していた。 イケアはスェーデンを創業地とする世界的企業である。イケア港北店は一階が倉庫、二階がショールームになっている。鉛筆やショッピングリスト、紙製のメジャーを受け取り、ショールームで気にいって買いたい家具の値段などの情報を書き込み、その情報をもとに一階の倉庫の棚から客自身が部品をおろしてレジへ運び、家へ持って帰り組み立てる。組み立てに必要な六角レンチなどの簡易工具類は、すべて同封されている。 私は簡単な椅子(写真1)を組み立てたが、それでも組み立て説明書とにらめっこをしながら、多少試行錯誤した。兄も物入れを兼ねたテレビ台(写真2)を、一日がかりで苦労しながら組み立てたようだ。
買った品物はしっかりしている。しかし、組み立てが苦にならない人や若者向きの店の感じがした。事実、店内は若者の客が多かった。 イケアの商法を、リュディガー・ユングブルート著『IKEA超巨大小売業成功の秘訣』の中で次のように記している。 <<イケアではサービスをしない。家具を購入する作業の80%はお客が自分でやる。お客はあれこれ見てまわって、探し出し、望みの品を棚からおろして、レジへ運び、自分の車に積んで家に持って帰る。そして持ち帰った部品を組み立てて家具を完成させる。 このような家具のセルフサービス・システムは、イケアが独自に考え出したものではない。だがイケアほどこのシステムを徹底させた店は他にない。1974年、イケア・ドイツのカタログをはじめて目にしたお客たちはこんな文面に出くわした「自分でお望みの品を棚から下ろし、か弱いご婦人でも押せる便利な手押しカートに品物を積んでください」さらにそこにはこんな大胆なメッセージも書かれてあった。「もし字が読めるなら、組み立て説明書も理解できるはずです」 イケアではお客が品物を自分で持ち帰り、自分で組み立てることで、生産過程の一翼を担わねばならない。「ここにははじめから合理化が隠されている」とデザイン評論家のベルント・ボルスターはイケア成功の秘密を述べる。「イケアはこのシステムを生産部門だけでなく、販売や運送においても徹底して推し進め、いわばベルトコンベアを家庭の居間にまで伸ばしたのである」 イケアがお客に突きつける要求は生半可ではない。幅80センチのBILLY書棚からして、包装済みの重さは43キロにもなり、コーナー用書棚にいたっては50キロもある。KLIPPANソファもこれと同じくらいの重さがあり、スリードアの洋服だんすLEKSVIKは重さが73キロ、ガラス戸棚LIATORPを梱包した長さ2.21メートルの荷物にいたっては85キロにもなる。>>
商いのアイデアは尽きない。消費者に支持されている商いは、それなりの創意工夫をしている。 参考 田中政治著「小売商のルーツを求めて」日本コンサルタントグループ 鈴木隆祐著『「通販」だけがなぜ伸びる』光文社文庫 週刊ダイヤモンド「通販&ネット販売の魔力」2009.11.28発行 リュディガー・ユングブルート著 瀬野文教訳「IKEA超巨大小売業成功の秘訣」日本経済新聞出版社 サイト「日本の古本屋」 https://www.kosho.or.jp/servlet/top サイト「価格・com」 http://kakaku.com/
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