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どうせ2〜3万円で天体望遠鏡を買うつもりなら、双眼鏡の方が圧倒的に高性能です。倍率は低いですが、正立だし、両目で見られます。 星空散歩には最適。 でも、たぶん、最初に買わないと思います。 だって、天体望遠鏡の方がかっこいいもんね。 2006/05/19
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天体望遠鏡は家になくても、双眼鏡って、案外あるものです。 でも、家にある双眼鏡って、口径が小さくてイマイチ天体向けでなかったりします。 という訳で、"2台目の望遠鏡" として双眼鏡選びです。 内容は、少し高度にしてあります。 2006/05/20
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まず、ひとみ径を決めます。
天体は、対象が暗いので、明るい(=ひとみ径の大きな)双眼鏡を選びます。 人間の瞳孔は暗闇で最大で7mmまで開くことになっているので、天体観測向け双眼鏡と言うと、ひとみ径が7mmになるものが選ばれます。 たとえば、7倍50mm、8倍56mm、10倍70mmなどです。 しかし、日本の空の実情から言うとひとみ径が7mmになるような空はほとんど期待できません。ふと地面に目をやると、網膜が視野リングの分だけ丸く明順応している事すらあります。 むしろ、少々高めの倍率にした方が、背景がぐっと暗く締まって星が見やすくなります。 また、7倍50mmは、瞳孔が7mmに開いて初めて本来の性能が出ます。瞳孔がそこまで開かないとすれば、無駄に大きくて重いだけの双眼鏡になってしまいます。 たとえば、昼間の明るい場所のとき、瞳孔は3mm程度しか開いていません。 計算すればわかるように、ひとみ径と倍率で有効口径が決まります。 瞳孔径が3mmで、7倍のとき、有効口径は21mm。 つまり、昼間の場合(瞳孔が3mm程度のとき)は、7倍50mm(標準サイズで約1kg)も7倍21mm(8倍25mm程度で200〜300g)も基本的に同じ性能になります。 口径の持つ性能を充分発揮するためにも、天体観測向け双眼鏡とするならば、ひとみ径は大きくても5mm程度までのものを選びたいところです。 計算式を変形して、ひとみ径に5mmを代入すると、(実際その商品が存在するかは別にして) ・6倍30mm ・7倍35mm ・8倍40mm ・9倍45mm ・10倍50mm ・12倍60mm ・14倍70mm ・16倍80mm といった仕様の双眼鏡から選ぶことになります。
2006/06/07
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双眼鏡は「気になる対象があったら(最もシャープな)視野の中央に持ってきて観察するので、周辺部の像質はどうでもよい」という考え方で作られているようです。 双眼鏡で景色を眺めたとき、どこを見ているか、ちょっと意識してみるといいでしょう。多くの場合、眼球は正面(視野中央)を見たままで、双眼鏡を動かしているはずです。意外と、あまり視野周辺に注意を払っていないはずです。 その辺のコンセプトに沿って考えれば、『見かけ視界は周辺像が少しぐらい悪くても広い方が気持ち良くていい』とも言えるのですが、実は周辺像の善し悪しもポイント。 視界に入った時点でその対象が何なのかが判断できるか、視野中央部に持ってこないと判断できないかでは、実務的な面で違いは大きいものです。 同じ光学系でも周辺像の善し悪しをとやかく言わないのなら、視界は比較的広くとれますし、全面ピンポイント像&フラットを狙うとすると、どうしても視界が狭くなります。 バードウォッチング用であれば、飛んでいる鳥を追うようなシーンも想定されるので、多少周辺像が悪くても視界が広いタイプの方が有利。基本的に手持ちしかしない場合も、あまり周辺に気を払わないので、視野が広い方が気持ちよく使えます。 一方、彗星や星雲星団を探す場合は、視野周辺が星雲状にボケたり、彗星状に流れてしまっていてはどれが目的の星なのかさっぱりわかりません。三脚に固定した場合は、視界が固定されるため、周辺までシャープになっていないと困ります。 こちらは、多少見かけ視界が狭くても(=広角タイプにこだわらない)、周辺まで充分シャープな方が良いです。 周辺像は同じメーカーの同じクラスの双眼鏡でも意外に差があるので、実際に見て確かめておきたい所です。(ただし、夜間に使う場合は、昼間のイメージと異なる場合があるので、可能であれば夜間での見え方もチェックしておきたい所です。) 2006/06/07
