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天体写真の一番簡単な方法は、三脚にカメラを載せて、長時間露出する「固定撮影」という方法です。
なお、固定撮影では、カメラが固定されているために、ある程度の時間露出していると、星が日周運動によって流れて写ります。
それはそれで作品としてOKなのですが、星を点にして写すには、短時間で撮影するしかありません。 露出時間は、カメラの焦点距離や向いている向きにもよりますが、おおむね数秒程度しか猶予がありません。広角レンズでさえ、30秒ぐらい露出すると星が微妙に流れて写ってしまい、まるで「手ぶれ」のようなみっともない写真になります。 星を点で写すには10秒程度しか余裕がないので
それを理由に明るいレンズや高感度に強いカメラに買い換えるのも悪くないんですが、投資する方向が少し違う気はします。 露出時間を十分にかけられれば、より暗い星までしっかり写す事が可能になります。そして、赤道儀を使って追尾撮影することができれば、星を点にして写す事も可能になります。
2010/07/25
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星をたくさん写すには赤道儀を使って撮影すれば問題ない事ではあるものの、普通に写真を撮って楽しむだけ人が、赤道儀という星を撮るため「だけ」の何万円もする機材というのは手を出しにくいものです。 しかし、美しい星の写真を撮るには、三脚による固定撮影に限界がある事も事実。 それなら、作ってしまおう!(できるだけ安価に) というのが、この企画。 2010/07/25
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赤道儀自体、かなり精度が要求される機器なので、望遠レンズで何分も追尾できるような赤道儀を作るのは、素人工作では無理です。 でも、広角レンズで、せいぜい2-3分の露出に耐えられるものなら素人工作でも可能です。星雲星団のクローズアップ(さきほどの作例レベル)は無理かと思いますが、星座などをとらえるには十分です。 そこで、 ・広角レンズ〜せいぜい標準レンズでブレなければよい ・露出時間もせいぜい2-3分耐えられれば良い ・田舎のホームセンターで調達できるもので作る ・自分も素人なので、誰でも作れるよう、電子工作はしない と割り切った仕様の手動赤道儀を作ります。 別にオリジナルという訳ではなく、蝶番(ちょうつがい)で板をつないで、ネジで押す、通称「ドア式赤道儀」と呼ばれる、古典的なやつです。 ↓完成するとこんな感じ。 右奥斜め上が北極星の方角です。 2010/07/25
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難しいので、ここは読み飛ばしていいです。 赤道儀を全周微動ではなく、部分的に直線的なネジで追尾する方法を「タンジェントスクリュー方式」と呼びます。 1分間に進む距離をL、1分間に回転する角度をθ、軸からネジまでの距離をHとすると: Hで解いて整理すると H = L ÷ tan θ が求まります。 θについては、恒星は23時間56分04秒(86164秒)で1周なので…。 60÷86164 1分間に0.000696347回転。 ラジアンになおすと、2π倍になって 0.004375273[rad] θが充分小さいとき、tanθ=θとみなせるので、 H=L÷0.004375273 ここで、L=1[mm](1分間に1回転で1ミリ進むネジ)とすると、 H=228.557…[mm] M3ネジで良ければ、0.5mmピッチなので、基線距離は半分の114.3mmほどで済む事になります。 小型化しすぎても堅牢性に疑問は出るようでは困るので、他のJISネジのネジピッチを見ると…。 M4で0.7mm M5で0.75mm M6で1mm。 基線距離は、M4だと160mmジャスト(159.992mm)。M5で171.42mm。 この辺が作りやすいサイズかと思います。 今回はM4ネジで、基線距離を160mmとします。 2010/07/25
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詳細な値段を提示しても仕方ないですが、これでだいたい2,000円ぐらい。(カメラ、カメラ三脚、自由雲台は別途用意してください。工具代も含みません。) この通りにモノを買う必要もありませんし、この通りに材料がそろうとも限りませんので、その場でいろいろ考えてください。 主な材料 18mm×18mm×600mm角材(2本ありますが、1本で足りました。) 90mm×9mm×600mmの板1枚(ま、適当に。) M4×50mm六角ボルト(これは重要) M4のツメ付きナット(これも重要) 蝶番(角材に見合うサイズで。真鍮が良いらしいです。) 金属プレート(適当に) 木ねじ(金属プレート固定用。適当に。) 2010/07/25
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まず、厚めの金属プレートにカメラ三脚ネジ加工します。 (これは、3.2mm×30mm×74mmという鉄板) 厚めのアルミ板でもあればいいのですが、田舎では簡単には手に入りませんので。 2010/07/25
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カメラネジを切るための下穴をあけます。ドリルで直径5.2mmの穴(正確には5.1mmだそうな。5mmで穴を開けると、タップが回らなくなるので注意。)をあけます。 ハンドドリルでゴリゴリと。 2010/07/25
