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死者のためのミサ

一般にレクイエムと呼ばれる「死者のためのミサ」も、前述のミサとほとんど同じ物です。違っている点はグローリアとクレドが省略されることと、固有文が死者のためのミサ専用の文句に変わること、及び通常文の一部に変更が加わることです。

固有文の一部がいわば「レクイエム通常」になることで、その部分に音楽が付けられるようになります。有名な "Dies irae" はこのためレクイエムに含まれます。

ただし、これは時代・地域によって必ずしも一定していたわけではありません。そのため、全てのレクイエムが以下のような構成になっている保証はありません。
またブラームスのドイツ・レクイエムに代表されるように、レクイエムの名を冠してはいますが実は全然別、という音楽も存在します。

Introitus入祭唱
(1)(1)
Requiem aeternam dona eis, Domine, 主よ永遠の安息を彼らに与え、
et lux perpetua luceat eis.絶えざる光を彼らに照らしたまえ
(2)(2)
Te decet hymnus, Deus, in Sion, 主よ、シオンにて賛歌を捧げ、
et tibi reddetur votum in Jerusalem.エルサレムにて誓いを果たさん、
Exaudi orationem meam, われらが願いを聞き入れたまえ
ad te omnis caro veniet.すべての肉はみもとにまいりまつる
(3)(3)
Requiem aeternam dona eis, Domine, 主よ永遠の安息を彼らに与え、
et lux perpetua luceat eis.絶えざる光を彼らに照らしたまえ

通常ミサ曲では入祭唱の部分は固有文でミサごとに変わるため作曲されることは滅多にありませんが、死者のためのミサ曲では上記の入祭唱を使用することに決まっているので、ここから作曲が始まります。

Te decet hymnus ... という唱句に付けられたアンティフォナが Requiem aeternam ... です。ここから死者のためのミサ曲をレクイエムというようになりました。

Kyrieキリエ
(4)(4)
Kyrie eleison.主よ憐れみたまえ
(5)(5)
Christe eleison.キリストよ憐れみたまえ
(6)(6)
Kyrie eleison. 主よ憐れみたまえ

この部分は通常のミサ曲と同じです。

Sequentia続唱
(7)(7)
Dies irae, dies illa, かの日こそ怒りの日
solvet saeclum in favilla, 世界は灰燼に帰する
teste David cum Sibylla.ダヴィデと巫子の予言のごとく
(8)(8)
Quantus tremor est futurus, 人の恐れはいかばかりであろう?
quando judex est venturus, 審判者が現れて
concta stricte discussurus! 全てが厳かに正される時は。
(9)(9)
Tuba, mirum spargens sonum 妙なるラッパは響きわたる
per sepelcra regionum, すべての国の墳墓の上に
coget omnes ante thronum.すべての人は玉座の前に集められる
(10)(10)
Mors stupebit et nature, 死も自然も驚きに打たれる
cum resurget creatura, すべての人が甦り
judicanti responsura.審判者に答える時には
(11)(11)
Liber scriptus proferetur, 一つの文が差し出される
in quo totum continetur, あらゆることが書き記され
unde mundus judicetur.それによりすべてが裁かれる
(12)(12)
Judex ergo cum sedebit, 審判者が裁きの座に着く時
quidquid latet apparebit, 隠された物もすべて見いだされる
nil inultum remanebit.免れうる物は何もない
(13)(13)
Quid sum miser tunc dicturus? その時哀れなわれは何を言おう?
quem patronum rogaturus, 誰を弁護者と仰ごう?
cum vix justus sit securus? 義人でさえ不安に苛まれる時に
(14)(14)
Rex tremendae majestatis, 恐るべきみいつの大王よ
qui salvandos salvas garatis, 御恵みにおいて救われるべき者を救いたもう者よ
salva me, fons pietatis.われをも救いたまえ、憐れみの泉よ
(15)(15)
Recordare, Jesu pie, 思い出したまえ、慈悲深きキリストよ
quod sum causa tuae viae, 御身の来臨はわれらがためであることを
ne me perdas illa die.それゆえその日もわれを見放したもうな
(16)(16)
Quaerens me, sedisti lassus, 審判の席にてわれを探したまえ
redemisti crucem passus, 我らが購いのため十字架の受難を忍ばれたのであれば
tantus labor non sit cassus.そのみわざを無になしたもうな
(17)(17)
Juste judex ultionis, 厳しき正義の審判者よ
donum fac remissionisわれらに赦しを与えたまえ
ante diem rationis.裁きの日に至る前に
(18)(18)
Ingemisco, tamquam reus, われは罪人のように嘆く
culpa rubet vultus meus, 罪を恥じて顔は赤らむ
supplicanti parce, Deus.主よ、乞い願うわれを赦したまえ
(19)(19)
Qui Mariam absolvisti,主は(マグダラの)マリアを赦したまい
et latronem exaudisti,盗人の願いをも聞き入れられた
mihi quoque spem dedisti.わが上にも希望を与えられた
(20)(20)
Preces meae non sunt dignae,わが祈りはとるに足らずとも
sed tu bonus fac benigne,御身の慈悲をもって
ne perenni cremer igne.われを永遠の劫火より救いたまえ
(21)(21)
Inter oves locum praesta,羊の群にわれを置き
et ab haedis me sequestra,牡山羊の群よりわれを引き離し
stauens in parte dextra.右に立たせたまえ
(22)(22)
Confutatis maledictis,御身の裁きによって呪われた者が
flammis acribus addictis,灼熱の焔にさらされる時に
voca me cum benedictis.われを祝別された者の中に加えたまえ
(23)(23)
Oro supplex et acclinis,われは伏して祈り
cor contritum quasi cinis,心は灰のように砕けて
gere curam mei finis.最期の時の平安を願う
(24)(24)
Lacrimosa dies illa,かの日は涙の日なり
qua resurget ex favilla灰の中より甦りし
judicandus homo reus.罪人達の裁かれる日
(25)(25)
Huic ergo parce,されば主よ、彼らを憐れみたまえ
Deus, pie Jesu Domine,慈悲深き主イエスよ
dona eis requiem.Amen.彼らに永遠の安息を与えたまえ。アーメン

