ゴロリ釣四郎
平成13年6月9日
いつも行く旧江戸川は先日の大雨で濁りが酷くてお話にもならないだろう。もっとも他所もパッとした話しは聞かない。ならば三浦半島三崎港へのエギングに決定だ。先週の三崎は赤潮で撃滅状態だったけれども、それから雨が降ったりしているのでそろそろ良くなっているだろう。秋谷港や他のまだ行ったことの無い堤防も考えたけれども、この所天気予報がすこぶる信用出来ない。特に強力な夕立は厄介だ。いざと言う時避難出来る場所が有る三崎港を選択したのには、そんな理由も有ったんだ。さあ今回はどんな釣りが出来たのでしょうか!?。
釣四郎が三崎港白灯突堤に立ったの午後5時ちょっと前だった。いつもの超低温冷凍庫裏も覗いて見たけれども、流石に土曜日だけあって人で一杯だ。それに肝心のスミ跡はどれも古いものばかりだ。前回来た時には甲イカのドバアーってな感じのヤツが沢山有ったのに、本日はそれすら無い。潮色はかなり暗く重々しい感じでちょっと不安だ。
突堤の真ん中よりやや付け根より、新堤側に場所を確保してチョイと偵察してみる。スミ跡は同様に寂しいものだ。釣り人は、浮き釣りとトリック仕掛けの人が大半を締めている。そんな中でエギングをやっている人が突堤の先端に居たので声をかけると午前中にアオリが釣れたそうだ。ちょっとは期待が持てるお言葉に元気が出て来た。
当日の白灯突堤。奥に見えるのは城ヶ島だ。
期待と不安を胸にキャストを開始した釣四郎。明日の朝まで頑張るぞお!。
ズル引きをしている時だ、グッツ、グウーンと重くなった。「ン!?」と思い暫く止めてみたけれど、それ以上の反応は無い。「えいっ」とシャクルとズンと来た。「おっ!!」とそのまま巻きに入ったが引きが無い。上がってきたのはゾウキン。泣けてきちゃうね、まったく。
夕闇が迫って来るとかなり気合が入る。そろそろ帰る人も出始め場所を移動しながらシャクリにも力が入る。が、本日のアオリも釣四郎には冷たい。期待のマズメ時も終わりトップリと暮れてしまった。そして海面を観察してギョッとした。夜光虫である。「ゲゲッ!、またかい!?」。どうやらこの時期の三崎港には定番のようである。
釣四郎の隣には女性が二人陣取ってトリック仕掛けで小物を狙っていたのだけれども、薄暗くなってからマメアジ、子サバの入れ食いモードに突入していた。仕掛けを下ろせばアタリが来るので、丸ごとフライにしてどうのと会話も楽しそうだ。真っ暗になってからアタリも遠くなったので帰り支度が始まったころ、水面直下に無数の小魚の群れが出現した。夜光虫の光に身を包みボワーっとした感じで激しく走っている。御二人は仕舞った竿を取出して再び釣り始めたけれども不思議と無反応、諦めて帰って行った。コマセを撒いて魚を無思考状態、狂喜乱舞にしないとダメなのかな?。
ベイトは数限りなく押し寄せる。一度、シーバスらしき中魚が追っているのも見えた。
これだけのベイトが群れているのだからイカが居ても良さそうなのだけれども餌木には無反応だ。
夜光虫は5月の始めに来た時よりも収まってはいたけれど、それでも水中のラインに反応してぶっとい棒のように浮き上がらせてしまうので釣れる気がしない。
夜9時ころズル引きして来た餌木を回収しようと思った時ささやかな違和感を感じた。水中を覗くと、上がって来る餌木がボワーっと輝いて見えて来た。水面に達すると、いくら何でも餌木にしては光の塊がデカすぎると感じた瞬間、ピョシュッと小さく塩を吹いた。「何だイカジャン!!」と思って抜こうかアミですくおうかと迷っているとクンクンクンと可愛いながら強力なウォータージェットで脱出していった。残った餌木を回収すると2センチくらいの足が一本カンナに残っていた。おそらく小さなマルイカだろう。
カンナに残った足はヒクヒクと動き、見ていると妙な感覚に陥りそうだった。「食ってみるか」と、そのヒクヒクを口にする釣四郎。噛み締めるとほんのりと甘みが広がった。「旨いじゃあないかマルイカは」と思った釣四郎でした。
周りの人は電気浮きでこのマルイカ狙いのようだ。極ゆっくりと潮が流れていて、時折釣四郎の正面に浮きが流れて来るのでチョット釣り辛い。
隣に餌木マンが現れた。暫くするとあまりの釣れなさっぷりに退屈になったのか釣四郎の方へやって来て話しをしたのだけれども、なんと数日前、釣四郎の立っているこの場所で2キロのアオリが出たそうな。しかも夜にだ。きっと夜光虫の海だったに違いが無いので、出る時は出ると言う事か。
