給食で牛乳を強制するのをやめよう
(強制をやめて自由選択にしよう)
乳製品の怖い話し http://u171nt.at.webry.info/
(関連サイト)
61歳医師
目次
脂肪酸組成がよく,ビタミンや鉄が豊富で,体調の悪い子どもにも負担の少ない,「ごはん・みそ汁(野菜や海藻の具)・豆乳」のオプションもつくろう.
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乳製品のアレルギーで精神・神経系・情動が障害される子どもが出てくる
★
W G.クルック博士の(食物アレルギーによる)小児の疲労・多動・学習障害の治療経験
★ 科学的に認められるため必須とされる二重盲検法ではどうなっているのか
?
1)ADHDの二重盲検法の状況は,原因として食餌を考慮せねばならないことを示す
2)食餌療法の有効率が高い(60~70%以上で有効)とする研究がある
■ 牛乳のカゼインという蛋白から麻薬様物質(カゾモルフィン)ができ,脳の発達を阻害し,自閉症・多動症・学習障害などを生じる可能性がある
★ 自然の脳内麻薬は分解できるが,牛乳の麻薬は分解できず蓄積する
★ シナプスの刈り込み時期(幼児期と思春期)に麻薬様物質が影響して,発達を阻害する
■ 牛乳のカゼインからできる麻薬様物質(カゾモルフィン)は,中枢神経系のセロトニン・ドーパミン・ノルエピネフリンレベルを抑制し,うつ病などを生じる可能性がある
■ 商業的な牛乳生産が,学校給食の牛乳指定をもたらしたが,このことが朝鮮戦争の米国若年兵士(77%)の動脈硬化・心血管病変・自閉症などの発達障害の急増と関係するのではないか ? (これらの疑問に答える研究や努力はなされていない)
★ 牛乳は筋萎縮性側索硬化症の危険因子のひとつとする報告がある
★ 男性では乳製品摂取でパーキンソン病発症の危険率が1.8倍から2.3倍になる
★ わずかな例外を除き,全ての哺乳動物は離乳の後,乳糖とガラクトースという糖質の分解酵素が小腸から消失する58).つまり牛乳をのむことは自然でない
★ 分解できない乳糖のガラクトースは白内障の原因となる可能性がある63)
★ 乳糖の代謝能が低い婦人はヨーグルトで卵巣癌の危険が3倍になる
★ 1人あたりの乳製品摂取量は,加齢による妊娠率低下(不妊傾向)と相関する
★ 牛乳炭水化物(乳糖)は虚血性心疾患死亡率と高度に有意に相関する
★ カルシウムと牛乳を摂る国・骨密度の高い国に骨粗しょう症が多い
★ 公共機関は科学的根拠もないまま,カルシウム摂取によって骨密度を高くするよう勧めている
★ 計画研究(証拠能力がやや高い)と症例対照研究では乳製品を摂るほうが,骨折が多い
★ カルシウムの必要量はわからない.動物をあまり食べなければ特に摂る必要はない
(西欧社会のカルシウム摂取量900mgは,若年者の必要量の2倍,高年者の必要量の5倍),カルシウムを摂る人々の健康状態はよくない 101)
★ 乳製品と乳製品のカルシウム摂取が,前立腺癌の危険率増加と相関する
★ ヒトの母乳のカルシウムは野菜より少ないレベルにあり,特別にカルシウムを摂る必要はない
★ 食物耐性とは即時型アレルギーがなくなることで,治ることとは違う
「最近乳製品を食べられるようになった」は危険,隠れたアレルギーは持続する
★ 腸のぬめりが弱ると透過性が増すが,着色料にこの作用がある
★ 牛乳はヒトの母乳と組成が異なり,頭の発達に必要な必須脂肪酸が欠乏している
★ 牛乳は血中LDLコレステロールを上昇させ冠疾患と相関する
★ 中国人にとっては,わずかな動物食でもコレステロールレベルが上昇し,コレステロールレベルの上昇は,必ず慢性変性疾患(がんなどの成人病)の増加につながる
★ 血漿コレステロール値もアルブミン値もがんや成人病と相関する
★「貧しさの疾病(感染症)」も「豊かさの疾病(がんと成人病)」も「多様な良質の植物食」で防げる
★ アメリカ栄養協会の見解論文は,絶対菜食でさえ小児の生長・妊娠・授乳・運動選手にとって充分な栄養素を提供するという 92)
★ 動物蛋白はコレステロール(がんや成人病の危険因子)をふやし,植物蛋白はこれを減らす
★ 中国医学では10歳までは機能が未熟だと言い,生長は晩稲(おくて)がよいと言う
★ キャンベル教授は菜食で栄養がよくとれるし,西欧の栄養学の必要量はおかしいという
★ 重症の蕁麻疹は,「地上動物」と「搾った植物油」を避けると軽快する
【提言】未完成の栄養学と,牛乳の呪縛から子どもを解放しよう.食糧生産者擁護の立場から脱却し,自由主義社会の消費者を主人公にする立場で,子どもに乳製品摂取の自由な選択権を与えよう.また子どもの正常な発達を可能にする正しい食生活を教えよう.
