救い主の墓前の改悛者 ZWV63
I Penitenti al Sepolcro del Redentore
編成:ATB, soli; SATB, ch.; 2Fl.; 2Ob.; 2Bn.; 2Vn.; Va.; B.c.
作詞:Stefano Pallavicini
この作品は1736年の受難節に作られた宗教オラトリオです。
この時期ハッセやリストーリがドレスデンを留守にしていた関係で、Il Serpente di bronzo. ZWV61、Gesù al Calvario. ZWV62同様にこういった作品もゼレンカが作ることになったようです。
物語はキリストの墓の前に、マグダラのマリア、ペテロ、そしてなぜかダビデが現れて、それぞれのキリストへの思いを語るというもので、あまりストーリー性は強くありません。
テキストを読むと結構悲痛な内容で、開始のシンフォニアと終曲のコーラスはまさにそういった雰囲気なのですが、中のアリアには全般に割に明るい雰囲気が漂っています。この頃はゼレンカがギャラント様式を取り入れていく時期でしたが、そういったことが関係しているのでしょうか?
この作品のシンフォニアは単独でもよく演奏されています。聴いてみれば半音階バリバリでポリリズムまで出てきて、ゼレンカの器楽作品が少ない中でも異彩を放っている名曲でしょう。
登場人物 | |
---|---|
マグダラのマリア | アルト。罪の女ともいわれる。一説にはキリストの妻だったという話も。 |
ダビデ | テノール。ユダヤ王国を建国した伝説の王。 |
ペテロ | バス。キリストの第一の使徒 |
歌詞対訳
1. Introduzione | 1. 序曲 |
2.Aria | 2. アリア |
--- Davidde : | --- ダビデ: |
Squarcia le chiome, percoti il petto | 汝らの髪をかき乱し、胸を打ち鳴らし、 |
e' l' tuo diletto chiamando a nome, | 最愛の名前を呼べよ |
Sionne dolente, grida merce. | 悲しみに沈むシオンよ。慈悲のために。 |
Questa d' orrore empia ogni core pietosa voce: | 惨めな声が恐怖に満ちた汝らの心を満たす。 |
Sionne, in Croce morto e il tuo Re. | シオンよ。王が十字架の上で死んだのだ。 |
3. Recitativo | 3. レチタティーボ |
--- Davidde : | --- ダビデ: |
Tramontata e la Stella che da Giaccobo | ヤコブより生まれた星よ。 |
uscita al mondo apparve a rischiarar la via. | それは世を照らすために現れた。 |
Il bramato, il Messia | 長きに渡って熱望されたるメシアであり、 |
dalla mia regal sede il vero atteso erede. | 長きに渡って期待されてきた我が王座の継承者である。 |
Quello del cui venir cantaron lieti | 彼の到来は 我が100人の預言者達と共に |
meco cento Profeti, | 喜ばしく歌いつつ予言してきた。 |
da cieca invidia condannato a torto, | 彼は、盲目の憎しみによって偽って告発された、 |
il tuo Gesii, cara Sionne, e morto. | 汝らのイエス、シオンの王が死んだのだ。 |
--- Maddalena : | --- マグダラのマリア: |
Oi me, quasi nel campo | 悲しみが私を満たします。 |
dal vomero crudel ecciso giglio, | むごい鍬によって引き裂かれた野の白百合のように、 |
dilaniato giace dell' eterno Signer unico Figlio. | 永遠の主の一人息子は屈辱され横たわっています。 |
Quegli occhi, oi me, | その目は、ああ、 |
che face furono al petto mio dell' amore d' un Dio, | 私の心への神の愛の松明です。 |
chiusi n'andar in mortal sonno e spenti | それは死すべき運命の眠りに閉ざされて、生の息吹は絶えています。 |
e con parlar che soli amanti sanno | そしてただ一人愛して頂いた人のその舌は、 |
a me piu non diranno: | もはや私にこのようには語ってくれません。 |
dammi, donna, il tuo core e il mio ritienti. | 女よ。汝の心を私に与えよ。そして私のものを汝に与えよう、と。 |
4. Aria | 4. アリア |
--- Maddalena : | --- マグダラのマリア: |
Del mio amor, divini sguardi, | 神聖なる私の愛の眼よ。 |
se non piu vi aprite, | もしあなたもはや目覚めないなのらば |
a me manca il giorno ancor. | 私にもはや光は存在しません。 |
Che puo un sol di vostri dardi delle | まさに一つのあなたの |
dolcissime ferite | 痛々しい傷の輝きが |
sostenere in vita il cor. | その心を生かし続けることができたのです。 |
