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「経済の現論、この先にある経済」藤原直哉、1996.6.11初版、フォレスト出発株式会社、1600円

90円本コーナーで見つけたマイナーな経済本です。4年前の本ですから、当時の予測がどれだけ当たったかですが、日本については、大銀行が破綻するなどそれなりにあたっていますが米国につては、当時はNYの株が5000ドル、現在は1万ドルですから、崩壊の予測は外れています。現場に足を置いた人らしい話が種々ありました。

○貧富の差を拡大する新ソフト産業
新ソフト産業の勃興が米国経済の活性化をもたらしているといえそうです。ソフトウエア、エンターテインメント、金融という3つの産業に共通する特徴は、本 当に会社の収益に貢献するのは一握りの優秀な人達だけだということです。
これらの産業は、一握りの天才とそれを補助する人々という形で雇用構造が成り立っているのです。その結果、一握りの優秀な人々がとんでもなく高い収入を得られる一方で、その他大勢の補助者は大した収入は得られないことになります。
私がかって5.5年在籍したソロモン・ブラザーズでは、働く人々は大きく3つの階層に分けられ、その収入格差は幾何級数的なものになっていました。
第一の階層はボードメンバー(取締役)で、取締役といっても日本 の銀行や証券会社のように数十人もいるのではなく、会長、社長、副会長などとせいぜい、数人のメンバーで構成で年収は1000万ドル、つまり10億円を超えています。
第二の階層は、マネージング・ディレクターとバイス・プレジデントで日本の企業体系では部長、課長、係長などに相当します。このクラスの年俸は20万ドルが最低ですが、業績に応じたボーナスが支給されますので、年収ベースでは30万ドル、3000万円になります。
第三の階層は、はっきりいって雑用係です。ソロモン・ブラザー ズではノン・プロフェッショナルと呼んでいました。大部分は5万ドル以下の年収です。
新ソフト産業では、日本の大企業のように、大多数のホワイトカラーの年収が1000万円前後に集中するという、比較的、平等な賃金体系は全く存在していません。

藤原直哉;
1960年東京都生れ、83年東大経済卒、住友電工入社、2年後経済企画庁経済研究所出向、その後、87年にソロモン・ブラザー ズ・アジア証券会社東京支店に入社、投資戦略調査部で株主・債権の数理分析に従事。現在は牛之宮社長

第1章近代国家「最後の晩餐」の時、インターネット、電子マネー、そしてゴールド
自分への投資を始めた日本のサラーリーマン、労働力の国際競争時代が始まっている、真面目さが裏切られる時代、インターネットに登場した電子マネー、通貨の自由競争時代、ネットワーク・犯罪者・各国政府の三つ巴、政府は賢い人々で組織されているか、非常時の通貨「金」、信用だけがものをいう金ビジネス、見直される非常時の国スイス、「最後の晩餐」の前にたって

第2章日本経済の禍根、住専問題があぶり出した無責任経済システム
住専の不良債権は氷山の一角、追い貸しで隠している本当の不良債権は約200兆円、破綻した在来型の問題処理手法、日住金母体行会議の惨状1993.2.26、

第3章なぜ日本は罪を犯したのか、必然であった大和銀行事件
銀行の不勉強が金融犯罪を生んだ、不良外人に食い物にされる日系金融機関、米国当局の金融犯罪に対する厳しさ、FRBが邦銀を援助する謎、FRBが守ったドル還流ルート、

第4章この先にある日本、金融システム「玉砕への道」
三重野総裁発言の重大部分、貯金保険機構の玉砕と日銀特融歩兵の突撃に終始した金融機関

第5章超大国アメリカの命運、企業栄えて、国滅ぶ
米国の株高2つの理由、貧富の差を拡大する新ソフト産業、国破れて米国企業の繁栄、無国籍化する民間企業、市場が国家を判定する

第6章新たなる「歴史」の始まり、バーチャル革命がもたらす無国籍経済時代
金本位制復帰は米国を救うか、不可能な1/4金本位制、米国が超大国でなくなる可能性、枯渇する日本からのドル還流ルート、無国籍企業は普遍的価値を提供する、無国籍経済時代に国家はどう生き残るか、世界に接近する道具としての英語