しろうと考えではありますが・・・

入れ替えSWOT
経営分析のツールにSWOTというのがあります。
あまりにもポピュラーなので言及するのも、いまさらのように思いますが、取りあえず概略だけ説明しておきます。

会社の経営状況を分析する場合、専門家は「枠を切る」のがとてもとても好きです(フレームワークとか呼ぶらしい)。
SWOTはまず、経営者などから聞き取ったり、手に入れたデータを分析したりして、その会社の経営が置かれた状況を、「内部状況」と「外部状況」に分けます。
そして、さらに内部状況は「強さ(Strengths)」「弱さ(Weaknesses)」に分類し、外部状況は「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」に分類します。
四つの要素の英語の頭文字を繋げるとSWOTになります。
そして、その内容を記述することで、いかにももっともらしい分析報告を記述するのです。

内部状況   外部状況
強さ
(Strengths)
  機会
(Opportunities)
弱さ
(Weaknesses)
  脅威
(Threats)

具体例を示せば、こんなところになります。

内部状況   外部状況
強さ
・高い技術力が蓄積されている
  機会
・技術革新分野で自社の技術の活用ができる
弱さ
・従業員が高齢化している
  脅威
・海外の競合企業との競争が厳しい

専門家は、これらをさらに詳細に記述し、報告書を作ります。
例えば、「新たな技術革新分野への進出を目指すべきですが、そのためには海外の競合企業に勝たなければなりません。そこで、貴社に蓄積された高い技術力を活用すべきです。外部から人材を積極的に受入れ、技術の伝承とリニューアルを図ることが必要だと思われます。」
どうです、もっともらしいでしょう。

しかし、経営者から見れば、「それがどうした」ということになります。
「低賃金を背景にコスト削減をしてくる海外勢力にどうすりゃ勝てるのか。年寄りの従業員をどんどんクビにしろというのか。技術力があっても特許を取るには金がかかるぞ。それに国内の大手メーカーは内製化を進めているから、ちっぽけな企業の技術など見向きもしない」

それじゃ、せっかくのSWOTも絵に描いた餅で終わります。
そこで提案。
入れ替えSWOT!  
社内研修のために、従業員にSWOTを作らせたらどうでしょうか。

中小企業の経営者には、何でも自分で決めたいというワンマン経営者が多いと思います。一国一城の主にならなくては、会社を興す意味がありませんからね。

そして、ワンマン経営者はたぶん上記の四つの要素のうち「機会(Opportunities)」にいつも顔が向いていると推測できます。
逆に、実際に会社のことを冷静に分析できるのは、むしろ従業員の側だったりします。
これが、得てして対立の原因となる。

以前、労働相談を受けていて、解雇された従業員が会社の心配を切々と語る場面に行き当たることが何度かありました。特に経営者が代替わりして、その経験不足が懸念される場合が顕著です。

例えばこうなります。

経営者の考え方   従業員の考え方
機会
・A社は〇〇を新発売した、B社は□□を企画中だ。でも我が社の従業員からは何も新しい提案がない。ほんとに、使えないヤツばかりだ。  
   強さ
・ウチの主力製品の△△は、まだ市場で、圧倒的強さをもっていますよ。無理は禁物だと思いますが。
  弱さ
・私もあと数年で退職なんです。だから、社長はバクチを打たないでほしいな。
 
  脅威
・これまで国際的に優位を保ってきた日本製品の多くが海外との競争でピンチに立たされています。A社の新製品だって、B社の開発企画だって、同じ運命になるんじゃありませんか。

そこで、経営者と従業員の立場を入れ替えてみて、会社の状況を見つめ直してみてはどうかと思うのです。

経営者の検討課題   従業員の検討課題
強さ
・自社の強さはどこにあるかを見つけ、それが失われないためにやるべきことを考える。
  機会
・会社の強さが思っていたほど頼りにならないとわかったとき、
・会社の弱さが思いのほか切羽詰まっていたとき、
・外部からの脅威が予想より早く顕在化したとき、
を想定し、今取るべき対応策は何かを考える。
弱さ
・自社の弱さがどこにあるかを見つけ、その背景にある本当の理由は何かを考える。
 
脅威
・自分が求めている「機会」に死角はないかを検討し、予め危険を回避するにはどうすればよいか考える。
 

そういう自己研鑽を積むと、経営者と従業員の距離が、ぐっと縮まるように思うんですよね。
どうです。
入れ替えSWOT。
社内研修に取り入れてみてはいかがですか。


話は変わりますが、私、以前に「経営革新計画」の受付の仕事をしていました。
経営革新計画の策定には、SWOTが多用されます。

その頃は、優秀な計画に補助金を出す制度もありましたが、補助金まで辿り着く計画案がきわめて少ないうえ、事実関係を確認する手間を考えると効率が悪すぎる支援策だったことから、補助金制度は廃止されました。
それに、違法ではないものの計画書を代筆して商売にするコンサルも横行していました。事業計画は、経営者が自ら検討するところに意味があるのであり、他人に作らせたのでは経営力強化には繋がりません。
もちろん、真に経営者の思いを投影した案であっても、当初の見込みどおりいかないというケースは多々あります。

とはいえ、中には、計画をしっかりやり遂げ、初期の目標(下記)を達成した企業というのもあります。

指標 5年計画 4年計画 3年計画
1. 「付加価値額」 伸び率目標
15%以上
伸び率目標
12%以上
伸び率目標
9%以上
2. 「一人あたりの付加価値額」
3. 「経常利益」 伸び率目標
5%以上
伸び率目標
4%以上
伸び率目標
3%以上

東京都は計画完了企業を追っかけ調査し、優秀な案件を表彰したりしていますが、それはあくまで名誉でしかありません。

私個人としては、計画達成企業に実利を与えてあげたりと思っています。

例えば、商取引や金融機関が企業に融資をするときに「与信」という基準が重視されます。経営革新計画を策定し、計画どおりの伸び率を達成したという実績は、与信に準じたものと扱ったらどうでしょう。
上記の1つを達成した企業を「Aランク」、3つとも達成した企業を「トリプルAランク」といったふうに認定し、別の補助金・助成金制度の申請の際に、申請手続を簡便にするとか、補助金等の適用範囲を拡大するとか、何らかの便宜を図ってあげてもいいのではと考えるのです。

厳密にいうと法制度のどっかにひっかかってできないのかもしれませんが、素人考えでは、何かやってあげられることはないかと思うしだいです。

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