雑録2013.11.28 ひざ痛

6カ月前の6月ごろから、正座を始めるときに右ひざに少し痛みがでるようになった。ただそのころは、座ってしまうと痛みはなくなった。また、椅子(いす)に長時間座っていると右(あし)全体がしびれてくる。しびれを散らすため座りながら右足を伸ばしたり浮かせたりしなければならなくなったさらに歩行時に右脚に違和感があった。

7月中旬に、坐禅会の行事である「禅の集い」が、福井にある宝慶(ほうきょう)寺で二泊三日の日程で行われ参加した。行事は、正座での勤行(ごんぎょう)や座っての受一日何回かの坐禅、この繰り返しである。ひざへの負担がかなりあり、坐禅は坐禅堂にえられていた椅子(いす)での椅子坐禅にさせてもらった。

作家でもあるC.W.ニコル氏が代表を務めるアファンの森財団がある。長野県の黒姫にその森があり、9月にその森の見学会に参加した。二時間ほど山林を歩いた程度であったが、帰宅してからは、正座も胡坐(あぐら)もできなくなり、歩行も右ひざの痛みで不自由するようになった

 

腰痛になったときに、治療を受けている整形外科医院で診てもらうと、ひざの軟骨などは正常であり、痛みは腰椎(ようつい)からきているという。院内の理学療法士から腰椎の矯正を受けることになった。ひざへの直接的な治療は低周波と超音波である。痛み止めとして経皮鎮痛消炎の貼り薬が処方された。

腰椎のゆがみの矯正治療として、壁から離れて立ち、曲げた腕をそえた上半身を壁に押しつけ、腰のあたりを手で押して身体を湾曲させることを指導された。矯正直後だけは、ひざの痛みは少なくなった。この矯正法を自宅で日に4回行うように指示された。週1回通院し、理学療法士がその経過と効果を診て、症状にあわせた矯正法に変更することになった。

以前、大阪天満橋(てんまばし)から熊野まで熊野古道を歩いたことがある。長年整体師をしていたという泊まった民宿女将(おかみ)さんは右ひざ痛くなることがあると話す私をうつ伏せにさせ、曲げた両足の角度の違いから、あなたの右ひざ痛は左の腰からきているひざだけを手当てしてもダメだとわれたこともある。そのように言われたこともあり、まず腰椎(ようつい)矯正治療をするということには納得できた

通院後、歩いてもたいして時間がかからない図書館へ行くのに、歩くより楽だと考え自転車を使用した。急だがほんの短い上り坂で、サドルからお尻をあげてペダルをこいだとき、右ひざに痛みが走った。帰宅すると右ひざが痛くて、伝え歩きしかできなくなった。

妻が探しだしてきた(つえ)をつきながら、整形外科医院へ行った。普通なら歩いて15分もかからない距離だが、30分以上かかりやっと着いたという状態であった。笑い話だが、杖のもち方が反対だと言われた。杖は痛い脚の反対側の手で持って歩くのである。考えれば当然だ。右の脚が痛いのに、右の手で杖を持つと、左の脚を前に出すとき、右の脚は痛いため体重をかけられない。右手に持った杖一本で体重を支えることになる。不安定このうえない歩きかたで、歩いていたのである。

夜、右ひざに痛みが走りよく目を()ます日が続いた。右ひざが痛いのに、腰椎(ようつい)の矯正が主な治療である。ほかに何か方法があるのではないかと思い、図書館からひざ痛関係の本を10冊ばかり借り出した。(ひろ)い読みをしていると、大谷内(おおやち)輝夫著「ひざ痛を自分で治す本」1には、「痛み部位別運動編」という項目がある。“ひざの外側”が痛い人は、O脚の人・X脚の人のほかに腰椎(背骨の腰の部分)の4番が悪い人とある。まさに私の症状にあてはまる。その治療の運動は、腰・股関節(こかんせつ)・ひざ・足首の各8の字ゆらし」が効果的であると書いてある。図示している運動方法も、無理がなく容易にできそうであり、著者の治療理論にも納得できる。腰椎の矯正治療と並行して自分で行うことにした。

著者は、基本となる治療法を4点挙げている。例えば、そのなかの1つに靭帯(じんたい)調整法(8の字ゆらし)いう興味ある治療理論を述べている。

ひざ関節は屈伸した場合に関節内外のあそびがない。そのため外圧をうけたときにショックを吸収する機能が弱くなる。また、関節は、関節を守る組織がわずかに靭帯(じんたい)(関節の骨と骨を結ぶ繊維状の組織)と(けん)くらいしかなく、関節周囲に筋肉が少ないこともあり、衝撃に対して弱く、故障や痛みが発生しやすい形になっている。靭帯は骨と骨をつないでいるコラーゲン繊維の束である。関節の補強、動きの安定や制御になくてはならない役割を(にな)っている。骨の変形などの障害で関節の動きが悪くなると、関節を支えている周囲の筋肉が(かた)なってくるのと同様に、程度の差こそあれ靭帯も(かた)くなって働きが悪くなってくるこの硬くなっている靭帯を「8の字ゆらし」によって柔軟性を持たせ、靭帯の可動域を広げる。この靭帯の可動域を広げることによって、骨が変形したままでも痛みはなくなってくる。

