月夜裏 野々香 小説の部屋

    

近未来 短編小説 『Love Quest』

 

 

 日日テレビの会長室

 赤いフカフカの絨毯がフロア全体に敷き詰められ、

 高価なテーブルの向こうに幹部たちが座り、

 幹部たちの後ろに “見サル” “言わサル” “聞かサル” の彫刻が置いてあった。

 新人ディレクターが企画書に目を通し・・・

 「会長。この企画は何ですか?」

 「ラブ・クエストゲームだ」

 「し、しかし、これは・・・」

 「世の中は、需要と供給によって成り立っているのだ」

 「会長。マスメディアは視聴者の需要に応えた番組を供給するのではないですか」

 「違うな」

 「君ぃ 青いこと言ってもらっては困るよ」

 「マスメディアは、スポンサーの需要に応えた番組を供給しているのだ」

 「スポンサーがいて、我々が存在するのだ」

 「視聴者など、我々が作ったモノに踊らされてる大衆に過ぎんよ」

 「しかし・・・会長・・・このスポンサーは・・・」

 「既に日本と中国の力関係は逆転している」

 「日本は、一人当たりのGDPで中国に勝ってる」

 「しかし、華僑と連なる中国共産党幹部は、日本の大資本家より金持なのだ」

 「そして、日本経済は、その中国の資本力に頼らなければならない」

 「中国共産党幹部は、子弟の愛人。あるいは花嫁探しを求められた」

 「他にもアラブ資本。ユダヤ資本からも問い合わせが来ててな」

 「そこで、番組が “日本最高の花嫁候補は誰か 大会” を開催する」

 「まぁ 最初に容姿、語学試験、一般教養、料理、経済観念などの試験は受けて貰うがね」

 「賞品は、スポンサー国。1ヶ月の旅行と1500万円の賞金だ」

 「し、しかし・・・」

 「それと・・・その企画書は、君の企画発案になってるからね」

 「えっ!」

 慌てて、企画書の発起人欄を探し・・・

 自分の名前を確認する。

 「・・・・・」

 「なぁに心配するな。君の家族の世話は、我々が責任を持って看るから」

 「そ、そんな」

 「我々は “見てないし” “言ってないし” “聞いてなかった” いいね」

 「そ、そんな。まるでヤクザの鉄砲玉じゃないですか」

 「なにを言う」

 「我々は、合法なマスメディアだ」

 「喧伝し、謂われない誹謗中傷からスポンサーを守ることでシノギを得てる」

 「スポンサー以外のマイナーな企業、団体、個人が誹謗中傷に晒され潰されたとしてもだ」

 「我々のせいじゃないしね」

 「そうそう、不可抗力、不可抗力」

 「拳銃、ドス、麻薬の代わりに画像、音声、文章を使うし」

 「不幸の手紙と幸福の手紙くらいの違いはある」

 「そうそう、ヤクザと、ちっとも似てないじゃないか」

 「・・・・・」

 「外国のお金持ちと、日本の素晴らしい女性を繋ぐ道を作る」

 「それは、我々マスメディアに与えられた天職だよ」

 「彼女たちも金持ちとの出会いを心待ちにしてるはずだ」

 「そうそう。女性たちも玉の輿だよ」

 「「「うんうん」」」

 「・・・・」

 

 

 マスメディア

 絢爛煌びやかな世界に憧れ、呼び寄せられる若者たちは少なくない、

 浮き沈みは激しく、夢みる者のたちの多くは労苦を吸い上げられ、

 人脈と金脈と才能のない者の待遇は、悲惨極まりない、

 ごく一部が人々の人気を集め君臨し、

 多くが人権も保障もなく有象無象に使い捨てされる華やかな世界

 巨大な垂れ幕に “日本最高の花嫁候補は誰か 大会” と書かれ、

 司会者が女性たちに難問を出していく、

 「では、この食材で食事を作ってもらいます」

 女性たちは、一斉に食材を使って調理を始める、

 そして、隠れた場所の貴賓席に男たちが集まり、

 そこに作られたばかりの料理が運ばれてくる。

 「あの4番と7番の娘いいある♪」 中国人

 「わたしは、あの2番の娘が気に入ったな」 アラブ人

 「わたしは、7番と8番の娘だな」 ユダヤ人

 「7番は駄目ある。わたし先言ったある」

 「関係ないだろう。金次第だ」

 「・・・・・」 中国人 むっすぅぅううう〜

 「ディレクター。直ちに2番、4番、7番、8番の素行調査書を・・・」

 「はい」

 

 

 会場

 「どうです “日本最高の花嫁候補は誰か 大会” の自信の方は?」

 「さぁ わかりません」

 「またまたぁ」

 司会者が楽しげに出演した女性たちと歓談し、

 「では、そろそろ、集計がスクリーンに出てきます」

 「有識者20人と全国200万の視聴者が選んだ日本最高の花嫁候補は・・・」

 1番から10番までのグラフが伸び上がり、

 7番のグラフの上で、王冠が輝く

 「おめでとうございます〜! 今回の優勝は、7番 小野コマチさんです〜!」

 「報償金は1500万です〜!!」

 「次、1ヶ月の旅行先はランダムで決まります」

 スクリーンに中国上海の豪華ホテルの映像が映し出される、

 「そして、優勝できなかった女性もワンチャンスボーナスです」

 「ルーレットが回りますので、ボタンを押してください」

 「当たった方は、1週間の海外旅行と300万がプレゼントされます」

 女性たちは思い思いにボタンを押し、

 ルーレットが決められた場所に止まっていく、

 「おめでとうございます」

 「2番さん、ドバイ1週間と300万円」

 「4番さん、上海1週間と300万円」

 「8番さん、ニューヨーク1週間と300万円です」

 「おめでとうございます〜!!!!」

 

 

 空港 国際線ターミナル

 優勝者の女性がターミナルで出発を待っていた。

 芸能人のような華やかさはないものの、

 努力すること、忍耐することを嫌がらず、

 誠実さと謙虚さと前向きな意思を感じさせる、

 いるだけで落ち付いた安心感を与えてくれそうな女性だった。

 少なくとも彼女を選んだ人物は、大和撫子をイメージし・・・・

 彼女は腕時計とターミナルの時計を確認し、

 「・・・そろそろ、時間ですね」

 「では、お気を付けて・・・」

 「ありがとうございます、ディレクターさんが見送ってくれるなんて・・・」

 「番組を成功させてくれたのですから当然です」

 「では、失礼します」

 女性は、優勝して自信を持ったのか、颯爽と出かけていく、

 『俺だって辛いんだ・・・』

 ディレクターは、携帯の短縮を押すと

 “いま出発しました”

 

 

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 月夜裏 野々香です

 240万HIT記念作品です。

 やっぱり、世の中、お金でしょうか

 流石にネタが尽きてきた記念作品は、やめようかな・・・

 

 

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近未来 短編小説 『Love Quest』