倍率の確認

●倍率の確認

 天体望遠鏡の接眼レンズそのものには倍率は書いてありません

 接眼レンズには、「Or.6mm」「H.M12.5mm」「PLOSSLE 40mm」という具合に、レンズの形式の種類(Orなど)と焦点距離(6mm)が書いてあります。



 顕微鏡の接眼レンズも同じでしたね。接眼レンズそのものの倍率は書いてありますが、全体の倍率は書いてありません。
 顕微鏡では

  倍率=対物レンズの倍率×接眼レンズの倍率

で求めますが、天体望遠鏡も同様に、改めて倍率を計算しなければなりません。

 天体望遠鏡の倍率は、

  倍率=対物レンズ(対物鏡)の焦点距離÷接眼レンズの焦点距離

で求めます。


 どうしてそういう式になるかの導出方法は、(少し難しいですが)こちら


2014/07/21
●倍率を求めてみる

 たとえば、対物レンズの焦点距離が1000mmで、使用する接眼レンズが15mmであれば、

 1000mm÷15mm=66.66…

 となり、小数点以下1桁で四捨五入して67倍となります。(接眼レンズの焦点距離の精度自体が10%程度あるそうなので、「66.7倍」とかいう細かい倍率の数字にしてもあまり意味はありません。)

 倍率は、接眼レンズの焦点距離に反比例します。つまり、接眼レンズの焦点距離が短いほど倍率が高いということです。

 うーんと倍率を出したければ、焦点距離がうーんと焦点距離の短いレンズを使えばいいということですね。


2006/06/18
●接眼レンズに倍率を書いていないワケ

 顕微鏡は、対物レンズを交換できるので、改めて計算しないといけないというのは理解できますが、天体望遠鏡は、対物レンズを交換できません。接眼レンズ自体に(全体で)「50倍」とか倍率を書いても良さそうなものです。

 そうなっていない理由は、望遠鏡本体が違えば同じ接眼レンズを使っても倍率が変わってしまうからです。


 ↑望遠鏡が違えば全長(≒対物レンズの焦点距離)が違う

 逆に言えば、接眼レンズは、その望遠鏡の専用品ではなく、他の望遠鏡にも流用できます。

 将来、別の望遠鏡を買ったときにも、付属している接眼レンズを使うことができますし、接眼レンズを買い足せば、別の倍率にすることもできます。

 フィールドスコープでは、接眼レンズに全体の倍率が書いてありますので、50倍の接眼レンズを付けることで50倍で見ることができます。
 これは、(同じメーカーの同じシリーズで)対物レンズの焦点距離をすべて同じにそろえてあるためです。違うメーカーでは対物レンズの焦点距離が違う可能性があり、表記通りの倍率になりません。
 それ以前に、取り付け面の規格が違うので、他メーカーの接眼レンズは取り付けられませんが…。
 その辺が、フィールドスコープのちょっと不便なところです。



2006/02/16
●接眼レンズの規格

 天体望遠鏡の接眼レンズの差し込む部分の直径の大きさは、一定の規格で作られています。


 いくつか種類があるのですが、手前に並んでいる小さいのがツァイスサイズ(24.5mm径)、奥の左側の2本がアメリカンサイズ(31.7mm径)、右端の黒いのが36.4mmP1ネジ込み式、奥の中央にある巨大なのが2インチサイズ(50.8mm径)です。

 
通称
24.5mmツァイスサイズ。最近は見かけない。
31.7mmアメリカンサイズ。(1.25インチ) 最近の主流。
36.4mmP1ネジ込み式。"P1" は、ネジ山のピッチが1mmということ。
最近は見かけない。
36.4mmP0.75ネジ込み式。ネジ山のピッチが0.75mmのもの。
一部のメーカーで採用。
最近は見かけない。
50.8mm2インチサイズ(これもアメリカンサイズ。)


 ちなみに、顕微鏡の接眼レンズは23.2mm径、双眼用で30.0mm径です。設計が違うので望遠鏡には使えません。望遠鏡/双眼鏡相互に使えるようにするアダプタも存在しません。
 でも、どうしても流用したいという場合は、0.5mm厚のプラ板をはさむなど、径を調整してください。

 顕微鏡の接眼レンズを焦点距離に換算する場合、

  焦点距離=250mm÷接眼レンズの倍率

という性質の接眼レンズになります。意外と良く見えたりしますけどね。(汗)



2017/10/20
●倍率にも限度がある

 倍率が上がるということは、小さな範囲をより大きく引き延ばすことになるので、光量が減っていきます。つまり、倍率が高いほど暗くなります。
 むやみに倍率を上げても、暗くなるだけです。

 また、ある程度以上は、倍率を上げても詳細に見分けられなくなります。これは、光が波の性質を持つからなのですが、その限界倍率は、おおむね口径をmmで表した倍率(口径60mmなら60倍、口径100mmなら100倍)あたりまでです。無理してもその2倍から2.5倍(口径60mmなら120〜150倍、口径100mmなら200〜250倍)が限度です。

 望遠鏡を選ぶ時、何倍出せる望遠鏡なのかは関係ありません。なぜなら対物レンズ(対物鏡)の直径で最高倍率が決まってしまうのです。

 また、日本は島国ということもあり、気流の状態が年間通してあまり良くありません。250倍、300倍といった高い倍率に耐えられる気流状態になるのは年に数回しかなく、あまり高い倍率にこだわってもしかたありません。


2006/02/17

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