雨に濁れば

平成13年8月12日

 

今年の東京の夏はまったく訳が分からないよ。梅雨が終わった直後はあんなに暑かったのに、7月後半からは涼しい日が続いている。途中暑さが戻って来たけれども、直ぐに涼しくなってしまった。

熱風酷暑の日々ならば水不足も有りかなあと思うけれども、この気温で水不足はどうにも合点がいかないね。

もしも釣四郎が、未だに東京の水瓶の一つである小河内ダムのバスにはまっている身であればルンルン気分でダムに向かったであろう。往復数時間もかけて。減水しているダムを観察して、何時もは見る事の出来ない水中の切り株や岩の在処を確認出来るからね。しっかり覚えておく事だ。秋の満水時に大いに役立つ事だろうからね。幸い釣四郎は小河内ダムから足抜けした身だから、TV画面を観ながら、いや大変だねえ、節水しなきゃあと言うだけである。

さて、世間様はお盆休みに突入しているけれど、とっくの昔に夏休みの終わってしまった釣四郎には、全く普通の土曜の夜だ。そんな訳で今夜も出没致しました、旧江戸川に。夜と言っても日付は既に日曜に替って午前となっている。今夜もぐっと涼しい夜である。

途中の江戸川水門で川の具合を覗くと、水は真茶。水門全開。流れは速い。釣四郎の住んでいる辺りは全く降らなかったけれども、上流地帯ではドカドカと恵みの雨が降ったようだ。水門の脇から出て来たルアーマンに声をかけてみたけれども、全く芳しくないとの事だが、ベイトは沢山廻っており時折散発的にシーバスらしきライズも有ると言う。

ライズの話しが出たけれども、此処の場合、他の魚との見分けが非常に難しい。ボラやコイやレンギョやらが沢山生息していて、これらの魚のライズの中からシーバスのものを拾い出す事は釣四郎には殆ど不可能だ。なにしろ、盛り上がるとそこいらじゅうでバッシャンドッポン始まるものだから訳が判らない。時折鋭い水音に、今のはシーバスかなと思う程度である。

いつもの釣り場に到着して驚いた。ルアーマンの話し通り無数のベイト、おそらくイナ(ボラの子)だろう。その数と言ったら。1匹の魚がV字の波を造り、その隣のV字と交差して波は菱形となる。この菱形の塊がそいらじゅうに、次から次へとやって来て、とうとうと流れる旧江戸川の川面にザワザワとした怪しい小波をたてている。

こんなにベイトが居るのだからシーバスだって来ているに違いないと思うのだけれども、ルアーには全く反応しない。急に水が濁った為にシーバスは川底やテトラにへばり付き、じっと水が回復するのを待っているのだろうか。

それでも頑張る釣四郎。場所を換え、ルアーを換え、リトリーブスピードを換えと色々試したけれどもコツリともアタリは無かった。

こうなるとドッと疲れが出ちゃう。水色の回復を待つことにして今夜はストップフィッシング。2時間程度でギブアップの夜だった。

 

さて、その夕方、僅か半日程度で水が回復する訳も無いのだけれど、ちょうどラパラを佐野ルアーに改造したモノが有った為、リップ調整を兼ねて行ってみた。

相変わらず江戸川水門は全開だけれど、水色はやや回復しており、ちょうど上潮だった為流れは極緩やかになっていた。

リップの調整も終えて、ラパラCD9と佐野ルアーを交互に投げて行く。何時が日暮れ時だか判らないくらい曇っており、ほんとうに何時の間にやら夜が来た感じとなった。

昨夜居た山の様なベイトは何処へやら、静かな静かな水面だ。居無くなってしまうのも変だし、おそらく沈んでいるものと思われた。

沈みテトラを下流へ下りながら釣り歩く。マリーナ前を過ぎて、造船所前辺りでルアーが止まった。魚に押え込まれた感じでは無く、ただ止められた。根掛りと思っていたらラインを通して静かに生物感が伝わって来る。

魚!?

ビシッとアワセを入れるとグッとロッドが曲がって走り出した。ヒット!。魚は直ぐに水面に飛び出しジャンプを繰り返す。最初の印象と違って小ぶりなようだ。

難なく取り込んだのは46センチのシーバスだった。

何と言うショートバイト。餌釣りで言うところの居食いってヤツだ。魚は居るけれども予想通りの超低活性状態なんだ。ルアーを追う状態では無いのだ。

エビ捕りのおっさんが登場した。が収穫は無いようだ。釣四郎も明かりを点けて覗いてみたけれども、1匹も見当らなかったし、濁りのせいでは奥まで見えなかった。エビも何処かへ潜り込んで出て来ないらしい。

パラパラパラ。「ん!?、ぎょっ!、雨!!」夜目にも判る重たい空から雨が降って来た。蒸し暑い夜ならばそのまま釣り続けるのだけれど、今夜この雨に濡れると風邪をひきそうだ。大急ぎでマリーナ前の階段下へ逃げ込んだ。

雨宿りしながらゆっくりと休憩をとる。

雨が止んで釣り再開。遠くから東京ディズニーランドの花火の音が聞えて来た。と言う事は20時30分である。以前は此処から花火が良く観れたのだけれども、ドカンとマンションが出来ちゃって見えなくなっちゃった。

グン!

おおヒット!。

とアワセを入れた途端に水から飛び出したのは30センチほどのチビッ子だ。君には用は無いのだよ、5年くらいたったらお会いしましょうとリリース。

この後、暫く粘ったけれども、どうにもこうにもサッパリだった。水の回復を待つよりほか無さそうだ。そう思いながら釣四郎は釣り場を後にした。