望遠鏡のカタログの読み方〜焦点距離とF値

●対物レンズの焦点距離

 レンズや鏡から焦点までの長さのことです。
 「カメラレンズみたいに複雑で厚いときは?」というツッコミは当然あるので、「平行光の延長線と、レンズ系を抜けた後の光線の逆延長線の交点から、焦点までの距離」と定義されています。

 なお、レンズの最後部のレンズから焦点までの距離をバックフォーカスと言って、これは焦点距離とは違います。

 天体望遠鏡の倍率は、対物レンズの焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割って求めるので、焦点距離が長いほど高い倍率を得やすい(=低い倍率が得にくい)ことになります。

 主鏡の焦点距離が長いほど倍率は出ますが、一般的な屈折望遠鏡や、ニュートン式反射望遠鏡の場合、焦点距離がほぼそのまま望遠鏡の全長になります。(カセグレン式など、一部の例外を除く)
 焦点距離が1500mmを超えると、望遠鏡自体の長さが人間の身長を超えてくるので、取り扱いが厄介になってきます。

 全長が短かい方が取り扱いは楽ですが、倍率が稼げないという欠点があり、文字通り一長一短。

 そのため、(写真専用でない限り)多くの天体望遠鏡の焦点距離は、取り扱いやすさと倍率のかねあいから、600〜1200mm程度に設定されています。
 焦点距離は性能指標ではないので、扱いやすい長さを選ぶと良いでしょう。



 カメラレンズとして天体望遠鏡を使う場合、天体望遠鏡自体の焦点距離がそのまま使えます。


2006/07/06
●F値(えふち)

 焦点距離を有効径で割った値です。

  F値=焦点距離÷有効径

 カメラレンズでは、光量調整のため「絞り」が内蔵されていて、2、2.8、4、5.6、8、11、16…という具合に、1.4倍刻み(2の平方根。面積比で2倍きざみなので、直線比率で1.4142…倍きざみ。)で調整できるようになっています。ちなみに、数字が小さい方が明るくなります。
 絞りを一番開けた状態のF値を開放F値といいます。

 同じ焦点距離であれば、口径(絞りの直径)が大きいほど明るくなります。
 同じ口径であれば、焦点距離が短いほど明るくなります。
 F値が一定なら焦点距離が長いほど口径も大きくなります。
 そういった関係を持ちます。


 さて、F値で注意しなければならないのは、「F値が小さいほど明るいので良い」というのは、カメラ撮影する時の話であって、肉眼で見る場合にはあまり関係ないという点です。

 カメラは、焦点位置にフィルムや撮像素子を置いて撮影します。このため、撮影レンズ自体のF値が重要になります。

 一方、肉眼で見る場合は、焦点にできた像を接眼レンズで拡大して見るため、どんな接眼レンズを使うかで最終的な明るさが変わってしまいます。

 たとえば、口径10cm、焦点距離500mm、5mmの接眼レンズで100倍出す場合と、口径10cm、焦点距離1000mm、10mmの接眼レンズで100倍出す場合では、明るさは(原理的に)全く変わりません。

 むしろ、F値の小さい対物レンズでは、接眼レンズに入る光束が太くなるため、(カメラレンズがF値が小さいほどレンズ構成が複雑になって値段が上がるのと同じ原理で)接眼レンズも高級で高性能なものが要求されてきます。F値が15ぐらいになると、安い接眼レンズでもかなり良く見えます。

 眼視による観測(観察、観望)を主眼に置く場合は、望遠鏡のF値は8〜10前後か、それ以上が適しています

 なお、カメラレンズのF値は、F値は入射光量の指標になるので、ガラスの吸収や表面反射による損失を差し引いた明るさで求めたF値:実効F値で表記することが多いようです。


2006/07/06

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