ルアーマン イナダをゲットする
平成13年11月17日
ウールのセーターやトレーナーでパンパンになったバッグを担ぎ、腰にはこれまた流石にバックには収まりきれない防寒着を巻き付けて、クラーとロッドを担いで「いったい何処へ行くんじゃい!?」と言った格好で釣四郎が向った先は、何時もの神奈川県三浦半島三崎港。もちろんアオリイカ狙いのエギングだ。このところ、行こうかなと思うと天気予報が芳しく無くて断念し続けていたのだ。さあ、今夜は久しぶりのエギングだ。どうなる事でしょうか。
釣四郎が現地に到着したのは、西の空に僅かに夕焼けの痕跡が残っている、そんな時間だった。
釣四郎は考えていた。今夜は月が無い。イカ釣りには月夜が良いと言うけれども、逆に真っ暗な中に一点明るい場所が有ればそこはナイスなパラダイスと成るのではないか。そんな場所は、釣四郎の向った場所には3カ所あった。超低温冷凍庫裏、生け簀の横、白灯突堤。何れも一晩中灯かりが有る所だ。
さて秘策を胸に岸壁に立った釣四郎はアゼンとした。超低温冷凍庫裏はコの字型の湾となっているけれども、それぞれの岸壁に船が停泊しており、そのうちの2隻が実習船で煌煌と明かりを灯して一帯を明るく照らしていた。「ここ一点の明かり作戦」はこの段階でブチ破られてしまったのだ。
とりあえず、生け簀と白灯突堤を覗いて見る事とした。歩いて見るとどちらも人で一杯。海面にはイワシらしい波紋が其処此処に広がり、それを追うであろうイカに期待が持てる。
白灯も、生け簀横も明りが有って何時もは何の問題も無いのだけれど、今夜は物凄く暗く感じた。余りにも実習船の明かりが強力なのだ。
釣四郎は、この実習船の明かりの有る所に釣り座を決めた。場所は超低温冷凍庫裏の付け根付近だ。此処は、実習船の明かりに加えて街灯も有るのでとても明るい場所だ。いそいそと準備をしてファーストキャスト。殆ど無風状態の三崎の海に餌木は気持良く飛んで行った。
前回リールを1台しか持って来ていなくてイナダの狂ったようなボイルを逃して悔しい思いをしたので、今回は2台持って来たのだが、実はエギング用にはファイヤーラインを巻いて来た。噂ではすこぶる感じが良いらしい。
実際に見てみると、随分前に「金属の糸」とか言うキャッチフレーズで、メタリックなクモのデザイン(おケツがリールになっている)のパッケージで発売されていたラインとそっくりであった。釣四郎もシーバスでしばらく使っていたけれども、PEラインやフロロカーボンラインの出現で何時の間にか店頭から姿を消してしまった。もしかしたら同じモノではないだろうか。
このラインはナイロンやフロロに比べるとずっと細いので良く飛ぶ。しかも比重が軽いのでエギングにはピッタリだろう。事実、餌木の着水点付近からロッドまでの凪いだ海面に漂うラインが船の明かりに照らされて良く見える。フォール中にイカが抱き着いたらラインの動きで判りそうなほどだ。
今夜は餌木マンが多い。時間と供にドンドンやって来る。と、言う事は好調な証拠だろうか。上のタナから底までをじっくり探るけれどもなかなかアタリが来ない。
そのうち隣の家族連れのオトウチャンが餌木をロストしたらしく、それを機に撤収したので釣四郎はそちらに移動した。そして釣四郎も餌木をロストしてしまった。前回のヒット餌木だったのに・・・。
若干風が出てきて穏やかに凪いだ海面が細かく揺れだし、それと供に寒くなって来た。防寒着を羽織って寒さに備える。アタリが無いまま風だけがドンドン強くなって来た。帰る釣り人が目立って来る。
この岸壁の先端部分には生け簀が有って、釣四郎はそこでよく釣っているのだが、その場所の先客が撤収したので、釣四郎はこの明るい場所を諦めて先端部分の生け簀が有る角に移動した。
こちらは更に風が強かった。現在の装備では寒くてやってられない。担いで来たバックの中の防寒装備を総動員だ。もうモコモコ状態の釣四郎。まるで真冬に沖釣りでもやるような格好である。しかし、流石にこれだけ着込むと冷たい風もなんのそのでぬくぬくだ。昨年の今ごろは三崎の風を甘くみて震えながらシャクッていたので辛かった。しかも全然釣れないと言うダブルパンチだった。
