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ミサ

カトリック典礼のもう一つの柱であるミサは基本的に毎日唱えられましたが、重要な祝日には音楽付きで盛大に行われました。

ミサの式次第

ミサの次第は基本的に以下のような物です。

  1. 固有 共 入祭唱
  2. 通常 共 キリエ
  3. 通常 共 グロリア
  4. 固有 司 集祷文
  5. 固有 司 使徒書簡朗読
  6. 固有 共 昇階唱
  7. 固有 共 アレルヤ唱/詠唱
  8. 固有 共 続唱
  9. 固有 司 福音書朗読
  10. 通常 共 クレド
  11. 固有 共 奉献唱
  12. 固有 司 密唱
  13. 通常 対 スルスム・コルダ
  14. 通常 司 序唱
  15. 通常 共 サンクトゥスとベネディクトゥス
  16. 通常 司 ミサ典文
  17. 通常 司 主祷文(パテル・ノステル)
  18. 通常 対 主の平安
  19. 通常 共 アニュス・デイ
  20. 固有 共 聖体拝領唱
  21. 固有 司 祈祷
  22. 通常 対 イテ・ミサ・エスト

アンダーラインのある部分、すなわち全員で唱える通常の文が、ミサ曲で通常作曲される部分になります。それ以外の所でも「共」の所であれば音楽が付けられることもあります。実際死者のためのミサ曲(レクイエム)ではその部分に曲が付けられています。
普通あまり付けなかったのは、そこが固有文のためミサごとに変わってしまい、汎用性がなかったためでしょう。

キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイの部分の解説は、後の対訳の部分で行います。ここではそれ以外の部分の簡単な解説をします。

ミサ通常文

以下はミサ曲で歌われる部分の歌詞と対訳です。各部について曲目解説風なことを書いていますが、これは非常に一般化した話なので、例外はいくらでもあると思って下さい。

なお節に番号が付いていますが、これは説明の時分かりやすいようにこちらが勝手に付けた番号ですので注意して下さい。

KYRIE キリエ
(1)(1)
Kyrie eleison, 主よ、あわれみたまえ。
(2)(2)
Christe eleison. キリストよ、あわれみたまえ。
(3)(3)
Kyrie eleison, 主よ、あわれみたまえ。

ミサ曲の冒頭のこの部分は「あわれみの賛歌」とも呼ばれます。

大変短いのでこれをベタに音楽を付けたら15秒ぐらいで終わってしまいます。それではまずいのでキリエ・エレイソン、クリステ・エレイソンという言葉が何度も繰り返されます。

この部分は歌詞が短いので音楽があまり規定されず、それこそ曲によって千差万別の音楽と言っても過言ではないでしょう。
ただここは見ての通り Christeet が Kyrie に挟まれた格好になっていて、音楽的には3部形式になっていることが多いようです。
またよく第1節のキリエを「第一キリエ」、第3節のキリエを「第二キリエ」と呼びます。

ちなみにここの歌詞はギリシャ語起源で、ラテン語ではありません。

GLORIA グロリア
(4)(4)
Gloria in excelsis Deo. 天のいと高きところには神に栄光、
Et in terra pax hominibus bonae voluntatis. 地には善意の人に平和あれ。
(5)(5)
Laudamus te, benedicimus te, われら主をほめ、主をたたえ、
adroamus te, glorificamus te. 主をおがみ、主をあがめ、
Graitias agimus tibi 主の大いなる栄光ゆえに
propter magnam gioriam tuam. 感謝したてまつる。
(6)(6)
Domine Deus, Rex caelestis, 神なる主、天の王、
Deus Pater omnipotens. 全能の父なる神よ。
Domine Fili unigenite, Jesu Christe. 主なる御ひとり子、イエス・キリストよ。
Domine Deus, Agnus Dei, Filius Patris. 神なる主、神の小羊、父のみ子よ。
(7)(7)
Qui tollis peccate mundi, 世の罪を除きたもう主よ、
miserere nobis. われらをあわれみたまえ。
Qui tollis peccate mundi, 世の罪を除きたもう主よ、
suscipe deprecationem nostram. われらの願いをききいれたまえ。
Qui sedes ad dexteram Patris, 父の右に座したもう主よ、
miserere nobis. われらをあわれみたまえ。
(8)(8)
Quonism tu solus sanctus. 主のみ聖なり、
Tu solus Dominus. 主のみ王なり、
Tu solus Altissimus, Jesu Christe, 主のみいと高し、イエス・キリストよ。
cum Sancto Spiritu, in gloria Dei Patris. 聖霊とともに 父なる神の栄光のうちに。
Amen アーメン。

ここは神の栄光を賛美する曲です。そのため大抵のミサ曲では基本的におめでたい雰囲気で始まります。

そういった雰囲気が6節まで続いた所で、普通7節のクイ・トリスの部分では静かな曲想に変わります。ここのミゼレーレ(あわれみたまえ)という単語は、大抵の作曲家が思い入れ深く作っています。