1964年の農林水産省の「学校給食用牛乳供給事業実施要綱」は「経済的で,一般家庭において不足しがちな栄養素を補給するという意味で,牛乳を学校給食用として年間継続して計画的に供給すること定める」というものであり,自治体や消費者個人の自由にならないものと誤解されている.だが後に示すように,牛乳には栄養学的に問題があり,生産者本位で定められた印象があり,文部科学省に問い合わせてみても,(「牛乳は出さなければならないというものではない」,「牛乳のない給食は可能である」という)という回答であるので,強制的に運用されるべきものではない.自由社会で,ある食品だけを毎日強制的に摂らせるということ自体,極めて不自然でおかしなことである.
栄養学的には,地上動物(牛乳を含む)や油炒めなどは,ω6のアラキドン酸やリノール酸が優位となり,これらが体内に蓄積する(その結果αリノレン酸不足になり,血液粘度が上がり,活性酸素発生のもとになる).ω3のαリノレン酸は野菜・海藻・豆類などでしか摂れないので(亜麻仁油などは酸化しやすい),脂肪酸バランスをよくするには,野菜・豆類を多く摂り,リノール酸(植物油)・アラキドン酸(地上動物)の摂取を抑えるしかないという.そこで以下の提言をしたい.
脂肪酸組成がよく,ビタミンや鉄が豊富で,体調の悪い子どもにも負担の少ない,「ごはん・みそ汁(野菜や海藻の具)・豆乳」のオプションもつくろう.
1977年のマクガバン報告は,「がんや糖尿病・心臓病のみならず,精神病やノイローゼ・登校拒否・自閉症といった精神的な問題さえも,その背景には誤った食生活がある」と指摘したが,日本ではアジアで観察されなかった若者の動脈硬化や1) 2) 3),生きる力の低下・朝食を食べない・入眠が遅いなどの生活リズム乱れが急速に生じており,これが戦後の栄養改善普及運動(1955年)を始めとする,食習慣を中心とした生活習慣の変化と関係がないのか,疑ってみなければならない.しかしながら日本ではこの情報公開の時代に,たとえば牛乳についてもあまりに偏った一面の情報しか,国民は与えられてないように思う.そこでここでは,国民が知らされてない科学的な情報(今回は特に心配な情報)を公開するとともに,ほんとうに自信をもって今の給食を子どもたちに勧めてよいのか,栄養士の皆さんにも考えてもらいたい.
★子どもの異常は1960年に初めて気づかれた 4)
★1960年教育科学研究会第5回全国研究集会で,山形の教師から「遠足で最後まで歩けない子が出てきて困っている」という報告があった.
★1960年,一日働けない青少年労働者が現れ,文部省に「青少年体力問題懇話会」ができた.
★1960年「肥りすぎの乳児ふえはじめる」.(毛利子来「現代日本小児保健史」ドメス出版1972)
★1964年「学童肥満,急激に増加」(同上)
★1964年朝食を食べない学童が増える(同上)
★1964年スギ花粉症日本最初の報告.
★その後,視力低下(図2)・肥満(図3)・痩せの増加・夜眠れない子の増加(図4)・不登校の増加(図5)・体温の変動する子の増加・多動の子・喘息児の増加(図6)などが問題となり,現在出生時体重の低下傾向が続いている(図18).
