城あれこれ

 長年にわたる東京暮らしから、平成11年9月に福井の地に赴任し、その後名古屋、岡山、再びの名古屋と異動を重ねているが、この間、妙に城との係わりが続いている。ちなみに故郷は信州松本で、この地には松本城があり、アルプスを背景に立つその姿は故郷の風景の一つとして心象に焼き付けられている。

福井の地では、一筆啓上「お仙泣かすな馬肥やせ」で知られ、現存天守閣の中で最古の遺構とされる丸岡城、大野市の亀山丘陵に聳える越前大野城を訪れる機会を得た。また、大阪に会議で出かけた折には、大阪城周辺をよく散策した。

次の赴任地名古屋では宿舎からそう離れていない所に名古屋城があり、お隣の岐阜を訪れた際には木曽川を眼下に見下ろす断崖に立ち景観がすばらしい犬山城(別名「白帝城」)、金華山頂に立つ岐阜城(古くは稲葉山城)、また、郡上八幡の八幡城等を訪ね、周りの景観とともに皆それぞれに印象深い。

岡山の地では、岡山城(烏城)、四季折々花がすばらしい津山城址、さらには温羅伝説で知られる古代鬼の城も訪れた。高梁市在の備前松山城は改築後、訪れたが時間の関係で見ずに終わっている。

昭和20年頃には国宝指定された城は22あったそうだが、その多くが戦災等により失われ、現在、国宝に指定されている城は、松本城、犬山城、彦根城、姫路城の4城だけである。前出の丸岡城、名古屋城、岡山城もかつては国宝指定されていたが、丸岡城は福井大震災で倒壊、他2城は戦災で天守を失い、指定を解かれている。岡山にいた折、日生に牡蠣を買いに行ったついでに、足を延ばして姫路に赴き、白鷺城を訪ねた。さすが世界遺産に指定されているだけに見応えがあった。余談になるが、天守閣でたまたま宮本武蔵が三年の間幽閉されていたという開かずの間が公開されていた。当時、武蔵生誕の地とされる岡山の大原町では、TVドラマの放映にあわせ観光客誘致のためのキャンペーンが賑やかに展開されていた。   

再び名古屋に赴任し、近江八幡に好物の鮒寿司を食べに行った折に、国宝4城の残りの一つ、彦根城に立ち寄った。夕暮れ時ではあったが、その凛とした姿に接し、感慨深いものがあった。このように赴任先で多くの名城に接したことは偶然とは言え何やら縁めいたものを感じ、いい想い出を作ってくれたそれぞれの地に感謝する次第である。

                                     
      (彦根城)         (姫路城)

                                                                                                                         

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