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実視界が広いほど、現実に見える範囲が広く、どこを見ているか、見当が付きやすくなります。「何かを探す」といった目的の場合は、実視界が広い方が有利です。逆に「じっくり観察する」なら、少々倍率が高い=実視界が狭いものでも構いません。 口径50mm程度までの双眼鏡で、良心的に設計してあれば、ほとんどは5度以上あるので、あまり神経質になる心配はありません。 ただし、高倍率ズームの場合は注意が必要で、低倍率側でも3度台という狭いものは避けた方が良いでしょう。どこを見ているかわかりません。 2006/06/07
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メガネレンズは、眼球前方12mmに配置することになっています。接眼レンズ後方から15mm以上離れた位置からでも全視界が見渡せるような接眼レンズの場合だと、メガネをかけたまま全視界が見渡せて便利です。 メガネを使用していないのなら、長さにあまりこだわる必要はないのですが、のぞきやすさもあって、最近の高級タイプのほとんどはハイアイになっています。 2006/05/21
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双眼鏡は、手持ちをする場合が多いのですが、そんな場合は、8倍より10倍の方が1.25倍詳細に見える訳ではなく、単に手ブレを拡大しているに過ぎません。 8倍でも手ブレの影響は受けているので、三脚に固定すればぐっと良く見えます。手持ちを中心に快適な観察を望むなら8倍以下に抑えたいところ。 同じ見かけ視界なら倍率に反比例して実視界が狭くなるので、比較的高い倍率の場合は見かけ視界の広い、広角タイプを選んでおきましょう。 また、倍率が高いほど視軸(互いの光軸)のズレに敏感になるので、むやみに倍率の高い双眼鏡は選ばない方が無難です。 2006/05/21
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星を見るなら口径は、なるべくなら大きい方が良いのですが、双眼鏡が大きく重くなるので、あまり大きいのも扱いにくくて困ります。 天体用なら最低50mmとは言われますが、口径50mmクラスの双眼鏡は、本体が1kg近くあるものが多く、手持ちは辛くなってきます。この辺の判断は結構微妙です。 口径40mmクラスに1段落として、口径が小さくなった分を、倍率を欲張らないことで補うという選択もあります。 2006/05/28
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双眼鏡は、両眼で見る関係で、必ず正立にしなければなりません。(遠近が逆になるのだとか。) そのために双眼鏡では正立プリズムが組み込まれます。 双眼鏡に使われているプリズムは、全反射という性質を利用してガラスを鏡の代わりに利用して、像の上下左右を入れ替えます。
臨界角より浅い角度で入射する光は、ガラス面から空気面に抜けることができず、表面を全反射してガラス内に戻ります。 余談ですが、対物レンズは、プリズムが組み込まれることを前提として設計されているため、「プリズムがある分、像が悪い」ということはありません。(双眼鏡用対物レンズを使って自作望遠鏡を作ると、像はイマイチな事が多いです。) 2006/05/28
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双眼鏡に採用される正立プリズムには主にポロプリズムとダハプリズムがあります。 ポロプリズムは、45度の反射面(光は90度曲がりますね)で4回反射させることで上下左右を入れ替えます。 たとえば、前から来る光を右に折り曲げ、次に前方に折り返し、上に折り返して手前に折り返します。これで上下左右が入れ替わります。 ポロプリズムは入射した光の光軸と射出する時の光軸がズレるため、(ダハプリズムに比べ)スペース効率が悪く、小型化しにくい欠点があります。口径20mm程度のコンパクト双眼鏡でも案外ずんぐりしているものが多いのは、このためです。 ダハプリズムは、90度のV字型の反射面(ダハ:ドイツ語で屋根の意味)によって像を一度にひっくり返します。 鏡を90度に合わせて見ると、鏡像でない像で見えますね。 ↑鏡が90度に合わせられた洗面台。鏡に映ったハンドソープの文字が鏡文字にならず、そのまま読めます。 実際のダハプリズムは、来た方向と違う方向に向きが変わるので、倒立プリズム(像を裏返さず、方向だけを変えるプリズム)を別途組み合わせて向きを変え、同軸で射出するようにしています。 ダハプリズムは、入射した光の光軸と射出する時の光軸を同一にできるので、空間に無駄が少なく、効率良く小型化できるメリットがあります。 一方、ダハプリズムの欠点としては、「入射した光の光軸と射出する時の光軸が同一」であるため、原則として50mm以上の口径には対応できないことです。(ま、射出軸をずらすことも不可能ではないので、口径60mmぐらいのも現実にはあります。) もう1つ欠点があって、それは像がやや甘い(コントラストがやや浅い)ことです。 2006/05/21