これらの現象は,子どもたちが年々弱くなっていることを意味し,最近ではこれが成人期にまで拡大し,NEET(就業,就学,職業訓練のいずれもしていない人)が社会問題化している.
またこれらの現象は,栄養改善普及運動(1955年)を始めとする,急激な食生活の変化の後に生じたものである.マンチェスター大学のシーリ博士によれば,食餌の状態の変化と疾病の出現までの時間は,通常おそくとも9年以内6),あるいは4~8年,時に食品によっては12~16年かかるとしており7),牛乳が導入されたのを昭和27年とすれば,子どもの異常がデータとして現れた1960年は,ちょうど8年のタイムラグとなる.
中国の医学では,せすじ・大脳(神経系)は『腎』とその支配下にある膀胱の経絡系統が支配している.またこの経絡系統は,骨・腎膀胱・生殖器・副腎なども連絡支配している.したがって中国医学の『腎』という臓は,大脳・神経系・内分泌・骨髄・生殖器などを支配下に置き,生きる力(生命力の元気は『腎』から起こる)・体質・生命リズム・生殖能力・水液代謝などを支配している8).
日体大の正木教授は,背筋力の弱い者では,大脳前頭葉の活動水準が低いと指摘している4) (図).生きる力の低下は,子どもの身体の異常(中国医学の『腎』のはたらきの減弱)を反映すると思われ,1960年頃からデータとして捉えられるようになった.少子化も・NEETも『腎』のはたらきの低下と関係がある可能性がある.
教育界では,子どもの発達の異常について,テレビゲームの普及,遊び場がなくなったことなどを挙げる向きもあるが,出生時体重も低下していることをみると,すでに出生時以前に,これらを引きおこす原因が加わっていると思われる.
有名な米国の小児科医WG・クルック博士の「食物アレルギー - その偉大な変装者」という論文から紹介しよう9).
「あなたは顔色が悪く,目の下にくまを示す若者をみるだろう.さらに,これらの若者の多くは,鼻をすすり,鼻を鳴らし,咳払いをする.そして,彼らの一部はまた,頭痛,胃痛,あるいは脚や他の部位の筋肉痛を訴える」.
「両親がこどもをチェックのためつれて来ることがあるだろう.それは先生が『ジョニーは非常に疲れていてのろく,休息がとれてないのではないかと思う』と言ったからである.また他の少年の母は『マイクは非常に多動でいらいらするので,私も簡単には堪えられないときがある』と言う.そのような少年は学習障害があり,兄弟や級友や先生ともうまくやってゆけない……」
「過去20年間の私の一般小児科外来において,私は頭痛,腹痛,四肢痛,その他の全身症状を持つ,多くの青白い,疲れた,神経質な小児をみた.私はこれらの小児の一部は不適当な栄養状況,慢性感染症あるいは心身障害に罹患していることを見いだしたが,4000人以上の少年については,非IgE介在性食餌アレルギー(通常の検査で発見できない,隠れたアレルギー)がそれらの症状の主因であった」
「私の経験において,小児の説明のつかない疲労で最も一般的な原因はアレルギーである」
「私が臨床を始めた早い時期には,私は小児の疲労とアレルギーの関係を全く知らなかった.ついにその関係の可能性に気づいたとき,私はこれらの小児を探し始めたが,驚いたことに,それらの患者の多くが,私の普通の患者の中にいることがわかった」.
「青白い,眠い,疲れた,無関心な小児の食餌から,隠れた食物アレルゲンが除去されたとき,彼らの人生に関する全ての様子が変ったのを見て,私はその数の多さにわくわくした」
クルック博士によると,これは隠れたアレルギーで,通常のアレルギー検査では検出できない.頻度も多く,彼の診療所で8ヵ月の間に,45例の多動症あるいは学習障害をもつ子どもが受診したが,45例中41例で食餌アレルギーで症候が生じることが示された.この41例中28例が牛乳にアレルギーで,サトウキビも同じ程度に多く,卵・小麦・コーンも多かった.博士は最も原因として多い食品は牛乳・コーン・砂糖きびと考えており,平均3つのアレルゲンに反応するという.クルック博士は診断のため,原因となる食餌を1から3週間除去することを勧めている.アレルギーであるから,少量の乳製品の混入でも子どもがまた疲労を示すようになる.