暫くすると、「ちょっと横で良いですか?」とお兄さんがやって来た。このお兄さんはロングロッドなのでムチャンコ餌木を飛ばす。この人は「三崎港は調子が良い」と言う話しだったので来て見たらしいが、余りのシブさに参っているとの事。大橋付近でアオリイカとスミイカがそれぞれ1杯づつ上がったのを見たそうだ。一ヶ所で粘るタイプでは無いらしく、暫くして何処かへ移動して行ってしまった。
風は更に強くなり餌木をキャストして着低を待つ間に、海面に浮かんだラインはどんどん流されてしまい、正面に投げた餌木が横から帰って来るようになってしまった。これはやり辛い。そんな訳でナイロンラインを巻いて有るリールと選手交代である。
が、やっぱり流れる事は流れるなー、まあ仕方無いか。
この港に来た時には空に雲がかかっており、放射冷却の心配は無かったのだけれども、強い風がその雲を何処かへ押し流してしまい、今は満天の星空だ。明日の夜にはしし座流星群と地球が衝突するので沢山の流れ星が見えるはずだけれども、もしかしたら気の早いのが居て、今夜辺りでも流れやしないかと時々天を仰いで見る。すると明るい光がスゥーッと流れた。おお!と思ったけれども全然消えない。そのまま西の空へ見えなくなて行った。恐らく人工衛星か何かだろうが、すかさず釣四郎は「アオリ、アオリ、アオリ」と唱えていた。人工だけれども星は星だ。ささやかにご利益が有るかもしれない。
ズン!
おっ!おおおお!!
来たあああ。
大喜びでリーリングに入る釣四郎。でも、あのドキドキする引きが無い。たまーに引いてはいるけれども・・・。水面に上がって来たのは可愛いサイズのイカだった。ヨイショっと抜き上げて、クーラーの上へ乗せる。(地面に置くとダメージがあるかなと思ったからだ。)3.5号の餌木と同じような大きさのアオリイカ。自分と同じサイズの獲物を食うつもりだったのだろうか。写真を撮った後、手で触らないようにそっとリリース。「春に再びお会いしましょう」と三崎の海にお返しした。まあ、人工衛星へのお願いじゃあこんなモノでしょう。
時折イワシの群れが追われるように水面をシャパシャパザザーッとジャンプしながら流れてゆく。イナダが居るようだ。
釣四郎はこの岸壁の角部分に立っている。その後ろは丁度生簀の前にあたるのだが、其処ではおっさんが順調にアジを釣り上げていた。おっさんがそのアジを握ると、頭とシッポが大きくはみ出しているので20センチは超えているだろう。アジのタナは底である。海底付近を群れで移動しているのだ。
と言う事は、イカはイワシを狙わずに底でアジを狙っているのではあるまいか。水底から離れ、海面近くのイワシを狙おうものなら、忽ち恐ろしいイナダの餌食となってしまうだろうから。
釣四郎は底狙いに徹した。
ズン!
来たああ!!。
グウウンと重くなったロッドを慎重にリーリングする。しかし先ほどと同様にあまり引かない。水面に獲物が現れたが、その時お隣でエギングをやっていたお兄さんがライトでサポートしてくた。
タモにすんなりと入ったイカはやっぱりリリースサイズのチビッコだった。うーん残念。写真を撮ってリリース。
再びキャストを繰り返しながら、何気に生簀と岸壁の間の水面を見ると、チビッコのアオリがヘロヘロと泳いでいる。先ほどのイカのような気がする。餌木の刺さり所が悪かったのか、又はタモで掬ったのが悪かったのかダメージが残ってしまったのだろう。そのうち、釣四郎の後ろで釣っていたアジ釣りのおっちゃんと入れ替わりに入った家族連れに網で掬われてしまった。
ちょっとだけ「イカよ、すまねえ!」と思ったけれども、掬った家族は大喜びだったので良しとしておこう。
日付も替わって日曜日に突入した。
相変わらず風は強く、時々強風に背中を押される。昨日の昼間は大変穏やかで暖かかった為に、これはちょっとオーバーだろうかと沢山持ってきたセーター類だったが役に立った。強風をモノとせずに温かだ。がしかし、重い。特に釣四郎が着込んでいるフィッシングウェアは中にライフジャケットが仕込んで有るので、その分重いのだ。うーん肩凝るなー。
せっせとシャクッていると、以前この港で顔見知りになったルアーマンが横に立っていた。
