/ 『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』
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『light as a feather』トップページに戻る踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!
監督:本広克行 / 企画:亀山千広 / 脚本:君塚良一 / プロデューサー:石原 隆、臼井裕詞、高井一郎、堀部 徹、安藤親広 / 音楽:松本晃彦 / 主題歌:『Love Somebody』織田裕二 / 撮影:藤石 修 / 照明:加瀬弘行 / 美術制作:河井實之助 / 美術監督:梅田正則 / 美術デザイナー:青木陽次 / 編集:田口拓也 / キャスティングプロデューサー:東海林秀文 / ラインプロデューサー:羽田文彦 / 出演:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、北村総一郎、小野武彦、斎藤 暁、佐戸井けん太、真矢みき、筧 利夫、岡村隆史、いかりや長介 / 製作:フジテレビジョン / 制作プロダクション:ROBOT / 配給:東宝
2003年日本作品 / 上映時間:2時間18分
2003年07月19日公開
公式サイト : http://www.odoru.com/
日比谷スカラ座にて初見(2003/07/21)[粗筋]
かつては“空き地署”と呼ばれた湾岸署も、お台場が観光都市として成長するにつれその重要性を増し、今や観光者相談係まで創設され全署員てんやわんやの大騒ぎを繰り返している。
五年前の警視副総監誘拐事件で負傷した青島俊作(織田裕二)も、紆余曲折を経て本来の刑事課強行犯係の刑事に復帰、現在も元気に働いている――ただ、繰り返される日常業務に些か辟易し、少々燻っている節があった。元気が余りすぎて、SAT=特殊急襲部隊との合同演習でおいたが過ぎ、全署員減俸処分という大迷惑を振りまく一幕もあった。
そんなさなか、湾岸署管内で奇怪な殺人事件が発生した。樹木のあいだに蜘蛛の巣のように張り巡らせた赤いロープによって窒息死した男性が発見されたのである。特別捜査本部の設置が決定し、湾岸署員は日常業務を脇に置いて準備に大忙し。青島も、盗犯係の恩田すみれ(深津絵里)とともにどーしようもない仕事に駆り出されて食傷気味。加えて、捜査本部長として派遣された警察初の女性管理官・沖田仁美(真矢みき)は到着早々青島に食ってかかり、所轄の刑事を駒と割り切って憚らない強引な方針を打ち出して来る。青島の嫌気は募るばかりだ。青島と警察機構の改革を約束しながら、五年前の事件で上層部に楯突いたことが原因で一時降格し、今年ようやく警視庁捜査一課の管理官に復帰したばかりの室井慎次(柳葉敏郎)も、今回は沖田のサポート役という名目の着任で精彩に欠く。
捜査本部の設置早々、青島とすみれはその室井から直々に特命を与えられた。お台場の各所に極秘に設置されたモニターを利用し、監視と不審人物の割り出しを行う、というものである。プライバシー侵害の怖れが高い捜査方法に戸惑いの色を露わにしながら渋々モニターの前に着くふたりだったが、人々の思いがけない行動を目撃できるシステムにいつの間にか仕事を忘れて夢中になる。
だが、そんな中で第二の殺人事件が発生する。屍体のまわりに薔薇が敷き詰められた特異な現場状況、会社役員という被害者の共通点から、最初の事件との関連が考えられた。捜査方針の転換を図るべきところだが、その前に沖田はモニターに貼りついていながら犯行を見逃した青島たちを叱責し、代わりに室井にモニター監視の任に着くよう命じる。そのとき、湾岸署に犯人と見られる男からの電話が入った。
沖田の対応が相手の不興を買ったため、沖田は早速ネゴシエイター=犯罪交渉人の出動を要請する。アメリカ・ロス市警で研修を行い、警視庁唯一のネゴシエイターとなっていたのは、何とかつて湾岸署で青島らとともに刑事課に籍を置いていたキャリア候補、真下正義(ユースケ・サンタマリア)だった。真下は早速かかってきた電話で、犯人が複数であること、現場に何らかのメッセージを残していることを確信する。