★ ローマ大学の牛乳で小児自閉症が悪化するという報告10).
小児自閉症と診断された,8 歳から13歳の,男30例女6例,合計36例の患児で,牛乳除去食(その他皮膚テスト陽性の食餌も除去する) の効果が検証され,20項目7群の行動評価の点数の変動が調べられた.8週間除去食が与えられると,7群のうち5群で統計的に有意な行動の改善が見られた.二重盲検法(誰が何を食べているか患者も医師も知らない状態)で,牛乳(+皮膚テスト陽性食)が与えられると(これをチャレンジという),7群のうち3群で有意な行動の増悪がみられた.研究者は牛乳が自閉症の症状を悪化させたが,そのメカニズムはわからないものの,牛乳蛋白に対する抗体(カゼイン・ラクトアルブミン・βラクトグロブリン・卵白特異IgA抗体,カゼイン特異IgG・IgM抗体,ラクトアルブミン特異IgM抗体)保有率が対照群よりも高いので,遅延型アレルギー(隠れたアレルギー)が関与しているかも知れないとしている.
最近では,ラルフ・ネーダー氏とも関係がある,公共の利益のための科学センター(Center for Science in the Public Interest)次席栄養士シャルトが,着色料と通常食品が,注意欠陥多動障害(ADHD)や他の行動異常に関連するかどうか調べた,23の二重盲検法による研究を検討した11).このうちADHDの9つの研究のうち8つにおいて,着色料で症状が悪化し,添加物のない食餌で改善した.残りの14の研究は,ADHDに 喘息・食物アレルギー・湿疹・睡眠障害・重症の行動及び神経学的障害を伴うものであった.この14研究のうち10研究で,一部の小児が,食品添加物やある種の食品を除去したときに症状が改善し,食品着色料・コーン・小麦・牛乳・大豆・オレンジ・卵・チョコレートなどを食べると増悪した.シャルトは,彼の専門家の立場からの提言として,ADHDの患児は薬物治療の前に,体系的に食餌の介入をすべきであると結論している.
★ この分野で経験の深い,ニューヨーク州立大学の小児科臨床助教授ドリス・ラップは,注意欠陥多動障害(ADHD)と診断された小児のすべてではないが2/3は,認識されていない食物アレルギーを持ち,これらは通常色素や食品エキスの舌下テストと,食品の除去-チャレンジで見つけることができ,単に1週間の食物除去で症候を取ることができると主張している12) 13) 14).
ベルギーのA・カーンという学者が,牛乳を除去すると乳児の睡眠がよくなったという報告をしている.患者と対照者71人について,ポリグラフを装着して観察した.I群は出生時から高度の睡眠障害がある(頻繁に覚醒し,時間も短いもので,このような場合カーンは牛乳アレルギーを疑う)20人,II群は牛乳アレルギーで皮膚・消化症状を持つ31人で,うち13人は1夜に2~9回覚醒し,睡眠時間の短い「睡眠不良群」であった.III群は対照正常群の20人である.I群II群はともに牛乳のβ-ラクトグロブリン特異IgE抗体が陽性であるが,対照のIII群は陰性である.牛乳除去食にして4週以内に,I群の乳児と,II群の「睡眠不良群」の全てで,睡眠の特徴の正常化がみられ,対照群と区別できなくなった.牛乳成分を与えると4日以内に,興奮と不眠が生じ,やめると5日以内に改善する.少量の牛乳成分でも再発が起こるという17).
脳内麻薬ということばを聞いたことがあるだろう.エンケファリンというこの物質は脳内でつくられ,シナプス(神経線維が連絡する場所)に結合して,神経伝達を遮断し,不安や痛みをとるはたらきがある.エンケファリンは使用後すぐ分解されるので害はない.
ところが,牛乳のカゼインと小麦のグルテンという蛋白からも,麻薬様物質ができることが多くの研究によって示されており,ノルウェーのオスロー大学小児研究部門のカール・ライヘルト教授によれば,自閉症(および広汎性発達障害)の,90%近くの患者の尿中に見いだされ18),注意欠陥障害(ADD)19),や精神分裂症20)にもみつかる.これはすぐに分解できないらしく,乳製品を除去して2年経ってもまだ尿中に出てくるくらい21),蓄積している可能性がある(大変害がある).
