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BKMAK180は、2011年の暮れに日本国内で取り扱い開始された、Sky-Watcherの(中国 シンタ社の)18cmマクストフカセグレンです。 国内メーカーでもなければ、これと言ってセールスポイントがある訳でもないためか、天文ガイドなどでレビューされた形跡もなく、ひっそりと売られ続けています。 取り扱い開始から5年経ってもあまりレビューネタも蓄積されていませんが、「あまりよく見えない」という話は無く、悪い評判も聞かないので購入しました。 2016/07/17
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BKMAK180は、口径18cmにして焦点距離が2700mm、F値が15というスペックから推測できるように、ほぼ月・惑星観測に特化ています。 観望会では、月・惑星がほぼ鉄板ネタですし、20mmぐらいの見やすい低倍率系接眼レンズでも、135倍ほどの比較的高い倍率が得られる所も魅力。口径が180mmもあるので、土星を高い倍率で見ても暗く感じません。 さて、惑星観測において気になるのは、やはり遮蔽率。 公称値は、副鏡径は43mmで、遮蔽率は23%とのこと。 中央遮蔽率が23%であれば、ほぼ無遮蔽と区別ができなくなります。 18cm屈折望遠鏡なんて、とんでもないサイズになりますから、大口径による惑星観測用望遠鏡としては事実上無敵と言っていいでしょう。 2016/07/17
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ところで他社のマクストフカセグレン等のロンキーテスト画像などを見てる限り、23%なんていうような小さな遮蔽率の画像が全く見当たりません。下手すりゃ40%越えがゴロゴロしてます。 ビクセンのVMC200Lの遮蔽率は40%で、オライオンのOMC140は遮蔽率33.2%(公称値)です。 ミードの20cmシュミットカセグレンも、測定した訳ではないですが、見るからに副鏡サイズは口径の40%以上ありそうです。 それらは多少フォトビジュアルな設計だから少し遮蔽率が大きいのかもしれません。F値も10程度と、やや明るい設計です。 それにしても「遮蔽率23%」は、不自然な違和感を覚えます。 本当に23%なんていう遮蔽率が実現できているのか、さっそく現物で確認することにしました。 望遠鏡を白い壁に向け、接眼レンズを抜き取った状態でカメラを突っ込んで主鏡のシルエットを撮影します。 結果。 どう見ても、遮蔽率は約35%です。 本当にありがとうございました。 2016/07/17
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正面のメッキ面のサイズを見る限り、23%も嘘ではなさそうに見えるのですが、実際の遮蔽率は35%もあります。 遮蔽率が35%にも達している原因を徹底して追及しなければなりません。 惑星観測用望遠鏡として、ここは無視できない重要事項です。 2016/07/14
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カセグレン式の構造設計のポイントがよくわからないので、何が問題を起こす原因なのかもわかりません。 そこで、外寸を測って公称スペックを当てはめて、再設計を行い、結果と実際のサイズを見比べて、BKMAK180自体の設計のどこがまずいのか・何が遮蔽率を決めてしまっているかを探ってみます。 設計コンセプトは、惑星の眼視観測専用とします。 遮蔽率改善点を探る意味もあるので、口径=180mm、焦点距離=2700mmという仕様は踏襲します。全体のサイズも踏襲します。 焦点距離が2700mmもあって撮影には向かないので、イメージサークルは欲張りません。レデューサの併用による焦点距離短縮時のイメージサークル確保など論外です。 主鏡移動式では、筒外焦点距離を大きく稼げるのですが、その場合でも充分なイメージサークルを稼げるような汎用性も考慮しません。主鏡移動方式は所定の焦点位置からずれるほど収差が増大するからです。 2016/07/20
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まず、主要な外寸サイズの測定を行います。 ※測定誤差は最大2-3cmに達するので、あくまでも参考値ということで。 2016/07/17
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2016/07/08
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主鏡面から副鏡面まで350mmぐらい、主鏡面から接眼部の先端まで140mmぐらいです。カセグレン式は後方から観測するスタイルなので、天頂ミラーは必須です。そこで、2インチ天頂ミラーを付けたと想定して、実質的な焦点位置はスリーブ先端から80mm先とします。 2016/07/17
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まず、主鏡にあける穴のサイズと、副鏡サイズを求めます。 口径180mm、焦点距離2700mmでF値が15ですので、主鏡位置は焦点位置から220mm、副鏡位置は570mmなので、主鏡にあけるべき穴の直径は14.7mm、副鏡のサイズは36.6mmとなります。 2016/07/17
