|
接眼レンズ類は、防湿庫や乾燥剤の入れた密封容器に保管するのが最適です。 レンズは湿度の高い所に置いておくとカビが生えてしまうためです。カメラレンズを付属のケースに入れて、押し入れにしまっているような管理はカビの温床を作るようなものです。 ただし、乾燥を好むカビもあるそうなので、乾燥しすぎるのも良くありません。 レンズ類を保存するには湿度40-50%程度が良いそうです。 ↑ブロッキングフィルタ専用保管庫。干渉膜の劣化防止のため例外的に超低湿度状態にして保管。普通、ここまでやらない。 望遠鏡は組み立てたまま風通しの良い所に置いておきます。 2010/02/13
|
話は変わって、楽器の保管にも乾燥剤(湿度調整剤)が使われます。特に木製の楽器(ギターなど)は、湿度に敏感です。適切な湿度にしておかないと最悪の場合故障の原因にもなります。 たとえば、ギターであれば、下記のような感じです。 【乾燥しすぎる場合】 ・木や塗装面が割れたりする。 ・木が縮んでしまうため、金属部分(フレット)が飛び出たりする。 【湿度が高すぎる場合】 ・金属類(ペグ、フレット、弦)が錆びたり接着面がはがれたりする。 ・音も詰まった感じになって、きれいに鳴らなくなる。 実際、ギターの場合だと湿度が10%変わるとチューニングが明らかにズレますし、極端に湿度が低かったり高かったりするとネックの反りや歪みの原因になります。 楽器はレンズ類よりずっと管理がシビアです。 温度差が激しい所も湿度差が大きく、冬場に屋外から室内に持ち込んだとき結露する場合も少なくありません。 温度がなじむまでケースから出さない、廊下などの温度の低い所に置いて急激な温度変化をしないようにするといった工夫も必要です。この辺は光学機器も同じですね。 ギターを単にハードケースに入れたまま押し入れに保管するのは、レンズと同様カビが生えるのを助長しているようなもの。 2010/02/13
|
望遠鏡やカメラレンズばかりでなく、楽器もまた40-50%程度を維持する管理をするのが理想という意味で、目標は共通します。 理想的には保管庫を買うのが一番なのですが、場所を食うのと意外に値段が高いので躊躇してしまいます。(ギターを入れておけるレベルの保管庫なんて何十万円するんだか…) 日本という国は高温多湿で慢性的に湿度が高く、平均湿度は70%近くに達する一方、冬場の太平洋側は20%台まで乾燥が進む事もあります。雨の日の屋外ともなると湿度は90%を超えます。 楽器は急激な湿度変化を極端に嫌うので、ギターの保管には「乾燥剤」ではなく「湿度調整剤」が用いられます。 その違いな何でしょうか? ここでは乾燥剤や湿度調整剤がどんな性質を持つか整理してみましょう。 2010/02/13
|
どんなもの?→ お菓子の箱に入っている、ビーズ玉みたいなやつ。 青い粒のあるシリカゲルはA型シリカゲル。 【原理】 シリカの粒子が多孔質になっていて、そこに水分が吸着される事で吸湿する。 【性質・寿命】 基本的に吸湿する一方。 「青い粒が赤くなったらお取り替え」。 密閉された内部の乾燥を保つのに適している。 多湿な環境に置いておくと、数日で水分を吸い切ってしまって効果を失う。 【再利用】 吸着する一方なので基本的に不可能。 ただし、加熱すれば放湿するので、フライパンで煎ったり、電子レンジで加熱したりすれば、数回再利用できる。 【どこで売っている?】 薬局、ホームセンター等 一般的に単に「シリカゲル」として売られているのはA型がほとんど。 2010/02/13
|
