2000-11-04 チェンジ・リーダーの条件、自ら変化をつくりだせ!The
Essential Drucker on Management
現在、八重洲ブックセンターでベストセラー中(5番目くらい)の本です。実はドラッカーの本をきちんと読むのは初めてでした。1909年オーストリア生れで、1943年から企業研究、1969年の断絶の時代(time
of dicontinuity)から91歳の現在まで次々と著作をものにしているのですから、怪物的なエネルギーです。本年7月21日,NHK衛星TVで、21世紀の証言というインタビュー番組に登場でしたが、すごく常識的なまともな人という印象でした。
番組で興味深かったのはNPOの重要性をとき、日本では江戸時代にはNPOが正しく機能していたたが、明治政府が止めさせたと言っていました。「見る為に生まれた」というゲーテのファウストの言葉が好きだそうです。
この本の内容からも、ドラッカーがごくまともな常識人で、時代の流れを適切に読み取り物事を明解に整理している人と思いました。すこし奇麗ごとすぎるのが難点ではしたが。
チェンジ・リーダーの条件、自ら変化をつくりだせ!
The Essential Drucker on Management
著者;P.F.ドラッカー、2000.9.28初版、ダイヤモンド社、1800円、
○企業の目的は一つ、顧客の創造
企業の目的は、それぞれの企業の外部にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客を創造することである。企業には基本的な機能が二つある。それはマーケティングとイノベーションである。成果を生むのはイノベーションだけである。
○年金基金の台頭
年金基金が、支配的な所有者かつ債権者として登場してきたことは経済史上最大の権力構造の変化を意味する。
○もはや投資家ではない
年金基金が米国の株式資本の主たる所有者として登場したのは1970年代の始めである。
○何に焦点を合わせるか
マネージメントのセミナーでよく取り上げられる話に、何をしているのかを聞かれた3人の石工の話がある。最初の一人は「これで食べている」と答え、次の一人は「国で一番の仕事をしている」と答え、最後のひとりは「教会を建てている」と答える。勿論、第三の男があるべき姿である。第一の男は一応の仕事をする。報酬に見合った仕事をする。問題は第二の男である。職人気質は重要である。しかし一流の職人や専門家には単に石を磨いたり、瑣末な脚注を集めたりしているにすぎないかもしれず、何かを成し遂げていると思い込む危険がある。
○人事には姿勢が現れる
昔から知られているように、組織の人間というものは他の者がどのように報われるのを見て、自らの態度と行動をきめる。従って、仕事よりも追従のうまい者が昇進していくのであれば、組織そのものが、業績の上がらない追従の世界となっていく。公正な人事のために全力を尽くさないトップマネージメントは組織の業績を損なうリスクを冒すだけではない。組織そのものへの敬意を損なう危険を冒していることになる。
○創業者はいかに貢献できるか
ポラロイドの発明者エデウィン・ランドは1950年代の始め頃まで、すなわち会社創立直後の12ー15年間は自らマネージメントにあたっていた。しかし会社が急成長を始めた後はトップのチームをつくってマネージメントを任せた。自分はマネージメントの仕事は向かなと判断していた。貢献できるのは科学的なイノベーションだった。そこで自らを研究者と位置づけ、基礎研究担当の相談役になった。
マクドナルドを構想し、創業したレイ・クロックも同じ結論に達した。彼は80歳をすぎて他界するまで社長をしていた。しかし、日常の業務はトップのチームに任せ、彼自身は「マーケティングの良心」の役割を果たした。他界する直前まで、毎週自分の店を2、3軒訪れ、清潔度や親しみ易さを点検していた。顧客を観察し、話し掛け耳を傾けた。こうして、マクドナルドは少なくとも彼がなくなるまでは、ファーストフード業界のトップを維持するうえで必要な変革を行い続けることが出来た。
Part-1 マネージメントとは何か
1章マネージメントは理解されていない
現代社会における不可欠の存在・経済発展を支える鍵・マネージメントは理解されていない
2章社会的機能及び一般教養としてのマネージメント
成功がもたらした問題・知識を生産資源に変える・教育訓練がもたらした大変化・知識を仕事に適用する・マネージメントと起業家精神はコインの表裏・マネージメントが直面する問題・マネージメントとは何か・マネージメントは人間学である
