奮闘!釣四郎
平成14年3月16日〜17日
その夜、例によって釣四郎は悩んでいた。勿論人生についてだとか愛についてと言った、脳ミソの皺が擦り切れてしまいそうな問題についてではない。
この時期、釣四郎の悩みと言えば「シーバスはいったい何処におるんじゃあ!?。」と言う事である。シーバスは群れで移動している。特にこの時期はその傾向が強いと言う。昨日居た魚も今日には移動してしまっている事だってある。先週は潮の動かない新木場で見事に撃滅をくらった。
はたして今夜は何処に行けばお魚に遭えるだろうか。色々考えたが、悲しい事に釣り場のレパートリーの少ない釣四郎は結局新木場に行くしかなかった。
午前3時すぎ、釣四郎はスクーターをすっ飛ばして新木場に向かった。心細い事甚だしいガソリンを途中でチャージし、勇気リンリンで新木場に到着。さっきまでの不安と悩みは何処へやら、「うーん、釣れそうなオーラが水面に立ち込めているぜ。」と思った。
早速タックルをセットしようとしてハタと気が付いた。「無い!。ぎょえええー!、リールを忘れて来ちゃったあ!!。」
信じられない話である。何時もはロッドにリールをセットしたまま背中に担いで来るのだけれども、前日リールのメンテナンスを行って、そのままにして来てしまったのだ。これでは鉄砲を忘れた兵隊と同じである。
ガックリと肩を落とし、すごすごと引き返す釣四郎だった。
気分転換に夜明けのシャワーを浴びて、ドンブリで朝食をとり引き潮を待つ間だらだら過ごした後再び出撃。勿論リールはガッチリとロッドにセットしてだ。
とりあえず江戸川水門を覗いて見る事にした。
すると水門は大勢の釣り人で賑わっていた。皆竿を上下に動かしている。
「アユですか?」「もう来ているのですか?」との釣四郎の質問に、おっさんがニッコリと頷いた。
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稚アユ釣りで賑わう江戸川水門
「おお、やりー!!。」迷わずスポーツランド対岸に向かった。稚アユが来ていると言う事は、それを追ってシーバスも来ているに違いない。期待に胸を巨大に膨れ上がらせてルアーを投げ込む釣四郎。
ところが全くバイトが無い。あれっつ、まだシーバスは来て居ないのかな?。確信が揺らぐと集中力が無くなり、ルアーリトリーブも雑になる。
夕方まで粘ったけれども、とうとうノーバイト。
「来ているはずなんだがなー!?」と頭をひねりながら釣り場を後にした。帰りの途中、江戸川水門でアユ釣りを見物していたらドカドカ釣れていた。大きいのは12,3センチはあった。そんなヤツはしっかりとアユの顔をしていた。この時期に、こんなベイトの大群は他に居ないだろう。やっぱりシーバスは来ていると思うんだけれどもなー。
スポーツランド対岸。上流に江戸川水門が見える。
夜になった。
疲れてはいたが、気持ちは元気な釣四郎。三度出撃、新木場だ。今朝は大ボケをこいてしまったけれども、今度は大丈夫。根拠は無いが自信がある!(これで何度失敗した事やら・・・)。
先々週初シーバスをゲットした廃工場裏だ。ところが、鋼の自信とは裏腹に潮が全く動いてはいなかった。自信は鋼からレンガくらいにランクダウンしたけれども、やっぱり新木場、期待は持てる。
ところがどっこい、レンガの自信も潮には勝てずノーバイト。おまけにラパラのレッドヘッドを筏に掛けてしまいリップが壊れてしまった。仕方が無い。こいつは佐野ルアーに改造する事にしよう。
ヨレヨレとなり重たい足を引きづりながら、途中の運河を観察するとこっちは潮が流れていた。釣っていたルアーマンに状況を尋ねると、対岸の明かりがある方で2本上がったそうな。くっそー、選択を誤ったぜ。
スクーターを飛ばして帰る途中、旧江戸川のスポーツランド対岸がやっぱり気になってしょうがない。何がなんでも気になった。
で、江戸川の我が家へ帰り着くなりレッドヘッドを新しい物へ交換して、ヘトヘトの身体にムチ打って四度の出撃(まったくよーやるよ)。
江戸川水門から川を覗くと引き潮の為水門が開いており、大渦をうねらせて流れていた。
チャーンス!。さっそくスポーツランド対岸へ。
ところがだ、釣り場へ降りると同時に水門が閉じてしまった。流れはゆっくりと逆流し、ルアーはいつもと反対方向へ流される。
それでも夜と言う条件に期待を掛けたけれども、残念ながらノーバイト。
パンパンに張った身体中の筋肉をギシギシ軋ませながら帰宅した時には日付が変わっていた。
