<補足説明>

人材不足では、人材育成事業はできない
新しい仕事が始まると、それは補助事業であろうがなかろうが、従業員に新たな負担をかけることになります。
そのために従業員が辞めてしまったら、事業が進みません。
最近は人手不足がどこの業界にも起こっているようです。現実に、「担当者を決めたら退職されてしまったので、事業開発ができない」という話は聞きます。

ついこの前は「雇用氷河期」と呼ばれていたのですが、現在は人材不足で、転職先の選択肢もたくさんあるのです。
実は、この状況を作ったのは企業側でもあります。
終身雇用を前提とした頃は、「窓際族」と揶揄される人たちもいましたし、それなりに雇用のバッファーも存在していました。なかなか昇進できない団塊の世代も、いろいろ便利に使われたりしていました。

しかし、雇用が流動化し、短期間でもの即戦力化、正規社員から有期雇用の非正規へ、派遣・請負・アウトソーシングへの移行、といった事態が続いたうえに、ゆとり世代が流入し、各企業ともど〜したら従業員教育ができるか悩んでいるという現状があります。
だから、「人材育成」を事業化しようという企業家がいてもおかしくありません。
審査する側にも、それを否定する気持ちなど、全然ありません。

ところが、人材を育成するためには、その教育担当となる“人材”が必要となるのです。
そして、その人は、企業の通常戦力としても重要な人材なので、教育担当までやる余力はないのです。
新たに良い教育者を獲得しようとすれば、より高額の給料を提示しなければなりません。
だから、発案の動機が、「人手が足りない」→「優秀な人材が必要」→「人材育成をしよう」という流れですと、なかなかうまくいきません。
「優秀な人材がいる今のうちに、次世代の人材を育成しよう、という風に考えなければ、いけない。」
そう考えるべきです。
「人材育成」を誘因として、日本のベテラン技術者のノウハウの移植を実現させたのは、むしろ新興諸国でした。わが国は、大いに反省すべきです。

それに、人不足で、どこの業界もできる従業員を手放したがりません。
だから、“教えられる方”を集めるのも、一苦労です。
ましてや、「人件費が安くて、より熟練した労働力を簡単に調達する手立てを作ろう」というような甘い考えでしたら、けっしてうまくはいきません。


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