Part-2 マネージメントの課題
1章マネージメントの役割とは何か
果たすべき3つの役割・組織の使命を果たす・働く人を生かす・社会的責任を果たす
2章われわれの事業は何か
利益と社会貢献は矛盾しない・企業の目的は1つー顧客の創造・顧客から出発せよ・新しい経済満足を生み出す・我々の事業は何か・顧客は誰か・我々の事業は何になるか・何を廃棄するか・目標を具体化する・マーケティングの目標・イノベーションの目標・経営資源の目標・生産性の目標・社会的責任の目標・利益の目標
3章事業を定義する
もはや前提が時代遅れだ・IBMが直面した現実・GMはなぜ失敗したのか・現実が前提を変えてしまった・成長市場を無視したツケ・事業の定義・4つの条件・定義は必ず陳腐化する・問題を早期に発見する・予期せぬ成功と失敗・定義を見直す
4章NPOは企業に何を教えるか
もっとも進んだマネージメント・組織の使命からスタートする・成果に焦点を合わせる・取締役会の手本とすべき理事会・無給だからこそ満足を求める・無給スタッフが必要とするもの・やりがいの問題ー企業への警告
Part-3 マネージメントの責任
1章企業の所有者が変わった
年金基金の台頭・もはや投資家ではない・成果と仕事に対する責任・利害当事者のためのマネージメント・株主のためのマネージメント・「富の創出能力」を最大化する・マネージメントの仕事ぶりを評価する
2章いかにして社会的責任を果たすか
組織の存在理由・社会に与える影響に対する責任・いかにして対処するか・社会の問題を機会に変える・社会的責任の限界・権限の限界を知る・組織が果たすべき最大の貢献・プロフェッショナルの倫理・知りながら害をなすな
Part-4 マネージメントの基礎知識
1章マネージメントの常識が変わった
パラダイムは不変ではない・マネージメントは企業だけのものか・組織の正しい構造は1つか・人をマネージメントする正しい方法は1つか・技術と市場とニーズは不可分か・マネージメントの範囲は法的に規定されるのか・マネージメントの対象は国内にかぎられるか・マネージメントの世界は組織の内部にあるのか
2章「道具としての情報」を使いこなす
企業のコンセプトが変わった・原価計算から成果管理へ・経済連鎖全体のコストを管理する・価格主導のコスト管理が不可欠・富を創出するための情報・基礎情報・生産性情報・卓越性情報・資金情報と人材情報・企業の成果はどこにあるか・情報を1つのシステムに統合する
3章目標と自己管理によるマネージメント
何に焦点を合わせるか・方向づけを間違えるおそれ・何を目標とすべきか・キャンペーンによるマネージメントは失敗する・1人ひとりの目標を明らかにする・自己管理によるマネージメントに必要なもの・報告と手続きに支配されるな・個人の目標と全体の利益を調和させる原理
4章人事の原則
一流の人事はどこが違うか・共通する4つの原則・踏むべき手順・失敗したらどうするか・人事には姿勢が現れる
5章同族企業のマネージメント
生き残りを左右する原則・できの悪いものは働かせるな・トップマネージメントに一族以外からも採用せよ・専門的な地位には一族以外の者も必要・適切な仲裁人を外部に用意せよ。
Part-5 起業家精神のマネージメント
1章予測できないことを起す
明日をつくるために今日何をすべきか・すでに起こった未来を探せ・どこに未来を探すか・新しい現実が見える・ビジョンを実現する・天才の創造性はいらない・未来において何かを起す責任
2章既存の企業がイノベーションに成功する条件
大企業はイノベーションを生まないは本当か・起業家精神が生まれる構造・新しい事業をおろそかにしない方法・起業家マネージメントにおけるタブー
3章ベンチャーのマネージメント
成功のための4つの原則・つねに市場中心で考える・財務上の見通しを立てておく・トップチームを構築する・創業者はいかに貢献できるか・自分の得意、不得意を考える・相談相手をもつ
4章起業家がとるべき戦略
4つの戦略・総力戦略ー市場の支配を目指す・創造的模倣戦略ーゲリラ戦略1)・柔道戦略ーゲリラ戦略2)・新規参入者に市場を奪われる原因ー5つの悪癖・関所戦略ーニッチ戦略1)・専門技術戦略ーニッチ戦略2)・専門市場戦略ーニッチ戦略3)・効用戦略ー顧客創造戦略1)・価格戦略ー顧客創造戦略2)・事情戦略ー顧客創造戦略3)・価格戦略ー顧客創造戦略4)
付章イノベーションか、廃業か、金融サービス業の岐路
なぜシティは再興できたか・金融サービス業は生れ変わった・新たなイノベーションが急務・30年間の空白・とるべき道は3つしかない・新しい金融サービスは可能か