ネット関係で???があって疲れた頭を悩ませ、結局寝たのは4時くらい(当然アルコールと疲労でフラフラ)。こんな時、釣四郎は12時間くらいは平気で爆睡してしまうのだが、どう言う訳かお昼前には目が覚めた。
可愛い家族の一員である亀の水槽の水替えを行った後(120センチ水槽満水なので2時間チョットかかる)、一服して胃の中にご飯をチャージし、釣四郎はメゲる事無くロッドを手にした。
気になったのは旧江戸川河口付近にあるH型石積み。
稚アユはガンガン遡上し始めた。当然河口付近にはまだまだ遡上準備中の群れが居るはずだ。石積のあるシャロー辺りで待機しているのではないのか?。シーバスはそれを狙っていないか?。
釣四郎は旧江戸川の下流へスクーターを飛ばした。
16時30分、H型石積みを見下ろす堤防に釣四郎は立っていた。南風がビョウヨウと斜め前方から吹きまくっている。水辺へ降りると足元には泡が沢山吹き寄せられていた。
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舞浜大橋のすぐ上手にあるH型石積み
ふっふっふっ、いい感じだ。ヨレヨレに弱った稚アユが風に流され、またこの石積にへ非難し、それを狙っているシーバスが濁り気味となった水の其処此処に見えるようである。
何処からか鵜がやって来て頻繁に潜っている。観察していると小魚を咥えて水面に顔を出した。おそらく稚アユだろう。やっぱり此処にも稚アユは居た。
期待を込めて釣四郎は風に向かってロッドを唸らせた。何度も何度も徹底的にフルキャストで頑張った。
空が赤紫色に燃えて、夜のとばりが降りる頃、釣四郎の背後にある堤防で話し込んでいたカップルがディープなショットをかまし初めてしまった。釣れないせいか、ちいーっとばかり腹が立ったが、そんな事に気を取られてはいけない。此処はドシャローなのだ。と、言わんっこっちゃない。ラパラをロストしてしまった。うーん、シンキングでは無理があったか。ロッドは立ててリトリーブしていたのだが・・・。
釣四郎のキャストは19時半まで続いたが悲しい事にノーバイト。流石にヘロヘロだ。骨まで疲れて来た。しかーし、まだまだ気持ちだけは元気な釣四郎。引き潮になったので、最後は凝りもせず旧江戸川スポーツランド対岸へと移動した。
潮位はまだ高かったけれども、水門は開いており流れも有った。風は不思議と止んでいた。
例の如く船溜り水門脇からスタート。この場所は潮位が低いほうが経験上良いのだけれども、まあ習慣的に此処からのスタートとなる。
案の定バイトが無いので下流の沈みテトラに向かってロッドを引きずりながら下って行く。足場がまだ濡れており滑りやすい。後ろの壁にもたれ掛かるように立ち、キャストしながら段々と釣り下る。まともに立っていると足の裏が痛くなってしまったのだ。冬場のナマクラな生活をチョットだけ反省。
しかしアタリが無い。シーバスは絶対に来ている筈だ!。と自分に言い聞かせながらラパラをスローに引いてゆく。
トン!
おおっつ!!。
ピシッツ!。
バシャバシャバシャッと鰓洗いで水面を割ったのは30センチほどのチビッコだった。グングン走って元気なヤツ。足元まで寄せてラインを掴んで抜き上げると、その瞬間にフックが外れてドボン。旧江戸川の水へ戻って行った。
うへへ、やっぱり居やがった。急に元気になった釣四郎だ。
だがしかし後が続かない。時計を見ると22時近かった。適当な間隔でキャストしながら今度は釣り上がって行く。
潮位は随分下がって何となく水底のテトラが見え始めていた。
最初のポイントであった船溜り水門脇へ戻って来た。ここを最後にしよう。正面に数投して今度は下流へ向かって数投する。そしてまた正面を狙う。
そろそろ終わりにしなければならない時間となってしまった。そんな事を思いつつ下流へ投げたラパラにガンと来た。
フッキングと同時にロッドがグンと曲がりゴンゴンゴンと首を振っているのが伝わって来る。間違いなくシーバスだ。
なかなか水面に出ない。と思っていたらガバガバガバアッと鰓洗い。今度は足元へ潜った。ドラグが鳴る。ヤバイ!。足下には堤防の基礎があるのだ。ロッドで溜めて堪える。魚との距離が近いのでダイレクトにパワーが伝わってスリリングだ。
なんとか浮き上がらせてタモに収める事が出来た。
嬉しい67センチ
嬉しい一本だった。今年もシーバスがやって来た。これから11月の終わりまで長いシーズンの始まりだ。どんな楽しい釣りが待っているのだろう。疲れもぶっ飛んでホクホクとした気分で帰路についた釣四郎だった。