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どんな材質のプリズムを使っているのかは、ユーザーにとって関係ない話なのですが、全反射という現象を利用してプリズムを反射鏡として使っている関係で、材質によって性能に違いが出ます。 BK7のプリズムでは接眼部を遠くからのぞいたとき、一部が欠けて見えます。ポロプリズムでは四隅が欠けたように、ダハプリズムでも、やはり1か所欠けます。 それを防ぐため、高級な双眼鏡ではより屈折率の高い、BaK4をプリズムに使います。 BaK4のプリズムではひとみ径が、きれいな円形になります。 さて、ガラスは赤い光に対して屈折率が低いため、臨界角に近い角度でガラスを抜けようとする場合、青い光は臨界角に達して反射するのに、赤い光は臨界角に達せず、プリズムを抜けてしまいます。 このため、屈折率の低いBK7プリズムでは四隅が青くなってしまうのです。 これによる影響としては、カタログに示される「明るさ」よりも実際の明るさが足りないとか、色の再現性が正しくないなどの影響があります。 ま、直接のぞいてみてわかるモノでもないので、特にこだわってチェックすべき項目でもない部分です。 天体用の場合、可能な限り明るいことが求められますので、BaK4プリズム採用の方が有利です。 2006/05/28
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ダハプリズムの像が甘い理由には2つあります。 (1)加工上の問題 ダハプリズムは、2つの平面を正確に90度の角度になるように研磨しなければなりません。89度や91度では像がダブってしまいます。 また、この稜線に限り、傷や欠けを防ぐための「コバ」と呼ばれるカドを削る作業を行えません。周辺ほど面精度を維持しにくい事もあり、面全体を均一に平面研磨する、高い加工精度が要求されます。 (2)光学的理由 全反射をするとき、プリズムの屈折率や反射角に応じて上下方向の位相と左右方向の光波の位相にズレが生じます。 実際、ダハプリズム双眼鏡を偏光フィルタで挟むと、射出ひとみの半分が影ってしまいます。つまり、ダハプリズムによって偏光の角度が変わり、よりによって偏光の角度が左右で違います。 ↑偏光フィルタを通してダハプリズム双眼鏡を見た場合。射出ひとみの半分が影になっている。もちろん、対物側にも偏光フィルタを入れてある。 実際は偏光で見る訳ではないのですが、ダハプリズムの左右の位相のズレによって複屈折が起きたようなブレ(にじみ)がわずかに起きてしまうのです。 従来「双眼鏡では倍率が低いため、それほど大きな問題にはならない」とされていましたが、ポロプリズムと直接見比べれば、やや霞んだ印象になります。 2006/05/28
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加工上の問題は技術力で何とかなりますので、そこは研磨屋さんにがんばってもらうとして、現在の加工技術ではほとんど問題になることはありません。 一方の、光学的理由の方は物理的な性質によるので別のアプローチをしないとどうにもなりません。 そこで、最近、ダハプリズムによる像質の悪化を解決する「位相差補正コート(フェイズコート)」が行われているようです。 詳細はよくわからないのですが、おそらくダハ面の一方(または両方)に複屈折をする物質をコーティングすることで、全反射による左右の位相のズレをキャンセルするものと思われます。 値段を別にすればフェイズコートをしたBaKダハプリズムとBaKポロプリズムの 間に性能的な差はないと考えて良いでしょう。 実際、位相差補正コートのダハ双眼鏡は霞んだ印象がなく、非常に抜けの良い像を見せてくれます。 2006/06/07
