社会規模での省力化事業が必要だ |
前にも書いたことがありますが、これは喫緊の課題です。
先頃、2014年(平成26年)10月現在での、人口推計が総務省統計局から発表されました(※その後、4月現在の概算値が出ましたが、ここでは4月の概算値を使っています)。
新聞記事の論調は人口の総数が減ったこと、そして、少ない若者で多くの年寄りを養わなければならないこと、に注意喚起をしています。
しかし、これって、もう“耳たこ”な話ですよね。天変地異の話ではないから、多くの人たちは、「今日、明日で何か起こるわけじゃないだろう」「そのうち何とかなるだろう」てな感じで受け止められていると思います。
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ところで、統計資料をもっと読み解いていくことにしましょう。
資料には、長期系列的な数字も示されています。その中に5歳刻みの人口表があります(単位千人)。
これを、若年人口、生産年齢人口、高齢人口に分けてみるとこうなります。
さらに、「誰も死なない」「海外との出入りはない」と仮定した場合(※ありえないことですが・・・)の数字を付け足すと、こうです。
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平成12年 |
平成17年 |
平成22年 |
平成27年
※概算 |
平成32年
※推測 |
平成37年
※推測 |
平成42年
※推測 |
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(2000) |
(2005) |
(2010) |
(2015) |
(2020) |
(2025) |
(2030) |
総 数 |
126,926 |
127,768 |
128,057 |
126,910 |
126,910 |
126,910 |
126,910 |
0 〜 4 歳 |
5,915 |
5,599 |
5,308 |
5,200 |
? |
? |
? |
5 〜 9 |
6,033 |
5,950 |
5,598 |
5,300 |
5,200 |
? |
? |
10 〜 14 |
6,558 |
6,036 |
5,933 |
5,670 |
5,300 |
5,200 |
? |
15 〜 19 |
7,502 |
6,593 |
6,093 |
5,980 |
5,670 |
5,300 |
5,200 |
20 〜 24 |
8,438 |
7,381 |
6,525 |
6,210 |
5,980 |
5,670 |
5,300 |
25 〜 29 |
9,809 |
8,314 |
7,391 |
6,600 |
6,210 |
5,980 |
5,670 |
30 〜 34 |
8,794 |
9,795 |
8,421 |
7,380 |
6,600 |
6,210 |
5,980 |
35 〜 39 |
8,130 |
8,772 |
9,864 |
8,500 |
7,380 |
6,600 |
6,210 |
40 〜 44 |
7,814 |
8,113 |
8,809 |
9,800 |
8,500 |
7,380 |
6,600 |
45 〜 49 |
8,932 |
7,755 |
8,093 |
8,650 |
9,800 |
8,500 |
7,380 |
50 〜 54 |
10,461 |
8,828 |
7,700 |
7,860 |
8,650 |
9,800 |
8,500 |
55 〜 59 |
8,750 |
10,294 |
8,728 |
7,580 |
7,860 |
8,650 |
9,800 |
60 〜 64 |
7,750 |
8,577 |
10,112 |
8,690 |
7,580 |
7,860 |
8,650 |
65 〜 69 |
7,118 |
7,460 |
8,272 |
9,470 |
8,690 |
7,580 |
7,860 |
70 〜 74 |
5,910 |
6,661 |
7,018 |
7,840 |
9,470 |
8,690 |
7,580 |
75 〜 79 |
4,157 |
5,280 |
5,992 |
6,300 |
7,840 |
9,470 |
8,690 |
80 〜 84 |
2,619 |
3,423 |
4,376 |
4,950 |
6,300 |
7,840 |
9,470 |
85 〜 89 |
1,535 |
1,855 |
2,454 |
3,130 |
4,950 |
6,300 |
7,840 |
90 〜 94 |
702 |
843 |
1,029 |
1,360 |
3,130 |
4,950 |
6,300 |
95 〜 99 |
212 |
298 |
380 |
1,360 |
3,130 |
4,950 |
100 歳
以 上 |
25 |
44 |
60 |
440 |
1,800 |
4,930 |
※平成27年(2015年)は4月1日現在の概算値、その他は10月の数字。
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これを年齢階層別にまとめると次の表になります。
いわゆる生産年齢人口(※個人的には15〜19歳を入れるのには違和感があります)ですが、平成12年と比較すると、現在は1割が減少しました。
国内経済の停滞もあるし、海外への生産現場の移転もあるから、ま、そんなに驚く数字ではありません。
さらに、現在と比較すると15年後は1割が減ることになります。15年で1割なんだから、ま、何とかなるかな、って感じですね。
だから、どうしても関心は増大する高齢者の方向へ向かいます。(※なお、下表では高齢者は永遠に生きるという前提で将来人口を積んでいますが、現実にはそんなことはあり得ません)
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平成12年 |
平成17年 |
平成22年 |
平成27年
※概算 |