死者のためのミサ曲ではミサの続唱でこの Dies irae を歌うことになっていました。そのためここも固有文ですが作曲されます。

ここがレクイエムのハイライトと言っていいでしょう。
この Dies irae は見て頂ければ分かるように、きっちりと韻を踏んだ詩になっています。実際これは中世カトリックが生んだ最高の文学作品の一つでもあります。

内容は世に言う「最後の審判」の場面の描写ですが、これ以上私がぐだぐだ解説するよりも、ゆっくり読んで頂いた方が良いでしょう。
ここは非常にドラマチックなため、多くの作曲家にインスピレーションを与えました。そのためレクイエムにはたくさんの傑作があります。24節の Lacrimosa の部分でモーツァルトが力尽きたことは、あまりにも有名(っていうか出来過ぎ)な話です。

Offertorium奉献唱
(26)(26)
Domine Jesu Christe, Rex gloriae, 主イエス・キリスト栄光の王よ
libera animas omnium fidelium defunctorum忠実な死者の魂を
de poenis inferni et de profundo lacu:地獄の業火と深き淵より解き放ちたまえ
(27)(27)
libera eas de ore leonis, 彼らを獅子の口より解き放ちたまえ
ne absorbeat eas tartarus, 深淵に呑み込まれぬよう
ne cadant in obscurum:暗闇に呑み込まれぬよう守りたまえ
(28)(28)
sed signifer sanctus Michael 騎手聖ミカエルが
repraesentet eas in lucem sanctam, 彼らを聖なる光に導かんことを
quam olim Abrahae promisisti これぞかつて主がアブラハムとその末裔に
et semini ejus. 約束したもうたこと
(29)(29)
Hostias et preces tibi,われらが捧げまつる
Domine, laudis offerimus: この贄と祈りとを
tu suscipe pro animabus illis, 今日ここに記憶する
quarum hodie memoriam facimus:魂のために受け取りたまえ
(30)(30)
fac eas, Domine, de morte transire ad vitam,主よ、彼らに永遠の生を与えたまえ
quam olim Abrahae promisisti これぞかつて主がアブラハムとその末裔に
et semini ejus. 約束したもうたこと

この部分も固有文ですが死者のためのミサ曲ではこれが汎用に使われるため音楽が付けられます。

Sanctusサンクトゥス
(31)(31)
Sanctus, Sanctus, Sanctus, 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
Dominus Deus Sabaoth!万軍の主なる神は
Pleni sunt coeli et terra gloria tua.天と地は御身の栄光に満たされる
(32)(32)
Hosanna in excelsis. いと高きところにホサンナ
(33)(33)
Benedictus qui venit in nomine Domini.神の御名においてきたる者に祝福あれ
(34)(34)
Hosanna in excelsis. いと高きところにホサンナ

ここはミサ曲のサンクトゥスと同じです。

Agnus Deiアニュス・デイ
(35)(35)
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi,世の罪を除きたもう神の小羊よ
dona eis requiem. 彼らに安息を与えたまえ
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi,世の罪を除きたもう神の小羊よ
dona eis requiem. 彼らに安息を与えたまえ
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi,世の罪を除きたもう神の小羊よ
dona eis requiem sempiternam. 彼らに永遠の安息を与えたまえ

ここは通常文ですが、普通のミサのアニュス・デイとは少し文章が変わっています。
普通では miserere nobis と歌うところが dona eis requiem に変わります。

また最後の Dona nobis pacem はカットされます。

Communio聖体拝領唱
(36)(36)
Lux aeterna luceat eis Domine,主よ、絶えざる光にて彼らを照らしたまえ
cum sanctis tuis in aeternum,御身の聖者達と共に永遠に
quia pius es.慈悲深き主よ
(37)(37)
Requiem aeternam dona eis, Domine,主よ、彼らに永遠の安息を与えたまえ
et lux perpetua luceat eis,絶えざる光にて彼らを照らしたまえ
cum sanctis tuis in aeternum,御身の聖者達と共に永遠に
quia pius es. 慈悲深き主よ

ここも固有文ながらレクイエムでは汎用に使われるので作曲されます。


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