雑録2017.3.19 仏教文化講座

毎月開催されている、浅草寺主催「仏教文化講座」を聞きに行くのが楽しみである。講座は第一講座と第二講座が続けて開かれる。第一講座は文化関係、第二講座は仏教関係が語られる。その仕事に長年従事している人、研究してきた人、僧侶、インド哲学の学者、仏教系の大学の先生など、多方面の講師が講演する。毎回、ほぼ満席にちかい350人前後の聴衆を相手に、それぞれ1時間の講演である。

この「仏教文化講座」は終戦後11年たった1956年から始まり、20172月で735回目をむかえている。この講演を聞いて興味をもち、講演者の著作を読んだことが何回もある。また、第二講座の仏教関係の講演録は、毎年まとめられ製本して配付されている。印象に残った講演のなかからいくつかを。

期日 2013624

講師 東北大学大学院文学研究科教授 鈴木岩弓

演題 「現代日本人の死者観念―東日本大震災の土葬採用をめぐって」

① 宮城県では、通年約2万人の死者に対し、2011年は3万人の死者があった。これは大震災による数日での死者である。火葬ができなくて、臨時に土葬をした。土葬は法律上ではできるが、条例によってできない市町村もある。埋葬は許可された墓地でしかできない。総務省?と図って、臨時に墓地を設け土葬した。市町村では、将来的にその埋葬地を墓地とする計画であった。

② 東北地方では、通夜のあと出棺・火葬され、告別式は骨葬でする。土葬は正式の埋葬ではないと考えられ、不憫(ふびん)忌避(きひ)対象とされた。このため、火葬が順調に行われだすようになると、掘り返され火葬にされた。また会館葬、寺院葬では、遺体は「ナマボトケ」といわれ、不浄とみなし、搬入を拒否するところもある。

③ 宮城県では、現在100%火葬である。しかし45年前(1967年)での火葬率は57%(全国平均75%)で、土葬は一般的に行われていた。この半世紀で土葬への考え方が変化したのである。

火葬では薪を大量に使用し費用がかかる。土葬が簡単で費用がかからないことは明白である。火葬が簡単にできるようになって一般的になったことによって、死者にたいする考え方もかわってきたといえる。

期日 2013722

講師 日本大学文理学部哲学科教授 合田秀行

演題 不明

① 日本の言葉には身体を使った言葉が多い。

腹を割って話そう。腹が()わっている。腹癒(はらい)せ。腹が立つ。腹が太い。腹構え。腹黒い。腹芸。腹に一物。腹に収める。腹に落ちる。

② 瞑想する→頭頂部の働きが低下する→他人との区別がなくなる→自他との一体感を感じる。

③ 体の姿勢と脳の働きには関連がある。

④ 「いつするの、いましかない」のテレビによく出ている予備校の先生がいる。その先生の母親向けの「子供の(しつけ)」についての講演を聞く機会があった。先生は、躾の第一は姿勢を正すことだと話していたのが、印象に残っている。体の姿勢と脳の働きには関連がある。

 

期日 2014224日 

講師 慶應義塾大学商学部教授 中島隆信

演題 「経済学の視点から見たお寺の将来像」

<< NHKクローズアップ現代では次のような調査結果を出していた。 仏教に関心90% > お寺に関心25% > お坊さんに関心10%。ほとんどの人が仏教に関心をもっている。これは将来的には、僧侶が本来の仕事にもどれば将来は有望であることを示している。>>

後日、講演で別の講師が、「仏教についてここで調査させてください」と冒頭に話され、講演が始まった。仏教に興味を持っている方は挙手してください・・今日来ていただいたほぼ全員のかたが挙手していますね。 それではお寺に関心のある方は挙手してください・・半分になりましたね。 次はお坊さんに関心のある方・・さらに半分になりました。この講演会は、浅草寺の主催であり、もともと仏教に関心のある方々が参加していると思います。それでもお坊さんに魅力がないことがわかりました。

期日 2014723

講師 エッセイスト 三宮麻由子

演題 「感性で見る世界 シーンレスからシーンフルへ」

講師は4歳で光を失った。上智大学フランス文学科卒業、同大学院博士前期課程を修了。外資系通信社で報道翻訳にたずさわっている。英語で話す経済放送は通常の三倍の速さで話をする。実際に流されている英語をテープで聞かしてくれた。これは一般のアメリカ人でも聞き取れないほどの速さだと言われたとき、“やった”と思ったという。日本語で三倍の速さにしたテープをためしに聞かされたが、私には日本語が聞き取れなかった。小さいときからピアノをならっている。ピアノを()いたが、何と力強い弾き方だろう。ある作曲家が作曲した、鐘の鳴る音をイメージした楽譜を弾いたことがある。そのときはよくわからなかった。しかし、作曲者の住んでいたイタリアに行ったとき、楽譜の鐘の音は、石畳に反射している音でありその曲がよく理解できた、と話しをされていた。百種類以上の鳥の声を聞き分けるという。

期日 2015722

講師 中洞(なかほら)牧場長 東京農業大学客員教授 中洞(なかほら)

演題「しあわせな牛からおいしい牛乳」

① なかほら牧場は、ほし草だけで育てる「山地酪農」と呼ばれる放牧である。

② 法律で牛乳と認められる乳脂肪分は3.0%以上とされている。しかし、農協は3.5%以上の乳脂肪分の牛乳だけを集荷すると規定している。山地酪農で育った乳牛の乳脂肪分は3.23.5%である。このため、配合飼料を用いた密畜をしなければ3.5%の基準を守れなくなり「山地酪農家」は激減した。農協は配合飼料の販売を独占的に行うために、この基準を設けたとしか思えない。

③ 500700キログラムある牛を、狭い牛舎で密畜し、生涯動かないで過ごす。この結果、脚や爪が弱り、免疫も悪くなり、寿命は6年前後である。なかほら牧場では放牧しているので、足腰は丈夫であり、はるかに長い寿命を得ている。

ニワトリなどのゲージ飼いも、ニワトリにストレスを与え免疫性が著しく劣る。鳥インフルエンザが蔓延するのもこのためである。EUでは一昨年、ゲージ飼いを禁止する法律が制定された。


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