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2016/07/08
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このままでは視野中央しか100%の開口率にならないので、開口率が100%を維持できる範囲(イメージサークル)を決めます。 イメージサークルを欲張ると副鏡径が大きくなることは、ニュートン反射でも言えることなので、ここでは惑星観測用と割り切ってイメージサークルを極力小さくします。 イメージサークルの直径は任意に決めることができますが、惑星観測での実用性から考えて直径6mm(半径3mm)とします。 この寸法は、使う接眼レンズがプローセルの場合、焦点距離が7-8mm程度のものの視界と同等です。 それより実視界の広い接眼レンズでは、視野周辺で口径食が発生して、しだいに光量が落ちることになります。 イメージサークルの確保のために、イメージサークル分だけサイズを水増しします。厳密には絞り位置から確保したい実視界直径分だけの角度からの光を入れて口径食が発生しないように副鏡径や主鏡の穴の径を決めるべきですが、実視界が非常に狭いことや、F値が充分大きいので、単純にイメージサークル分だけ足します。 主鏡にあけるべき穴の直径は20.7mm、副鏡サイズは42.6mmとなります。 BKMAK180の公称副鏡径は43mmですから、ほぼ設計通りの値が出てきました。 2016/07/17
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2016/07/08
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しかし、なぜ実際は35%もの遮蔽になってしまうのでしょうか? それは、迷光対策の必要があるためです。 屈折式でも、レンズが裸のままで使うことはありません。 必ず、外から光が入らないように筒に収めたり(図中央)、開放鏡筒を選択するにしても、絞りをいくつも並べた、いわゆる空気望遠鏡の形(図下)をとるなどして、対物レンズから来る光以外のすべての光をカットします。 カセグレン式も同様で、裸のままで使用すると副鏡の外側から迷光が入り込んでくることになり、コントラストを悪化させます。 せっかくコントラスト(MTF)重視で副鏡サイズ最小を狙っているのに、迷光対策が不十分のために根本的にコントラスト(S/N比)が悪い、では意味がありません。 2016/07/17
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2016/07/08
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カセグレン式では ・無駄に副鏡を大きくする(副鏡の周囲に遮光板を置く) ・主鏡の穴の前にバッフル(筒)を設ける という方法で迷光をカットしなければなりません。 2016/07/17
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2016/07/08
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副鏡サイズは極力大型化したくないので、まず、バッフルの方の計算を行い、副鏡の大型化を抑制することにします。 現状の主鏡の穴のサイズである、内径21mmのままでバッフルを設けると、イメージサークルが小さくなり、さらに伸ばしていくと、口径まで絞ってしまいます。 2016/07/17
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2016/07/09
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では、バッフルを太くしましょう。 少なくとも現状、副鏡径が42.6mm(約43mm)あるので、主鏡にも43mmの穴をあけてバッフルを設けるとします。 そうするとバッフルを伸ばしたとたん、バッフル先端が中央遮蔽率を決めてしまう原因となってしまい、バッフルを伸ばすほど中央遮蔽率が上がってしまいます。 2016/07/17
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2016/07/09
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内径21mmではイメージサークルや口径が削れてしまい、外径43mmでは中央遮蔽率を上げてしまいます。 仕方ないので、折衷案として、足して二で割った内径31mmのバッフルを使うとします。これなら問題なく、ある程度伸ばせます。 2016/07/09
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2016/07/09
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バッフルはどこまで長くできるかの計算をします。 バッフル先端内径がイメージサークルを維持できるぎりぎりまで伸ばします。 バッフル内径は31mmなので、イメージサークルを含まない光束径は25mm。 バッフル先端で主鏡からの光束径が25mmとなるような位置まで伸ばせます。 F値は15なので、主鏡光束径が25mmになる位置は、焦点位置から375mmとなります。 作図したものを見る限り、この長さではバッフル先端が中央遮蔽率を決めるに至っていないようなので、遮蔽率の検証は省略します。 2016/07/17
