極軸望遠鏡に頼らない極軸調整(その1)

●極軸望遠鏡が使えない!

 赤道儀に極軸望遠鏡が付いていれば、それで極軸を合わせればいいのですが、ウチの場合は、庭から空を見ると家が邪魔で北極星が見えません。
 マンション住まいのベランダ観測派と同じ状況です。
 北極星が見える場所でも、日中の太陽の現象や、夕方すぐの現象の場合、北極星自体が見えません。

 そんなときにも赤道儀を使うからには極軸は合わせておかなければなりません。多少いい加減な設定になりますが、方位磁針と水準器を使ってのセッティング方法を紹介しましょう。


2005/12/20
●極軸高度の調整

 極軸を回転させて赤緯軸を水平にし、赤緯軸の目盛りを現在位置の緯度に合わせます。

 極軸が正しくセッティングされていれば、望遠鏡は鉛直方向を示すはずです。


 もし、南北に傾いているようなら、水準器を使って鏡筒が垂直になるように極軸の高度を調整します。


2006/01/04
●方位の調整

 星が見えないのならば、方位合わせは、方位磁針に頼らざるを得ません。
 使用する方位磁針は、正確に:なるべくならば±1度以内の精度で正確に方向を割り出せるタイプが適切です。また、針がふらふらしないように、オイル式がいいでしょう。

 となれば、定規と一体になっている、オリエンテーリング用のコンパスが適切です。
 …ということで、買ってきました。2,100円。


 方位磁針が向いている方向がやや西向きに回転させてありますが、これは「偏角補正」を行っているためです。

 実際の北と、方位磁針が示す北(磁北)は違います。この差を偏角といいます。偏角の詳しい値は理科年表などで確認していただくとして、関東〜東北地方の場合、西側に7度程度傾いています。

 これで、方位磁針で北を示せば、コンパス本体の定規部分も真の北を示します。
 これで、北の方向を最悪を見積もっても±2度程度の精度で合わせられるでしょう。…赤道儀近辺の磁場が狂っていなければ。


2005/12/20
●実践編 Step1 三脚の設置

 三脚を設置します。
 三脚台座に水準器を乗せて、三脚の足の長さを調整し、水平を出しておきます。


2005/12/20
●Step2 方位の調整

 次に、コンパスを押し当てて、北の方向を確かめます。



 実際には三脚を止めるボルトなどが帯磁していて、若干の狂いを生じるのですが、赤道儀本体の調整はまたあとで行うので、多少の狂いは気にしないことにします。


2005/12/20
●Step3 水平の確認

 赤道儀を乗せ、水平を確認します。



 ※画面左が北です。
 画像をよく見るとズレてますが、底から固定するネジを締めていないので、前方につんのめっているためです。
 Step1で水平出しをしていれば、まずズレていません。

 どうしても三脚設置時の水準器が示す平面と、赤道儀内蔵の水準器が示す平面にズレが生じる場合は、どちらかの水準器の結果を信頼してください。
 三脚台座は、完全に水平に設置されている必要はなく、水平に近ければ多少傾いても構いません。
 むしろ、水平から多少傾いた設置になったとしても再現性が高い方が望ましいからです。


2005/12/20
●Step4 極軸高度の調整

 望遠鏡を乗せ、バランスをとります。

 次に、極軸を回転させて赤緯軸を水平にし、赤緯軸の目盛りを現在位置の緯度に合わせます。

 たとえば、ここ水沢は、北緯39度8分なので、赤緯39度0分に合わせます。(このSP-DX赤道儀では、バーニアを使っても20分刻みでしか読めないので、39度0分で近似します。一般には2度刻みが多いので、目測で赤緯39度に合わせます。)



 極軸が正しくセッティングされていれば、望遠鏡は鉛直方向を示すはずです。
 水準器を使って鏡筒が垂直になるように極軸の高度を調整します。



一般に市販されている水準器の精度は、±2.5mm/mです。(1mあたり0.5mm以上傾いているのを検出できる感度があります。)
 角度にして±0.0143度。(±0.859分、±51.6秒)という精度です。
 (ホームセンター等で、建築用を購入しましょう。カメラ屋にあるカメラや三脚の水平出し用の水準器は、ワンランク精度が落ちたり、感度や精度を明示していない場合があります。)

 一方、赤道儀の赤緯目盛りの刻みは、2度単位ということが多く、目測でも0.5度(30分)までしか読み取れません。
 例題に使っているSP-DX赤道儀の場合は、バーニア(副尺)が付いていて赤緯軸については1/4度(25分)までは読み取れますが、それでも水準器の検出感度には及びません。
 したがって、水準器を使った極軸高度の調整精度は、赤緯軸目盛りの読み取り精度に依存します。



2006/01/04
●ところで、赤緯目盛りは合ってますか?

 高度調整は赤緯軸の目盛り読み取り精度に依存します。
 したがって、そもそも赤緯軸の目盛りが正確な角度を示していなければなりません。

 そこで、Step4 をテレスコープウェスト(望遠鏡を西側に配置するポジション)と、テレスコープイースト(望遠鏡を東側に配置するポジション)で交互に行います。


テレスコープウェスト



テレスコープイースト

(赤経ハンドルに赤緯ハンドルが当たらないように、あえて赤緯ハンドルを逆に取り付けてあります。)

 通常、どちらも同じ結果になるはずですが、違う結果になった場合は目盛り環がどちらかに回転しています。
 (目盛り環が正確でも、赤緯軸が正確に水平になっていないと、違う結果になります。赤緯軸は正しく水平にして、目盛りを見てください。)
 目盛り環がズレていると、たとえば、テレスコープイーストで緯度合わせを行い、テレスコープウェストにしたとき、望遠鏡が南北のどちらかに傾きます。その傾きの半分だけ目盛り環がズレていますので、目盛り環をズレた量の半分だけ回してもう一度緯度合わせを行います。これを数回繰り返せば、目盛り環を正確に設定できます。


2005/12/20
●Step5 方位の調整

 続いて、方位の調整を行います。今度は、赤緯軸を垂直にして、目盛りを90度に合わせます。
 この状態で鏡筒が北向きになるよう、方位磁針で確認し、方位調整を行います。

 赤道儀には材料として鉄が使われている(回転軸の芯、バランスウェイトなど)ので、場所によっては鉄の影響を受けて方位磁針が正しく磁北を示さないことがあります。

 方位磁針を赤道儀から離した状態で北を確認し、帯磁した鉄材の影響を受けない場所を探します。

 私のSP-DX赤道儀の場合は、望遠鏡を外して、取り付け部に方位磁針を押し当てるスタイルが、一番帯磁した鉄材の影響を受けにくく、北向きを確認しやすいようです。


 どこで方位確認するのが良いかは、赤道儀のタイプにもよりますので、各自で工夫してください。


 方位磁針による方位の確認精度は、オリエンテーリング用を使って偏角補正をしているとは言え、方位磁針自体が小さい、精密な読み取りがしにくい、周囲の磁場の影響を受けるなどの要因で、あまり高い精度は維持できません。下手をすれば2度以上ズレる可能性があります。その辺は覚悟してください。

 もし、夜であれば(昼に太陽を観測するのでなければ)恒星を使ってもう少し正確に合わせることをお勧めします。
 方位磁針による設定でも、±2度程度までの精度では合わせられると思いますので、恒星を使ってさらに精密に追い込みます。



2005/12/20

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