5. Recitativo | 5. レチタティーボ |
--- Pietro: | --- ペテロ: |
Qual la dispersa greggia di discipoli erranti | いかなる新しい牧者と導き手が |
novello trovera Pastor e Duce chi | 散り散りになった誤った使徒達の群れを見つけるのだろうか。 |
spargera di luce dell' eterne Scritture gli rimi e le figure? | 誰が詩句の光をなげかけ、永遠なる聖典を描くのだろうか。 |
Morto e il dolce Maestro e cio che, | 優しい主は死んだ。 |
piu in rimmembrar m'accora in quella fatal era, | そして私を最も苦しめるのは |
in quella di dolor funesta scena: | 決定的なその時の記憶だ。 |
de suoi piu cari appena | 悲惨なる痛みに満ちた光景の中の、 |
uno rimase alia sua croce a lato. | 十字架につけられた最愛の者なのではなく。 |
Nove in fuga son volti. | 9人は逃亡し、 |
Tradillo Iscariote; | イスカリオテは彼を裏切り、 |
io ti ho negate. | 私が彼を否定したことだ。 |
6. Aria | 6. アリア |
--- Pietro: | --- ペテロ: |
Lingua perfida, | 不実な舌よ。 |
quel serpente che nell' orto Eva inganno, | エデンでイヴを惑わした蛇よ。 |
quello fu che t'insegno, | お前もそれに教わったのだ。 |
lingua perfida, di mentir, | 嘘つきの不実な舌よ。 |
lingua perfida, a mentir. | 嘘つきの不実な舌よ。 |
Tu che primo al divin Figlio | お前は、一度は信仰の告白をしたのだ。 |
confessando onor rendesti | 神の子を尊重すると認めたのだ。 |
tu che lungi dal periglio cosi intrepida | お前は、危険から遠くにいたときは、全く恐れ知らずに公言していた。 |
dicisti ch' io volea con lui morir. | 彼のためならば自身の命をも顧みないだろうと。 |
7. Recitative | 7. レチタティーボ |
--- Maddalena : | --- マグダラのマリア: |
Per la traccia del sangue al loco giunta, | 血の跡を追って私はこの場所に来ました。 |
ove sepulto giace lo Sposo mio divino, | ここは私の聖なる花婿が横たわる地です。 |
Di quai doni ornero la tomba amata? | どのような贈り物で私はこの最愛の墓を飾ればよいのでしょう。 |
Questa d'Arabi fumi urna adorata, | この骨壺はアラビア油で満たされています。 |
questo balsamo, ond' io, di sua morte prosaga, | このバルサムは、あたかも彼の死を予期するかのようです。 |
in Betania lo sparsi al marmo, | 私はベタニヤの大理石の床に少しだけ注ぎました。 |
offerti testimonio a lui sian' del amor mio. | 私の彼に対する愛を証明するために。 |
8. Aria | 8. アリア |
--- Maddalena : | --- マグダラのマリア: |
Da vivo tronco aperto | 傷ついた幹より |
nobil licor stillato | 貴重な樹液がほとばしります。 |
a gran raggione offerto | あなたは本当に私の主のために |
al mio Signer sei tu. | 犠牲にされたのです。 |
Cosi di Lui versato | 無数の傷より |
per mille piaghe il sangue | 流れ滴る血は、 |
in anima che langue | 思い焦がれる魂には |
di balasmo a virtu! | バルサムの治癒力を持つのです。 |
9. Recitative con stromenti, Aria | 9. 音楽付きレチタティーボとアリア |
--- Davidde: | --- ダビデ: |
Questa che fu possente | 汝、輝かしき竪琴よ。 |
di Saulle placar le furie e I'ire, | その音色でサウル王の怒りと憤激をなだめ |
questa su cui sovente all' uscir dalla pugna | 戦いの終わった後には |
cantar' di Dio le lodi, Arpe adorata, | 神への賛美を歌いあげた |
alia tomba adorata humil appendo: | 尊敬するこの墓に恭しく汝を飾ろう。 |
A tanto lutto in faccia, | 喜びの音色、それこそが汝だ、 |
d'allegrezza stromento | かような悲しみで顔を見合わせながら、 |