「やあ」と挨拶を交わして並んで釣りをする事となったが、ルアーマンが投げて居るのは餌木ではなくて、その名の通りルアーであった。彼は青物も狙っているのだ。かく言う釣四郎も、実は予備のロッドにしっかりとルアーをセットしており、いつ何時イナダによって海面が沸騰しても良いように準備だけはしておいたのだった。
時折イワシが逃げ惑うとスッとルアーロッドに手が伸びるけれども一瞬で静かな海面に戻ってしまう。イワシは塊となって時々廻って来たけれども、上げ潮に変わってからは近くに来なくなってしまった。今夜は大潮だけれど、トローリとしか潮は動かず、エギングはやりやすいけれども、イカの食い気はこんな時どうなのだろうか。
段々夜明けが近づいて来て、遂に明るくなってしまった。
暗いうちから散発的だけれどもイナダのボイルがあったが、ここへ来て段々本格的になって来た。本日もこの前のように海面が沸き立つのだろうか。
「何か来ました!。」とルアーマンの声。
釣四郎が振り向くとロッドが曲がっている。ルアーマンは楽にリーリングしているように見えたのでシーバスかなとも思ったけれどもジャンプしない。釣四郎はタモを持って待ち受ける。手前まで寄せた所で強力な突っ込みが始まった。ロッドが思いっきりガンガン曲がって魚の必死の抵抗に堪えている。この岸壁には水中部分に交互にエグレが存在しているけれども、どうやら其処へ潜り込もうとしているようだ。しかし、ここはルアーマンの勝ちであった。耐え切れなくなった魚は徐々に浮いて来て遂にネットに収まった。立派なイナダだ!。さすがに「青物も狙います。」と言っていただけの事はある。大したものだ。
見せ付けられた釣四郎はたまらずルアーロッドを手にした。ブンブン投げてジャカジャカ引いて来る。ルアーマンも魚をバケツに入れると再びジャカジャカ引き始める。ジグミノーを使って釣四郎の知らないテクニックを披露してくれたのでメタルジグで真似して見るけれども、いや疲れるのなんの。暫くやったけれども釣四郎はエギングに戻ってしまった。
ズン!
グイイイイイーーーーンン
来たあああ!!。
やっと来た。しかも重く引く!。うっれしー。「バレるんじゃあないぞおーっ!!」と慎重にリーリング。
「タコじゃあないの?」とルアーマンが不吉な事をおっしゃる。
水面に上がって来たのは紛れも無くアオリイカだった。すかさずルアーマンがタモで掬ってくれる。ちょっと小振りだけれどもキープサイズのアオリイカ。うれしーっ!。陸に上げられても尚、このイカは餌木をしっかり抱いていた。この貪欲さがコイツの命取りとなったのだろう。
シメようとしていた時ブシュと墨攻撃。「うわあああっ!」と避けたけれどもやられてしまった。「ざまあ見やがれ。」と言わんばかりである。
なにはともあれルアーマンと釣四郎、お互い獲物をキープ出来て良かった。
どうやら白灯突堤のほうでも2杯のアオリイカが上がったようだ。あっちの方が良いのかな?。
ズザザザアアアーーーッ!!!。水面が沸き立ち、あちこちでイナダがイワシを襲う。ルアーマンがそのイナダを狙う。釣四郎も再びルアーロッドを手にしてジャカジャカ引きまくる。向うの方で鳥山が立つ。暫くすると、あちらでも鳥山が立つ。ザザザアアアアー。足元でイワシが逃げ出しその直ぐ後ろを砲弾のように猛スピードでイナダが追う。なんて凄いんだ!!。
暫くするとボイルも散発的となり、そのうち静かな海へと戻ってしまった。海鳥は波間に羽を休め、イワシは緩やかな群れとなって足元の水面下に漂い、イナダの気配は三崎の海から消えてしまった。ルアーマンはルアーを外してエギングを始め、釣四郎の左腕は疲労物質の蓄積でヨレヨレとなってしまった。
暫くエギングを続けたけれども全くイカが乗る気がしない。こうしてお昼前にストップフィッシングとし、ルアーマンに別れを告げた。防寒着を脱いだ釣四郎は、その代りにドップリと疲れを背中にしょって三崎の海を後にした。
追記
今回は大潮にも関わらず、潮の動きが悪かったせいか気配が薄かったように思えます。先月の釣行時にはあちこちで上がっていた甲イカも姿を見せず全体的にシブイ状況でした。今後上向く事を期待したい釣四郎です。
尚、イナダはやはり朝方が良いようです。専門に狙えば何とかなるかも知れません。体力の有る方はどうぞチャレンジしてみて下さい。ルアー以外にもライブベイト(イワシの生き餌)で狙っている方もいらっしゃいました。
今回のヒット餌木