非常ベルの謎

 

オイラのいつもの釣り場、江戸川スポーツランド対岸での話。

夏の夜。ここで釣っているとよく対岸から非常ベルが聞こえてくる。少しの間けたたましく鳴り響いた後、別に警察やらが来る様子もなく再び静寂が戻る。これがたまーにではなく、かなり頻繁におこる。始めはスポーツランドの屋外プールに不届き物が忍び込んだのだろうと思っていたのだけれども、ある晩驚くべき事実が明らかとなった。今回はその話をしよう。

 その晩はまったくアタリが無くしんどい釣りをやっていた。目の前には旧江戸川を挟んで水上バスの桟橋がある。桟橋の前は広場になっており、灯りも、トイレも、ジュースの自動販売機に、ベンチだってある。早い時間だと夕涼みの人達がおしゃべりなんぞやっているのだけれども、遅い時間に川辺に立つ者は酔狂なルアーマンくらいなものだ。桟橋は水かさの変動に備えて上下に自由に動く浮き桟橋。夜には2隻の水上バスが繋留してある。広場と桟橋は数メートルの渡りがあり入り口は当然柵が閉まっている。

 ふと見ると若いカップルが広場をうろうろしている。時間は深夜。こちらもヒマなものだから見るともなしに見ているとなにやら辺りをうかがっている様子。と、お兄さんのほうが閉めてある柵を乗り越え繋留してある水上バスへ向かったその時である。夜の旧江戸川にけたたましい非常ベルが鳴り響いた。慌てて戻るお兄さん。その時のお姉さんの逃げ足の速いのなんの。お兄さんがようやく柵を乗り越えた時には遥か広場の出口の坂を登り終えようとしていた。必死に後を追うお兄さん。あっとゆう間の出来事だった。

 そうなんです皆さん。夜毎の非常ベルの正体はこれだったんです。江戸時代の理由ありカップルよろしく水上バスを屋形船代わりにしようとした輩の仕業だったのです。

 確かに水に揺られて心地よいかもしれない。目の付け所は悪くない。しかし世の中そんなに無用心じゃあないさ。船だっておそらく鍵くらいかけてあると思うよ。まあそれを確かめにお兄さんが行ったのかもしれないけれど。しかしお姉さんも薄情だよな。お兄さんを待つとかすれば良いのに。振り返りもしなかったもんね。遠目で見ていたので定かでは無いけど。こんな事が夜毎なんだぜ。うらやんで良いのか、呆れて良いのか、まったく困ったもんだよ。

 ちなみに、この夜は朝までやったけど丸ボウズでした。

 

別の時に釣ったシーバス