平成32年
※推測 |
平成37年
※推測 |
平成42年
※推測 |
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(2000) |
(2005) |
(2010) |
(2015) |
(2020) |
(2025) |
(2030) |
0〜14歳 |
18,506 |
17,585 |
16,839 |
16,170 |
? |
? |
? |
15〜64歳 |
86,380 |
84,422 |
81,736 |
77,250 |
74,230 |
71,950 |
69,290 |
65歳〜 |
22,041 |
25,759 |
29,483 |
33,490 |
42,180 |
49,760 |
57,620 |
しかしですね。もう一回、前の表に戻ってみてください。
20歳代(赤字部分)の減少はどうでしょうか。
平成12年には1824万人いた20代は、現在1281万人に減っています。3割減です。
さらに減り続け、15年後には1097万人。現在より14%減。平成12年の6割まで減ります。
そうなんです。若い人のいない国になってしまうのです。
しかも、これはほぼ確定数字。今からジタバタして何とかなるってものではありません。
それに、若い労働者はあちこちの会社を回遊しながら最終的な雇用先を選びます。
つまり、若者に敬遠される職場は社会全体の平均値以上に若手が減っていく可能性があるのです。
若者が減れば、当然、地方の活力が弱まっていきます。ひょっとしたら、もうかなりそういう事態が進んでいるかもしれません。東京は人口の流入が続いていきますが、それも、どこかで枯渇します。
40代が減ると持ち家のニーズは落ちます。たぶん、それより早く、賃貸の小規模住宅の空室が増えるようになるでしょう。
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「そういう事態なら、そのうち行政が効果的な施策を出すだろう」と考える向きもあるでしょうが、行政側の立場からすると効果的な政策が出しづらい分野の問題なのです。
なぜなら、<人手を省く>という施策は、<雇用を奪う>施策でもあるからです。
税金を使って、従業員の数を減らしましょうというキャンペーンを張ることは、難しいです。(※本当は、そういう手立てを取らなければならない段階に来ているとは思いますけど・・・。)
それでは、海外から移民を受け入れるべきかというと、言葉の壁もありますし、日本人は外国の人と付き合うのはあまり馴れていないので、どんどん進むとも思えません。
それに、円安だと、「日本に行って働く」といううま味が、大きく減ります。日本で月給20万円で働き、何とか15万円で生活して、母国に5万円を仕送りする。母国の初任給が5万円のレベルなら、人ひとり養える勘定になります。
しかし、円安で5万円の仕送りの値打ちが3万円程度に減り、また、母国の賃金水準が上がって初任給が7万円くらいに上がったら、仕送りでは人を養うことはできません。
逆に海外からの観光客は「今、ニッポンに観光旅行に行かなくてはウソだ!」ってな勢いでたくさん来ていますよね。日本で買い物をするのが、それだけ割安になっているからです。
たしかに日本は住みやすい国ですから、永住するという前提なら、よろしいかもしれません。しかし、年寄りばかりの国になっても、それが続きますでしょうか?
そんなわけで、海外からの労働力の導入っていうのも期待薄となり、行政も効果的な施策を打てないとすれば、ここは民間セクターが何とかしなくてはならないってことになります。
「若者が職場にいなくなっても困らないようにするにはどうすればいいのか?」――そんな課題に知恵を振り絞る時代が来ているのです。
例えば、「防衛力が弱まると危ないのでは・・・」という不安が浮かびます。警察官は確保できるのだろうか、という心配もあります。 最近は、旅客機のパイロットも不足気味だという話ですが、私たちの子供時代、それは花形の職業だったはずです。どうしてそうなってしまったんでしょうか・・・。
しかし、とはいえ、ま、それは特殊な例として、置いておくことにしましょう。
また、大規模な生産現場では自動化が極限まで進んでいるでしょうし、海外に移転するところは移転しています。だからそれも、大きな影響はないとします(※一応は)。
とすれば、打撃を受けるのはサービス分野でしょうね。アルバイトの店員さんが見つからなくなります。新製品の客引きに若いアルバイトを使うなど、もってのほかになってしまいます。
コンビニの24時間営業は、維持していただきたい。
省力化がどうしても必要になってきます。
若者の多い職場を思い浮かべるなら、例えばレストランです。
例えば、フルサービスをカフェテリア方式に代えて、お客さんに料理を席まで運んでもらえば、それなりの省力化が図れます。フードコートもそういった効果があると思います。
来客自らが、自販機でコーヒーと軽食を選ぶ喫茶店が生まれるかもしれません。
建設現場なんかも、若い人がいなくなれば人手不足となるでしょう。高所作業車や今はやりのドローンとか利用する方法ってありませんかね。
内装工事をパッケージ化して工期の短縮化を図ることはできませんか。
介護現場なんかも深刻な影響を受けます。
今、介護ロボットなんかも開発されていますが、それはあくまでも、介護する職員の負担を減らすものであって、介護職員に代替するものではありません。
人手がなければ、寝たきりの老人が自分で下の世話をするシステムなんかも考える必要が生じてくるのです。情けない話ですが。
医者だって体力仕事だから、総合病院の医師が確保できなくなります。看護師だって確保が難しくなります。夜中に具合が悪くなった入院患者をオンコールでサポートするような職業が生まれるかもしれません。
そういう、あれやこれやを、社会全体で知恵を振り絞るべき時期が来ていると、私は思います。
これは、「できたらいいな・・・」という提案ではなく、現実に突きつけられている課題です。
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