cinema / 『エクセス・バゲッジ』

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エクセス・バゲッジ【excess baggage】
監督・マルコ・プランビア / 製作:ビル・ホーデン、キャロリン・ケスラー / 脚本:マックス・D・アダムス / 音楽:ジョン・ルーリー / 出演・プロデュース:アリシア・シルバーストーン / 出演:ベネチオ・デル・トロ、クリストファー・ウォーケン、ジャック・トンプソン、ハリー・コニック Jr. / DVD:Sony Pictures Entertainment
1999年04月02日DVD日本版発売 [amazon]

[粗筋]
 父の愛情を確かめたいが為に企図した偽装誘拐事件が始まりだった。受け取るつもりもない身代金を川面を往く船に投げ込ませ、自分は手・足・口をビニールテープで縛り父から貰った車のトランクに自ら潜む。あとは誰かに発見して貰えば、エミリー・ホープ(アリシア・シルバーストーン)の計画は無事に完了するはずだった――だが、ここで思いがけないトラブルが生じた。エミリーが自らを閉じ込めた車を、ヴィンセント(ベネチオ・デル・トロ)が盗んでしまったのだ。駐車場から出てきたところを警察に見つかり、突然始まったカーチェイスに困惑しながらもどうにかアジトである倉庫に逃げ込み車内を確認してみれば、トランクに女の子が入っている。対処に窮した気弱な自動車泥棒は、近くの喫茶店から相棒のグレッグ(ハリー・コニック Jr.)に連絡するが、その間にエミリーはトランクを抜け出しており、戻ってきたヴィンセントと一悶着。彼女が手に負えないお転婆と気付いたヴィンセントは、一旦エミリーをトイレに拘束するが、最終的に自分の車に乗せて適当な場所で放り出すことにする。
 一方、ホープ家ではエミリーが戻らないために事業が滞り苛立ちを隠せない彼女の父・アレクサンダー・ホープ(ジャック・トンプソン)の元を彼との付き合いが古くエミリーから「おじさん」と呼ばれるレイ・パーキンス(クリストファー・ウォーケン)が訪れ、先に自分を呼ばなかったことを責めるが、アレクサンダーは相変わらず仕事を優先して考えている。レイはエミリーが自作自演した可能性も考慮に容れ、調査に乗り出す。
 ヴィンセントはエミリーの抵抗に合いながらもどうにか彼女を山奥の道端に放り出してくるが、帰途に立ち寄ったコンビニで自分のアジトに火が点き、中から盗難車輌に混じってエミリーの車が発見されたことからヴィンセント自身が誘拐犯である疑いをかけられていると知り、蒼白になってエミリーを回収しに向かう。父親に自分が無事であると連絡してくれればいいんだ、と懸命に懇願し先刻のコンビニまで連れて行き電話口に出させるが、あろうことかエミリーは「ペニスを掴まされた」と言い出し、ヴィンセントは慌てて電話を切った。車に戻ったエミリーは車に籠もって自分を手錠で繋いでしまう。
 同じ頃、ヴィンセントの相棒・グレッグもまた窮地に追い込まれていた。倉庫が焼け落ちたことを初めて聞かされ、既に代金を支払い済みだったクライアントが激怒していることをも知らされる。金を返さなければ命さえも危うい。グレッグは頭を抱えた――
 方々から追われる羽目となったエミリーとヴィンセント。二人の逃避行の果てに待ち受けているものは――?

[感想]
 今年に入ってからの映画道楽ですっかりベネチオ・デル・トロのファンになってしまい、ただ彼の演技見たさに購入したDVDである。アイドル的女優・アリシア・シルバーストーンが設立したファースト・キス・プロダクションによる製作と聞いて、内容そのものには期待していなかったのだが、これが意外に面白い。
 クライム・ストーリーという帯の文句からイメージされるよりも、作品全体の雰囲気はポップで甘い。そもそも犯罪を題材としている点では確かにクライム・ストーリーなのだが、それにしては計画も杜撰だし進んで犯している罪よりも状況に追われている面の方が強く、どちらかというと到達点の見えないロード・ムービーの趣と言うべきだろう。そしてそれよりも確かなのは、エミリーとヴィンセントの恋愛物語としての一面が一番強いこと。とんでもない偶然から出逢い、反目しながらもお互いを理解して接近していく。その様がセオリー通りに展開し、波に攫われながらハッピーエンドまで突き進むくだりは、ハリウッド風味の少女漫画と形容したい。
 犯罪ものと呼ぶにはその行き当たりばったり(そう言えば昔、エミリーの吹き替えをしている林原めぐみのラジオ番組で「行き当たってばったり」という台詞を耳にした覚えが――閑話休題)な筋書きと、状況の最悪ぶりに対して最後まで緊張感の足りない主人公二人の態度が物足りなく感じるが、恋愛物・ロードムービー・成長物として見る分には及第点。恋愛物が好きだがありきたりの筋書きに飽きたらず些かのスリルを求める、そういう向きにはお薦め。
 気弱で積極的でない自動車泥棒というデル・トロには珍しい役柄での演技は堪能できたし、作品的にも上々の仕上がりだったので個人的には文句無し。ただ、やっぱり広告で「吹替・林原めぐみ」を前に押し出しすぎるのはどうかと思うが。

(2001/10/21・2004/06/18追記)


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