私の住む練馬区方面には漫画家がずいぶん住んでいるそうです。
それには理由があります。
西武線・大泉学園駅では「銀河鉄道999」の車掌さんの像が乗降客を出迎えていますが、そのオープニング式典(2008年3月16日)で松本零士氏が話していました。
氏が九州から上京してきた折、練馬区大泉に腰を据えたのは、都内の大手出版会社へのアクセスが良かったからだということです。
確かに、護国寺あたりには講談社や光文社など大手の出版社が複数ありますし、秋田書店も飯田橋です。
ところが、松本氏は憧れの「東映アニメーション」が大泉に存在することについては、当時まったく知らなかったとのこと。自転車で偶然通りかかって、「あぁ、ここか!」と驚いたと語っていました。
そして、その会社で「999」を作り、その登場人物の像が地元の駅に建つことに、いたく感激している様子でした。(そのためか、話し始めると挨拶が全然止まらなかった。松本氏の機関車にはブレーキがついていないらしい・・・)。
そういえば、有名なトキワ荘があったのも豊島区南長崎で、我が家からそう遠くありません。
産業というのはそれなりの理由があって集積されてくるわけですが、関係者の諸事情で結果的に集まってしまうということも、あるようですね。
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ところで、アニメは、そうそうもうかる商売ではないようです。制作費が赤字になることもままある、と伺っています。
「実はテレビアニメの制作費って、30年間変わっていないんですよ。挙げ句に最近ではそれがさらに下がっている状況で。たとえば、30分の番組1本あたり、安いのだと2、300万、高くても800万円の制作費しか出ない。」(出所:鈴木敏夫のジブリマジック 梶山寿子 日経ビジネス文庫) |
しかし、ヱヴァンゲリヲンが社会現象を起こしたように、ときたま関連グッズが爆発的に売れることがあります。そうなると、かなりの収益が出ます。
ただし、その収益が制作会社に入ってくるとは限りらないようでして、要するに「版権」を持っているところが強い、ということになっています。当然、海賊版も出るので、著作権や商標権についての縛りは厳しくチェックされます。「株式会社ポケモン」のように、ライセンス管理を行うために会社まで作ることさえあるのです。
ちなみに、調布市商工会では、地元のまつりのポスターに「ゲゲゲの鬼太郎」を使いましたが、ちゃんと水木プロの了解をとったとのことです。
しかし、その一方で、アニメの中に登場する背景が、“聖地”として愛好家からもてはやされ、時には騒ぎにまでなる現象も、出ています。
らき☆すたの鷺宮神社(埼玉県久喜市)が有名です。
めぞん一刻に出てきたという駅舎の解体に反対運動が起こった東久留米駅の例もあります。
フランスでは、クレヨンしんちゃんのおかげで、東京・京都に次ぎ“春日部”が日本の地名としてよく知られているといいます(ホンマかいな?)。
そのほか、ケロロ軍曹に酷似した塔が頻出するスカイタワー西東京(田無)、となりのトトロの舞台のモデルとなったといわれる八国山(東村山市、写真下)も、知る人ぞ知るところです。
個人的には「河童のクゥと夏休み」という作品が好きです。この舞台は東久留米市の黒目川でした。
実際に見に行きましたが、作品の雰囲気そのもので、実にいい風情のところでした。
そんなこんなで、地域の自治体では、「観光振興にアニメ利用できないか」という思惑が出ています。
立川市などはアニメによる街おこしに積極的です。
しかし、無名の漫画家が地域ストーリーを書き、それが雑誌に掲載され、それが人気を呼び・・・という“風が吹けば桶屋がもうかり、棚からぼた餅が落ちる”のを待っていたら、いつになるかわかりません。
だったら、いっそのこと、地域限定のアニメを作ってみてはいかがでしょう。
そんなわけで、 |
三鷹・吉祥寺を舞台にした地域密着型アニメを作ってほしい! |
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街おこしのアニメなら、やはり絵になる風景が必要です。
しゃれたショッピングストリート。そして、公園。水辺。散歩道。
でも、欠けてはならないのは、それがクリエーターの集積地から離れていないことです。なぜなら、クリエーターは、景色を写真などに撮って、精密な背景に作り込むからです。地元なら、その手間も軽くなります。