その人曰く、「夜光虫で餌木が光っても関係無いでしょう」との意見だった。事実その人はシャクリを入れている。釣四郎は夜光虫を気にしてスローなズル引きに徹していたのだが、俄然気合のシャクリに一転した。なにせズル引きオンリーだと気分的に疲れて来ちゃって仕方が無い。
夜中に雨が振り出した。雨その物は大した事は無いけれども、気分的に良くないね。これを機に突堤の釣り人は皆帰ってしまった。
小雨は暫くすると止んだ。以前もそうだったけれども夜光虫の活動が急に下火になったので、何だか釣れるのではないかと思えてきて、シャクル度に「乗れっ」「掛れっ」と念じながらガンバル釣四郎。
明け方近くになると強烈な睡魔が襲って来て、チョイトの間寝ちゃおうかと思った。しかし餌釣りと違ってキャストの回数が釣果に直結する釣りだ。餌木を動かさなくては全く意味が無いのだ。そこで釣四郎はキャスト後の着低を待つ間にゴロリと横になり休憩を取る事にした。カウントを取りながらコンクリートに身を横たえて目を瞑る。大抵20を数えたころにカウント不能に陥り、約1分が3分になったり、恐らく5分くらいの時も有ったのではあるまいか。一瞬夢まで見たりした。30分ほどこれをやっただろうか。すっくと立ち上がると、そこには完全復活の釣四郎がいた。
空は重いながら明るくなり始め、次第に夜光虫の発光も解らなくなって来た。一層気合が入る釣四郎。
作業船が超低温冷凍庫裏へ着岸した。向うの釣り人はえらい事になっているだろう。白灯突堤は、この超低温冷凍庫裏の岸壁の横の、生け簀の有る岸壁の東端から直角に城ケ島方向へ伸びている突堤を言うけれども、その生け簀と白灯突堤の間に定置網漁から帰って来た船が、魚の陸揚げと氷の補給の為に着岸した。当然釣四郎は見物に行ってみた。
子魚を中心にボラなどが大量に、且つ無造作に網で掬い上げられて箱に収まって行く中、別の生け簀から、生きたままのデッカイシーバスやタイなどが、別に用意された生け簀へ移し替えられていた。そしてその中に2キロは越えていそうなアオリがエンペラをウネウネさせていた。アオリはこのデカイのをを頭に3杯いた。これが釣りたくて頑張っているんだけれども。
でっかいアオリイカ
明るくなると突堤も人が増えて来た。潮はチョット動き始めたかなと思うとまた動かなくなったりと、何だかはっきりしない感じだ。
ふと見ると「タコの恩返し」の時に知り合ったルアーマンがにっこり笑っていた。おやどうもと挨拶を交し話をすると、ルアーマンはあの後日を変えて再びこの白灯突堤にやって来て、いきなりモンゴウイカを釣ったそうである。なんてラッキーなんだろう。釣四郎なんざ、イカにお会い出来るまでにどれだけかかった事か。釣りは腕も大事だけれども、それ以上に運も大事だ。いくら腕が良くても運が味方しなければ狙った獲物を手中にする事は出来ないし、また腕がなくても強力な運が在れば腕をカバーする事も出来る。そして運と腕が在れば素晴らしいフィッシングライフを満喫出来るだろう。そんな人がたまに居るものである。
二人並んでキャストに励むけれども依然イカは沈黙したままである。
午前9時ころ、超低温冷凍庫裏の岸壁に接岸していた作業船が動いたので我々はそちらに移動する事にしたが、その直前、ルアーマンにヒット!!。釣四郎はタモを伸ばしてランディング態勢にはいった。が、上がって来たのはタコであった。残念!。釣四郎の経験を述べると躊躇無くルアーマンはタコをリリース。はてさて恩返しは在るだろうか。
ルアーマンにタコが来た。
超低温冷凍庫裏の岸壁は我等の独占状態であった。が、しかし沈黙の海には変わりは無かった。
横の生簀で不思議な出荷準備が始まった。スーツ姿の人と猟師さんが何かを準備している。つまりビジネスである。おそらく何処かの会社だかチェーン店だかの買い付けだろう。知らない処でシビアな話が行われているに違いない。
午前11時、釣四郎は遂にヘロヘロになりリタイア、ストップフィッシングである。えらく疲れた。チラリとでもアオリの姿を見れば元気も出るのだろうけれどもね。ルアーマンに別れを告げて三崎港を後にした。
この釣行で耳にしたアオリは僅かであったが、ポツリポツリとは出ているようだ。今後期待出来ると言ったオッサンもいたし、秋まで待つさと言った餌木マンもいた。どれが本当だか解らないけれども、個人的には前者に期待したい釣四郎です。