cinema / 『ジーパーズ・クリーパーズ』

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ジーパーズ・クリーパーズ
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、リンダ・レイズマン、ウィリー・ベア、マリオ・オウヴェン、エバーハート・カイザー / 監督・脚本:ヴィクター・サルヴァ / 音楽:ベネット・サルベイ / メイクアップ&クリーチャー・エフェクト:ブライアン・ベニカス / 出演:ジーナ・フィリップス、ジャスティン・ロング、アイリーン・ブレナン、パトリシア・ベルチャー / 配給:GAGA-HUMAX
2001年アメリカ作品 / 上映時間:1時間30分 / 字幕:東野 聡(うろ覚えですすみません)
2002年02月09日公開
2002年07月25日DVD日本版発売 [amazon|限定版:amazon]
公式サイト : http://www.coppola-presents.com/
劇場にて初見(2002/02/24)

[粗筋]
 トリッシュ(ジーナ・フィリップス)が弟・ダリー(ジャスティン・ロング)と一緒の帰省を選んだのは、一度は両親に紹介した彼と結局駄目になってしまったからだった。憂鬱だけど気心の知れた弟とだから、車の長旅もそれほど苦痛ではない。トリッシュのいまにも瓦解しそうな愛車を交替で運転し、擦れ違う車をダシにした賭けを愉しみながらの旅に、暗い要素は何もなかった――あの車と出逢うまでは。
 外装が悉く錆びつき、不気味な鈍色に覆われた軽トラックは、姉弟の車の後方から異常な速度で迫り、盛んに煽った。どうにか脇に避け、過ぎ去るその後ろ姿にダリーは悪態を浴びせる。トラックのナンバーは「BEATNGU」――Beating You、“殴るぞ”とあった。
 不快感に苛立ちながら道を進むと、横に佇む廃屋にあのトラックが停まっていた。徐行して様子を見てみると、廃屋の脇に顔を覗かせたパイプに、何かを投げ込む影がある――投げ込んでいたものは、人間くらいの大きさで、血のような赤いものに汚れたシーツに包んだうえ、縄で縛ってあった。警察に通報しようと、トリッシュが後部座席の荷物から携帯電話を引っ張り出そうとしていると、廃屋の脇からあのトラックが滑り出て、ふたりの車を猛スピードで追い始める。携帯電話はバッテリー不足で繋がらない。今度は容易に見逃してくれそうもなかった。トラックは一瞬で姉弟の車に追い付き、煽るどころか幾たびも追突して車体後部をじわじわと潰していく。正体も目的も定かでない脅威に恐慌を来しながら、途中で草原に退避、姉弟はどうにか危機を免れた。
 気持ちを落ち着かせたあとで、不意にダリーは提案した。「戻って、あの穴のなかを調べてみよう」――投げ込まれたシーツのなかには、もしかしたら生きた人間が包まれているのかも知れない。反対する姉に、もし自分があのシーツに包まれていたら? とダリーは反問する。自分は絶対に車から出ない、という条件でトリッシュは同意し、ふたりは道を引き返した。何だかんだ言いながらも車を出てきたトリッシュとともに穴を調べているとき、ふたりは低く不気味な悲鳴を底に聞いた。トリッシュに足を押さえてもらいパイプの底を覗き込むダリーだったが、ふとした拍子で底に転落してしまう。一番下は、廃屋――教会の地下室と思しい漆黒の空間。ダリーは穴から射し込む光から外れたところに、先程投げ込まれたらしいシーツの包みを発見した。恐る恐る近付いてみると――その下から伸びた腕が、ダリーの足を掴んだ。慌ててシーツを解くダリーは、包まれていた男の躰を見て言葉を失う。男の躰は、胸の下から腹部にかけて一直線に切り裂かれ、それを太い縄で縫い合わされていた。間もなく絶命した男の躰を跨いで奥に進んだダリーは、更に恐るべきものを発見することになる――
“ジーパーズ・クリーパーズ”、その歌声が聴こえたら気をつけろ。間近に危険が迫っている――!

[感想]
 久々に粗筋を書くのが難しい。上は冒頭僅か20分程度のエピソードでしかなく、本格的な恐怖はそこから始まる。が、それを細かく書いてしまうことほど興醒めとなる内容で、ホラーとして楽しみたいのであれば、この辺りは予備知識を極力廃した方がいい。逆に、かなりすれっからしの観客――その種類を特定してしまうのもまたネタバレに繋がるので、取り敢えず詳述は避けよう――であれば途中で方向性が読め、その時点からたぶん楽しみ方は変わってしまう。恐らく、二度・三度と見たいなどと考える人間は十中八九、2度目からはところどころ笑うだろう。私のこの判断から、その素晴らしい内容を察していただきたい。
 念のために言い添えるが、出来そのものに不満を差し挟む余地はない。ツッコミ始めればきりはないが、ある程度の約束さえ受容できれば、そのひとつひとつの表現力は堂に入っており、恐怖と驚きとを素直に堪能できる。姉弟の関係や鼠、不自然な屍体、警察などの第三者、各種ガジェットの扱いも基本を知っているからこその巧みさが窺える。従って、この作品を分けるのは、好きか嫌いか、嗜好の問題のみと断言しよう。取り敢えず私は、大好きだ。
 日本ではいまいち振るわなかったのか僅か三週間での撤退となったが(次に控えているのが超話題作の『ロード・オブ・ザ・リング』であったのも不幸の一因だが)、アメリカではレイバーデイ週末オープニング記録を樹立するスマッシュヒットを放ち、続編の製作が既に進行中とのこと。――続編の作り方次第では、その存在そのものが大いなるネタバレとなる危険を孕んだ本編、出来れば「次」がお目見えする前に、興味がおありの方は何とか御覧戴きたい。特に、古典からモダンまでホラー一般を愛する方は、自らの嗜好を確認する試金石として利用するのも一興ではなかろうか。非常に歪んだ根性から、積極的にお薦めする。

(2002/02/24・2004/06/21追記)


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