こうした条件を満足するところとして、私がイチオシするのは、三鷹、吉祥寺です。
三鷹駅周辺には、スタジオジブリやプロダクションIGなど、有名なアニメ制作会社が集まってきてます。
当然、アニメ関連の企業の集積も進んでいて、隣の吉祥寺では毎年秋になるとアニメのイベントが開かれます。統計資料はありませんが、クリエーターと呼ばれる人たちも、比較的多くがこの地域に住んでいるのだと推測できます。
アニメは、漫画以上に地場性が強いと、私は考えています。なぜなら、仕事の内容が労働集約的であって、そのうえ勤務時間が不規則。雇用形態も、「仕事を受注されたプロダクションが、その仕事の期間だけクリエーターを雇う」という場合が多いようです。
つまり、クリエーターは制作現場の近くに住む方が、何かと便利ということになります。
自然と、大手制作会社の近くに集まってくる、というのが私の読みです。
取りあえず、仮にタイトルを付けます。
“緑陰に憩う恋の予感 Tokyo love breeze(仮称)”
筋書きは専門家に頼む方法もありますが、いっそのことネットでアイデアを求めたらいかがでしょうか。
そこで、小冊子の漫画を作成するための、ストーリーを募集します。
前提となる登場人物は当方が用意します。
[登場事物1] 若い男性・・・アニメーターになることを夢見て東京に出てきたが、なかなか希望どおりにいかず、三鷹の精密部品メーカーで働いている。
[登場人物2] 若い女性・・・ミュージシャンを目指して東京に来た。エスニック料理店でアルバイトをしながら、機会を待っている。
[登場人物3] 高齢の男性・・・画家になりたくて故郷を飛び出してきてから数十年になる。今は、公園で装飾品を売りながら生計を立てている。
この3人を中心とした、物語の展開をネットで募集します。
募集するといっても、きちんとしたプロットとすることを求めず、「私だったら、こうするな・・・」くらいの、断片的な意見を集めます。それでも、採用された暁には、作品の最後に名を入れるようにします。
選考委員は、地元のプロ作家を選ぶといいでしょう。応募が不足する場合は、その作家が先を書き進むというルールにします。
そして、ある程度話が進んだら、ストーリーの続きをさらに公募するという仕組みです。
よろしければ、ここで注文が一つ。
最後は、「悲しい結末」にしてください。「悲しい」のだけれど「小さな望みがかなう」、という話にしてください。
実は、そういう結末に、日本人の涙腺はたいへん弱いようなんです。
基本的には悲劇、しかし、ちょっとだけ希望があるという話は、徹底的な悲劇やハッピーエンドよりも、私たちの心を揺さぶります。
これを、私は勝手に“フランダースの犬効果”と呼んでいます。
ストーリーがまとまりましたら、それを絵に書き起こす漫画家を募集します。
漫画化にあたっての条件は、地元の風景をふんだんに取り入れること。
そして、漫画化ができたら、その冊子を、地域の団体を通して、美容室の待合室などに置いてもらいます。
そのうえで、アニメ化に向けた賛助金を募集します。
ここのところで、公的機関の出番が必要です。だって、民間に資金募集させたら、胡散臭いだけじゃないですか。
「特別賛助金」というのを作りましょう。数万円程度でいいです。
その賛助金を提供した商店などについては、アニメの中の背景に取り込むことにします。
制作側の都合で、そうできなかった場合は、特別賛助金は返還することが前提です。
そして、放映の際にアニメの中でその商店が登場したならば、その場面を切り抜き、店頭に飾ってもらいます。「当店は、アニメ“Tokyo love breeze”で、紹介されました」と注釈付きで。
そうなれば、他店からも協力の依頼が得やすくなります。あざといと思われるかもしれませんが、商品のロゴをべたべた貼ったヒーローが人気になる時代ですから、何でもありです。
タイアップ商品も作りましょう。
地元の和菓子屋・洋菓子屋から希望を募って、お菓子を企画します。キャッチフレーズも考えます。
・三鷹タルト 『三鷹の風に、恋の香り―』
・吉祥寺デニッシュ 『ジョウジの恋は、甘過ぎない』
と、妄想はどんどんどんどん広がっていきます。
楽しいじゃないですか。
どうです、地域密着型のアニメを作ってみませんか。
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