giusto e che muto e polversoro giaccia. | 音もなく黴にまみれて横たわっているのではなく。 |
--- Davidde: | --- ダビデ: |
Le tue corde, arpe sonora, | 格調高い竪琴よ。なぜ汝は |
deh! che udir non festi allora | 弦の調子を合わせなかったのか、 |
quando un popolo inumano | ああ、冷酷な人々が不信心な声をあげ、 |
I' empia voce e Fempia mano | 私の主の破滅のために |
del mio Cristo a danni alzo. | その不信心な手をあげたそのときに。 |
Forse avria coi tuoi concenti | 汝の音色をもってすれば、 |
addolcito in quelle menti | 彼らの心を揺らす憤激を |
il furor che le agito. | 和らげられたかもしれないのに。 |
10. Recitative | 10. レチタティーボ |
--- Pietro: | --- ペテロ: |
Tribute aceto piu, piu grato dono: | その捧げ物がより苦くなれば、贈り物はより甘くなる。 |
star del sepolcro al piede, | その墓の下に立つために、 |
sparger di pianto inessicabil rio. | 決して乾かぬ涙を流すために。 |
L' esempio vostro e mio, Madallena, Davidde, | あなた方と私の模範は、マリアとダビデよ、 |
tanto dal uomo in questo giorno impetri. | この人のためにこの日達成された。 |
Ne sia cor si ostinato, | もうどんな頑固な心であっても、 |
alma si dura il cui | どんな強情な魂であっても、 |
gelo non pieti di dolor di rimorso alta puntura. | この燃えさかる自責の激痛には哀れみをおぼえることだろう。 |
Maddalena: | --- マグダラのマリア: |
Al divin nostro amante meno ingrate, | あなたの忘恩は脇にのけておきなさい。 |
una volta almen pentite alia tomba venite, | 私たちの神聖なる愛の墓に来たからです。 |
orgoglio, vanita qui si spogli vostro, | あなたはあなたの罪を後悔して、 |
qui recida le chiome. | そこではあなたの誇りや虚栄をあなたから立ち去らせなさい。 |
Insegnerovi come a pie d' un Dio si sospiri, | そのとげとげしさを遠ざけなさい。 |
si pianga ed al cor die Gesu per qual | 私があなたに教えます。主の足下でいかに嘆き涙を流すのかを。 |
si vada sol concessa ad amor sicura strada. | そしてイエスの心のため、愛に導かれて、いかに真の道をたどるのかを。 |
--- Davidde : | --- ダビデ: |
Qual io soleva un tempo all' area innanti | まさに私が墓の側で賛美の歌を歌ったとき、 |
dar norma agli inni, ai canti, | 我は乞い願う。汝らのよく知る悲しげな音を再び歌うことを。 |
tal a redire oggi, Sionne, t' invito | そう今日だ。おお、シオンよ。 |
quelle a te cosi note lagrimevole note | 唇からわき上がり、 |
che formo labbro, il cor pentito, | 魂の悔い改めからわき起こるその音楽を。 |
tu I' urna ad' ora indi raccolta e mesta | 汝が、憂鬱で悲しいこの日の音楽が、 |
il regal pianto a rinovar t' appresta. | 悲しみに満ちた気高き哀歌の始まりなのだ。 |
11. Finale | 11. フィナーレ |
--- Davidde e coro misto: | --- ダビデとコーラス: |
Miserere mio Dio, | あなたの愛と寛容をもって、慈悲をお与えください。我が神よ。 |
pieta ti muova a me lavar di mortal fango immondo. | あなたの多くの慈悲によって、私の罪は消し去られました。 |
Le mie colpe conosco e non le ascondo. | それ故に私は、私の破戒と罪が永遠に私達の前にあることを認めます。 |
Tu le cancella ed il mio cor rinnuova. | 私のなかのすべての邪悪を消し去って、清らかな魂を創造してください。 |
Miserere Signer, | 慈悲をお与えください。我が神よ。 |
furore ed ira prima di giudicar oi me, deponi! | あなたが私を裁く前に憤激と怒りをおさめてください。 |
Come resistera se non perdoni, | もしあなたが許さなければ、 |
I' alma che dal profondo sospira? | 深淵より嘆く魂それ自身だけで何ができるのでしょうか? |