龍神シリーズ・小話集

 

1.千尋の災難 おまけ   

 「内緒のお話」   

(拍手用小話1を加筆修正)

 

コトン。

顔をあげると、ちょうど玉がお盆を持って、

台所に戻ってきたところだった。

「ご苦労様、お食事お届けしてきた?」

声をかけると 玉は黙って頷く。

そうして、小さなため息の後、徐に聞いてきた。

「ねえ、由良、お二人で閨に篭られて何日たつ?」

ん、と 心の中で指折り数えて、驚いた。

「・・・・5日目かな・・・・」

はぁ〜

今度のため息はシンクロした。

「ちー様大丈夫かなぁ。」

さすがに心配になって、思わず玉に聞くと、

顔をしかめながら、

「主様、あのシャクジンの件でぶち切れていたからなぁ。」

そんなことを言う玉にますます心配になる。

 

ちー様のいやがることは

なさらないって言ったの玉のくせに。

 

「ちー様は悪くない。ちー様を守れなかった

僕たちの力不足のせいなのに。」

「・・・んなことは分かった上でのことなのだろうけどね。」

その答えにもう一回ため息をつくと、

「お湯殿のお支度してくるね。」

そう言って、玉を残して台所からでた。

閨でお食事を取った後、ちー様を抱えて、

湯殿にいらっしゃるのが、パターンなのだ。

その後、また閨に逆戻りだけれど・・・

もしかしたら、今日こそ、ちー様のお顔を見られるかもしれない。

 

うわっ、て、ぁぃったたっ!

 

「おまっ、大丈夫か?」

いきなり、脇にドスンっと落っこちてきた僕をみて、玉が叫んだ。

「うん。ちー様が心配で、湯殿を覗こうとしたら、術で飛ばされちゃった。」

腰をさすりながら、情けない顔で言うと、玉は顔を顰める。

「で、お会いできたのか?」

首を振ると、玉もこめかみを押さえながら首を振った。

「あきらめろ。主様がお飽きになるのを待つしかない。」

 

双子の木霊は顔を見合わせ、盛大なため息を吐いたのだった。

 

ちゃんちゃん

 

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うふっ。掲示板にも書きましたがこの後、由良ちゃんのことを

心配した千尋がはくを振り切って台所にきて、無事おこもりが

終わりました。で、とばっちりとシャクジンの件の罰をかねて

木霊ちゃんたちは姿を現わすことを禁じられてしまいました。

そんな状況で、第2部2章華燭の宴につながっていきます。

地の神様のお取り成しがなかったら、今でも遁行させられて

いたかも。ちーちゃんのお気に入りは、主様にとって、お気に

入りとは限らないのだ。守りについたり身の回りの世話をした

りは、別に姿を現さなくてもできることだしね。独占欲の塊の

主に仕えるのはた〜いへん!