どんなもの?→ 大型の機器類にくっついてくるやつ。 白い粒だけの場合が多い。 【原理】 シリカの粒子が多孔質になっていて、そこに水分が吸着される事で吸湿する。 【性質・寿命】 B型は吸着と放湿を繰り返すタイプで、急激な湿度変化を緩和するのに適している。 いわゆる湿度調整剤がこれ。 特性については、検索していただきたい。 湿度の低い環境に置くと、吸着していた水分を放出するので、湿度を一定に保つ効果が期待できる。ただし、湿度の高い環境に長時間置いておくと周囲の水分を吸ってしまって、数日で飽和するので、長期的な除湿効果は薄い。 寿命は半年〜1年が目安。 【再利用】 天日干しをするなど、乾燥させれば放湿するので、何度でも再利用可能。 吸着力が低下したら交換。そうなったら再利用不可。 【どこで売っている?】 楽器店、カメラ店、100円ショップ 「B型シリカゲル」と明記されているもの。 2010/02/13
|
どんなもの?→ 押し入れの中に入れるタイプがこれ。 【原理】 潮解という現象を利用して吸湿する。空気中の水分と塩化カルシウムの結晶が結合して勝手に水溶液を作ってしまう。 【性質・寿命】 水溶液自体も吸湿効果があるため、薬剤が残っている間は水溶液があっても極度に高湿度になる事はない。湿度が高い時は、およそ65%程度まで下がる。 基本的に吸着の一方で「薬剤が全部水(水溶液)になったらお取り替え」とされているが、実は、低湿度下では放湿して、また塩化カルシウムの結晶に戻ってしまう。放湿しているときは、およそ50%。 意外に放湿しやすいので、湿度調整剤にもなる。乾燥させると水溶液がそのまま結晶化してしまう。 【再利用】 化学変化としては、空気中の水分で水溶液を作ってしまうだけであるため、水分を飛ばせば再利用できなくはない。 ただ、販売価格から考えても再利用するよりも捨てて買ってきた方が安上がりである。 【どこで売っている?】 薬局、ホームセンター、100円ショップ等 2010/02/13
|
どんなもの?→ 海苔などの乾物に付いてくる事が多い。 カメラ用除湿剤として市販されている事もある(が、意外に高い) 【原理】 生石灰(酸化カルシウム)が空気中の湿気と結合して粉状の消石灰(水酸化カルシウム)になる。 【性質・寿命】 吸湿力としては最も強力。基本的に吸着の一方通行。 密閉空間に詰めて放っておくと20%を割り込む。 多湿な環境に置いておくと、数日で水分を吸い切ってしまって効果を失う。 生石灰(ザラザラの顆粒状)が消石灰(粉末状)になったらお取り替え。 【再利用】 乾燥剤としては再利用できない。 消石灰になったものであれば、土壌改良剤として土に混ぜるといった方向での利用はできる。 【どこで売っている?】 薬局、ホームセンター、カメラ店等。 2010/02/13
|
市販されていて入手が容易な乾燥剤の性質を整理してみましたが、それぞれ特徴があってどれを使うべきか悩む所です。 日本という気候風土と今までの経験から、B型シリカゲルと塩化カルシウムの組み合わせが一番湿度を一定に保ちやすいようです。 B型シリカゲルは、湿度調整剤としての性能は高いものの、水分を保有できる量が多くないため、高湿度にさらされ続けると除湿しきれなくなってしまいます。あくまでも急激な湿度変化を抑えるのに適しているだけで、除湿という点では効果は期待できません。 そこで塩化カルシウムの登場です。これは押し入れタイプだと見ての通り数百ccという桁違いの水分吸着力があります。塩化カルシウムは高湿度のときに性能を発揮するので、慢性的に高湿度になる場合(梅雨時など)は、高い能力を発揮します。 本来であれば、塩化カルシウムの除湿能力が発揮されるほどの高い湿度環境は好ましくありません。しかし、日本の気候風土上、どうしても高い湿度が続く季節があるので、完全密閉できない場合や、出し入れが頻繁な場合はある程度の長期・大量に除湿する能力のある乾燥剤が適しています。 逆に、冬場の乾燥する季節の場合、抱え込んでいた水分を(ある限り)放出し続けるので長期的な湿度調整には塩化カルシウムの方が向いています。 2010/02/13
|
[戻る] |