接眼部について

●接眼部の構成

 天体望遠鏡は、接眼レンズのほか、天頂プリズムやカメラなど様々なものを取り付けたりするので、様々な変換リングなどがあって、(高級なものほど)複雑です。

 ↑直接のぞくときの構成。

 これを分解すると、

 ↑左から
  • 43mmP1アダプタ
  • 43mmP1延長リング
  • 43mmP1→36.4mmP1変換リング
  • 36.4mmP1→31.7mm変換アダプタ
  • 31.7mm径接眼レンズ 
    となっています。
     ※『43mmP1』とは内径43mmネジ山ピッチ1mmのネジという意味です。

     なお、初心者向けでは、ここまで分解できないことがありますので、無理に分解しないようにしてください。

     何個もある変換アダプタ類。「なぜこんなにたくさんあるのか」という疑問もあるでしょうから、接眼部に取り付ける各変換アダプタ類についてちょっと紹介します。


    2006/06/05
  • ●ドローチューブに直接接続するオプション


     レデューサは、ドローチューブに直接ねじ込みます。レデューサとは、全体の焦点距離を短縮してF値を小さくするためのレンズのことです。

     天体望遠鏡は、望遠レンズとして使うことができます。この望遠鏡は、口径80mm、焦点距離640mmなので、640mmF8という望遠レンズになります。

     天体望遠鏡をカメラレンズとして見た場合、一般に売られている超望遠レンズに比べ、開放F値が非常に大きく(F8前後が多い)暗いレンズになります。このため、露出時間がかかるという欠点があります。

     そこで、レデューサと呼ばれるレンズ(要するに凸レンズです)を組み込んで、合成焦点距離を短縮し、F値を明るくします。

     このレデューサを使うことで、448mmF5.6の望遠レンズになります。



     レデューサは、カメラ撮影のための専用のアクセサリーです。
     カメラアダプタを付けて、カメラでピントが合うことは保証されていますが、後ろに接眼レンズを付けて眼視で使うことは想定されていません。ピントが合う場合もありますが、ピントが合わなくても文句は言わないようにしてください。

     また、レデューサは望遠鏡ごとに専用設計されるので、原則として他の望遠鏡には使用できません。取り付けられてピントが合ったとしても、画質は保証されません。

     ※カメラレンズには、焦点距離を伸ばすアダプタ(テレコンバータ)は存在しますが、焦点距離を短縮するアダプタ(レデューサ)は存在しません。


    2006/06/04
    ●43mmP1アダプタ

     43mm径のカメラアダプタを接続する場合に、このアダプタを使います。
     紫色に見えるのが、そのアダプタです。



     43mmというのは、135フィルム(いわゆる35mmフィルム)の対角に由来するのではないかと思われます。
     この径は、ビクセン独自の規格らしく、他社製品が取り付けられる保証はありません。

     (紫色に塗装してありますが、一度ドローチューブに食いついて外れなくなったので、無理に外したのですが、その時に付いた傷を隠すためです。また、外すのを容易にするための3本のハンドルを付けています。標準の色は黒で、ハンドルはありません。)


    2006/06/04
    ●43mmP1延長チューブ

     ただの筒です。


     ドローチューブは、伸縮できる範囲が決まっています。この写真は、ドローチューブをいっぱいに伸ばした状態のものですが、10cmものびません。接眼レンズは、もっとずっと後ろに取り付けなければならないので、チューブを継ぎ足して延長します。


     天頂プリズムを使う場合は、延長チューブは取り外します。


    2006/06/04
    ●43mm→36.4mm変換リング

     36.4mm径の接眼レンズやカメラアダプタを取り付ける場合に使用します。

     43mm径のカメラアダプタ(写真手前)があるので、この望遠鏡ではわざわざ径の細い36.4mmに変換して、36.4mmカメラアダプタ(写真奥)を取り付ける意味はありません。周辺減光が大きくなるだけです。

     しかし、過去、接眼レンズは24.5mm径のものと、36.4mm径のものしかなかったことから、「ドローチューブ径は36.4mm径」と決まっていました。

     当然、カメラを取り付ける場合、36.4mm径での接続となります。(写真手前)


     また、様々なアクセサリをつなぐための規格して「36.4mm径」が存在しました。
     36.4mm天頂プリズムと、36.4mm径接眼レンズです。


     
     36.4mmでは他社のものも含めて幅広く応用が利きくという利点があります。

     むしろ、43mm径が誕生した経緯が、36.4mmでは写真撮影時の周辺減光が大きいから、という経緯があります。

     現在では口径20cm級の大型のもののドローチューブ内径は60mm径になっています。(この望遠鏡は、その過渡期のもので、ドローチューブ内径は56mm?あります。)


    2006/06/04
    ●36.4mm→24.5mmアダプタ

     現在では珍しい構成です。


     24.5mm径接眼レンズや、24.5mmの天頂プリズムを取り付ける場合に使用します。


    2006/06/05
    ●36.4mm→31.7mmアダプタ

     36.4mm径は、様々なオプションを取り付ける規格として君臨していたのですが、1990年前後を境に形勢が一転します。
     黒船アメリカンサイズ(1.25インチ:31.7mm径と、2インチ:50.8mm径)の来襲です。

     特に、見かけ視界82度で、視野の隅でも像が流れずピンポイントに結ぶ「ナグラー」の登場は衝撃を与えました。(写真右上の馬鹿デカイのが(TypeI)ナグラー13mm:私も釣られたヤツの一人。)


     これを取り付けるには、変換アダプタが必要で、無理なく変換するには、36.4mm→31.7mmという変換が適切、という具合です。

     なお、その後日本のメーカーも、ツァイスサイズ(24.5mm)の生産をやめ、次々とアメリカンサイズに移行し、現在に至っています。


    2006/06/04
    ●という具合に

     …変換リングやアダプタがたくさんありますが、それぞれの径に意味(用途)があって存在します。


    2006/06/04
    ●接続のセオリー

     変換アダプタがたくさんあって混乱しそうですが、基本的には付属しているものすべてを使います。
     問題は、延長チューブを使うか使わないかの選択です。
     延長チューブが必要なのに使わない場合(その逆で、不要なのに付けた場合)ピントが合いません。

     延長チューブが必要か必要でないか、その選択は次の方法でおおむねわかります。

    (1)標準セットに延長チューブが含まれている場合
     屈折式(一部のカタディオプトリック系)の場合
      天頂プリズムを使う場合、延長リングを外します。


      天頂プリズムを使わない場合は、延長リングを取り付けます。


     ニュートン式反射の場合
      延長リングは取り付けます。
      カメラを使って直焦点撮影をする場合、延長リングを外します。
      ※ニュートン式反射では天頂プリズムは使いません。

    (2)標準セットに延長チューブが含まれない場合
      ドローチューブに余裕があるので、そのままでピントが合います。
      ※初心者向けのニュートン式反射で、延長リング(延長チューブ)が付属しない場合は、カメラを使っての直焦点撮影はできません。


    2006/05/28

    [戻る]