初釣行はエーデルワイス

平成14年3月3日

 

タッタカターとスクーターを飛ばしながら釣四郎は本日の釣行場所を考えていた。

新木場方面には大量のアミエビが湧いていると言う。アミエビはシーバスのご飯には小さすぎるけれども、ベイトには素晴らしい食品だろう。

さて、あと半月ほどで旧江戸川に稚アユが遡上して来る。とすれば稚アユは現在河口付近で淡水に身体を慣らしているのではあるまいか。そしてその稚アユのご馳走としてアミエビはピッタリなのではないか。更にその稚アユはシーバスのご飯になっているのではないのか。

上記の理屈から河口付近がこの時期のメインポイントでは無いだろうかと言う結論に達しかけていた。

しかーし、本日は寒い!。空はどんよりと曇り風は冷たい。先週までの春の暖かさは嘘のようだ。水温も急に下がったに違いない。ブラックバスもそうだけど、気温の急変は即ちコンディションの急変に繋がる。

と、言う事は本日はシブーイ!!。と思わざるおえない。と言う事は・・・・。

などと理屈をこねくり回しているうちにもう夢の島まで来ちゃった。

迷いまくって頭がウニウニになった時は何も考えない事にしよう。と、到着したのは南千石橋。とりあえず此処らでやってみて、如何しようも無ければ移動すれば良いだけだ。荒川河口及び新木場の知識があまり無いのにウダウダ考えてもドツボにはまるだけさ。

橋の上より貯木場を見る

以前は、運河の脇にカヤなどがワサワサと茂り、護岸のコンクリート意外はジメジメとしていて、おまけに後ろの閉鎖された工場は不気味で、夜にはあまり来た事が無かった。ところが、どう言った訳かかなり綺麗になっていた。工場は相変わらずだけれど足場がすこぶる良くなっていた。

先端部より左方向を見る

橋の脇から運河に入り、そのまま貯木場まで出ると更に綺麗に整地されていた。ずーっと前は、そりゃあもう草ボーボーの人跡未踏と思われるほどの荒れ様で、とてもロッドを振れる場所ではなかったのに。

右側。綺麗に整地され足場は良好!

日曜日だと言うのに先行者はおっさんが一人だけ。挨拶を兼ねて様子を聞いてみると、全然ダメとの事。現在は上潮なので、もう少し潮が高くなると釣れるんじゃあないかな。との事だった。

そのお言葉に期待して釣四郎もタックルをセットし今シーズンの初キャスト!。16時40分であった。

冷たい風と潮の方向が逆である。チビッコのボラが時々単発ジャンプを披露するだけで全然魚の活性を感じない。運河の出口付近は手前がシャローになっているようで時々底にルアーが当たる。気を付けなければと思っていたらバッチリ根掛り。まいったね。初釣行で初ロスト。くっそー。

あっと言う間に夜になり、おっさんも諦めたのか移動して行った。別れ際の話ではこの所ポツポツと釣れているそうな。

正面を臨海副都心の夜景が飾っているけれども、パレットタウンの観覧車辺りで火の粉が散った。そしてドーンドーンと大音響が聴こえてくる。一瞬観覧車がぶっ壊れたのかと思ったけれど、そうだはなかった。花火である。相当長い時間ドンパチやっていた。なにか特別なイベントでもやっているのであろうか。

何人かの若い衆が入れ替わり立ち代り釣り場に入っては消えて行った。その中の一人が1本バラしたとの事。沖の方では、明らかにボラでは無い魚が時折ライズしていたがシーバスかどうかは判らない。

釣四郎は奥へ移動した。搬入用に使っていたのだろうか。天井クレーンが海へせり出している真下だ。

こちらは水深が有るようだ。ルアーを深く沈めると時々何かに根掛かるが、強く引っ張ると回収出来る。腐った木の柱か、或いはデッカイ丸太が沈んでいるような感じっだった。

ラパラのレッドヘッドを軽く沈めスローに引いているとグッツと押さえ込まれる感じ。バイトの確信は無かったけれども、身体はビシッとアワセを行っている。

ロッドがグンと曲がり、おおおおおおおっつ、ヒットオオオオ!!!。

かなりの手ごたえ!。寒い時期のシーバスらしくガンガンファイトするのでは無く、重く重く引いている。ジジジジ、軽くラインが出て行く。

うへへへ、初モンは良い型だぜ、と思っていると

フッ

????。

いきなりテンションが消えてしまった。

ひえええええーーーーっ、バッ、バレてしまたあああ!!!。

ガックリである。

しかしながら魚が確実に居る事がわかり気合が入りガンガンキャストする釣四郎だ。あんまり張切ると明日が辛いのに・・・。

時折ショートバイトが有ったけれども、フッキング出来るアタリでは無いし、そんな高度なウデも無い。

ふと横を見ると筏があった。岸からちょっと離れた所に杭が2本立っていて、それに二枚の板が桟橋のように浮かべてある。その先っぽに二隻の船が並べて舫ってあり、板の向こうに筏が幾つも浮べてあった。

うーむ、正に教科書通りのポイント。余りにもズバリ過ぎて期待は持てなかったが、試しにヒョイとアンダーキャストで脇にルアーを落とした。リールを2回ほど巻いたところでグググンと来た。

よっしゃああ!。ヒイーーーットオ!!。

なんて教科書通りで素直な魚なのだろうか!!。

元気なファイトを見せてくれたシーバスをタモで大事にゲットした。抜きあげても良かったが、ついつい慎重になってしまったよ。

いやいや良かった。初ゲット出来たのは50センチだった。

リリースし終えると向こうからお兄さんがやって来た。

状況を尋ねられたので素直に答えると、お兄さんは先ほど釣四郎が釣った筏の脇に立ちキャストを始めた。だが筏の脇にルアーを入れずに沖へ向かってキャストする。

違うよ兄ちゃん。その脇だってばと思っていると、しばらーーーーくしてようやく1投落とし込んだ。が、当たらない。で、そのうちリタイヤして帰って行っちゃった。

もうダメなのかな?。と思って釣四郎は筏の脇へキャスト。出ない。もう1投。クククン、よっしゃあ!!。だがしかしフッキングしなかった。くっそー!。更にもう1投。クン!。くっそっ!!。またダメだ。

さすがに用心したらしく食いが浅い。

暫く沖へ向かってキャストして、ルアーを替えて再び筏の脇を攻めたけれどもバイトも無くなってしまった。

時間もだいぶ遅くなった。と、脇の工場からエーデルワイスの曲が流れ始めた。サイレンの代わりらしい。これがまた音割れしまくっていて、あの優雅な調べがガビガビになって聴こえる。そしてちょっとおいて、こんどはリズミカルな小象の行進が流れる。

21時である。釣四郎は帰らねばならない。しかしもう1投。あと1投と粘って遂に21時20分にロッドを仕舞った。

そうして後ろ髪を両手でムンズと鷲掴みされる思いで新木場を後にした。

楽しかった!。始めのうちこそ風が冷たかったが、暗くなって暫くすると風も少し治まり気にならなくなった。これからドンドン魚も増えるだろう。釣四郎のメインポイントである旧江戸川にも遡上して来る。良いシーズンになると良いね。いまからワクワクしている。