麻薬様物質は,牛乳のカゼインや小麦のグルテンという蛋白が,未消化のまま血中に入ることによってつくられる38).特にカゼインからは,蛋白分解酵素のはたらきを抑える多くの物質ができるので31) 32),これらの蛋白が未消化のまま血中に入りやすくなると思われる.実際にカゼインが存在すると,IGF(インスリン様成長因子)などの大きな分子が未消化のまま吸収されることが示されており34) 35) 36),これによっていろいろなアレルギーも起こり得ると考えられる.
例えば,食餌によって,カバ(白樺)花粉症になる可能性が示唆されている163). カバ花粉エキスの皮膚反応に陽性の花粉症患者は,必ずリンゴ・ニンジン・ジャガイモなどの生の試料による皮膚反応に陽性であり,両者の抗原性がそっくりなことが示されているので,ヨーグルト(カゼインが入っている)と生のリンゴをいっしょに食べると,リンゴの蛋白が未消化のまま吸収され,白樺花粉症になる可能性もあるということだ.
日本では,牛乳のない時代にスギ花粉症は知られていなかったが,牛乳蛋白の存在が,大豆や米(あるいはスギ花粉)などのアレルギーを誘発しているのではないだろうか.牛乳の存在下で,牛乳アレルギーに何種類もの食物アレルギーが同時に合併してくることは知られている164) 167). 客観的にみて,牛乳があるとアレルギーが誘発されることは確かのようだ.
「ヨーグルトでアレルギー性鼻炎がなおる」.これはヘルパーT細胞の比率(Th2の割合が低下する)が根拠にされているようである.しかし単に比率だけでよくなったとするのは危険だ.ヨーグルトでこれが起こったとき,とくに安心はできない.なぜなら,Th2はIgEの即時型に関与するが,Th1はより深刻な自己免疫病(たとえば多発性硬化症など)に関与し,これらが互いに制御する機構はより高次の複雑なもので,どちらか増えればよいというような単純なものではない199).牛乳の蛋白で免疫系を刺激し続けると,アレルギー性鼻炎は軽くなったが,検査に出ないアレルギーは持続するため,深刻な多発性硬化症(牛乳の関与が強く疑われている)などになる危険も考えられる.
英国サンダーランド大学自閉症研究部門主任教授のポール・シャトック博士は,「世界中の多くの親たちや専門家が,カゼインとグルテンの除去食によってこれらの外来性の麻薬様物質を除くと,自閉症とその関連する行動をある程度改善できることを見いだしている」22),「親たちの報告を調べたリムナンドの研究では,食餌療法の結果はどのような薬物の治療よりも,非常にすぐれたものであるようだ23)」と述べており24),オスロー大学のカール・ライヘルト教授は,自閉症児に対する4年の食餌療法で,尿中のペプチド(麻薬様物質)量が減るとともに,言語学習能力診断検査が改善する,逆相関関係(r=-0.74)を見い出している25).同教授は麻薬様物質が脳の発達に影響を与えることから,できるだけ早期に食餌療法を始めるほうがよいと指摘している18).
この場合,食餌療法は厳密でなければならない.それはグルテンとカゼインの麻薬様物質(オピオイド)は,分子構造が非常に似ており,またグルテン1分子から15個の麻薬様物質ができるからである.さらにカゼインが吸収されると蛋白分解酵素を抑制し,麻薬様物質形成の悪循環が生じるおそれがあるからである25).ライヘルト教授によれば,米と大豆は麻薬がなく,ヘモグロビンからは麻薬様物質ができるという.日本食は精神にもよい食餌なのだ.
フロリダ大学医学部,生理学・心理学・精神医学教授ケード博士は,少なくとも3年以上薬物治療などで改善のみられなかった,精神分裂症57例と,少なくとも1年以上改善の見られなかった,自閉症(アスペルガー症候群を含む)70例に対し,麻薬様物質を除く治療をした177).
その結果,「透析」または「透析+食餌治療」を受けた57例の分裂症患者のうち,23例(40%)は全て大きな改善を示すか,完全に正常になった(常勤の職を得て正常な社会生活ができるものもある).この際,透析治療だけでは効果が出るのがやや遅かったが,グルテン(麦類)・カゼイン(乳製品)除去食を加えると,急速で完全な改善がみられた.また食餌治療を守らないと,症状が逆戻りする.それゆえ,除去食治療が非常に重要であることがわかる.