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2016/07/09
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イメージサークル確保の都合、バッフルをこれ以上長くすることはできません。そして、副鏡の外側から入る迷光は、バッフルを副鏡まで伸ばさないこのバッフルでは完全に防げません。 残念ですが、副鏡径を無駄に大きくしなければなりません。 イメージサークルは確保できているので、副鏡の周囲に遮光板を設置しても構いませんが、いずれにして中央遮蔽率を大幅に大きくしなければならないのです。 2016/07/17
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まず、焦点位置で迷光を完全にカットするべき範囲を決めます。 ここが小さすぎると、迷光が接眼レンズに飛び込んでくるので、ある程度の面積でカットしておかなければなりません。 計算を容易にする都合で焦点面で31mmの範囲(31.7mmサイズの接眼レンズ径)の範囲で迷光を完全にカットすることにします。 2016/07/17
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2016/07/17
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副鏡の周囲に置くべき遮光板のサイズは、バッフル内径の2.04倍、63.2mmとなります。 これは、遮蔽率が35.1%に達してしまうということです。 2016/07/20
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内径31mmというのは、折衷案から出たものなので、最適解を探ってみます。 ただ、内径31mmという値自体も、それほど悪くない値なので、劇的な改善は見込めませんが、無駄な努力をしてみます。 内径を少しずつ上げながら、その内径に見合ったバッフル長を与え、主鏡焦点距離は450mmと仮定して、バッフル先端で遮蔽率が決まってしまわないような限界値を探ります。 計算内容は割愛しますが、副鏡径が58.97mm、バッフル内径33.57mm、バッフル部分だけの長さは193.55mm、遮蔽率は32.76%まで改善することができました。 もっとも、バッフルの肉厚はゼロにしないといけないので、実際に作るとしたら、もう少し現実的な値を選択しなければなりません。 ただ、今回は、あくまでも何が中央遮蔽率を大きくしてしまっているかを明らかにし、理想を追い求めたらどこまで遮蔽率を小さくできたのかを検証するのが目的ですので、これ以上細かい計算はしません。 おそらくバッフルの肉厚を考慮した現実的な設計をしたら遮蔽率33%台も現実的な値とは言えないであろうことは予想ができます。 2016/07/17
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2016/07/09
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遮光板なんか置かずに全部副鏡として大型化すればイメージサークルが稼げて良いように思えたりしますが。 実はバッフル先端でイメージサークルを制限しているので、副鏡が大きくなってもイメージサークルは広くなりません。 イメージサークルを広げるには、バッフル長を短くしなければならず、それによって迷光遮断ができなくなるので、副鏡サイズを大型化しなければならず、遮蔽率が上がるという悪循環が発生します。 欲を出しすぎてはいけません。 2016/07/20
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さて、BKMAK180の設計値ですが 中央遮蔽率 34.9%(実測) 副鏡のメッキ面サイズ 43mm(公称値) バッフル内径 31.2mm(実測) バッフルの長さ 約190mm(主鏡面から推定) です。 2016/07/17
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2016/07/17
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惑星観測専用としてオリジナルで設計したものと比較しても、それほど大きな差はありません。43mm径の副鏡メッキ面の上にラッパが接着されていることや、少し細めのバッフル内径などから勘案すると、イメージサークルは5mmぐらいなのかもしれません。 これは惑星観測用として、ほぼ究極の仕様であると言っていいでしょう。 絶対的な値として約35%という遮蔽率は残念な値ではありますが、改良の余地がほとんど無いほど洗練された設計であることは間違いないようです。 バッフル内面反射対策に植毛紙を突っ込もうとも考えたのですが、そんな余裕は1ミリも無さそうです。 2016/07/17
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