cinema / 『WATER BOYS』

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WATER BOYS
監督・脚本:矢口史靖 / 音楽:松田岳二、冷水ひとみ / 出演:妻夫木聡、玉木宏、三浦哲郁、近藤公園、金子貴俊、平山綾、眞鍋かをり、竹中直人、杉本哲太、谷啓、柄本明、徳井優、他大勢 / 製作: フジテレビジョン、アルタミラピクチャーズ、東宝、電通 / 配給:東宝
2001年9月15日公開
2002年03月21日DVD発売 [amazon]
2004年07月30日DVD最新版発売 [amazon]
公式サイト : http://www.waterboys.to/ 

[粗筋]
 鈴木智(妻夫木聡)は唯野男子高校水泳部員、だが部はとうの昔に衰退し今では鈴木だけになり、彼自身不甲斐ない成績しか残していない。ある日、そんな唯野高に一人の可憐な先生が赴任してきた。佐久間(眞鍋かをり)というその教師が水泳部の顧問になったと知るや、お近づきになろうと目論んだバスケ部のお荷物部員加藤勝正(玉木宏)らにガリガリの躰を筋肉質に変えたいと願う太田祐一(三浦哲郁)に頭はいいが金槌の金沢孝志(近藤公園)、それに妙にオカマっぽい早乙女聖(金子貴俊)といった有象無象のメンバーが俄に入部しプールは大盛況となる。しかし、そんな彼らに佐久間先生は、実は自分は元シンクロ選手としてそちらの指導がしたかったと言い出し、部員に向かって文化祭でシンクロを演じることを提案する。――次の瞬間、その場に残っていたのは鈴木・佐藤・太田・金沢・早乙女の五人だけだった。
 意気揚々たる佐久間先生は早速文化祭でのプール使用許可を申請してしまい、引くに引けなくなった一同だが、その矢先に佐久間先生の妊娠が発覚する。これ幸いと無かったことにする佐藤達だが、簡単に諦めたことで叩かれる陰口に鬱々とした気分を味わい、結局男子シンクロの実現に乗り出すことにした。が、意気込んでプールに駆け付けてみると、既にバスケ部が文化祭に備えて、業者の磯村(竹中直人)を招いて魚を放流したところだった。全部集めれば自分は構わない、という磯村の言葉に、夜中プールの水を抜いて一気に回収しようと目論むが、そこで巫山戯てしまった上に警備員にも見つかり、駄目になった魚とプールを一杯にする水道代の両方を負担しろ、と杉田教師(杉本哲太)に言われる。鈴木達は、シンクロで入場料を取って補填すると提案するが、成功を信じない杉田は一週間後に練習の成果を見せるよう命じた。白い目や嘲弄に晒されながらチケットを売り捌く傍ら練習を重ねるが、専門知識などなく一週間後のお披露目は散々な結果に終わってしまった。
 学校は夏休みに突入するが、鈴木は予備校の夏期講習に通いながら気持ちが晴れない。隣接する桜木女子高校の生徒である静子(平山綾)とそこで知り合い、水族館にデートに出かけるまでに親しくなったけれど、どうにも虚脱感が抜けない。けれど、その水族館でプールを豪快に飛び回るイルカたちと、何とそこで調教師として活躍を見せる磯村の姿に、鈴木はとうとう活路を見出すのだった――

[感想]
 本当は粗筋も感想も不要である。いいから見なさい。こんなに完璧な娯楽映画などそうそうあるもんじゃない。
 一人一人の役者の演技力を問えばきりがないが、そんなのは些事に過ぎない。美人教師が赴任してきたことで俄に水泳部に入り、ただ引けなくなったからというだけでシンクロを始め、最後には意味があるかどうかは兎も角やり遂げよう、という至極無責任でそれでいてとても自然な感情を、嫌味にも皮肉にもせず徹頭徹尾コミカルに描き、しかし青春物として必要な要素を過不足なく取り入れ最後には涙腺緩ませてくれる。誰もが最初いい加減な気持ちでいたものが、いつの間にかそれぞれの得意分野を駆使してエンタテインメントに仕立て上げよう、という空気になり、ラストのシンクロシーンはそのドラマ抜きでも優れた完成度を示している(この点は役者や演技の構成をしたスタッフに喝采を送りたい)。予告編を見たときから期待は高かったが、全く裏切られたという感覚がなかった、この事実だけでも如何に出来が良かったかはご理解いただけるのではなかろうか。
 今年残りあと三ヶ月、全てハズレでも私はこれ一本で満足です。本当にもう、感服いたしました。入替制じゃなかったらもう一回見ていたかも。

(2001/10/6・2004/06/16追記)


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