月夜裏 野々香 小説の部屋

    

戦後改変 仮想歴史 『第一次FX』

 

 

 1958年

  航空自衛隊の滑走路脇に主力戦闘機がF86セイバーが並んでいた。

  戦闘機は、防空だけでなく、

  国防兵器体系の根幹を成し、国防戦略戦術の要だった。

  F86セイバーは、初飛行1947年、運用開始1948年、採用から10年を経ている。

  過渡期のジェット機は寿命が短く、

  仮想敵のソビエト空軍は、MiG15からMiG17、MiG19へ、

  そして、主力戦闘機は新型機MiG21バラライカへ移行していた。

  航空自衛隊とソビエト空軍の戦力比が開き過ぎればソビエトの対日戦を誘う、

  日本の防空は、さらなる戦力強化が求められた。

  次期主力戦闘機の選定基準は、

   曰く、速度、マッハ2(2450km/h)以上、

   曰く、8分以内で高度15500m、

   曰く、最大上昇限度18000m、

   曰く、戦闘行動半径約380km、

 しかし、敗戦国日本は、国産戦闘機を自主開発できる状況になく、

 候補機は、アメリカが開発していた4機種

   F104スターファイター      F100スーパーセイバー

   N156F(後のF5ノースロップ)  F102(F106)デルタダガー 

 に絞られていた。

 戦闘機選定は、莫大な国家予算が動くことから政官財の思惑も絡んでいる。

 そして、第5の機種、グラマン社のG98J11戦闘機も候補に上る。

 巨大な利権を巡って様々な思惑が絡み、幾つもの勢力が謀略を巡らせ、工作員が暗躍していた。

 グラマン社は、時の総理大臣の岸に対し、

 G98J11戦闘機1機に付き、1000万円のマージンを約束したと噂が流れ、

 日本全体が次期主力戦闘機の選定で揺れていた。

 

 

 軍隊は、主権、国土、国民を守り、国家にとって必要不可欠なものである。

 しかし、戦後日本は、正気でない歪な国民感情に支配されていた。

 絶頂期にあった大日本帝国は、軍部の膨張と傲慢で予算を食い潰され、

 国民の多くが軍縮を望んでも軍部はクーデターを辞さなかった。

 そして、保身と組織拡大のため大陸利権へと拡大させてしまう。

 財政は、悪化の一途を辿り、

 予算縮小を恐れた軍部は、大陸利権を得るため暴走し、

 日本帝国を大国アメリカの経済制裁と、武力制裁の憂き目に遭わせ、

 数百万人もの犠牲者を出した。

 多くの国民が、軍属利権と軍部の傲慢が、帝国を滅ぼし、

 家々を燃やし、家族を徴兵して殺したと認識してしまう。

 都市を焼け野原にされた記憶が薄れても、

 他国の侵略から、主権と、国土と、国民を守るべき軍部に裏切られ、

 アメリカ軍に国土を占領された歪な社会が形成され、

 いまなお、アメリカ軍政と戦後体制によって日本の国体は、歪められ、

 身内を軍部の暴走で殺された日本人の心に不信と、悲しみと、憎しみが残り、

 冷やかな視線を防衛庁に向けていた。

 

 この時期、アメリカの圧力の為か、

 日本国民の衆愚化のため、歴史、政治、経済の教育が疎かにされていたせいか、

 公職から追放されていた戦犯と、陸海軍将校が日本の国政に復帰し、

 国防を預かる国政と、大多数の日本国民に意識と感情のズレが生じていた事は否めない、

 国防が必要不可欠であっても、

 国民感情は、旧軍の魂を継承する自衛隊内の旧将校を警戒する。

 まだ戦後であり、

 国政が国民とのギャップを失念し、不祥事を起こせば国民は過剰に反応してしまう。

 50年代末から60年代初頭は、そういう時代だった。

 

 源田は怒りに身を震わせていた。

 「あの事は秘密だって言ったじゃないか。仁義外しやがって・・・」

 自衛隊幹部と、商事役員の不祥事が相次ぎ、

 G98J11戦闘機は棚上げ、

 F104スターファイターは選定落ちとなり、

 第1次FXが、宙に浮いてしまう。

 

 

 防衛庁

 航空自衛隊幹部たち

 「どうするんだよ。国防をよ」

 「あの馬鹿が不祥事起こさなければ」

 「もう、投げ投げ、防空無理」

 

 

 1960年

 戦時下のアメリカ航空産業は、採算不能な高価な軍用機を月産数千機を生産していた。

 しかし、平時になると、軍用機生産が著しく低下し、競合する航空業界も大き過ぎたし多過ぎた。

 そして、アメリカの国内市場だけだと、

 数百機規模の民間航空産業しか支えきれなくなっていた。

 戦時中の名だたる航空会社群が、統廃合しつつ、人員を整理削減しても巨大工場が残る、

 そして、維持費は、赤字として、毎年の如く累積されていく、

 民需に転換しきれず残った部門は多く、

 第二次世界大戦で膨れ上がったアメリカ巨大軍需産業は、民間機需要の縮小にも困窮し、

 軍が要求する高性能化と、採算の狭間でもがいた。

 

 

 この頃、米ソの核弾頭は、軽量化が進み、

 戦略爆撃機は、北極海をまたいで、大陸間を容易に往復できた。

 互いの核兵器は、敵の軍事拠点だけでなく、

 基幹産業だけでなく、社会基盤さえ破壊してしまうほど強力になり、

 平時でありながら、国民の大多数の生殺与奪権を敵国に握られてしまう。

 そんな、人類始まって以来の狂気に晒された時代を迎えている。

 その脅威によって、本土防空戦闘機は、重要性を増していた。

 コンベア社が開発していた主力要撃機F06デルタダートは、

 優秀な機体と

 半自動地上管制迎撃システム (SAGE) 、

 自動兵装管制装置 (AWCS) MX1179を合わせた迎撃能力が優れ、

 世界最強の要撃戦闘機と言えるもので、

 ソビエトの核攻撃からアメリカ合衆国と、アメリカ国民を守る防空の要だった。

 しかし、電子関連技術力の不足で実用化が遅れ、

 F106の単価は、470万USドルに達し、

 アメリカ人が信奉するコストパフォーマンスの限度を超えていた。

 

 一方、マクドネル社のF101ヴードゥーは、

 既存の技術で達成し得るスペックで、コストパフォーマンスを貫き、

 F106デルタダート(470万USドル)2機分の予算で、

 マクドネルF101ヴードゥー(175万4066USドル)を5機配備できた。

 そして、尊き見識の有るアメリカ議会は、

 F06デルタダートが、肝心の迎撃システムが利用できないことから

 無駄に高価な機体と結論付け

 予算不足を理由にF106デルタダートをキャンセルし、

 アメリカ本土防空の任をマクドネルF101ヴードゥーに当たらせてしまう。

 

 

 コンベア社は、コンソリデーテッドと、バルティ・エアクラフトが合併した企業で、

 大戦中は、B24、双発水上機PBYなどの軍用機を生産し、

 アメリカ軍の航空戦力を支えてきた企業だった。

 しかし、戦後、軍需は縮小し

 開発したB32ドミネーター、B36ピースメーカーも主力機なりえず、

 民間需要も、数百機台の市場を奪い合うという過当競争に直面していた。

 コンベア社の経営は、旅客機コンベア880の開発と販売で失敗で傾いており、

 生き残りを賭け、起死回生の手に出た。

 紆余曲折の後、コンベア社のテーブルに日本の国債が載せられ、

 コンベア社は、F06デルタダートの設計図と、現物を厚木基地へ送ってしまう。

 

 アメリカ合衆国

 白い家

 世界の中心の館にコンベア社の社長が呼ばれ、

 「貴様は、なんてことしやがる」

 「日本航空産業は後進国。どうせ、開発不能でしょう」

 「し、しかしだな・・・」

 「日本が身の程をわきまえたら、もう一度、スターファイターを売ってやればいいじゃないですか」

 「んん・・・」

 「日米安全保障条約の手付と思えば安いモノでは?」

 「どうせ開発不能ですって」

 「・・・・・」

 

 

 と、アメリカは、F106デルタダートの開発を日本に引き継がせてしまう。

 結局、F106デルタダートは、開発仕様の目玉となっていた 自動兵装管制装置 (AWCS) のMX1179 が開発されず、

 想定の迎撃能力は見込めなかった。

 日本政府と防衛庁は、F104戦闘機(142万USドル)の3倍の機体価格に躊躇したものの

 北海道と日本海は、極東ソビエト空軍機ツポレフTu95の領空侵犯が相次ぎ、

 時代遅れのF86セイバー戦闘機は、対応が困難になっていた。

 政府は逼迫し、

 防衛庁も追い詰められていた。

 そして、日本航空機産業は、コンベア社が丸投げした機体で、分の悪い賭けをしなければならなかった。

 とはいえ、F106デルタダートは、ブラックボックスのない丸投げの機体で、兵器体系の独立で有利だった。

 そして、F106デルタダートの余力のある機体は、将来の改良に耐え、

 日本独自の航空技術発展を遂げる可能性も秘めていた。

 

  01月19日 日米相互協力及び安全保障条約(新安保条約)調印

         日米安全保障条約は、F106デルタダートの第一次FX選定と込みで調印される。

  04月19日 韓国で李承晩打倒を叫ぶ市民が蜂起する(4.19人民蜂起)

  06月15日 改定安保条約批准阻止の全学連7000人が国会に突入、

 日本政府は、連日の市民デモに対し、

 首相官邸

 「まずい」

 「F106デルタダートで市民感情は、比較的いいようですが」

 「だがな・・・」

 政府は、右翼団体とヤクザ28000人を投入して市民デモを蹴散らした。

 

  07月14日 岸信介首相は、池田新自民党総裁就任祝賀会からの帰路、暴漢の襲撃を受け重傷を負う

 

 市民の会話

 「市民デモを抑えるのに右翼やヤクザなんか使うから」

 「自業自得だよな」

 「国民が正しい判断をしてるとは限らないだろう」

 「まぁ そうだけど。政府が正しいとも限らないだろう」

 「まぁ どっちも間違ってるけど、より、被害の少ない選択をしたいよね」

 「それは言える」

 

  10月12日 日本社会党・浅沼稲次郎暗殺事件。

 

 市民の会話

 「今度は、左翼の次は右翼か。何なんだろうね」

 「もう、血なまぐさいのは嫌だな」

 

 

 深夜

 キャー!