一方、青島とすみれは、第二の殺人現場で犯人を目撃した可能性のあるOL・江戸りつ子(小西麻奈美)警護の任を与えられた。りつ子は沖田の説得もあって、その日のパーティーに参加するが、その会場で青島とすみれは、それぞれが追っている事件の犯人を見つけてしまう。この最悪のタイミングで、第三の電話が入った――[感想]
滅法面白かった、で済ませてもいいのだが、話としては色々問題があるのでひととおり指摘しておくと。
まず、エピソードがとっちらかりすぎている。レギュラー陣それぞれに見せ場を作ろうとしたせいなのは解るが、いきなりぽつんと挿入されたり、ほったらかしになっている箇所があって、気にし出すと落ちつかなくなる。
そのくせ、主要キャラクターが全体に「いるだけ」の印象を与えてしまっているのも残念。実績を重ね優秀な捜査官となって戻ってきた真下は鮮烈だったが、その他は従来のシリーズの雰囲気に収まりすぎ、出来ればもうちょっと弾けて欲しかったところ。柏木雪乃(水野美紀)がその真下との絡みでしか活きてこなかったのがその最たる点である。
何より勿体ないのは、物語の主眼となる連続殺人で用いられた趣向である。ロープで作った蜘蛛の巣に屍体を磔にするとか、薔薇を散らした床に屍体を置き去りにするとか、舞台は非常に魅力的なのに、その辺は大雑把に解決されてしまった感がある。全体にアイディアは良かったのにミステリとしてうまく活かされておらず、ミステリ愛好家としてはもどかしい思いをさせられた。
が、テレビシリーズから通して鑑賞した方には言わずもがなだろうが、もともと本編の主眼は謎解きにはない。上層部と所轄の対立という構図の中で、立場を超えて結ばれる絆とか現場での悲喜こもごもとか、そうした人間くさい出来事を拾い上げていくことのほうが本筋であり、大事件はあくまでそれらを紡ぎあげるための糸でしかない。こと、シリーズものとして登場人物それぞれに居場所を与えねばならない宿命を背負った本編、しかも僅か二時間ちょっとの尺で描かねばならないとなれば、やたらに込み入った謎解きは却って邪魔になるのだ。ほどほどに魅力的で、ほどほどに解決されるこのバランスが恐らく丁度いい。
何より、テレビシリーズの時と同様に、前後に物語を繋げていく様々なエピソードやパーツが設けられた話作りは、間違いなくファンを裏切らない。門番を務めていた警官ふたりが志望通りに刑事課に配属になっているとか、湾岸署には散々迷惑を被ったあの人の納得の行動とか、きちんと増えていた自動販売機(しかもカップラーメン対応)とか、従来のシリーズを踏襲した幾つもの仕掛けを捜しているだけでも楽しい。
上では「いるだけ」と書いたが、そうしてほぼすべてのメンバーが(ちょい役で画面に登場しているスタッフも含めて)完璧に揃って、旧作と変わらぬ――或いはその間の出来事を思わせる微妙な変化を湛えて登場させているのは結構凄いことだろう。それぞれにキャリアを積んで成長したことを窺わせながら、その佇まいはきっちり従来の快いムードを受け継いでいる。五年を経て大きく変化し、しかし同時に変わらなかったことも示した、シリーズ作品としては見事な完成度である。
前の映画版でも感じた弱点――テレビシリーズを見ているといないとでは楽しさが全然違う、そもそも大画面で見る必要はあまりない(但し、オープニングの趣向だけは映画館でないと活きないだろう。あれは絶品)は依然残っているものの、気にする必要はないだろう。今後テレビ放映されるにしても、見るたびに何らかの発見があるように細部まで凝りに凝りまくって作られているのがよく解る。
映画として観れば一貫性のないストーリーがどうしても不満になってしまうが、前作を存分に楽しみ、前作のスタイルを継承したものを期待する限り裏切られることはまずない。いやあ、本当に楽しかった。それでもやっぱり、犯行に用いられた趣向の幾つかは、もうちょっと掘り下げて欲しかったと思う。その気になれば、『踊る大捜査線』に大きな影響を齎した『セブン』に匹敵する作品を生み出せたかも知れないのに。
終盤、いちばん謎解きらしい場面ですみれが小さく発した台詞が、ミステリファンにとって最も嬉しい場面だろう。……でもない? 意味が解らない? ええええ。……で、岡村隆史って結局何だったんだろう。いや、あれはあれで面白かったけど。
(2003/07/21)