この靭帯の可動域を広げるやり方は、子供のころ、打ち間違えた(くぎ)を抜こうとして、引っ張ったり回したりしても容易に抜けなかったが、釘の頭をもって8の字に回したところ、簡単に抜けたことを思いだし、開発した運動療法だそうだ。

その運動の一例を挙げれば、床に両脚をそろえ伸ばして座る。かかとを床につけたまま、密着した両足の裏全体で縦・横それぞれ8の字を描く。また片足ずつかかとで小さな8の字を描く。このようにすることで靭帯をほぐすことができるという。

そして次のように記している。

 

<< 私ども治療家は手術で変形を矯正(きょうせい)することはできませんが、変形によって起こる痛みを改善することはできます。というより、それが私どもに課せられた役割と考えています。

実は、ここが「ゆうきプログラム」注記の重要なポイントなのです。

「ゆうきプログラム」の運動をすることで、骨の変形自体が治るわけではありません。ただし、骨は変形したままでも、痛みを軽減、解消することはできます。関節を支える筋肉や靭帯、関節包(かんせつほう)を柔軟にし、アライメント(骨や筋肉、靭帯などの整合性)を調整することで、変形したひざの働きをカバーする。その結果、変形というひざの病気はそのままでも、痛みや歩行困難といった、変形による症状は改善されるのです。

ひざが元どおりにならないのですから、これは根本治療とはいえないでしょう。実際、私自身も、「ゆうきプログラム」は症状を取り去る対症(たいしょう)療法だと思っています。

でも、内臓など、ほかの病気と違って、変形性(しつ)関節症の場合はそれでも十分ではないかと思います。関節が変形したままでも、ちゃんと動いて、痛みも気にならないなら、日常の生活に支障を来すこともありません。

いわば、病気だけれど病気ではない。「ゆうきプログラム」は、まさにその状態をつくり出すことにほかなりません。>>

注記「ゆうきプログラム」:ひざ痛を専門とする著者が25年間、1万人強の治療実績から考案した300種の運動療法。

私には自由な時間はたっぷりある。理学療法士が指導した身体を湾曲させる運動やその後に指示された運動も12分とかからない。この「ゆうきプログラム」が指示する“ひざの外側”が痛い人に有効な運動と、基本運動を毎回40分かけて行った。運動ごとに、この運動は11回だけ、この運動は1日何回で毎回30回とか15回でよい、あるいは痛くなった場合はただちに中止する、などと注意事項がかかれている。

しかし、中止する痛さの程度がわからない。多少の痛さならガマンして運動した方が良いのでは、あるいは数多くやった方がより効果が大きいのではないかなどと、ひざの痛みが少なくなるにつれて、回数や運動量が多くなった。

右ひざのサポーターがきつくなった。見ると、左ひざに比べて、痛む右ひざのほうが多少()れているように見える。医師に()てもらうと、水が少したまっているが、大したことではないので、少し様子を見ましょうということになった。私はすぐにこれは運動のやりすぎだと思った。()たるは(およ)ばざるが(ごと)し」のことわざ通りになったようだ。

 

ここにきて、歩行も違和感が少なくなり、正座をするとまだ少し痛いが、お尻が右のかかとに届くまでになり、胡坐(あぐら)床からひざまでの距離がより短くなった。理学療法士も歩く姿勢が良くなったと言ってくれた夜、痛みで目を覚ますのも明け方の1回ぐらいになった。もう一息(ひといき)である。



追 記:大谷内輝夫著『脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)を自分で治す!』2

<< 筋力強化も当然のことながら必要ですが、じん帯、関節包(かんせつほう)の治療なくして、ひざ、股関節(こかんせつ)脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)を含む関節疾患(しっかん)の治療はありえないと考えます。

さらに、じん帯をほぐすと関節包にもよい影響を及ぼすことがわかってきました。関節包は、関節を(おお)う袋状の組織です。袋の中は滑液(かつえき)で満たされ、その働きで関節をなめらかに動かすほか、軟骨に栄養を供給する役目も担っています。関節の痛みは、骨と骨の間の空間(関節腔(かんせつくう))の内圧が高まる(ふくらんで神経を刺激する)ことも一因とされています。じん帯が柔軟になると、関節包もほぐれて内圧が下がり、痛みの軽減につながります。痛みをとるサイクルの起点はじん帯や関節包であるといえます。>>

 

参 考

大谷内輝夫著『ひざ痛を自分で治す本』マキノ出版1

大谷内輝夫著『脊柱管狭窄症を自分で治す』主婦の友社2

黒澤尚著「ひざの痛みをしっかり治すコツがわかる本」学研

 

             

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