8節になるとまたおめでたい雰囲気が戻ってきます。バロックのミサ曲ではクム・サンクトゥス以降がフーガになっているのも多いようです。

CREDO クレド
(9)(9)
Credo in unum Deum われは信ず、唯一の神、全能の父、
Patrem omnipotentem,天と地、
factorem caeli et terrae, 見ゆるもの、
visibilium omnium invisibilium. 見えざるものすべての造り主を。
(10)(10)
Et in unum Dominum, Jesum Christum, われは信ず、唯一の主・
Filium Dei unigenitum, 神の御ひとり子・イエス・キリストを。
et ex Patre natum ante omnai saecula. 神はよろず世のさきに、父より生まれ、
Deum de Deo; Lumen de Lumine; 神よりの神、、光よりの光、
Deum verum de Deo vero; まことの神よりのまことの神、
genitum non factum; consubstantialem Patri, 造られずして生まれ、父と一体になり、
per quem omnia facta sunt. すべては主によりて造られたり。
(11)(11)
Qui propter nos 主はわれら人類のため、
et propter nostram sautem, またわれらの救いのために、
descendit de caelis. 天よりくだり、
(12)(12)
Et incarnatus est de Spritu Sancto,聖霊により
ex Maria Virgine; et homo factus est. 処女マリアより御体を受け、人となりたまえり。
(13)(13)
Crucifixus etiam pro nobis; ポンシオ・ピラトのもとにて、われらのために
Sub Pontio Pilato passus et sepultus est. 十字架につけられ、苦しみをうけ、葬られ給えり。
(14)(14)
Et resurrexit tertia die secundum Scripturas; 聖書にありしごとく三日目によみがえり、
et ascendit in caelum; 天にのぼりて、
sedet ad dexteram Patris; 父の右に座したもう。
et iterum venturus est 主は栄光のうちに再び来たり、
cum gloria judicar evivos et mortuos; 生ける人と死せる人とを裁きたもう、
cujus regni non erit finis. 主の国は終わることなし。
(15)(15)
Et in Spiritum Sanctum, われは信ず、主なる聖霊・
Dominum et vivificantem; 生命の与えぬしを。
qui ex Patre Filioqe procedit. 聖霊は父と子よりいで、
Qui cum Patre et Filio simul adoratur 父と子とともに
et conglorificatur, 拝みあがめられ、
qui locutus est per prophetas. また予言者によりて語りたまえり。
(16)(16)
Et unam Sanctam Catholicam われは一・聖・公・
et Apostohcam Ecclesiam. 使徒継承の教会を信じ、
Confiteor unum Baptisma 罪の許しのためなる
in remissionem peccatonlm 唯一の洗礼をみとめ、
et expecto resurrctionem mortuorum, 死者のよみがえりと、
et vitam ventui saeculi. Amen. 来世の生命とを待ち望む。アーメン。

この部分はニケア信経とも呼ばれます。キリスト教の教義をコンパクトにまとめた文章です。

非常に散文的な、言い換えれば音楽的ではない内容ですが、意味的には非常に重要なところです。そのためその作曲家の腕の見せ所でもあります。

まず9~11節までがおおむね1セットの流れで書かれます。どういう曲になるかは、その作曲家によって全く異なりますが、明るい、信念に満ちた音楽が多いようです。それは12節以降と対比させるためでしょう。

12節になった所で歌詞に Maria Virgine (聖母マリア) という言葉が現れ、曲想はそれにあわせて穏やかな物に変わります。

13節の Crucifixus はキリストが十字架に架けられたことを描写しているため、大抵悲痛な、もしくは弔いのような音楽になります。

14節の Et resurrexit はキリストの復活の描写で、13節のキリストの死と目一杯に対照的な音楽になります。

この12~14節の流れが通常クレドの、そしてミサ曲全体のクライマックスと言っても良いでしょう。

復活の晴れやかな音楽の雰囲気で、そのまま15、16節に突入します。
一部 mortuos とか mortuomm (死者のという意味)という単語の所でよく音楽は死をイメージする物になりますが、すぐにまた元の調子で終曲になだれ込んでいきます。

SANCTUS サンクトウス
(17)(17)
Sanctus, Sanctus, Sanctus, 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、
Dominus Deus Sabaoth. 万軍の神なる主。
Pleni sunt caeli et terra gloria Tua. 主の栄光は天地に満つ。
(18)(18)
Hosanna in excelsis. 天のいと高きところにホザンナ。
(19)(19)
Benedictus qui venit in nomine Domini. ほむべきかな、主の御名によりて来たる者。
(20)(20)
Hosanna in excelsis. 天のいと高きところにホザンナ。

この部分は司式者がパンと葡萄酒を聖別する前に歌われます。比較的短く作られるのが普通です。

Benedictus の部分はかなり後になって追加された部分で、独立した音楽になっていることが多いようです。

AGNUS DEI アニュス・デイ
(21)(21)
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, 神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、
miserere nobis. われらをあわれみたまえ。
(22)(22)
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, 神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、
miserere nobis. われらをあわれみたまえ。
(23)(23)
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, 神の子羊、世の罪を除きたもう主よ、
Dona nobis pacem.われらに平安を与えたまえ。

聖体拝領直前に歌われる部分です。
Agnus Dei は3回繰り返されるのが伝統ですが、後のミサ曲ではこの回数が少ない物もあります。各節ごとに異なった曲が付くことが多いようです。最後の繰り返しの時には、Dona nobis pacem という句になります。

音楽はmiserere という単語にあわせて、穏やかな曲想の音楽が多いようです。
最後の Dona nobis pacem の後聖体拝領が行われ、ミサの儀式はクライマックスになります。

古典派以降の音楽は多くの場合終曲に向かってがんがん盛り上げて行く造りになっていますが、ミサ曲の場合中央部のグローリアとクレドの部分に盛り上がりがあって、あとなだらかに下降するといった感じになるのが普通ですので、そのつもりで聴いていた方が良いでしょう。


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