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性能(像質)と値段を別にすれば、ポロプリズムとダハプリズムの違いは、双眼鏡全体の大きさの違いです。 一般にポロプリズム双眼鏡は大きくて、邪魔。あるいは、同じボディサイズならダハプリズムのものより口径が小さく、物理的に性能がワンランクダウンします。 重さについては、基本的な部材構成に大きな違いはないので、ポロプリズムもダハプリズムも同じようなものです。むしろ、作り方による差の方が大きいですね。 大きさの違いは、使い勝手にも影響するのですが、深刻なのは運搬する時の問題。双眼鏡なんて、使っている時間より持って歩く時間が長く、バードウォッチングでは、大半が持ち歩く時間。旅行に持って行くとなれば、四六時中持ち歩くことになります。 持ち歩く事が多いのであれば、小型軽量は非常に重要です。 一方、天体専用なら多少かさばっても問題ありません。「たまにはバードウォッチングに使ったり、旅行にも持って行きたい」となれば、軽くてコンパクトという事は重要なポイントです。 で、一番深刻なのが値段の差。ダハプリズム双眼鏡は、ポロプリズム双眼鏡の2〜3倍(モノによりますが)の値段です。ダハプリズム双眼鏡はダハ面の加工が困難な上、フェイズコートといった特殊コートもやって、やっとポロプリズム双眼鏡と同等性能になるのですから、ダハプリズム双眼鏡のコストパフォーマンスはかなり悪いです。 かと言って、大きくてかさばると、出番が少なくなるのも事実。 そういった意味でダハプリズム双眼鏡も捨てがたい所があります。 2006/05/28
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望遠鏡は、結像するために対物レンズから入った光のみを接眼レンズから射出しなければなりません。 筒の内面や、プリズム内の予定外の反射をした光は完璧にカットしなければなりません。 そうしないと、関係のない、余分な光が重なって、コントラストが浅くなります。 双眼鏡を明るい方に向け、接眼部から見える鏡筒内部をながめてチェックします。 内面処理も実物を見てチェックしなければならないチェック項目の一つです。射出ひとみの周囲に変な反射がなく、完璧に真っ暗になっていればOKです。 ――もっとも、このテストをクリアした双眼鏡は、(そんなにチェックしまくった訳ではありませんが)過去カールツァイスの双眼鏡だけです。他の双眼鏡は、多かれ少なかれ内面反射は存在します。 ↑ダハプリズムによる内面反射で発生する、弓状の射出ひとみ。 ここからも別の経路で光が入り込んでコントラストを悪くします。(青い台形状のものは撮影用の照明が接眼レンズ表面のコーティングに反射したもの。) 天体望遠鏡の場合は、接眼レンズを抜いて中をのぞくとわかりますし、分解して対策のしようもありますが、双眼鏡は分解する訳にいきません。内面処理が的確に行われているかは、買う前にチェックする必要があります。そこで、10倍程度のルーペで接眼部を拡大して中をのぞき込むと、内面反射の様子がよくわかります。 実際にのぞいてコントラストを確認する方法もありますが、昼間に像のチェックをする場合、瞳孔が3mm程度しかないため注意しなければなりません。内面処理が不十分だと、薄暗くなったとたん、瞳孔が開くにつれて内面反射が瞳孔に入ってくるため、コントラストが落ちたり、ゴースト(無関係な虚像)が出てくる場合があるからです。そこで、内面チェックが不可欠となります。 ところで、7倍50mmなど、ひとみ径が7mmの双眼鏡の場合は、瞳孔径よりも射出ひとみが大きい(場合がほとんど)のため、内面反射対策が不十分でも瞳孔でカットしてしまうため、非常に抜けの良い像を見せてくれます。コントラストの高い、クッキリした像を望むなら、あえて7倍50mmなど、ひとみ径が7mmの双眼鏡というのも手です。 2006/05/26
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天体用双眼鏡は、おそらく双眼鏡の使い方の中ではかなり「ぬるい」部類(比較的大切に使われる方)のはずです。大切に扱えば一生モノかもしれません。新しいのが欲しくても、古いのが充分使えるという状況になりがちなので、多少値が張っても気に入ったものが良いでしょう。 こちらは、堅牢性よりは経年変化にいかに強いかが問われます。 一方、バードウォッチングや監視、マリンスポーツといった目的では、かなりハードな使い方になってきて、「遠くを詳しく見るための手段」といった取り扱いになり、「双眼鏡なんて使い捨てさ」的に見る場合もあるでしょう。 こちらは、環境が過酷な分、高い耐久性が必要な一方、たびたび壊れる事もあるはずなので、たまに買い換えるぐらいのスタンスでいた方が無難かもしれません。 2006/06/07
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では、具体的な選考に入ります。 今まで出てきた仕様の検討によって といった事が整理されてきました。具体的には のいずれかになります。 2006/06/07
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