雨ニモ負ケテ風ニモ負ケル
2000年12月10日
トゥルルルル。夕方にシーバスにでもと思っていた土曜の昼下がり電話が鳴った。遠山の御奉行様がCMをしている釣具屋さんからだ。電話の向こうで元気なお兄さんが「ご注文のロッドが入荷しました。」とおっしゃる。事前のお話では月曜日ごろと聞いていたので、釣四郎は大喜びでお店に向かい、ヤマシタのThe餌木ingUを手に入れたのだ。本当は3.3mが欲しかったのだけれども、行く店行く店ことごとく売り切れ、しかも入荷予定は全く無し。仕方なしに2.7mを注文したのだった。
ふふふ、これで明日の釣行は決まったぜ、エギング!!。さあ専用ロッドを手にアオリイカ狙い。今度こそ本願なるや釣四郎。
電車が川崎市を通過した時、京浜工業地帯にある某工場の煙突から出ている水蒸気が横にたなびいているのが見えた。風が強いのだ。釣四郎はこの日、秋谷港へ行こうと思っていたのだが、これを見て大いに迷った。秋谷港は風を避ける物が何も無い。陸側から吹いていれば問題は無いけれども、どうやらそうではなさそうだ。急遽目的地変更。三崎へGO!。
ビヨオオオ、ビヨオオオオオオオ。三崎港は風が吹きまくっていた。東京江戸川区の棲家を出る時には、雲ってはいたが風は全然無かったのに・・・。
本当ならば花暮岸壁辺りに行きたいところだけども、この風では...。
とりあえず超低温冷蔵庫裏へ行ってみる事にしよう。此処はコの字になっているので大抵何処かが風裏になるはずだ。
超低温冷蔵庫は湾を挟んで二つ在るのでややこしいのだが、まず白灯埋め立て地の方にある超低温冷蔵庫裏へやって来た。
ビヨオオオオ、もろ向い風だ。ついでに白灯堤防も覗いてみる。もしかしたら風下へ向かっての釣りなら可能かもしれないと思ったのだ。ビヨオオオオオオオン、ザッパーン。こいつはいけない。凄い風だ。しかも先端部分は波しぶきをかぶりまくっている。が、驚いた事にその先端で釣りをしている人がいる。先端部分には高さ3メートルくらいの台があり、その上に標識灯が立っているけれども、その台の裏で釣っているのだ。しかし裏側とは言え、やっぱり濡れるよ、この風だもの。うーん大した根性だ。
さて、今度は先程とは反対側の、新堤側の超低温冷蔵庫前へ行こう。あそこなら確実に風裏だ。そう思い先の超低温冷蔵庫裏を歩いていると、そこかしこに墨跡を発見。新しそうな物も在る。 ムムムムム、ダメで元々、試しにキャストしてみるかとタックルをセットしてオレンジの餌木を投げてみる。新型ロッドは柔らかくしなり餌木を空へ放った。が、H2ロケットの如く急速に軌道を逸脱した餌木は横へ流されながら失速し着水。全然飛ばない。こんな強烈なアゲインストではタイガーウッズだってお手上げだろう。しかも餌木の着低が全く判らない。頃合いを見てシャクリを開始したけれども3回で戻って来ちゃった。今度はサイドキャストで餌木の弾道を低く押えてみるけれども、あんまり変わらない。これじゃあお話にならないので、とっとと反対側へ移動。
あちら側は強風地帯だ
いつもは殆ど人の居ない場所だけれども、本日は釣四郎同様行き場を無くした釣り人で若干混んでいた。三崎港の他の釣り場もそうだけれど、ここも車を横付けできる場所なのでナンバーを見るともなしに見ていると春日部ナンバーが有った。関東以外の方はご存知無いと思うけれども、東京を挟んで反対側の埼玉県だ。釣四郎と同じく、移動中又は現地に到着してビックリとゆう事だろうか。
風は建物を回り込んで三崎港出入口方向から、つまり右から追い風ぎみに強く吹いているが、他の場所と比べると全然天国だ。またこの場所には大型トラックが何台も止めてあり、それが遮蔽物となり風を散らしてくれている。釣り易いけれど、しかし墨痕は全然見当たらない。
三崎港の避難釣り人達
場所を奥まった所に確保してキャスト開始。ビュン、シュルルルルル。やや右寄りに投げると風に乗り気持ち良く餌木は飛んでゆく。若干風に流されちょうど正面に着水。ラインが空中にあるうちに大急ぎでラインスラッグを巻き取りながらロッドを右に倒す。余分なラインが左へ流されないようにする為だ。
相変わらず着低は確認出来ないけれども、前回釣行した時のカウントを覚えていたので問題は無い。フリーフォールにするとラインが流されどんどん出て行くので、カーブフォールにして、時折ラインを送り出す。それでもラインはかなり左へ流されてしまった。シャクリを開始すると、1回目のシャクリは水中のラインスラッグを取る感じだ。2回目からは餌木がロッドに乗る感じで、シーバスロッドを使っていた時に比べるとかなり違う。流石専用ロッドと言ったところだ。
