望遠鏡操作ガイド〜赤道儀編

 初心者にとって重大な問題が「赤道儀(せきどうぎ)の使い方」です。


 機能美に満ちた格好良さみたいなものにつられて、赤道儀を買おうかと思っているのに、「使い方がよくわからない」という人も多いのではないでしょうか?

 買えば(よほど不親切なメーカーでない限り)説明書は付いてきますから、扱い方はそれに書いてありますが、買うまでわからないというのも不安です。

 また、「本格的にやるなら赤道儀」とは言いますが、実際、どう扱うものかを知らないで買うのも何ですので。

 それに、天文ファンの人なんて、そんなに身近にいませんし。


2005/06/19
●赤道儀とは

 赤道儀とは、日周運動で動く天体の動きに合わせて星を追尾できるようにした、天体専用の架台のことです。
 星を安定して追尾できることに主眼を置いた装置ですので、一般に頑丈で重く、使う前にセッティングも必要なので、手軽さという面では経緯台に劣ります。
 多少の操作の難しさは覚悟してください。


 また、見ての通り、バランスをとるための「重り」が付いていて、それだけでも結構な重さになります。天体写真を撮るためにカメラを載せたりすることが多いのですが、ネジのしめ忘れなどがあるとバランスが崩れて倒れたり、ケガをしたりすることがあります。

 また、強い荷重が加わると微小なガタが生まれてしまい、精度に影響が出ることがあります。一度ガタが発生すると二度ととれません。
 操作は慎重に行ってください


2005/06/19
●経緯台の問題点

 実際に望遠鏡をのぞくとわかりますが、望遠鏡を固定していると、星はゆっくり動いていき、ほんの数分で視界の外にズレて見えなくなります。




 このため、経緯台で長時間じっくりと観察を続けたい場合は絶えず高度軸と方位軸の2つの軸を微動ハンドルで調節しながら追いかける必要があります。
 微動装置がない場合、せっかく導入したのに、また導入しなければならなくなります。経緯台を選ぶ場合、必ず微動装置付きのものを購入してください。


 一番困るのが写真撮影をする場合で、天体は非常に淡いので何分もの長時間露出を行うことになりますが、経緯台の場合は高度・方位・視野回転の3軸制御となり、非常に面倒な話になります。

 そこで、星を長時間追跡できることに主眼を置いて設計された架台が赤道儀です。

 何分もの長時間露出をして作られる、いわゆる天体写真は、赤道儀でないと撮ることができません。

 最近の天文台で使われる大型の望遠鏡は経緯台式が多くなっています。

 たとえば、すばる望遠鏡も、形式的には経緯台です。大型の望遠鏡を作る上で経緯台の方が構造的に安定しているからです。

 経緯台は構造的に安定する代わり、視野回転が起きてしまうため、そのままでは写真撮影ができません。そこで、コンピュータ制御によって高度・方位・視野回転の3軸制御を行って、赤道儀と同様に扱えるようになっています。



2007/09/23
●赤道儀の基本

 赤道儀という架台は複雑に見えますが、仕組みは至って単純です。
 回転軸は、経緯台と同様、2軸しかありません。



 空に見える天体は北極星(正しくは天の北極)を中心に1日1回っているように見えますから、その動きに合わせられるように、架台の回転軸を地球の自転軸に合わせて傾けたものが赤道儀です。

 定義はそれだけですので、軸の配置のしかたで赤道儀には、様々なタイプがあります。(あえて言いませんので、調べるか本を買ってください。) ちなみに、写真のような格好の赤道儀はドイツ式と言います。

 さて、「地球の自転軸に合わせてある軸」のことを極軸(きょくじく)と言い、この軸は天の北極に向けて固定します。

 図のように赤道儀がセッティングされていた場合、左側の方向が北になります。

 また、極軸の傾きの大きさは、そこの地域の緯度と同じ角度にします。


2005/06/19
●天球の緯度と経度

天球には地球の緯度経度と同じような座標があります。

 緯度(南北方向)に当たるのが赤緯(せきい)
 経度(東西方向)に当たるのが赤経(せきけい/せっけい)
です。
 地球上の位置は、必ず緯度と経度で表すことができますが、それと同じように、星の位置は赤緯と赤経で表します。

 「結婚の記念に二人の星をプレゼント」とか言って、名もない星に名前を付けて登録するような制度があったりします。
 (元々)名前がなくても星の場所を特定できるのは、緯度と経度のような座標があるからです。肉眼では見えないような星も、座標(赤緯、赤経)で表されているので、その座標を頼りに探すこともできます。

 赤道儀は、この座標に沿って動くようにしてあります。




 地球の回転に合わせて動く(天の東西に沿って動く)赤経軸
 それに直交する軸で動く(天の南北に沿って動く)赤緯軸
の2つの軸で見る方向を決めるわけです。

 そして、星を導入したら、赤経軸だけを星の動き(日周運動)に合わせてゆっくり回転させればOKというわけです。


2005/06/19
●見たい方向に向けるには

 極軸部の方向と高さは、観測する場所から見える天の北極にあわせて固定してしまうので、一度セッティングしたら動かしません。

 あとは、赤緯軸と赤経軸を回転させて望遠鏡を見たい方向に向けます。

 たとえば、天頂を見る場合は、このような格好になります。


 ↓これは月や惑星が地平線から昇ってきて3時間程度の頃、南東の方向に向けた場合です。


 ↓それからさらに3時間ぐらい経過して、ほぼ南中したときの姿勢です。



 カタログ写真と全然違う格好になってますね。

 軸が傾いているので導入するのは(経緯台と比べて)やや扱いにくい感じはありますが、「星が日周運動で動いていく方向と、それに直交する方向の軸で調整する」という感覚が身に付けば、それほどでもありません。


 なお、ドイツ式赤道儀には、望遠鏡を西側に置くポジションと東側に置くポジションがあります。

 望遠鏡を西側に配置することをテレスコープウエスト
 望遠鏡を東側に配置することをテレスコープイースト

と言います。

テレスコープイースト。

 もっとも、東側の天体を見る場合は、テレスコープウエストに、西側の天体を見る場合はテレスコープイーストの姿勢になるので、改めて言うまでもありませんね。
 ということで、この用語、使ったことがありません。


2006/11/19

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