 「朝鮮は戦勝国ニダ」

 キャー!

 「戦勝国民の言うこと聞くニダ」

 キャー!

 という事件が多発していた。

 

 

 1961年

  11月 アメリカ合衆国は、南ベトナムにヘリコプター部隊と軍事顧問部隊を派遣。

      ベトナム内戦に介入する。

  12月12日 三無事件

 

 1962年10月15日〜28日 キューバ危機

 

 日本の技術者たち

 F106デルタダートは、F104戦闘機より巨大だった。

 「んん・・・ エリアルール改装後なのは、幸いだっか」

 「電子装備は?」

 「酷いよね。8割は、やり直しかな」

 「ハードポイントは、主翼2発と、胴体5発の7発」

 「仕様のAIR2Aジニー空対空核ロケット(373kg)は無いよね」

 「非核三原則だからね」

 「じゃ ハードポイントを増やして・・・」

 「AIR2Aジニー代わりにAIM4Fスーパーファルコン(68kg)を4発搭載するか」

 「それなら対艦ミサイルを装備したい」

 「いや、戦闘機だから・・・」

 「アメリカがM61バルカン(298kg)を開発してるらしいよ」

 「ライセンス取れるなら使わせてもらう方がいい」

 「そうなると、M61バルカン1丁と」

 「セミアクティブ・レーダー誘導のAIM4Fスーパーファルコンが2発」

 「赤外線誘導のAIM4Gスーパーファルコンが2発か・・・」

対空ミサイル AIM4F (F106) AIM4G (F106) AIM9 (F104)
全長×直径 (翼幅) 218cm×16.8cm (61cm) 206cm×16.8cm (61cm) 283cm×12.7cm (56cm)
重量 68kg  66kg 70kg
射程 11.3km 11.3km 4.8km
速度 M4 M4 M1.7
誘導方式 セミアクティブ・レーダー誘導 赤外線誘導 赤外線誘導
弾頭炸薬 13kg 13kg 4.5kg
       

 「値段は張るけどF104のAIM9ミサイルより長射程だから、それは、それで有利ではある」

 「機内にミサイルを装備できるのも悪くない」

 「機銃はどこに置くかな」

 「下手なところに置くと、薬莢が吸気口に入るかもしれないからな」

 「レーダードームの後ろで、機首下部だろう」

 「多少変更することになるが余裕のある設計だし、何とかなるだろう」

 この時期、配備を予定していた地対空ナイキミサイルの射程は48kmに過ぎず、

 高速で航続距離の長い要撃戦闘機と

 長射程の空対空ミサイル4発は、航空迎撃プラットフォームの価値を高め、

 航空戦力が拡充されていく、

 

  F106Jデルタダート F104スターファイター
重量 11077kg/15670kg/18975kg 6760kg//12490kg
寸法 全長21.55m×翼幅11.67m×全高6.18m 全長16.7m×翼幅6.69m×全高4.11m
翼面積 61.52u 14u
エンジン J75P17推力7303kg/10886kg J79GE7推力6715kg/8116kg
速度 2455km/h 2695km/h
航続距離 2963km〜4260km 2920km
  M61バルカン20mm砲×1 M61バルカン20mm砲×1
  AIM4F×2 AIM9×2 AIM9×4発
  ロケット弾、爆弾3000kg ロケット弾、爆弾3400kg
1ドル=360円 470万USドル(16億9200万円) 142万USドル(5億1120万円)

 

 1964年08月

  トンキン湾事件により、アメリカ軍は北爆を開始、ベトナムに参戦していく、

 

 防衛庁

 「なんでアメリカ軍は戦車部隊を投入しないんだ」

 「航空産業を維持するためじゃないの」

 「ふっ アホが、ヘリコプター2000機より、戦車1000両だと思うね」

 

 

 1966年

 関係者たち

 「F106デルタダートの量産は、軌道に乗ったし」

 「向上型は、チタンを増やして軽量化させ、エンジンを強化していくことかな」

 「浮いた分の重量は、レーダーの強化だろう」

 「栗田。第2次FXは、F4ファントムにしないかって」

 「嫌だ」

 「あんなアヒルが引っくり返ったような戦闘爆撃機乗りたくない」

 「まぁ そうだよな」

 制空戦闘機に特化したF106Jデルタダートは、侵攻型のF4ファントムにない精悍さがあった。

 比較的大きな機体と、翼面積61.52uは十分な搭載能力と揚力を確保でき、

 電子機器の向上に合わせた改良が重ねられていく、

 

  F106J2デルタダート F4ファントム
重量 11077kg/15670kg/18975kg 13757kg/18825kg
寸法 全長21.55m×翼幅11.67m×全高6.18m 全長19.20m×翼幅11.71m×全高5.02m
翼面積 61.52u 49.2u
エンジン 推力7303kg/10886kg×1基 推力5253kg/7962kg×2基
速度 2455km/h 2370km/h
航続距離 2963km〜4260km 2600km
  M61バルカン20mm砲×1 M61バルカン20mm砲×1
  AIM4F×2 AIM9×2 AIM7スパロー×4  AIM9サイドワインダー×4
  ロケット弾、爆弾3000kg ロケット弾、爆弾7258kg
    2400万USドル

 

 

 1968年

 01月21日 青瓦台襲撃未遂事件

 01月22日 北朝鮮プエブロ号事件。

 01月29日 東大医学部無期限スト突入。東大闘争始まる。

 01月30日 ベトナム戦争において、南ベトナムの共産ゲリラが蜂起、テト攻勢開始。

 02月15日 1967年の米国際収支赤字35億7000万円で戦後2番目。

 06月05日 ロバート・F・ケネディ暗殺事件

 08月20日 ワルシャワ条約機構軍がチェコスロヴァキアに軍事介入(チェコ事件)。

 

 漢江が凍ると戦車が走ることができた。

 11月10日 韓国国内で連日、暴動とストが起きていた。

 11月20日 漢江が凍る。

 その日、韓国の至る所で爆発が起こり、銃撃戦が始まる。

 そして、北朝鮮軍の爆撃と砲撃が韓国軍とアメリカ軍の頭上に降り注ぎ、

 北朝鮮軍のT34戦車部隊が非武装地帯(北朝鮮側北2km幅+韓国側南2km幅)を突破した。

 韓国国内に潜伏していた朝鮮軍第5列の攻撃により、

 韓国軍とアメリカ軍は浮足立ち、

 爆撃と砲撃に晒されながら38度線から後退していく、

 

 

 日本 首相官邸

 「北朝鮮が韓国に侵攻しました」

 「ふ〜ん」

 「在韓米軍と共同戦線を」

 「なんで?」

 「北朝鮮軍に在韓米軍が攻撃されたのですよ」

 「在日米軍じゃないだろう」

 「安保条約は、在日米軍との共同戦線のはず」

 「そ、それは・・・ そうですが・・・」

 「・・・・・・」 にや〜

 

 11月26日 ソウル陥落

 

 アメリカ太平洋艦隊は、ベトナム沖と朝鮮半島沖に二分され、

 アメリカ陸軍も熱帯雨林のベトナムと、寒冷地の朝鮮半島の両面作戦を強いられてしまう。

 「韓国防衛は日本の生命線ニダ」

 「半島が共産化したらドミノみたいに日本も共産化するニダ」

 「日本はアジアの同胞のため参戦するニダ」 右翼

 「「「「・・・・」」」」 日本国民 しら〜

 

 「自由と平等と平和と民主主義の為に戦うニダ」

 「朝鮮人のために血を流すことを惜しんでは駄目ニダ」 左翼

 「「「「・・・・」」」」 日本国民 しら〜

 

 「そ、そうニダ。半島利権があるニダ。きっと日本財政も助かるニダ」

 「もう一度、半島を占領して、むかしの栄光ある日本に返り咲くニダ」

 「「「「・・・・」」」」 日本国民 しら〜

 

 

 厚木基地上空

 航空自衛隊のF106Jデルタダートと、アメリカ空軍のF4ファントムが模擬演習を繰り広げていた。

 スペックと機体形状で性能の半分が見当が付いた。

 戦闘機の戦いは、およその優劣が計算で決まり、地上にいるとき、展開を推測できる、

 推力重量比で勝る方が加速しやすく先手を取りやすかった。

 離陸と同時にF4ファントム(推力重量比0.86)が、F106Jデルタダート(推力重量比0.71)を引き離していく。 

 F106Jデルタダート(翼面荷重255kg/u)は翼面荷重で、F4ファントム(翼面荷重382kg/u)に勝り、

 F106Jデルタダートは、F4ファントムの内側へと回り込んでいく、

 もっとも、搭載する兵装と、燃料消費で重量比が刻々と変わり、

 機体形状からくる空力特性を利用した戦術がパイロットの頭の中で練られていく、

 そして、機体性能と、別に複雑な天候と、パイロットの練度、2機対2機という連携が絡んだ。

 

 日米の将校が基地上空を見上げていた。

 アフターバナー音が幾度も響き、ジェット機雲の軌跡が絡み合う。

 そして、模擬弾で真っ赤に塗られたF4ファントムが着陸してくる、

 国と国の戦いというより国防産業を賭けた企業の主導権争いなのか、

 アメリカ軍パイロットとマクドネル社の関係者が落胆し、

 日本軍パイロットとコンベア社の関係者がほくそ笑む。

 日本は、経営の傾いたコンベア社を助けることで味方につけ・・・

 

 首相官邸

 「日本は朝鮮戦争に参戦して欲しい」 アメリカ軍将校

 「憲法第9条と、国民のコンセンサスが・・・」

 「ではF106Jデルタダートを売って欲しい」

 「武器輸出三原則が・・・」

 「頼むから!」

 「そうですな・・・」

 「・・・・・」

 「それじゃ・・・」

 

 その日、アメリカ軍は、竹島を占領し、ヘリポート建設を日本に委託する。

 さらに日本政府は、アメリカと有利な取引を行い、

 日本航空は、コンベア990コロナードの開発、生産、販売に食い込んでいく、

  コンベア990コロナード

   全長42.47m×全幅 36.60m×全高12.05m 翼面積209u

   重量54839kg/114759kg  7280kg×4基

   最大速度990km/h  巡航速度912km/h  航続距離6200km

   座席数 最大133席

 

