/ 『血を吸う宇宙』
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血を吸う宇宙
監督:佐々木浩久 / 脚本:高橋 洋 / 音楽:ゲイリー芦屋 / 出演:中村愛美、阿部サダヲ、三輪ひとみ、阿部 寛 / 配給:オメガ・ピクチャーズ
2001年日本作品 / 上映時間:1時間25分
2001年12月22日公開
2002年10月25日DVD発売 [amazon]
公式サイト : http://www.omega.co.jp/~chiwosu/
劇場にて初見(2002/02/09)[粗筋]
倉橋里美(中村愛美)は今まさに処刑されんとしていた。最期の救いを与えるために訪れたシスター(滝本ゆに)に、里美は自分が罪を犯すに至る経緯を語り始める。
里美はタクシーで警視庁に駆け付け、娘が誘拐された、と訴える。早速、大牟田刑事(下元史朗)らが倉橋家に駆け付け、逆探知装置などの準備に取りかかるが、そのあいだに帰宅した里美の夫・清彦(阿部サダヲ)は、自分達夫婦の間に娘はいないと言う。これが娘だ、と言って里美が差し出した写真に収められた少女は、確かに人形のようにも見えた。夫を指差し、この男も奴らの仲間なんだ、と訴える里美に異常を見た刑事達は設備を回収し帰投しようとするが、そこへ唐突に間宮悦子(由良宣子)と名乗る霊能力者が現れ、間もなく犯人からの電話があると予言する。正しくそのとき、何者かから電話がかかり、無言のそれを再度の準備が間に合わない警察に代わって間宮が霊能力によって逆探知する。
間宮が駆る首のない使い魔の指示に従い、里美は自ら一軒の家を探し出した。里美は行きずりの選挙カーに乗っていた運動員を昏倒させ着衣や小道具を奪い、広報を装って玄関を開けさせ、顔を見せた女性(吉行由実)をうち倒して屋内を探し回る。だが、娘――ミサトの姿は見当たらない。それどころか、にわかに強烈な尿意を覚えてトイレを捜すが、奇妙なことにこの家にはトイレも浴室もキッチンもなかった。やむなく近くの公園で用を足す里美だったが、そこへ里美が衣裳を奪った選挙カーの主、即ち立候補者の亀山パンチ(上田耕一)が現れ、彼女をウグイス嬢のひとりと勘違いしてバスに乗せる。
仕方なく選挙活動を手伝う里美であったが、休憩中、車内にひとりで思い悩んでいた彼女をパンチが襲った――抵抗虚しく犯された里美を始末する、と言ってパンチが向かわせたのは西乙女町なる見知らぬ土地。間一髪で逃亡した里美は、だが前から迫る光芒に意識を失い――目ざめるとそこは自宅、誘拐犯からの電話を待っているところだった……[感想]
……自分でも何を書いているのか解らなくなってきたので以下略。目玉であるはずの阿部寛登場まで進まなかったのが心残りだ。ちなみに彼はこの直後、何故かインディアンの歴史について調べろと言い出した霊能力者の指示に従って訪れた図書館を里美が出たところで、MIBと警察が意味不明の追いかけっこを始めたところで里美を助けるため(?)に登場するFBI捜査官の役回り。
で、その阿部寛が事件の黒幕を宇宙人だ、と里美に納得させるために持ち出すのは、木原浩勝・中山市朗両氏の著書『新耳袋』シリーズの深いファンなら先刻承知のエピソードである。映画・エピソードともに未知という方のために詳述は避けるが(これだけ粗筋書いといて今更と思わなくもないが)、新耳袋シリーズ及びトークライブの主旨を理解していない人は一度聞いて「嘘だろー?!」と叫ぶか失笑するかどちらかしかないシチュエーションだが、こーいう出来事があったことだけは実際らしい。
この現実を含め、非常にいい加減な展開をしているように見せかけながら実は、ネイティヴアメリカンにアブダクション、トイレのない家等々、細部は所謂宇宙人伝説をきちんと調べた上で反映している――問題はその反映の仕方、という気がするが、それすら何処までも確信犯(やや誤用)の印象がある。解った上で利用し揶揄しまくって、歪で滑稽なかたちのまま提示したB級娯楽作品、そういう表現を褒め言葉として用いたい。
ただ、そう好意的に捉えても如何なものかと感じるところはある。盛り込みすぎてやっぱり部分部分がばらばらに見えてしまう(この雑多さは、だからこそ秀逸と評する向きもあろうが多分それはマニアだ)こと。あと、終盤で展開する格闘シーンが唐突で長すぎる。私はこの格闘シーンただただ笑えたのだが、全体からするとやはり浮きすぎ。豊かすぎるサービス精神が、ちょっと鼻につくのだ。
チープなモチーフを脈絡など無視して(いや、それなりに意図はあるんだけどさ)盛り込めるだけ盛り込んだ、考えようによっては贅沢な作品。その贅沢さが許せない人はご遠慮下さい。
……ちなみに、深川にとってこれが2002年初めての日本映画です。それが一番どうかと思う。(2002/02/11・2004/06/19追記)