またグルテン・カゼイン除去食治療を受けた,70例の自閉症小児のうち,81%は1ヵ月まで自閉症の診断徴候(社会的隔離, 視線接触, 緘黙症,学習能力, 活動過多, 常同活性, 清潔状態,
不安発作, 自傷)と重症度(0-4のスケール)の大部分で統計学的に有意な改善が起こり,3ヵ月までに全ての指標が有意に改善した.そして改善は1年持続した.改善しなかった13人の小児(19%)のうち,5人は多量の尿ペプチド(麻薬様物質)排泄を持続しており,食餌療法を続けていなかったことが強く示唆された.
自閉症(広汎性発達障害に分類される)と分裂症(統合失調症)は生涯持続する病態と考えられており,この治療を受ける前は全ての患者で改善が見られていない.グルテン・カゼイン除去食治療は,素晴らしい効果を持っていると言わざるを得ない.
このような素晴らしい治療効果を持つのに,今でも大多数の専門家は冷笑・懐疑・徹底的な敵意をもってこれを無視する人が多い.シャトック教授は,「我々西欧社会では牛乳を飲む利点を信じるように条件付けられている」といい,また「西洋の文化は,罹患した個人の生活の質を妨げる症候を救済するために,しばしば合成の,非常に強力である薬の用法に注意を払う」と文化の問題をあげている38).ライヘルト教授は,食餌治療は投資効果がなく,財政的な支援を得るのが困難で,どうしても神経薬理学が主流になるという.現在この治療に関わっているシャトック教授もケード教授も,自閉症の親たちの圧力によって,この問題を追及するようになったと述べているが,シャトック教授は,この治療法は経験の集積によって,現在確立されるべき時期に来ており,これを考えない専門家はボートに乗り遅れる危険があると指摘している38).
大脳皮質のシナプス(神経接合部)の数は,生後1歳までに最大となり,就学前数年の間に刈り込まれて急速に減少し,以後20歳まで減少するが,思春期にまた大きな刈り込みがあるという27) 28).幼児期シナプスの増加と刈り込みは脳の可塑性をつくり,思春期の刈り込みは,大人の効率的な脳へと発達させるようだが,麻薬様物質はこのシナプスを遮断するので,とりわけこの2回の刈り込み時期に,脳の発達が障害される可能性がある29) 28).自閉症は幼児期の刈り込み時期に発症し,統合失調症は思春期に発症することが多く,思春期の子どもが急に暗くなったりするのはこのためかも知れない.
日体大の正木健雄教授は,「現在の日本の子どもは,大脳・神経系・感覚系が自然に発達せず,発達にゆがみが生じ,あるいは退化している(図25).このような変化はこれらの機能が最も発達する子どもの時代にあらわれており,対策に取り組んでも事態はよくなるどころか,変化のテンポが速くなり,異常の範囲が広くなり,子どもの問題が今や思春期や青年期の問題に進行している」と述べているが4),あるいは一部でこの麻薬様物質が発達の異常に関与しているのかも知れない.
自閉症,その類似的な疾患,例えば失読症・注意欠陥多動障害(ADHD)の発生が,驚異的に増加しているらしく,米国とオーストラリアからの報告は,現在学齢期の小児の10%が,注意欠陥多動障害(ADHD)の症状を改善するために,リタリンを服用していることを示唆する30).英国のテイラーらの報告(1999)では,1979年と1992年の間で,自閉症発生率の劇的な増加(1,700%?)があった.カリフォルニアの報告(1999)でも,似たような期間に、273%の増加を示している30).
この増加の原因は不明であるが,牛乳を給食の必須の食品とする,米国の1946年の学校昼食計画の制定をはじめとして,西欧世界では産業革命以来牛乳の常用習慣が増強されている101).
英国サンダーランド大学のポール・シャトック教授が,乳製品と小麦を除く食餌療法は非常に効果があるようだが,公的な機関や専門家によって,この療法が冷笑・懐疑・徹底的な敵意をもって対処されると述べており207),西欧社会では,乳製品を摂らないということを憎む風潮が強いため,今後益々自閉症が増加することが予想される.