 

 1969年

  第二次朝鮮戦争、

  北朝鮮軍の侵攻と、韓国人の蜂起により、

  在韓米軍と韓国軍は戦線を維持できず次々と後退していた。

  釜山港は、対馬航空基地から出撃するアメリカ空軍によって辛うじて守られていたものの、

  北朝鮮軍に包囲砲撃され、焦土と化していた。

  朝鮮人の多くは、保身から北朝鮮側で戦い、

  在韓アメリカ軍の朝鮮人不信は高まり、半島を守ろうという戦意を保てず士気が低下していた。

  そして、韓国の既得権を持つ者たちだけが、在韓アメリカ軍と共に命懸けで釜山を守っていた。

 

 

 霞が関の住人たち

 「ベトナム戦争と第二次朝鮮戦争で、F106デルタダートのラインを増やせたのは助かるね」

 「何より戦訓が得られるのがいい」

 「20mmバルカン砲装備は、正解だったみたいだな」

 「自衛隊からアメリカ軍に転属させた部隊は全員エースになったらしい」

 「半島は危ないらしいけど。陸自も派遣して欲しいみたいだけど」

 「61式戦車や陸軍装備は売れるけど・・・ 陸軍将兵の派遣は難しいと思うけどな」

 「アメリカも焦ってるんだな」

 「もう、原爆落としちゃえばいいのに」

 「ソビエト軍と中国軍が動いてないし、核戦争は困るから使いたくないんだろう」

 

 

 対馬の飛行場

 F4ファントムと、

 アメリカ軍に売却され白い星マークを付けたF106Jデルタダートが飛び立っていく、

 「F106Jデルタダートか、いい機体だな」

 「なんで日本に売ったんだ?」

 「さぁ」

 

 

 釜山港上空

 F106Jは、強力なECM・ECCMとフレアで地対空ミサイルをかわし、

 迎撃で上がるMiG21と空中戦を演じる余力を見せた。

 そして、F4ファントムが北朝鮮軍の頭上に爆弾を投下していく、

 アメリカ艦隊は、半島沿岸を砲撃して北朝鮮軍を翻弄したものの、

 北朝鮮軍に仁川上陸作戦の時のような隙がなく、

 ベトナム戦争に戦力を割かれていたアメリカ軍も余裕がなかった。

 

 

 航空自衛隊の飛行場

 デルタダートF106Jの量産と兵装の転換が進んでいた頃、

 性能的に役に立たないF86Fセイバーが運用可能な状態で400機以上残されていた。

 使用に困った航空自衛隊は、対地・対艦装備させ、支援戦闘機として運用していた。

 そのF86Fセイバーが対馬航空基地に飛来し集められ、

 日の丸が消され、アメリカ軍の白い星のマークが描かれ、

 無線操縦装置と爆弾が仕込まれると、滑走路を飛び立っていく、

 航空自衛隊の人たち

 「標的機に改造するつもりが即席の巡航ミサイルか」

 「いらないんなら、公園にでも置いちゃえばいいのに」

 「子供が怪我したら、また、叩かれるだろう」

 「葛城3佐。E2Cから通信、次を離陸させてくれって」

 「はいはい」

 無人F86Fセイバーは、E2Cに空中誘導され、地上の標的に突入させられていく、

 

 

 02月15日

 釜山

 北朝鮮軍の攻勢に堪えられなくなった韓国軍将校がクーデターを起こし、

 北朝鮮側に寝返ってアメリカ軍を攻撃し、

 アメリカ軍は、壊滅的な打撃を受け、総崩れとなっていく、

 急遽、日米から救援の船団が繰り出され、第二次ダイナモ作戦が決行された。

 アメリカ空軍の爆撃とアメリカ艦隊の艦砲射撃が釜山に降り注ぎ、

 その間、ほとんどのアメリカ軍将兵が釜山港を脱出し、福岡港に落ち伸び、

 そして、釜山が陥落した。

 

 

 霞が関の住人たち

 「あれ、第二次朝鮮戦争が終わっちゃったよ」

 「1年ぐらい戦ってくれないとな。ラインの都合があるのに」

 「せっかく、儲けられると思ったのに残念」

 「でもベトナム戦争も含めて生産が軌道に乗ったから売れただろう」

 「まぁね」

 「北朝鮮も短期決戦じゃないと勝てなかったと思うし」

 「アメリカは、ベトナム戦争で厭戦機運が高まってたしね」

 「でもよかったじゃん。防衛費倍増だよ」

 「だけど、在日朝鮮人に “裏切り者” って、殺されかけちゃったよ」

 「あははは・・・ あぶねぇ」

 「しょうがないだろう。日本国民は、その気なかったし」

 「無理やり日本人を徴兵して半島に送っても士気は低いだろうし」

 「戦死と負傷で逆恨みされちゃかなわんからな」

 「だよねぇ アメリカ軍将兵の戦意喪失も酷いみたいだ」

 「だけどアメリカの韓国投資も20億ドル分がふいになったんだよね」

 「日本だって3億ドルぐらい韓国投資させられたんだぞ」

 「戦争が長引いていたら10億ドル超えてたよ」

 「まぁ 良かったよ。半島丸ごと共産国なら朝鮮人に遠慮しなくてもいいし」

 「あっ そうそう、アメリカが、北米防空で、F106Jデルタダート300機を売ってくれだと」

 「なんで?」

 「アメリカ軍パイロットが気に入ったのと、実績」

 「あと、半島から叩きだされて北米の防空が急に不安になったらしいよ」

 「ふっ」

 「その代わり・・・」

 「」

 「」

 「」

 

 

 1969年

 02月16日

 アメリカ軍がベトナム戦争で敗退し、

 朝鮮半島の赤化により東アジア大陸全域が共産化されていた。

 もはや、国家としての体を成していない国の大統領、

 朴正煕(パク・チョンヒ)が日韓協定にサインすると世界中に映像が放送される。

 この日、済州島が日本に編入され、太平洋に面する大陸は、ほぼ共産主義勢力となった。

 東アジアの民主主義国家は日本だけとなり、

 共産主義の危機感は、既得権を持つ日本の有力者の感情を変え、軍事費増大が承認される。

 一部、日本赤化の風評が流れたものの、

 農地改革で日本の共産主義勢力が後退しているせいか、正常な軍事バランスな判断がなされた。

 

 

 国防関係者たち

 「そろそろ、F106Jデルタダートの対艦攻撃用改造機を開発しないとな」

 「あ、コンベア社の爆撃機を買うってよ」

 「うそ・・・」

 コンベアB58ハスラー爆撃機は退役後、日本に売却される、

 

 

 海上自衛隊のヘリポートが尖閣諸島魚釣島と竹島に建設されていた。

 「なんで、こんな小さな島に?」

 「半島が赤化されたからだろう」

 「尖閣諸島が竹島みたいなことになってもつまらないし」

 「中国は文化革命で身動きとれないし」

 「東シナ海には、海底油田があるらしいし」

 「中国海軍が小さい間にやってしまう方がいいだろう」

 「やれやれ、島流しは冠婚葬祭でカッコ悪いからな」

 「誰が赴任させられるやら」

 「自衛艦に乗るより、国益を考える自衛官にいてもらいたいね」

 「じゃ お前が赴任しろ」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 1971年

  1ドル360円だった固定相場は、日本経済が強まるにつれ維持できなくなっていた。

  さらにニクソンショックによりアメリカ人の政治不信は強まり、

  国際的な信用は失墜し、ドル安は食い止めようがなくなっていた。

  日米スミソニアン協定によって1ドル301円体制に移行し、

  その後もドルが下落していた。

 

 10月25日

  中華人民共和国が国連加盟、中華民国(台湾)は国連から追放される。

 

 10月30日

  空母コーラル・シーで反戦運動 “Stop Our Ship(SOS)” が計画される。

 

 

 日本の某所

 「ロッキードL1011トライスターを買ってくれないか」

 「はぁ?」

 「頼むよ」

 「無理。うちはコンベア社と組んでるからねぇ」

 「あそこさ、潰すことに決まってるから」

 「ロッキード990コロナードなんて採算悪くて駄目駄目だろう」

 「だけどねぇ 日本の主力戦闘機がコンベア社のF106デルタダートだからねぇ」

 「そこは、ほら、お金払うからさ、ロッキード社も危ないんだよ」

 「んん・・・」

 

 

 日本政府は、ホワイトハウスのデスクに日本国債を載せると、

 退役したコンベアB58ハスラー爆撃機(1244万ドル・37億4444万円)×60機と

 予備機30機分を払い下げさせ購入してしまう。

 

  コンベアB58ハスラー爆撃機

   重量25200kg/30786kg/80240kg

   全長29.49m×全幅17.32m×全高9.12m  翼面積143.26u

   J79GE5B推力6940kg/7940kg×4基  速度2572km/h 

   航続距離3220km〜7600km 乗員3人

   機尾20mm機銃×1  積載量8820kg

 

 関係者たち

 「どうするんだよ。これ」

 「だから・・・ ほら、きっと、大きな支援戦闘機なんだよ」

 「どこが支援戦闘機なんだよ。どこが!」

 「大は小を兼ねるし、空対艦ミサイルをたくさん載せられるし」

 「大きな回転型レドームを乗せればいいじゃん」

 「コンベア990コロナードに載せればいいだろう。電子装備も余計に載せられる」

 「B58ハスラーなら空対空ミサイルだって載せられるし」

 「そうなったら航空ミサイル巡洋戦闘機で支援戦闘機じゃん」

 「「「「・・・・」」」」

 「でもなぁ 支援戦闘機の役目は、対艦攻撃がメインだし」

 「対艦攻撃で低空機動力が弱いのは致命的な気がするけど」

 「そこは、それ、軽量化するからそこそこ低く飛べるし」

 「ECMとECCMで頑張る」

 「頑張るねぇ・・・」

 

 

 

