告知のあと〜それぞれの思い〜


わたしは子供が大好きだった。その割には自分のしたいことを優先させていたので、結婚したのは36のときだった。
その後も子供を育てる自分が想像できなくて、仕事を優先させていた。こんなわたしを主人はどう思っていたのだろう。
結婚前、主人が子供を欲しがっていることを会社の人から聞いたことがある。しかし、結婚してからは2人の生活を満喫していた。

ある日主人に子供のことをたずねると、「あえて欲しいとは思わない」との返事があった。その返事に寂しい思いを抱いたこともあった。
しかし、
    「もしできたら仕事は辞めなあかんで」
との言葉に返す言葉を失ったのも事実であった。

仕事と子供・・・どちらを優先させたかというと答えは仕事であった。
しかし、産める可能性があるのとまったく可能性がなくなるのでは意味が変わってくる。主人はホントのところどう思っているのだろう。子宮を摘出するってことは望みが絶たれること。自分たちの子孫が絶えることになる。それでも子供が欲しいのなら、別に私じゃなくてもいいのでは・・・?
両親に対しても孫の顔を見せる事ができなくなって、申し訳ない気持ちがこみ上げてくる・・・こんなことになるなら、もっと早く結婚して子供を産んでおけばよかった・・・

告知の翌日は台風一過のすがすがしい日であった。実家の両親が心配してたずねてきてくれた。
少し落ち着きを取り戻したのだが、親の顔を見ると涙が出てくる。泣き顔を見せないようにと思っていたら、母が言った
 「我慢することない、泣きたければ泣いたらいいよ。
  そのほうがスッキリするでしょ。いくらでも受け止めてあげるから。」
母は強いと思った。でもありがたかった。
 「ごめんね。孫の顔見せられなくて・・・」
 「何言ってるの!元気でいることが一番の親孝行やで!
  親より先に死ぬ方が親不孝やで。前向きに生きていかな!」
だまって見ていた父も頷いていた。少し心が落ち着いた・・・

主人も「みほなが元気でいてくれるのが一番や」「いまの世の中、不幸な環境にいる子供がたくさん居てるんやから、替わりに育ててあげたらいいやん」「施設の子を引き取るほうが、子供を選べていいやん!」
…ってあんたそれ不謹慎やで!どこまで本気やら・・・。でも主人なりに一生懸命支えてくれているのが、よくわかった。ありがとう、感謝してます。

告知の翌週、改めてCTとMRIの検査を行う。
私の場合、上皮内ガンと同時に腺ガンも見つかっている。上皮内ガンだけなら、円切だけで済んでいたのだが、腺ガンもあったのでその進み具合が心配だという。どうかあんまり進行していませんように・・・

告知から2週間後に診察があった。CTとMRIの検査結果をみて、手術の方針を決めるという。
診察予約が昼からだったので、主人に早退してもらうようお願いして、一緒に診察について来てもらった。Drから主人に対して改めてガンの告知があった。検査の結果、あまり進行していないということで、子宮のみの摘出でよいとのことだった。転移のことを考えると卵巣も摘出したほうが望ましいのだが、年齢的にもその後のリスクを考えると残しておくほうがよいとのことで、卵巣は温存となった。
この結果に少し安堵した。手段はともかく、卵巣が残ることでまったく子供が望めないわけではない。かすかな希望があるだけでも、今の私にはなぜか心強かった。
このときはまだ手術日の予定が決まらなかった。病院側の予定が詰まっていて、早くても11月10日か次の週だといわれた。空きがでればすぐ入れてもらえるよう手配しておくとのことだった。