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1/4W20のネジを切ります。本来は「UNC 1/4-20」という規格だそうですが、田舎で入手できるタップが1/4W20なので。(可能であればUNC 1/4-20のタップが望ましいです。) ねじ切りのための工具はそろえておくといろいろ便利です。 タップの立て方がわからないようなら、ググってください。 この鉄板で、カメラ三脚に板を接続します。 2010/07/25
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続いて、本体の制作。 角材の棒を長さ20cmほどに切ります。長さは(材料の残量を考えつつ)適当に。 2010/07/25
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2つの棒を蝶番(ちょうつがい)でつなぎます。 ここが極軸となるので、ここは正確に組み上げないといけない部分ですが、失敗してわずかに斜めに付けてしまいました。(><) 軸が互いに少しずれてしまって、そのために開閉が渋いんですが、ガタが生じないので、これはこれでOKでした。 2010/07/25
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一応20cmで切ってますが、これも適当に。 M4ネジの場合ネジピッチが0.7mmなので、蝶番の接合部分から160mmの場所に押しネジを置くと、1分間に1回転で日周運動を追える計算になります。 ですから、160mmより少し長ければOK。 M6ネジで送る場合は、ネジピッチが1.0mmなので、228.5mmの場所になりますから、250mmぐらいになりますかね。 2010/07/25
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板と角材を接着します。バランスウェイトは重しです。 折りたたんだとき、互いに向き合う部分があればOKです。直角が出ている必要は無いです。単に見た目が悪くなるだけ。完成時の重量バランスを考えて、上下に少しずらしています。 2010/07/25
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乾燥後、折りたたんだのがこんな感じ。ちなみに底を上にしています。 そこに5.0mmのドリルで送りネジ用の穴を開けます。 この穴の位置は、蝶番の位置から正確に160mmの所に開けてください。 2010/07/25
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開けた穴に裏側からナットを打ち込みます。 2010/07/25
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M4×50mmナットを通して、 パタンとたたむとこんな感じ。(裏面) M4×50mmナットは、先端を丸く削っておきます。 2010/07/25
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底上げと補強を兼ねて、角材を接着。ここにネジの先端が当たるようにします。 ネジの部分は→(あっち)側。 2010/07/25
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プレートを底にネジ止めします。 2010/07/25
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ということで、基本部分完成です。ネジが当たる部分にもプレートをネジ止め。 あとは、これにカメラを載せればOK。 六角ボルトに角材で作ったハンドルを取り付けます。 2010/07/25
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赤道儀自体の工作はたいしたこと無いのですが、別の事で結構悩みます。「送りネジのツマミをどうやって作るか」もその一つ。 ツマミ部分は、とりあえず、角材に下穴をあけて、六角ボルトの頭が入るように削ってハンマーで打ち込みました。後で接着剤でも流し込んで固定すれば十分でしょう。 四角いツマミの方が使い勝手はいいです。 というのも、1分間に1回転ですから、15秒で90度(超広角レンズの場合)や、7.5秒で45度(広角レンズの場合)、10秒で30度(標準レンズの場合)という角度で回していくので、四角い方が都合がいいです。 見た目的には、引き出しのツマミを奥までネジ込んで、先端を切って削ってやればいいのですが、使い勝手としてどうでしょうか? 2010/07/25
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ここにL字プレートをネジ止め。 そこに自由雲台を、カメラネジで固定して、(一応)完成です。 自由雲台は別途購入してください。小型のものなら2,000〜3,000円ぐらいです。 また、カメラネジを手で回して止められるネジも、カメラ店で売ってますので、これもあると便利。これは247円でした。 2010/07/25
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ここまでで基礎部分の完成です。 後は、北極星を導入しやすいように指標を付けてみるとか、小型の望遠鏡も一緒に載せて、より精密な追尾をやってみるとか、いろいろ使いやすいように改造してみましょう。 角材を追加して強度UPしたことと、水準器を使って高度を合わせる機構を追加してみました。 2010/09/20
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