 国力以上の軍事力は引き出すことができない。

 多くの国は国防力の不足分を創意工夫と外交戦略で埋めていく、

 軍産複合体は、国家予算に占める軍事費の割合が大きくなるにつれ、

 仮想敵国を想定し、排他的、排敵的な世相を増長させ、利権構造を拡大を画策する。

 国家関係は険悪化し、国家外交戦略の自由を阻害し、行政を蝕み、国民を統制していく、

 生産部門は抑制され、国家経済の成長が鈍っていく、

 さらに軍事予算が大きくなると国家運営すら困難になってしまう。

 肥大化する軍組織は歯止めが利かず、

 国家財政を破綻させ、暴走する。

 敗戦後、日本人は、日本国の在り方で模索し、

 国権派を代表する保守と、民権派を代表する革新に分かれ争っていく、

 もっとも左右どちらであれ、

 己が保身と派閥権勢のため政策が定まらず離合集散し、

 財閥や官僚と事勿れに妥協し、公約を忘れて同好会的な集まりとなってしまったり、

 日本人特有の人間関係は、軍組織であれ、党派閥であれ変わらず、

 大同小異の枝葉末節に血道を上げて本末転倒したり・・・

 

 国会議事堂

 「日本の政府筋がロッキード社からお金を受け取ってるという噂がありますが?」

 「買ったのはコンベア社の旅客機990コロナードとF58支援戦闘機です」

 「「「「・・・・」」」」

 「総理。今回購入するコンベアB58ハスラーは爆撃機ではないのですか?」

 「違います」

 「F58支援戦闘機ハスラーは高速、且つ長大な航続力を有し」

 「西日本と北日本の防空で、柔軟に対応できる大型戦闘機です」

 「それは嘘です。私はアメリカで確認してきました」

 「コンベアB58ハスラーは爆撃機として登録された戦略爆撃機です」

 「この書類が証拠です」

 「いいですか」

 「ここ “High-speed strategic bomber conveyer B58 hustler”」

 「高速戦略爆撃機コンベアB58ハスラーと書かれてます」

 「だいたい、コンベアB58ハスラーのBはBomberの略。爆撃機の略なんですよ」

 「あなた方は護衛艦と、戦艦の見分けもつかないと我々を馬鹿にしますが」

 「いいですか。これは違います。紛れもなく爆撃機です」

 「コンベアB58ハスラーは、ソビエト主要都市を核攻撃するための戦略爆撃機なのです」

 ざわざわ ざわざわ

 「総理大臣・・・」 議長

 「ええ・・・ 嘘ではありません」

 「F58支援戦闘機は爆撃機ではありません」

 「その証拠にコンベアB58ハスラーは、機内に爆弾庫がありません」

 「「「「「・・・・・」」」」」 唖然

 「果たして機内に爆弾庫を持っていないジェット機を爆撃機と呼んでいいものでしょうか」

 「詭弁だ!」

 「コンベアB58ハスラーは、ポッド式投棄型爆弾庫を装備している」

 「その装備は、外します」

 「「「「「・・・・・」」」」」 憮然

 

 

 

 退役したB58爆撃機60機が厚木基地の滑走路に並べられていく、

 それはJ79エンジン4発を有し、F106デルタダート戦闘機より巨大な機体だった。

 日本の技術者たちが設計図をみていた。

 「着陸脚を短くして、ポッド式投棄型爆弾庫の重量を装備に振り分けるわけか」

 「せめて高翼にしてくれてたら、もっと脚を短くできていいのに」

 「生産数は116機中、事故で26機が失われている」

 「60機購入で残り30機分相当も補修部品として引き取ったよ」

 「失敗作か」

 「脚を短くして、ポッド式投棄型爆弾庫を剥がせば事故の原因が、ほとんどなくなる」

 「おかげで買い叩けたようなものだが・・・」

 「胴体下部と、主翼下部に対艦対空対地ミサイルのハードポイント40基を並べる・・・」

 「ミサイル数はF106デルタダートの10倍で、ミサイルの種類は選ばず・・・」

 「空中戦ができなくても速度は速いし、航続距離も長い・・・」

 「F106と同じAN/APR18レーダー。索敵距離は322kmから482kmで、範囲は160km」

 「他にも警報用AN/APR12レーダー。爆撃用AN/APB2レーダー」

 「航法用AN/APN110レーダー。地形用AN/APN170レーダー」

 「絞り込み用のAN/APS73レーダーとAN/APQ69レーダー」

 「ポッド式投棄型爆弾庫を外せるならレーダーをもっと増やせるかもしれないな」

 「ECM・ECCMも確認しないと・・・」

 「確認した。ちょっとした護衛艦並みだよ」

 「速度差を考えると撃墜は難しいな」

 「レーダーとESMもいいし。ECM・ECCMもF106デルタダートより優れてる」

 「悪くない」

 「悪くないどころか。ナイキミサイルは固定されて48kmの射程しかない」

 「しかし、F58ハスラー支援戦闘(爆撃)機なら日本の領空ならどこへでも出張って」

 「1機あたり最大40発の空対空ミサイルを撃ち込める」

 「稼働率3分の2として、仮に40機集合したら突撃させ。対空ミサイル1600発分を撃ちまくって逃亡することもできるだろう」

 「たいていの爆撃編隊は壊滅だ」

 「日本が、そんなに空対空ミサイルを持っていないことを除くなら悪くはないね」

 「追いかけてきたら機体後部の20mmバルカンが火を吹くわけか」

 「アメリカは、これだけの機体を、なんで退役させたんだ?」

 「事故もあるが。B58ハスラー退役の原因は、U2ドラゴンレディの撃墜だろうな」

 「高高度高速戦略爆撃機は、地対空ミサイルの餌になる」

 「それでレーダー探知を回避するため低空侵入の訓練をさせた」

 「しかし、気圧の大きな低空をマッハ2で飛ぶわけにはいかないし」

 「B58ハスラーのポッド式投棄型爆弾庫を見てもわかるが低空を侵入できる機体じゃない」

 「それで事故か」

 「その上、低空侵入しやすいF111アードバークが開発され、量産されている」

 「それで、日本は爆撃機としてではなく、支援戦闘機として使うわけか」

 「B58ハスラーは速度が速く航続力も長い」

 「レーダーと通信が強力だから戦場に投入できるし、レーダーと管制装置を追加装備すればF106デルタダートを誘導できるだろう」

 「しかし、コンベアB58ハスラーがゼネラル・エレクトリックのJ79エンジンで、F106JデルタダートがP&WのJ75エンジンか・・・」

 「性能はともかく、エンジンは統一したいな」

 

 

 済州島

 済州島に在日朝鮮人たちが集められていた。

 日本領行政下の朝鮮族自治州で暫定的に李玖(39)が州知事として収まっていた。

 済州島(日米共同)航空基地

 日本自衛隊の将兵たち

 「なんか、済州島も不穏だな」

 「1948年に28万人いた島民が54年の済州島四・三事件で5人に1人。6万人が殺され」

 「20万人が日本に逃亡したという話しだ」

 「済州島の生き残りは3万人弱で、そこに半島からの亡命者50万人が来たからね」

 「日本の半島人を全部、済州島に集められたのは幸いだけど、どうしたものか」

 「でも、防衛費増額は嬉しいよね」

 「それは言える」

 

 

 朝鮮民主主義人民共和国

 金一成は、半島全土を支配すると首都をソウルに遷都し、

 中ソ対立と日米の反発を利用し、

 対日、対ソ、対中、対米の4強に対し主導権を執ろうと軍拡を開始していた。

 

  モスクワ

  「アメリカは駄目ニダ」

  「いつでも中国を攻撃できるニダ。共に中原を支配するニダ」

  「・・・・・」

  「日本侵略でいいニダ」

  「釜山機甲師団は世界最強ニダ」

  「いつでも、日本を攻略できるニダ」

  「朝鮮機甲師団は、本当に凄いニダ」

  「でも船がないニダ」

  「本当に口惜しいニダ」

  「ソビエトが強襲揚陸艦をくれないからニダ」

  『こいつら、あぶねぇ』

 

 

  北京

  「アメリカはもう駄目ニダ」

  「いつでも極東ソビエトを攻撃できるニダ。共に東シベリアに進撃するニダ」

  「・・・・・」

  「日本侵略もいいニダ。船が欲しいニダ」

  『こいつら、マジやばいある』

 

 

 1972年

 アメリカは、ベトナム戦争で泥沼に陥り、

 第二次朝鮮戦争で朝鮮半島から叩きだされていた。

 厭戦機運はアメリカ軍全体に波及しつつあり、

 幸か不幸か、在日アメリカ軍は弱体化し、

 日本を押さえていたのは、保有している核兵器のみという惨状になっていた。

 そして、朝鮮半島の共産化は、

 日本の自衛隊がアメリカ軍の頸木から逃れ軍事的に独立した瞬間でもあった。

 

 現在、東アジアの自由資本主義国は日本と、

 もう一つ、台湾だけだった。

 日米台の秘密会議

 「やはり日本列島から台湾。フィリピンにかけて防衛線を構築すべきだろう」

 「「・・・・」」 日本 & 台湾

 日米台の防衛関係者は、反共共同防衛戦線の構築を検討していた。

 しかし・・・

 

 02月21日

 アメリカ合衆国大統領リチャード・ニクソンが中華人民共和国を電撃訪問

 日本総理官邸

 「なんてことしやがる。あほ大統領が」

 「“東アジア情勢は複雑怪奇である” ですか?」

 「総辞職したくねぇ」

 「ですよねぇ」

 「まぁ 希少金属を考えると対中貿易したくなるよね。日本産業も助かるだろうし」

 「「「・・・・」」」

 「とはいえ、アメリカ追随外交は、しょうがないよねぇ」

 「「「・・・・」」」

 「台湾によろしく言っといてよ」

 「「「・・・・」」」

 「総理、ここは独自の日本外交で行くべきでは?」

 「・・・・」

 

 台湾は中国の国連加盟と常任理事国により、中国大陸正統政府の立場が失われ、

 アメリカと中国が国交回復で合意に達すると政治的な危機に陥っていた。

 中国は、中ソ対立の軍事的低迷で脅威が低下しており。

 文化大革命で近代化から後退していた。

 それでも中国空軍は、J6(MiG19)とJ7(MiG21)の開発と量産が進み、

 中国海軍は、1600t級鞍山(グネフヌイ)型駆逐艦4隻。1160t級済南(リガ)型フリゲート4隻を配備し、

 3670t級旅大型駆逐艦の開発と建造が始まっていた。

 

