しろうと考えではありますが・・・

在都外国人による東京の観光スポット紹介

東京都産業労働局が「東京のブランディング」に向けた事業を開始しました。

先頃(2015年2月)、その素案ができたのですが、たいへんよくまとまっていて、現在、パブリックコメントを募集しています。これからオリンピックがらみで観光事業を始めようとする会社にとっては、ともかくも一読しておくべき内容ですし、観光関連事業の場合、助成金の申請書に引用できる部分も多々あります。

これまでも、大都市<東京>は、海外の人から、「交通機関が便利」だとか、「夜も安心して歩ける」などは賞賛されていました。加えて、私たちはあまり気づきませんが、東京の「清潔さ」は、他の大都市と比べて抜群に高い評価を得ているようです。

 
もちろん観光振興として、「東京って、こんないいところなんですよ」というパンフレットを作ることは簡単です。
しかし、それでは「作ってオシマイ」。
何か新政策に繋がると面白いですよね。そこで提案させていただきました。

「在都外国人による東京の観光スポット紹介!」

すでにインターネットなどを使って、こういう紹介をしてくれている外国人の方は少なからずいます。
それに、私たちのように、ず〜っと東京人である者よりも、とってもディープに東京のことを知っていたりします。そういう人の力を借りましょう。

東京人以上に東京に詳しい在都外国人が紹介する東京の冊子、あるいはホームページがあったら、結構面白いのではないかと思うのです。
基本的には、母国の知人、特に趣味の仲間などが東京に観光に来たときに、ガイドブックとして手渡せる内容のものがいいです。「オタク訪都者のための秋葉原・中野ガイド」とか。

それに日本人の目とは違った観点でのチョイス、例えば「渋谷のスクランブル交差点が面白い」とか、そういった斬新な価値観は、私たち日本人にも新鮮に感じられるのではないでしょうか。
そのためには、できるだけ“役所的な検閲”や“正確であるが故にわかりにくい表現”を排除することが必要です。

余談ですが、昔、旅行代理店の人に聞いた話です。外国の要人を日本で案内して最後にお土産に何を買いますかと聞いたら、「いゃぁ子どもに頼まれちゃってねぇ。エヴァンゲリオンのポスターって、どこに売っているの?」と尋ねられ、返答に困ったということでした。
私も、北京の方を案内して初めてディズニーランドに行ったとき、「実は私もディズニーランドは初めてなんです」と話すと、その方は「ボクは4回目だよ」ということで、苦笑したことがあります。
意外と、私らは地元のことを知らないのです。

忘れてはならないのは、外国人といっても誰もが英語を使うわけではないので、日本語・英語は必須としても、もうひとつ、紹介者の母国語のものを作ること。
つまり、お金がかかります。多少の広告を載せるにしても、とても経費がペイするとは思えないので、役所は「口は出さないが金は出す」というのを原則にサポートしなければ、面白いものはできません。
でも、そこんところが、実はとても難しいんです。

とはいえ、何か具体的な成果物ができることを期待したいです。理由は、下のとおり。


さて、ここからは後悔話となります。

実は、東京都が「東京ブランド」を作ろうとしたのは、今回が初めてではありません。

私が、商工部にいた時ですから、2005〜6年くらいのことでしょうか、当時も東京をアピールするための「東京ブランド」づくりが、上司から強く求められていました。
しかし、産業政策の面で、そういうものを生み出すのがひじょうに難しかった記憶があります。
結局、具体的な新政策に結びつけることができませんでした。

たしかに、東京には銀座のような素敵なショッピング街がありますが、売っているのは海外の有名ブランドの製品です。
優秀な技術力はあっても生産現場は土地の安い他県へ、さらには人件費の安い海外へと出て行ってしまっています。東京ディズニーランドは東京にはありませんから、都民の税金で作るパンフレットには掲載しにくいです。
伝統的なクラフト作品はあるものの、安い外国製品と比較するとあまりにも高価すぎて趣味人の嗜好の域を出ることができません。
「安くて便利でデザイン的に優れた、こんないいものがありますよ」と宣伝したいのですが、そうなると、自薦・他薦たくさん寄せられて収拾がつかなくなると思います。
そんなわけで、何を推したらいいのか、さっぱり見当が付きませんでした。

さらに難しいのが、「東京のイメージづくり」です。
ランドスケープ的に、「決定的にコレだ!」というものがないのですよね。というより、ありすぎて選ぶのが大変なんです。

私たちの年代ですと、東京と言えば東京タワー。東京ブランドの必須アイテムでしょう。
眺めるたびに、モスラがよじ登っている姿がオーバーラップします。(※ちなみに、東京タワーの大展望台から上の鉄骨は、朝鮮戦争で壊れたアメリカ軍戦車のスクラップ材で作られています。厳密にいうと東京タワーは純日本製ではありません。 出所:東京トリビア 東京新聞 東京新聞編)。
しかし、今はスカイツリーが出来た。ですが、海外への知名度は今ひとつです。聞くところによると、怪獣がスカイツリーを破壊するのは、いろいろと“大人の事情”があって難しいようです。スクリーンに出ると、有名になるのにねぇ〜。
そのほかにも、東京にはハイテクなビルディング、芸術的な建造物、伝統的な建造物などたくさんあります。

しかし、行政が選ぶには公平性が担保されなければなりません。でも、いくら投票で選んだからといって公平とはかぎりません。新東京百景を選んだときも、かなりの組織票が動いたという噂が立ちました。
行政が公平に物事を行うと、必ずこういう不都合が起きます。

今回提示した、「在都外国人による東京の観光スポット紹介」についても、注意が必要です。
例えば、「〇〇国人が安心して集える〇〇地域のおいしいレストラン」という紹介記事を載せると、ライターに金銭を渡して自分の店を紹介するように仕向ける人が出てきます。
かつてネットで、「みんなで選ぶおいしいお店」が特集された際も、店長が従業員に命じて店の高評価をせっせと掲示板に投稿させた、という話を聞きました。まさかとは思いますが、TV番組の「ふらりと訪れたら大感激のおいしさ!」のお店から、撮影スタッフがPR料金を取っている・・・、なんてことはないですよね。

そういう不公正が発生すると、今はネット社会ですから、かならず密告する人が出てきます。しかし、そのチクリ自体、信憑性があるものかどうか、本当のところはわかりません。

こういう事態を防ぐためには、ものすごいマンパワーと、費用がかかるのです。
それをクリアできなければ、簡単には行政施策には落とし込むことができない。
悩ましいところです。


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