天体望遠鏡を使うと昼間でも星が見える訳

 公共天文台に昼間に遊びに行くと、当たり前ですが望遠鏡で見せるネタがありません。

 仕方ないので太陽を投影して黒点を見せたり、昼間の青空を通して恒星を(たまに金星とか土星を)見せたりしています。

 恒星なんて、普通は見たところでつまらないんですが、それでも『へー、昼でも望遠鏡を使えば星が見えるんだー』と思って帰ってきます。


 で、疑問。

 肉眼で青空を見ても見えないものが、なぜ望遠鏡で見えるのでしょうか?


2007/02/06
●昼間、星が見えないわけ

 月であれば上弦前後や下弦前後のとき昼でも見える事があります。月が出ていれば昼でも余裕で見えます。
 金星ぐらいの明るさ(-4等ぐらい)であれば、肉眼でも青空の中で輝いているのがわかります。(とは言え、かなり厳しいですが。)
 恒星(太陽を除く。以下同じ)となればさすがに肉眼で見るのは困難です。

 まず、昼間の青空は、太陽に照らされて青っぽい白(要するに空色)で輝いています。

 空の明るさを1とすると、0等星自体の明るさがその1/1000ぐらいです。(青空と同じ明るさで写っていた星との露出倍数の差から算出。誤差は結構大きいですが。)

 すると、青空の明るさ1に対して、星のある所は星の明るさだけ加算されて1.001という明るさで見えているはずです。
 しかし、コントラスト比1:1.001では、差がなさすぎてどこに星があるのかわかりません。

昼間の月。コントラスト比は1:1.5ぐらい。



2007/02/06
●望遠鏡で見た時の青空の明るさ

 たとえば、口径70mmの50倍で見た場合を考えます。

 望遠鏡で見た場合、口径が大きいので多くの光を集める事ができます。
 昼間の空を見る場合は瞳孔は2mmとか3mmに縮んでいます。
 仮に瞳孔径が2.5mmだったとき、口径70mmという口径は直線比率で約28倍、明るさは(面積で効くので)28×28=784倍です。

 ただし、50倍という倍率もかかるのでその分薄まります。
 50倍とは直線比率での倍率なので、視界の明るさは(面積で拡大されるので)1/2500にまで淡くなります。

 784倍明るい景色を(50倍に拡大して)1/2500に薄めて見るので、784÷2500=0.31倍。
 肉眼で青空を見た時に比べて、50倍での視界の青空の明るさはざっと1/3です。


2007/02/06
●望遠鏡を使うと恒星がある事がわかるわけ

 一方、恒星は、いくら拡大しても点にしか見えません。
 いくら倍率をかけても拡大される事はない(注:もちろん、有効最高倍率以下の場合)ので、口径70mmという口径で星を見ると、単純に784倍明るく見えます。

 1等級の差が2.5倍なので、0等星(たとえばベガ)は、望遠鏡の視界の中では-7.2等星ぐらいに明るく輝いて見えています。


2007/02/06
●ということで、見えるんです。

 肉眼で見た青空の明るさを1としたとき、口径70mmの50倍の望遠鏡の視界の青空自体の明るさは0.31。
 0等星の明るさは、1/1000の784倍では0.78。背景と恒星のコントラスト比は約1:2。
 それだけのコントラスト差があれば、余裕で見えますね。


 そういう事。


2007/02/06

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