 09月29日 台湾国独立

 09月30日 日本政府は、台湾国の独立を承認。

 10月01日 日台貿易協定調印

 台湾は、国連から叩き出されると独立し、

 米中接近で対米不信が高まると唯一残された友好国日本との関係強化を目指した。

 日台は、武器輸出で合意に達すると、

 日本のF106デルタダートと61式戦車の台湾売却が決まる。

 台北

 日本政府関係者たち

 「アメリカと中国の関係改善で中ソ対立は継続すると思うが・・・」

 「まぁ それがアメリカの狙いだろうけどね」

 「日本がアメリカに追随せず、台湾との関係を維持するのも一興だろう」

 「経済的には大損だけどね」

 「まぁ 武士はくわねどってやつだね」

 「しかし、台湾人を信用していいものかどうか」

 「まぁ 設計図を渡すわけじゃないし」

 「開発能力がなくても複製できるなら製造能力があるってことだろう」

 「少なくとも武器が輸出できるなら儲けものだし」

 「旧式護衛艦の あさかぜ、はたかぜ、ありあけ、ゆうぐれ を買ってくれるなら悪くないよ」

 「情報が台湾人の手に入ると思うと泣きたくなるけど」

 「10隻売れば1隻分。10両売れば1両分。10機売れば1機分」

 「余計に配備できると思えば我慢すべきだろうけど」

 「「「・・・・」」」 ぶっすぅ〜

 

 

 呉

 石油掘削プラットフォームが建造されていた。

 「東シナ海の油田採掘するの?」

 「台湾の情報だと中国は文化大革命で荒れている」

 「台湾にも投資してもらってるし、何とかなるでしょう」

 「台湾にも分配か。日本の経済水域なのに、なんか、弱腰」

 「戦争で負けると、どうしてもそうなるのよ」

 「アメリカと戦争してなかったら権益を独占できてたのに」

 

 1973年10月6日 第四次中東戦争 ⇒ オイルショック

 

 1975年04月30日 ベトナム戦争終結(1960年〜)

 霞が関の住人たち

 「やっとベトナム戦争が終わったね」

 「儲かった儲かった」

 「F106デルタダートは人気あったな」

 「アメリカと台湾に売れて、ラインを増やせたのは助かる」

 「だけど、F14トムキャットとF15イーグルの生産が始まるよ」

 「F106Jデルタダートは、もういらないんだと」

 

 

 1976年

 中国の文化大革命が終息する頃、

 日本は東シナ海のガス油田の採掘に成功し、

 東シナ海ガス油田の採掘は、オイルショックで伸び悩んでいた日本経済を牽引した。

 東シナ海 海底油田基地 飛鳥

 石油タンカーがプラットフォームに横付けすると石油を積み込んでいく、

 司令塔

 「水平線上に1600t級グネフヌイ級駆逐艦です」

 「新型の3670t級旅大型駆逐艦じゃないな」

 「欧米資本が中国投資してるようですから」

 「これから旅大型駆逐艦を量産できるようになるのでは」

 「怖い怖い」

 「まだ、中国艦艇の方が小さいけど、緊張するねぇ」

 ガス油田のプラットフォームのヘリ甲板から海上保安庁のSH3シーキングが飛び立つと、

 1600t級グネフヌイ級駆逐艦に近付いていく、

 「プラットフォームに自衛隊のヘリを配備すると軍事基地になってしまうし」

 「海上保安庁のヘリだと負けるし・・・」

 「・・・何とも不安だねぇ」

 「対艦ミサイル4本を装備できるんだろう」

 「一応ねぇ」

 「空母でも建造したらいいのに」

 「石油掘削プラットフォームを建造したから、予算がないんだと」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 深夜の北海道沖

 F58ハスラー支援戦闘(爆撃)機が礼文島上空を巡回していた。

 長距離を飛べて高速。

 空対空ミサイル、空対艦ミサイル、増漕タンクを40基分を装備でき、

 乗員3人制のローテーションで夜間飛行できる強みは大きく、

 日暮れ前に飛び立ち、夜明けとともに着陸することも可能だった。

 レーダー探知は性能以前に高低差による索敵範囲が大きく、

 さらにF58ハスラーは、地上のレーダーサイトより先にソビエト空軍機を発見することも可能で・・・

 「機長。Tu95ベア。2機。6時方向で70km。高度2800m」

 「速度・・・ 596km/h。あと5分で領空侵犯です」

 「警告に行くか。管制塔に伝えて置いてくれ」

 「了解」

 テープが回ると流暢なロシア語の警告が流れ、

 Tu95ベアは機体を翻して去っていく、

  

 

 1976年9月6日、

 日本のレーダーサイトは領空侵犯機の侵入に気付き、

 スクランブル機を離陸させた。

 F106Jデルタダート2機は、ミグ25を発見できず、

 支援のF58ハスラー支援戦闘(爆撃)機は、対艦用レーダーでMiG25に気付き、

 急降下しながら、ゆっくりと後方に回り込もうと・・・

 「あっ・・・ 気付かれた」

 マッハ2.4で引き離されてしまう。

 ベレンコ中尉は、的確に追撃してくる4発機のF58ハスラー2機に驚きながらMiG25戦闘機を加速させ、

 函館空港に機体を着陸させた。

 

 

 ベレンコ中尉の領空侵犯は、現状の防空システムが低空からの侵入に弱いという教訓と、

 MiG25戦闘機が想定されていたモノより性能が劣るという情報を得てしまう。

 日米空軍は、対低空侵入用の対処を求められ、

 アメリカは、F14トムキャット戦闘機と、F15戦闘機イーグルを開発、量産に入っていた。

 一方、日本は、第2次FXをF106Jデルタダートと、F58ハスラーの改良で誤魔化していたものの

 旧式化は免れず第3次FXに直面する。

 ブラックボックスに縛られたF14トムキャット、F15イーグルを選択するか。

 別の機体を購入するか。

 F106JデルタダートとF58Jハスラーをさらに改良するかだった。

 

 関係者たち

 「金もないことだし、どうしたものか」

 「F15イーグルがいいと思うけど」

 「ブラックボックスが無かったらね」

 「F15は、最強の戦闘機なんだけどな」

 「最強は、わかるけどさ」

 「最強の戦闘機を得るため、国家権益を失うは面白くない」

 「本末転倒は、良くある事だと思うよ」

 「次点で、ブラックボックス無しなら、ゼネラルダイナミクスYF16、ノースロップYF17」

 「ダッソー ミラージュF1、サーブ37ビゲン、パナビア・トーネードADVの5機種になる」

 「そんなの選ぶくらいなら、F106Jデルタダートを改良する方がまし」

 「コンベア社は?」

 「軍需から退いて部品供給に徹してるし、民間企業に移行したからな」

 「くっそぉ コンベア社め、企業再建の踏み台にしやがって」

 「メリットはあったよ。F15イーグルの情報を少し教えてくれたからね」

 「F15の仕様書だろう。同じ項目数やると日本財政が自己破産する」

 「それにF100エンジンのライセンスでも骨を折ってくれるそうだし」

 「プラット・アンド・ホイットニーF100はライセンス生産したい」

   F100 全長4.851m×直径1181mm  重量1696kg  推力7910kg/12960kg

   J97  全長5.3m×直径1000mm   重量1750kg   推力5290kg/7930kg

 「電装品も・・・」

 「それがブラックボックスだろう」

 「頭いてぇ」

 「手っ取り早いのは新素材とチタンの分量を増やしていくことだと思うね」

 「機能上の問題もあると思うよ」

 「整備性とか」

 「確かに整備士を減らせる方がいい」

 「取り敢えずデルタダートを1tくらい軽量化して、F100エンジンのライセンスしないと」

 「あと、アビオニクス、フライ・バイ・ワイヤ、CCVを取り入れて・・・」

 「こまごまとした改装は必要だね」

 

 

 1977年

 第3次FX選定

 「大蔵大臣。国産エンジン開発しましょうよ」 防衛庁官僚

 「いくら?」

 こしょ こしょ こしょ

 「そ、そんな潰しの効かない高性能ターボファンエンジン開発して、どんな再生産利益がある」

 「次々国防」

 「却下!」

 「そんなぁ」

 「高性能ターボファンエンジンを使う民間産業があるのなら考えてもいい」

 『うんなもんがあるか』

 「「「・・・・」」」 ぶっすぅうう〜

 コンベア社を味方につけた日本のロビー活動は、なぜか功を奏し、

 プラット・アンド・ホイットニーF100のライセンス生産を成功させてしまう。

 F106デルタダートは、元々余裕のある機体で

 運用開始から17年を過ぎても改修可能な余地が残されており、

 心臓部のエンジンさえ換装できるならJ3として生き残る事が出来た。

 浮いた予算で新素材とチタンの段階的な換装が進み、

 アビオニクスは独自の進化を遂げていた。

 

  F106J3デルタダート F16ファイティング・ファルコン F15イーグル
重量 10077kg/15670kg/24075kg 8270kg//19190kg 12973kg//30845kg
全長×全幅×全高 21.55m×11.67m×6.18m 15.03m×9.45m×5.09 19.43m×13.05m×5.63m
翼面積 61.52u 27.87u 56.5u
エンジン推力 F100 7910/12960kg F100 7910/12960kg F100 7910/12960kg×2
速度 2555km/h 2474km/h 2695km/h
航続距離 3163km〜4560km 4200km 3450km〜5750km
  M61バルカン20mm砲×1 M61バルカン20mm砲×1 M61バルカン20mm砲×1
  AIM4F×4 AIM9×4 各種 AIM9サイドワインダー4発 AIM7スパロー4発
  ロケット弾、爆弾5000kg 搭載量7000kg ロケット弾、爆弾10000kg
       

 

 

 そして、コンベアF58ハスラー爆撃機60機の改修も始まる、

 F58ハスラーは購入だったことから生産ラインが無く、補修用ラインだけだったものの

 日本の工業力は、4発機の機体改装を可能にするだけの技術を有していた。

 チタンと新素材で機体が軽量化され、J97エンジンがF100エンジンに換装されると

  重量22000kg/30786kg/80240kg

  全長29.49m×全幅17.32m×全高9.12m  翼面積143.26u

  推力7910/12960kg×4基  速度2695km/h

  航続距離4220km〜8600km 乗員3人

  機尾20mm機銃×1  積載量15820kg

  ハードポイント×40基 空対空、空対地、空対艦ミサイル各種となっていく、

  

