しろうと考えではありますが・・・

業態別中小企業支援策が必要では?
ちょっと自信のない提案ですが・・・。それと、ちょっと難しい話になりますが・・・。
以前、“中小企業経営力向上TOKYOプロジェクト”という仕事に係わっていて、ふと思ったことです。

東京都は長い歴史の中で、いろんな形で中小企業の経営支援をしてきましたが、その施策体系は、時代と共に変わっています。

昭和30年~40年代だと、「大企業との格差是正」というのを錦の御旗にして、経営の底上げに協力していました。
ところが、役所が個別企業を支援するというのは、互いに競争している企業のうち特定のものを税金で助けることになりますから、「公平性」が保たれません。
とはいえ、すべての企業をまんべんなく盛り立てるとなると、「優秀な東京都の中小企業の製品をご利用ください」というポスターを作って貼るくらいのことしかできません。それじゃ、産業振興にはほど遠いですよね。
そこで、その時代には、各中小企業を業種別に分けて、団体を作らせ、護送船団方式の支援をやっていくのが通例でした。

しかし平成10年頃になると、国際間の競争が激しくなり、「みんな仲良く」で行くと、業界全部が沈んでしまうという成り行きになって、やむなく個別企業を支援するようになります。

とはいえ、やはり、税金で特定企業を助けるというのは、公平ではありません。
そこで、企業に事業計画を作らせ、よい計画にはお金を出す、という方式がとられます。

もちろん、中小企業の経営者が忙しくて、そんな計画を作っている余裕がないという企業が圧倒的多数です。
このため、最近は「ハンズオン支援」というのが流行っていまして、中小企業診断士などの専門家を企業に派遣して、経営の悪い点を直させてあげる、という方法が多用されてます。
最初にお話しした、“経営力向上TOKYOプロジェクト”というのも、その一種です。


そもそも「中小企業とは何か?」ということになると、それは中小企業基本法という法律に規定されています。TOKYOプロジェクトは、ここで課題にぶつかりました。

中小企業基本法では、従業員数と資本金額で、次のように定義がされています。

製造業・その他の業種 300人以下又は3億円以下
卸売業 100人以下又は1億円以下
小売業 50人以下又は5,000万円以下
サービス業 100人以下又は5,000万円以下

ところでです。
ソフトウエア企業は、ソフトウエアという商品を作りますから製造業といえます。しかし、顧客先にメンテナンスの方が業務量の多いソフトウエア企業もたくさんあります。それならサービス業です。
そこで問題。
従業員120人で、通常は顧客サービスをし、発注があればソフトウエアを制作に専念するソフトウエア企業は、中小企業でしょうか、大企業でしょうか。

行政の支援対象となれるかなれないか(=分かりやすくいうと助成金がもらえるかもらえないか)は、企業にとって死活問題となることもあります。だったら企業は、「ウチは中小だ」と主張するでしょう。

そこでいらぬもめ事を起こさないように、助成金制度などでは、ソフトウエア企業は「製造業」に分類するという区分けをしていることが多いようです。
いわゆる「キメ」の問題です。
こういう対処の仕方は、きわめて重要です。
たぶん、学校で勉強のできた優等生には編み出せません。


話は変わりますが、私はTOKYOプロジェクトの仕事を進めていくうちに、振興策全体を考えると、業種や企業規模の大小とは別の区分けが必要ではないかと考えるようになりました。

たとえば、街中の文房具屋とアスクルのような企業を、同じ文房具販売業に分類するのには無理があります。
大規模チェーンのコンビニや喫茶店は、大企業なのでしょうが、ひとつひとつの店舗を見れば、小さな店でしかありません。
「みなし大企業」というのがあって、大企業の人が役員に入っていたりすると支援が受けられなくなることがあるのですが、実際に訪問してみると、とても小さな会社だったりします。それを「大企業」と言っていいのか・・・?

そこで提案。
 業態別中小企業支援策が必要では?   
私の中小企業区分はこれ。

主な取引相手が企業の場合(いわゆるBtoB) 300人以下又は3億円以下
主な取引相手が個人の場合(いわゆるBtoC) 100人以下又は5,000万円以下

要は「誰が商売相手か」というのが、区分のキモになります。従業員数と資本金額は変えてもかまいません。できるだけおおざっぱの方がいいように思います。

そして、中小企業支援策の体系は、次のように変えます。

<製造業・ものづくり系>の支援策
<販売業・サービス業、その他>で、BtoB企業に対する支援策
<販売業・サービス業、その他>で、BtoC企業に対する支援策

このことを前提に据えると、行き詰まっていた中小企業支援策も新しい展開が見つかるかもしれません。

TOKYOプロジェクトで企業の経営状況を見てみると、サービス業系でも、BtoB企業だとその経営方法は製造業に近くて、資金繰りや商品管理計画など、中長期的な経営が大切になっているようです。
一方、BtoC企業だと、大手のデパートでも、街の小売店でも、「お客相手」という点では、共通する悩みが多いはずです。

支援策の多くが、専門家によるハンズオンに傾いていくと、そういう分け方のほうが合理的に思えるのです。
ハンズオンに行く専門家だって、そうそうオールラウンドプレーヤーばかりではないし、「専門分野のある人ほど頼りになる」という評価もあります。「この分野ならこの人」と決めた方が、マッチングもいいのではないでしょうか。

いかがですか。私の方法論。
あくまで、「何となくそう思える・・・」という、レベルの話なんですが。

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