何投かするうちに二つ三つ向こうで釣っていたグループの一人がロッドを曲げた。水面からプシューとゆう感じで水が吹き出している。イカかなと思って見ていたら中ダコでした。
そう言えば私の隣の人もタコを狙っている。ぶっといロッドの先のテンヤにイシガニを括り付け、トオオオッてな感じで投げる、とゆうよりぶっ込むように投入。着低を待って極々ゆっくりと手前に引いている。釣四郎が以前船から狙った時には、ひたすらシェイクしたけれども、当地ではこのスタイルが標準なのだろうか。そのうちもう一人タコマンが現れた。様子から二人は知り合いのようだ。この人は何とトローリングロッドだ。ブゥンとぶん投げて、そろりそろりと引いて来るスタイル。やはりこれがスタンダードのようだ。
暫くするとこの二人のタコマン達は居なくなったが、またまた別のタコマン登場。釣れまくっている様子は無いけれど最近の流行なのだろうか。この新タコマンは手釣りだ。仕掛けをブンブン回しドリャてな具合に手を放してテンヤを飛ばす。あとは暫く待ってゆっくり仕掛けを引いている。前の二人が散々探った後だけに獲物を手にする事なく何処かへ移動していった。
だいぶ暗くなり帰る人が増えて来た。釣四郎は少しづつ港の入口方向へ移動する。
釣四郎が先程までいた所にサビキのオッサンが入った。どうやらアジ狙いのようだ。水面直下には明るいうちから5センチくらいの小魚の群れが絶えない。イワシのようでもあり、違うようでもある。海が大荒れの為此処へ避難しているようだ。
ふと見ると、サビキのオッサンの竿がグングン曲がっている。オッサンは片手で竿を操り、もう片方の手を車のドアに伸ばそうとしているが、どうもうまく行かないらしい。おそらくタモが車内にあるのだろう。釣四郎がタモを持って応援に行くと「すみません。」と安堵の表情。大きなボラでも掛っているのかなと水面を覗くと赤い魚がもんどりうっている。タイ!。いきなり緊張の釣四郎。すくいそこねたら大変である。「まさかこんなのが来るとは思っていなくて。」とオッサン。そりゃそうだ、サビキだもの。タイは無事タモに収まり事無きを得た。三崎港では生け簀から脱走したタイが釣れるとは聞いていたが、見たのは初めてである。侮り難しサビキ仕掛け!!。
鯛!
辺りが真っ暗になったころ、しゃくったロッドにズンと重みが加わった。おおおおお!!。ん?、でも引かない。いやしかしタコかもしれない。タモの所までゆっくりと移動しながら慎重にリーリ ング。ライトを点けるとこげ茶色の物体が餌木に掛っている。何だろう!?。よいせっと抜き上げると作業用の手袋。ガッカリである。
バシャバシャッと水面がざわついた。無数のベイトが跳ねながら逃げて行く。シーバスにでも追われているのだろう。南寄りの強風。この季節湾内でのシーバス釣りの条件にピッタリだ。い つものロッドならば直ぐにルアーをセットしている所だが、今日のロッドではその気になれない。
昼間から時折雨がぱらついていたのだけれども、また雨が降って来た。直ぐに止むだろうと思っていたけれども 段々強くなって来てシャレにならなくなって来た。実は本日天気予報を確認して来なかったのだ。土曜日の段階でズラリと並んだ晴れマークにすっかり安心していて、雨の事など毛頭考えて居なかった釣四郎。当然雨具も持って来ていない。
撤収ううう。!
今回はまともな釣り不可能状態。天気予報はちゃんと確認してから釣行しましょう!。
新ロッドThe餌木ingUだけれども使った感想は、キャシャ。乙女のようなロッドだった。振出竿の宿命で塗装やコーティングの肉厚が薄く、乱暴に扱うと直ぐにキズが付きそうだ。ただ粘りはありそうだった。それとグリップは、もう2、3センチ長いほうが釣四郎には使い良い。オイラはキャストした時左手が後方に少しずれる癖があるのだ。釣四郎だけかなぁ!?。
追記
江戸川に帰り着いて地下鉄から外に出ると、そよ風がたよたよと吹き、空には綺麗な月が出ていました。まったく今日はシーバスに行くべき日だったのですね。ロッドを入手してつい浮かれてしまったバチでした。
そう言えば、今日は他人様の魚をタモ入れしたけれども、思い出したら釣四郎が今年になって始めてタモ入れした魚も他人様の魚でした。他人様の魚で始まり、他人様の魚で終わるわけには行かない釣四郎です。