 関係者たち

 「ハスラーの運用開始が1960年からだから16年か・・・」

 「アメリカのB52は55年からの運用だから21年だよ」

 「主力のB52H型は62年からだから14年な」

 「ハスラーは補修用の機材があるし、機体も余裕あるから、かなり長寿になると思うよ」

 

 

 コンベア990コロナード

 コストパフォーマンスが悪く、商業的に失敗した旅客機であっても、

 軍用で使うなら支障がなかった。

 ベレンコ中尉亡命事件で早期警戒機の重要性が注目され、

 商業で持て余し気味だったコンベア990コロナードが早期警戒機型と対潜哨戒機型に改造される。

 「早期警戒機はターボファンエンジンでいいと思うけど、対潜哨戒機はどうかな」

 「ターボプロップエンジンならわかるけど」

 「イギリスのBAEニムロッドは対潜哨戒機でターボファンエンジンだよ」

 「ニムロッドは、重量39009kg/87090kg。翼面積197u」

 「990コロナードは、重量54839kg/114759kg。翼面積209u」

 「贅肉落として軽量化できるし、航続距離を伸ばしたいのなら、出力を落とせばいいだけだろう」

 

  早期警戒機型 アマテラス

  全長42.47m×全幅 36.60m×全高12.05m 翼面積209u

  重量54839kg/114759kg  7280kg×4基

  最大速度990km/h  巡航速度912km/h  航続距離6200km

 

  対潜哨戒機型 スサノオ

  全長42.47m×全幅 36.60m×全高12.05m 翼面積209u

  重量40839kg/114759kg  5510kg×4基

  巡航速度900km/h  航続距離12000km

  対潜哨戒装備一式

 

 

 アメリカ国防総省

 コンピューターを使った戦術シュミレーションが進んでいく、

 「まずい、F58J2ハスラーは、まずい」

 「機体速度は戦闘機並み。レーダーはF15よりも大きく」

 「ECM・ECCMはE2Cと同等で、チャフとフレアも多い」

 「それでいて、空母を撃沈できるだけのミサイルを搭載できる」

 「日本にハスラーを売ったのは、どこの馬鹿だ」

 「だって、大陸と半島が赤化されて、太平洋を守る防波堤は日本しかないだろう」

 「日本人は信用できるんだろうな」

 「朝鮮人よりはね」

 「日本にいる朝鮮人は?」

 「済州島に閉じ込めてますので」

 「助かるねぇ アメリカ国内の朝鮮人も半島か、済州島に送ってやれ」

 「しかし・・・」

 「朝鮮人は生まれ付きのコミュニストで敵性国民だ」

 「はい」

 

 

 

 クレムリン

 ソビエト極東空軍の駒は半減し、

 ソビエト極東艦隊最後の駒が図上から取られて箱に入れられていく、

 「「「「・・・・・・」」」」

 「水上艦艇は全滅だ」

 「F106デルタダートは、F15イーグルより劣るが、MiG25と互角だろう」

 「しかし、F58ハスラー戦闘爆撃機は、レーダー探知距離が長く、索敵範囲も広い」

 「ECM・ECCMに優れ。高速で長距離を飛び」

 「日本の3基地から集合したハスラーの空対空ミサイル群は、爆撃機を編隊ごと壊滅させる」

 「そして、空対艦ミサイルの飽和攻撃は、極東ソビエト艦隊を海底に葬れる」

 「ハスラーは、格闘戦ができないだけで攻守で使えるわけか」

 「アメリカは、なぜ、F58ハスラーを日本に売ったんでしょうか」

 「さぁ アメリカ人は、どこか、頭のネジの緩んだところがあるからな」

 「やはり、通常兵器だけで戦うのはまずい」

 「核爆発の電磁波で日本の防空指揮管制バッジ・システムを破壊するしかないな」

 「日本と在日アメリカ軍の指揮系統を破壊できれば各個撃破で北海道くらいなら制圧できるだろう」

 「そうなると、問題は日本の潜水艦ですかね」

 「ああ、占領しても通商破壊で島を維持できなくなるし」

 「最終的に撤収か、撤収もできず降伏」

 「その上、核を使えば、アメリカの核も飛んできてこちらの兵器も半分くらい使えなくなる」

 「自動化の多い日米軍は打撃が多く。マニュアルの多いソビエト軍は有利なのでは?」

 「まぁ そうだとしてもだ」

 「第7艦隊に反撃されたらお手上げだろうな」

 

 1979年 イラン革命 ⇒ 第二次オイルショック

 

 1980年

 日本経済は、そこそこ成長していた。

 総理官邸

 「ぅぅ・・・ またオイルショックか」

 「価格はともかく、東シナ海のガス油田のおかげ凌げそうですよ」

 「対米貿易も低迷してる」

 「アメリカと欧州諸国は対中貿易で儲けてるし」

 「やっぱり、日中共同宣言すればよかったかな」

 「日台関係は良好ですよ」

 「あんな資源のない国に肩入れして、経済成長を止めちゃ駄目でしょう」

 「対中貿易でバブル経済、行けたのにな」 ため息

 「質実剛健では?」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 1982年

  フォークランド戦争 (03月19日〜06月14日)

 

 厚木基地上空

 F106J3デルタダートと、F16ファイティング・ファルコンの模擬空中戦が始まる、

 軽量な機体に大推力エンジンを装備し、軽度の対空対地能力を有するマルチロール機、

 圧倒的な機動性を誇るF16に対し、

 F106デルタダートは、旧式ながらも度重なる改装で機体曲線が増え、

 F16と同等のエンジンを装備し空力特性が向上していた。

 また、アビオニクスを向上させ、重量配分を全て迎撃に特化した要撃戦闘機だった。

 しかし、古い航空戦術に立脚した基本設計に変わりなく、

 F106は、格闘戦でF16に敗北する。

 F106に勝機があるとしたらレーダーの優位性で先制発見先制攻撃しかなかった。

 そして、レーダーで勝るF106のF16に対する勝率は、7割を弾き出した。

 航空自衛隊の人たち

 「限定的だけど、あまり良くない」

 「航空機だけの航空戦だからな」

 「実戦なら支援が入るし」

 「しかし、相互発見後は、いいように振り回されて撃墜される」

 「夜戦なら勝率は上がるけど」

 「F16相手に、これだと。F15相手は悲惨だね」

 

 

 

 1990年

 08月02日 イラクがクウェートに侵攻

 

 日本の国防予算は、半島赤化で2パーセント台を推移していた。

 第7師団(千歳)、第4師団(春日)は、実質、機甲師団といえる陣容となっており、

 第2師団(旭川)、第13師団(広島)も、機械化師団といえた。

 日本海沿岸は、反共海岸と呼ばれ、

 上陸作戦を阻害するような土地造成がなされ、自警団が組織されていた。

 玄界灘

 海上保安庁 3700t級巡視船 そうや

 「船長。朝鮮の漁船です」

 「追い払え」

 日本の巡視艇が近付くと北朝鮮の漁船はノロノロと追い立てられていく、

 「あまりいいエンジンを使ってないようだな」

 「済州島の観光業収益の送金だけでは足りないのでしょう」

 「済州島は、半島から来た朝鮮人と、元々いた朝鮮人の確執で血みどろだからね」

 「観光ったって、済州島は、あまり、行きたくないな」

 

 

 尖閣諸島 魚釣島 (3.82ku)

 政府関係者たち

 「飛行場建設に30億か・・・」

 「F15トムキャットより安いと思うよ」

 「こんな小さな島に飛行場を建設するより、中国に飛行場を建設してやった方が見返りがあるんだけどね」

 「そういえば中国と、まだ国交を結んでなかったっけ」

 「3兆円規模で産業投資していたら、中国株は何倍になってたかな」

 「そうそう、希少資源も一杯で、市場も一杯だったのに」

 「だけど、日本経済はガス油田6本で持ち直してるじゃないか」

 「でもねぇ アメリカの消費が落ち込んでるから作っても昔みたいに売れなくなってる」

 「大陸赤化で安定ホクホクなのが軍需企業関連か」

 「だけど、台湾の国産開発が増えると日本の軍需産業の利益も減るな」

 「うん」

 

 

 台湾国

 F106Jデルタダート 300機

 2350t級あきづき型護衛艦2隻。2050t級やまぐも型護衛艦6隻。1700t級あやなみ型護衛艦7隻、

 2250t級あさしお型潜水艦4隻、

 74式戦車450両。73式装甲車1200両が配備されていた。

 多くは、退役前に売却されたもので、

 一部、アメリカに輸出されたF106JデルタダートがF15イーグルに更新され、

 台湾に流れてきた機体もあった。

 台北の日系ホテル

 日本人たち

 「中国は、文革が終わって早15年弱か」

 「国力が再建しつつあるし、いよいよ。台湾が標的になるかもしれないね」

 「しかし、中国の情報が台湾経由で入るのは驚きだねぇ」

 「逆も真じゃないの。日本の情報も中国側に漏れてる」

 「それはしょうがないと思うな」

 「まぁ まともに中国と国交を結ぶよりいいと思うけど」

 「しかし、常任理事国と国交がないのは流石に不味くないか」

 「まずいと言われても、台湾と組んでるしなぁ」

 「防衛産業は美味しいし。自衛隊への見返りもあるし」

 「そういや、74式戦車にパッシブ式暗視装置。発煙弾発射機。レーザー検知装置」

 「サイドスカートと履帯離脱防止装置を付ける作業は?」

 「だいたい終わったんじゃないかな」

 「まだ、上陸作戦なんてしてこないと思うけどな」

 「90式戦車はどうするって?」

 「台湾は、国産でCM11戦車を開発したからいらないんじゃないかな」

 「装甲車も国産にするらしいし」

 「ん・・・ 残念なような、ほっとしたような」

 「でも、はるな、ひえい、しらね、くらま型護衛艦4隻を台湾に売るらしいよ」

 「台湾は、お金持ちだな」

 「日本の台湾投資が多いから」

 「中国海軍も増強中だからね」

 「中身はともかく、3600t級旅大型駆逐艦15隻。1500t級江滬(ジャンフー)型フリゲート25隻は脅威だよ」

 「1700t級ロメオ型潜水艦90隻も怖い」

 「と言っても、揚陸艦と商船の数が上陸作戦の成否を握ってる」

 「いまのところ、中国軍の台湾上陸作戦はなさそうだが」

 「いまのところね」

 

 

 1991年

 湾岸戦争 (1991年01月17日〜02月28日)

