高精度ピント合わせ

●十字回折像を使ったピント合わせの問題点

 開口部に十字形の棒を配置して(ちょうど、十字スパイダーのようにしておいて)ピントを少しずつずらして撮影し、十字スパイダーによる回折像を見てピントを出す方法というのがあります。

合焦イメージ(シミュレーション)


ピンぼけイメージ(前ピン)(シミュレーション)

 ピンぼけの場合、回折像が二重に見えるため、これが1本になるように合わせます。

 広く一般に用いられているピント合わせ法らしいのですが、以下の問題があるため、改善の余地があります。

(1)前ピンなのか後ピンなのかわからない

ピンぼけイメージ(後ピン)(シミュレーション)。前ピンと区別がつかない。

 これは、致命的な欠点と言えます。
 回折光条が二重になっているのでピンぼけであることはわかります。しかし、どちら側にズレているのかわかりません。追い詰めているつもりでピントノブを回したとき、もしかしたらかえってピントを外すかもしれません。

(2)どこまで追い込めているかわからない

ピントは合ってる? 合ってない??

 ピンぼけだと回折による光条が二重になり、ピントが合うと回折像の光条がシャープになります。かと言って、光条がきれいに十字になったからと言って、正確に合ったという証拠にもならず、どの程度シャープになるまで追い込めているのか、判断が難しいです。


(3)高精度な目盛りが必要になる
 結局、目盛りを頼りに小刻みにずらしながら追い詰めていく訳ですが、0.05mm読みのノギスだとか、0.01mm読みのマイクロメーターが欲しくなります。近所に東急ハンズでもあればいいのですが、田舎にはそんな店はなく、その上それらの機器を接眼部に取り付けるという工作が必要になります。

 特に140SSのスライド接眼部は、0.1mmまでしか目盛りを読む事ができず、それ以下の精度については再現保証がありません。いろいろやっていくうちに『よし!4.92mmの所で合うな』とわかったところで、読める目盛りは4.9mmまで。1/100mmオーダーで再現できないのです。



 せめて前ピン/後ピンがわかれば、追いこめるのですが…


2008/02/24
●ピント合わせ用のマスク

 いきなり結論です。こういうマスクを使います。


 中央の丸いのは斜鏡の影です。この形状でなければならないというものではありません。無遮蔽であれば、パックマン型になります。


 今回は、マスクを作るのも面倒なので、単に開口部の1/4がカットされるよう、カードを置いただけです。

 このマスクは、開口部が左右非対称のため、前ピンと後ピンでは焦点位置を挟んで逆さに入れ替わります。

(ピントを外した時のシミュレーション。)
 撮像された恒星像を見て、「もう少し前」「もうちょっと後ろ」という調整ができます。
 また、90度のエッジを持つ暗部によって×印状の光条が発生します。星像(○)と回折像(×)がぴったり重なる位置を探れば、それで合焦したかがわかります。そういうマスクです。


2008/02/24
●ピントを大はずしする


 合焦位置から約0.5mm?前ピンにずらした時の実際の画像(ポルックス)です。影の出ている部分が、カードの影になります。
 また、×印になっているのが、90度のエッジによる回折像ですが、星像の中心位置からズレています。このため、まだピントが合っていないことがわかります。


 今度は逆方向・後ピンで、約0.6mm?ズレた場合です。影の出方が逆になります。
 つまり、このC型のマスクでは、今前ピンなのか、後ピンなのかの判断が容易です。


2008/02/12
●ピント位置を追い込む



 回折による×印と、星像がほぼ重なった感じですが、明るさは下側がまだ暗い感じです。もう少しだけ前にずらした方がよさそうです。
 (別途シミュレーションしてみると、十字スパイダーを利用した場合には、もはやスパイダーの回折は1本にまとまっています。)



 回折像が星像の中心と重なり、星像も上下点対称になったので、合焦したとみなして良いでしょう。

 このように、像の出方で前ピン/後ピンがわかるため、迷うことなく合焦の追い込みができました。おそらく合焦位置を決めるのに10分とかかりません。


2008/02/12

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