 総理官邸

 「お得意さんと産油国の戦争なんて、どうしよう」

 「先にクェートに侵攻したのはイラクですし」

 「ここは、道義的にアメリカ側に付くしかないかと」

 「お金出さないと駄目かな」

 「東シナ海のガス油田があるから我慢できないこともないけど」

 「しかし、アメリカに旋毛曲げられると売り上げに響いて面倒なことに」

 「まぁ 直接、戦闘い関わらない範囲で防衛支援するか」

 「その方が支援金をケチれそうだし」

 「掃海艇くらいですか」

 「掃海艇か・・・」

 「あと給油艦・・・」

 「んん・・・」

 「それとスカッドミサイル迎撃用で」

 「MIM14ナイキJと81式短距離地対空誘導弾部隊を送っては?」

 「んん・・・」

 「朝鮮がスカッド・ミサイルを600基以上配備してるので、戦訓を確認できますし」

 「導入を検討してるパトリオット・ミサイルとの比較もできます」

 「まぁ そうだね」

 「ところで、イラクは核兵器を配備してるの?」

 「さぁ 持ってないんじゃないですか」

 日本は、クェートに防空ミサイル部隊と掃海艇部隊を派遣し、

 さらに50億ドルの支援を発表する。

 

 

 日本

 工場から出てきた機体は、精悍で巨大な高翼デルタ翼の4発支援戦闘機だった。

 F58J3ハスラーは、機体の3割が新素材で作られて機体性能が向上し、

 電子装備も一新していた。

 関係者たち

 「んん・・・・ まさに空飛ぶイージス艦かな」

 「アフターバーナー無しの巡航速度がM1だと」

 「巡航速度がF106どころか、F15より速いなんて、ちょっと笑っちゃう」

 「最高速になると空気抵抗に負けてF106やF15に追い抜かれるけどね」

 「しかし、早期警戒機型コロナードと性能が被ってしまうところが無駄かな」

 「んん・・・」

 

 

 クェート

 多国籍軍は、イラク領内側へと攻め入っていた。

 自衛隊は、クェートに上陸すると81式短距離地対空誘導弾部隊を配置、

 さらに配置に時間のかかるMIM14ナイキJミサイルの移設とクェート軍への引き継ぎも進めていた。

 深夜、レーダーがパトリオットが撃ち漏らした飛行物体を確認すると

 配備したばかりの81式短距離地対空誘導弾が打ち上げられていく、

 レーダーがスカッドミサイルの弾道を確認しながらミサイルを誘導し、

 地表150mほどの高度で撃墜し、パラパラと残骸が落ちてくる。

 自衛隊の人たち

 「撃墜を確認。化学兵器は積んでなかった模様です」

 「「「「・・・・」」」」 ほっ・・・

 「なんか、パトリオットミサイルの宣伝のための戦争みたいだな」

 「パトリオットミサイルの導入が決まったのなら、そうなるね」

 「なんとなくイラクが引っかかってしまった気がするね」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 朝鮮半島 ソウル

 迎賓館

 「なぜ、ソビエトと中国は、朝鮮に武器を売らないニダ」

 「日本は、防空ミサイルをクェートに持って行って穴があるニダ」

 「いまなら、日本を叩きのめすことができるニダ」

 「「・・・・」」 ソビエト高官 & 中国高官

 「絶対に勝てるニダ」

 「「・・・・」」 ソビエト高官 & 中国高官  ため息

 

 

 ソビエト連邦は、教条主義的な思想の弊害と官僚機構の怠慢。

 自由と私財が得られない事から来る労働意欲の減退。

 軍事費増大と経済の衰退により崩壊する。

 ソビエト解体後、

 ロシアは政治的混乱と経済的苦境に陥り、

 Su27ジュラーヴリク、MiG29ラーストチュカなど新兵器の流出を止められず、第三国へ流れていた。

 一方、中国は、主義思想より現実主義だったのか、市場経済を導入し、

 世界最大の人民を搾取することで徐々に経済成長していた。

 中国空軍は、ソビエトからSu27ジュラーヴリク、MiG29ラーストチュカを購入し、

 航空戦力の近代化を図っていた。

 日本の国防は、北方防衛から東方防衛へと切り替えられ、

 さらに高齢化による将来的な衰退の対応も求められていた。

 日本空軍のF106J3デルタダートは、40年前の試作機と別機といえるほど進化していたものの、

 ステルス設計からかけ離れており、新型エンジンという最大の障壁があった。

 F106J3デルタダートの後継機問題が取りざたされ、

 日本が結託していたコンベア社は、汎用部品メーカーとなっており、

 昔のような政治的影響力がなかった。

 そして、アメリカはジェットエンジンだけを売る気がなく、

 F22、F35戦闘機の売却も難色を示し始める。

 「アメリカはプラット・アンド・ホイットニーF119を売る気無しだと。どうしたものか・・・」

 「アメリカの新型機はYF22が有望らしい」

 「F15のプラット・アンド・ホイットニーF119エンジンは」

 「全長5.16m。直径は約1300mm。乾燥重量1769kg。推力15600kg。推力重量比9対1」

 「対し、F106デルタダートJ3のプラット・アンド・ホイットニーF100エンジンは」

 「全長4.851m。直径1181mm。乾燥重量1696kg。推力7750kg/12960kg。推力重量比7.8対1」

 「負けてるね」

 「というよりF119はアフターバナー無しの推力だから次元が違うよ」

 「EUが新型エンジンを作ってなかったっけ?」

 「EJ200エンジンは、全長4m 直径737mm 重量989kg 推力6000kg/9000kg。推力比重量9.175:1」

 「いいじゃん。推力小さいけど軽い」

 「F22の重量は?」

 「機体だけだと19700kgで最大離陸重量が38000kgだったかな」

 「逆に推力荷重で計算してみたらどうだろう」

 「推力が2分の1しかないのなら倍のエンジン積んで4発機にしてしまうとか」

 「それなら推力はF100エンジン4基で推力31000kg」

 「F117エンジンの推力312000kgに対抗できる」

 「F100エンジン3基でも推力23250kg。アフターバナーだと推力38880kgになる」

 「菱形エンジン配置?」

 「まさか、整備しにくい」

 「あとは、機体両脇にエンジンを挟むF15型か。機体下部にエンジンを置くF16型だな・・・」

 「旋回で、真ん中のエンジンの吸気が上手くいかないってことないか」

 「下からしか吸気できなければそうだけど」

 「機体上部に小さな吸気口作って引っ張りこめば何とかなるんじゃないかな」

 「エンジンの上に機体を載せる方がステルス形体を計算しやすい気がする」

 「3基だと燃料1.5倍。4基なら2倍だから余計に燃料を載せないと駄目だよ」

 「それをいうなら値段もだな」

 「いや、推力比で計算するならアフターバーナー自体使わなくてもいいんじゃないか」

 「エンジンの整備で真ん中が難しくならないか」

 「まぁ その辺は調整しないと・・・」

 「どちらにしろ、小回りが利かなくなるから、戦闘機と思えねぇ」

 「CCV機構はあるし、フライ・バイ・ワイヤもあるし」

 「機動性が気になるなら、いっそこと、Xウィングにしてしまうか」

 「あははは・・・ ブーゼマン翼は、NASAが諦めたよ」

 「F22は、重量19700kg」

 「F117エンジン2基の重量3538kgは、機体の約18パーセント。機体重量は16162kg分を回せる」

 「同じ重量の戦闘機を作るとしたらF100エンジン3基5088kgで約26パーセント占めることいなるし」

 「機体重量は14612kg分か・・・」

 「F100エンジン4基だと6784kg。エンジンが機体の35.0パーセントを占めるから12916kg分の機体」

 「エンジンの橋梁分と空気抵抗を考えると明らかに不利だね」

 「F106J3デルタダートは10077kg」

 「F100エンジン1基で1696kgだからエンジンは約17パーセント」

 「機体に8381kgが使われてる」

 「F15は12973kgでF100エンジン2基で3392kg。エンジン重量は機体の26パーセント」

 「F15の場合、機体に9600kgが使われてる」

 「F15は攻守両方使えて、デルタダートは迎撃機」

 「燃料と武器の配分を別にしてるから一概には言えないよ」

 「でもF106デルタダートはステルスじゃないし新型のF22が配備されたら限界だな」

 「エンジンさえ国産開発できるなら、こんな苦労はしなくても済むのに・・・」

 「いや国産エンジンがあっても推力で負けてたら苦労すると思うよ」

 「航空機は、高性能エンジンがメインで、次は電装品。機体は付けたしみたいなものだし」

 「潰しの効かないエンジンを開発しても再生産効かないし」

 「民需で潰しが効いて、金になりそうなのって、電装品と素材だからね」

 「「「「「・・・・」」」」」 ため息

 「しょうがねぇ 多少、燃料消費が大きくても次期主力戦闘機はF100エンジン3基」

 「支援戦闘機はF100エンジン4基で行くか」

 「それならEJ200をライセンス生産した方がいいと思うけどな」

 「推力は6000kgと9000kgで小さいけど、エンジンは1000kgくらいで軽量だし」

 「F100エンジン3基5088kg。EJ200エンジン3基3000kgなら2000kg分を機体重量に回せる」

 「んん・・・推力6000kgの3掛けか・・・」

 「EJ200の直径は737mmだから3列並べても2211mm」

 「F100は直径1181mmだから2列でも2362mmか・・・」

 「横幅は整備用の幅と橋梁分を足すと、F15より少し幅が広くなるか・・・」

 「幅はともかく全高を低くできるよ」

 「いいけど、欧州製エンジンは、アメリカの反応が怖いよね」

 「あと推力が小さくなるから電装品の重量が・・・」

 「ステルス型戦闘機の戦いは、中長距離でミサイル当たらないし」

 「空戦域は、有視界に近付くから小型機が有利かも」

 「対ロシアだとステルス有利だろうけど」

 「対中は、電装品に力を入れる方が有利な気がする」

 「取り敢えず、EJ200エンジンも素案に入れた方がいいかな」

 「あとはどれだけ電装品とステルスと新技術を導入するかだね」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 2000年

 欧州でユーロファイター タイフーンが試作が進んでいた頃、

 日本でも一回り大きく似たような機体が試作されていた。

 違いがあるとするなら、日本の戦闘機がエンジン3発機で、

 支援戦闘機のエンジンが4発機だったことだった。

 日本はアメリカのF117エンジンのブラックボックス導入に抵抗し続け、

 F117エンジンのライセンスができなければ、

 欧州製EJ200エンジンのライセンス生産の採用に踏み切った。

 

  ゼロ式 陽炎 F22ラプタ ユーロファイター タイフーン
重量 15670kg//28000kg 19700kg//38000kg 10995kg//23500kg
全長×翼幅×全高 16m×12m×4.3m 18.92m×13.56m×5.08m 14.9m×11.0m×5.3m
翼面積 62u 78.04u 50u
エンジン EJ200推力 6188kg/9075kg×3 F117推力 15600kg×2 EJ200推力 6188kg/9075kg×2
速度 2575km/h 2575km/h 2450km/h
航続距離 3163km〜4560km 2775km〜2960km 2900km〜3706km
  M61バルカン20mm砲×1 M61バルカン20mm砲×1 27mm砲×1
  AIM4F×4 AIM9×4 AIM9サイドワインダー2発 AIM120A4発 ハードポイント13 75000kg
  ロケット弾、爆弾5000kg ロケット弾、爆弾1000kg  
       

 黒塗りの機体は、F22ラプタの菱形構造を取り入れ、

 Su27、MiG29、タイフーンのように機体をエンジンの上に載せたタイプだった。

 ゼロ式戦闘機 “陽炎” は、エンジン3発でありながら、エンジン1発のF106より全長が短く、全高が低く、

 F106J3より全幅が長かったものの、小ぶりに見えた。

 なにより奇異だったのが・・・

 「主翼の下反角が大きいな。空気抵抗で機首が下につんのめないか?」

 「翼断面図的に上が膨らんでいたらね」

 「それに一応計算してるから」

 「横から見るとずれてるけど、正面から見るとXウィングじゃないか」

 「その分、全幅を狭くできるし小回り利くよ」

 「それにX翼は、ブーゼマン理論で音速衝撃波が機体から十数メートル離れてぶつかってね」

 「地上に衝撃波が届きにくい」

 「ブーゼマン理論を外向きに?」

 「全部というわけじゃないけど機体下部と下反角翼の部分ね」

 「しかし、エンジン3つ並ぶと幅広く感じるな」

 「橋梁を足してEJ200エンジン一つに幅1.2mだから、エンジン幅だけで3.6mくらいかな」

 「広いな」

 「エンジンは空気が抜けていくだけだし、揚力と思えばいいでしょ」

 「本当にレーダーに映り難いの?」

 「そりゃもう・・・」

 将校たちがレーダーモニターを覗き込む

 「・・・ こ、こりゃ 凄い」

 「上から下からも横からも見ても?」

 「まぁ レーダーが当たった方向に戻らないようにしてますからね」

 「特に正面は」

 「支援戦闘機も?」

 「構造的に同じ形式で二回り大型になります」

 「ステルス同士の空中戦は、どうしても有視界戦闘に近付きますし」

 「ECMとECCMを合わせるとレーダーホーミング型ミサイルの命中率は落ちるでしょう」

 「また、対熱線追尾ミサイルの対応も万全に近付きますから」

 「格闘戦能力が求められます」

 「機関銃の撃ち合い?」

 「そうなんですが。その気になれば機関銃の弾より速く飛べますからね」

 「それじゃ 撃墜できないだろう」

 「レーザー予算が欲しいですね」

 「「「「・・・・」」」」

 「残念だな。無くて・・・」

 

 

 イラク戦争 (2003年3月20日〜)

 日本 総理官邸

 「またか」

 「やれやれ」

 「イラクに大量破壊兵器があるのかね」

 「さぁ」

 「もうリンチとしか思えないね」

 「まったく」

 「今度はイラクが侵攻したわけじゃないし、お金、出さなくてもいいよね」

 「でも給油艦くらい派遣くらいはしないと、売上に・・・」

 「もう、中国と国交を結んだ方がいいかも、アメリカに輸出経済を依存するのは面白くない」

 「・・・・」 ため息

 

 

 2005年

 飛行場に二機種の航空機が並ぶ、

 
  ゼロ式戦闘機 陽炎 ゼロ式支援戦闘機 不知火
重量 15670kg//28000kg 23200kg//58000kg
全長×翼幅×全高 16m×12m×4.3m 24m×16m×5.08m
翼面積 62u 120u
エンジン EJ200推力 6188kg/9075kg×3 EJ200推力 6188kg/9075kg×4
速度 2575km/h 2575km/h
航続距離 3163km〜4560km 3675km〜5960km
  M61バルカン20mm砲×1  
  AIM4F×4 AIM9×4 ハードポイント×40
  ロケット弾、爆弾5000kg  
     

 関係者たち

 「やっと本格的な生産か」

 「量産は?」

 「戦闘機“陽炎”は月産10機。支援戦闘機“不知火”は月産1機くらいかな」

 「1年で120機と12機。2年で240機と24機かよ・・・」

 「その後は、月産2機と年間1機くらいに落ちて」

 「電子装備の更新とポチポチ換装と補修部品で食いつなぐけどな」

 「なんか、斜陽過ぎる」

 「外国に売れるのならもう少しいけそうだけどね」

 「台湾以外に売れないし」

 「台湾は買えそう?」

 「さぁ 120億円は、流石に高いからね」

 「だいたい、F106J3デルタダートとF58J3ハスラーも耐久年数が残ってるからな」

 「そういや新素材で改装したから耐久性が伸びてたっけ」

 「どうするの?」

 「定数揃ったら、偵察機か、練習機か、予備機として使うくらいしかないね」

 「次期主力戦闘機の開発は?」

 「んん・・・ 金ないし、時期的に人口減少で中国に追いつかれる頃だからな」

 「中国空軍の横流しで揃えるか」

 「日本の中古エンジンと中国の新型エンジンを交換してくれるかもしれん」

 「中国製エンジンなんて怖くて乗れん」

 「じゃ 高齢化で戦える若者いないから、一個航空団潰して、核ミサイル配備」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 2010年

 日本の小学校で、衛星写真が映されていた。

 「これは夜の東アジアです」

 「光ってる帯は、日本列島です」

 「中国大陸は沿岸部が薄く光り輝いています」

 「ロシアは、シベリア鉄道沿いと大きな都市に明かりがついてます」

 「半島は、真っ暗ですが平壌とソウル」

 「そして、釜山に薄い明りがついてますね」

 「夜に電気を付けるのは、それだけ、大きなエネルギーを消費して夜も働いているということです」

 「なぜ、これだけの明かりを灯せるられるのか、よく考えてみましょう」

 

 

 陸上自衛隊 200000人

          90式戦車1200両、73式装甲車340両、96式装輪装甲車330両

          82式指揮通信車240両 87式偵察警戒車100両 89式装甲戦闘車70両

          軽装甲機動車1600両

          99式自走155mm榴弾砲200両、多連装ロケットシステムMLRS 100両

          AH1コブラ AH64Dヘリコプター 180機

 航空自衛隊 52000人

          ゼロ式戦闘機 陽炎300機  ゼロ式支援戦闘機 不知火60機

          E767早期警戒管制機6機

 海上自衛隊 52000人

          13950t級ひゅうが型護衛艦4隻 7250t級こんごう型護衛艦6隻

          4560t級たかなみ型護衛艦5隻 4550t級むらさめ型護衛艦9隻

          3500t級あさぎり型護衛艦8隻 2950t級はつゆき型護衛艦12隻

          潜水艦16隻

          P3C対潜哨戒機110機  SH60K 170機

 

 日本政府は

 “国民の高齢化により、潜水艦16隻に4発ずつ核弾頭装備のトマホーク64基を装備している”

 と宣言。

 

 総理官邸

 「やれやれ、これでようやく、自前の核の傘で自衛できる。軍事的独立かな」

 「軍事的暴走はしたくないですがね」

 「まぁ 爺さん婆さんばかりじゃ 暴走も国防も無理だから、核武装はしょうがないよ」

 「朝鮮半島のノドンミサイルが増えてるようなので仕方ないでしょう」

 「日本は、今後、40年くらい冬の時代かな」

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 5周年記念作品です。

 

 第一次FX選定で、F104スターファイターでなく、

 なぜかF106デルタダートを主力戦闘機として採用してしまった戦後日本です。

 長寿B52爆撃機は、親子2世代乗ったとか。

 F58ハスラー支援戦闘(爆撃)機は、どこまで粘れるでしょうか。

 というわけで、第二次朝鮮戦争で半島が赤化しても

 戦闘機用ターボファンエンジンの民間有効活用を考えられない限り、

 戦後改変の自衛隊も斜陽な様です (笑

 

 ベトナム戦争と第二次朝鮮戦争で大陸全土が赤化してしまいました。

 アメリカにとって日本と台湾は唯一残されたアジア・太平洋側の自由資本主義の牙城となります。

 ところがアメリカは中ソ対立を利用して中国に接近。

 日本は、対中政策を軌道修正せず、独立した台湾国に武器輸出。

 史実で言うと韓国投資が台湾投資に向けられていくことに、

 日本経済は東シナ海のガス油田がありますが

 対中貿易がないのでバブルもできず史実より貧乏です (笑

 どんな日本かというと100円ショップがありません (泣

 アニメ画像も初期のガンダムレベルかも (号泣

 物価は今より高い 給料は少ない 産業も5分の4くらいで低成長でしょうか (涙

 

 中国も日本と貿易できず経済成長は半減でしょうか (笑

 詳しくは “中国 ODA” で検索してください、

 有償3兆円超え、無償3000億円未満で、そっくりないことになります。

 日本の建設産業を維持するのに都合がいいようですが、

 同じ予算を過疎地に投資すればいいだろうと思うのですが、

 日本を弱くしたい勢力の圧力なのでしょうか (笑

 あと、欧米諸国の中国投資も不信と波及効果が小さいことから相乗減でしょうか。

 

 朝鮮は、北朝鮮が大きくなっただけ、

 国力は2倍で、プラスアルファで10パーセントくらいでしょうか。

 ノドンミサイルとスカッドミサイルを1200発を向けられてそうです。

 福岡、広島、大阪はピンチです。

 

 後、日中、日朝は、険悪なままですので、防衛費は2パーセント台を推移すると思われます。

 

 

 

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戦後改変 仮想歴史 『第一次FX』