日本でも1952年に給食に乳製品が導入されたが,欧米と同様に自閉症が激増しているのではないかと思われ,社会全体の大変な問題となる危険がある.
■ 牛乳のカゼインからできる麻薬様物質(カゾモルフィン)は,中枢神経系のセロトニン・ドーパミン・ノルエピネフリンレベルを抑制し,うつ病などを生じる可能性がある
乳製品や小麦蛋白の消化が不完全なことで生ずるモルヒネ様物質も,中枢神経系のセロトニン・ドーパミン・ノルエピネフリンレベルを抑制することにより,抑うつを生じる食餌因子となる204).
麻薬様物質は誰でもできる可能性があり,正常な健康人でさえ,量は少なくても,これらのペプチド(麻薬様物質)とそのもとの蛋白が小腸粘膜から吸収され,循環し得るという明確な証拠が,血清学的に示されている205).
このことから,乳製品の摂取はうつ病を増加させる可能性があり,WHOの国際精神分裂病パイロット研究(IPSS;1979),および重度精神障害の転帰調査(DOSMED;1992)のデータベースの分析でも,統合失調症の転帰,うつ病罹患率と,食物摂取のパターンの国際的な差異が検討されたが,乳製品と糖の摂取の増加は抑うつの罹患率増加を伴い(乳製品と糖の摂取量が増えるとうつ病が増える),澱粉質の芋類(デンプン根菜類starchy roots)の摂取量増加は抑うつの罹患率減少を伴うという結果が示された206).
シアトル市立大学生物社会研究所所長アレキサンダー・シャウス博士は,若年凶悪犯罪者と対照群(行動障害者)で,食習慣の違いを調べたが,牛乳摂取量だけが高度に有意に違いがあり,犯罪者は牛乳を対照群の2倍摂取していた45).また博士は,ミシガン州の救護院に服役中の犯罪者で,牛乳摂取を控えさせると,反社会行動が有意に減少したという46).
(これらの疑問に答える研究や努力はなされていない)
マンチェスター大学のスティーブン・シーリ博士は,牛乳の大量生産は20世紀に入ってから始まり,牛乳が全ての年齢層のヒトの食餌の部分になったとき,この状況(カルシウム摂取量増加と冠疾患の増加)は劇的に変わったと述べているが101),家族的な消費に留まっていた牛乳消費が爆発的に商業的に広まり,疾病が生じたことを指摘している.
また米国では,1940年6月までに,連邦準備銀行預金基金が,シカゴの15の小学校の生徒のため牛乳を供給する資金を割り当て,1943年には,数百万の北米の小児の昼食に,半パイントの牛乳のコンテナが基本食品となり,このとき連邦昼食計画の一部として牛乳計画が策定された.1946年にハリー・トルーマン大統領が全国学校昼食計画(National School Lunch Program (NSLP))の立法に署名し,1日の小児に必要な栄養素の1/3をまかなうようデザインされたA型昼食において,必要な5つの要素のうちの1つとして半パイントの牛乳が指定された.1950年代に,学校牛乳計画に対する連邦補助金は,健康的食品の推進と余剰農産物の消費という2つの目的を持っていた134) 135).
つまり,牛乳は1943年に米国の給食の基本食となり,1946年に給食の必須の食品として指定されたのである.朝鮮戦争の死後調査を行った研究者は,平均23歳の米国兵士の77%に動脈硬化があり,アジアの兵士に全くこれが無いのは,食餌の違いが原因ではないかと推定したが3),ここでも食餌の変化から約7年~4年の経過がある.牛乳導入は経済的な目的が含まれていることが,文献的にも指摘されているのである.
日本においても,1952年に完全給食が全国小学校に拡大実施され,1955年の粉食指導のために全栄養士が参加した「栄養改善普及運動」や,1956年の「米国余剰農産物に関する日米協定」等の調印などの経緯を見ると26),やはり経済的な目的が感じられる.日本では,1960年に子どもの異常が指摘されたが,食餌の変化からのタイムラグは8年となる.そして10代の日本の子どもにも,アジアになかった動脈硬化(脂肪線条)が97.9%に見られるようになった1).子どもを利潤追求の対象とするのは,やめて欲しいものである.
すべての子どもに半強制的に牛乳を食べさせると,科学的な研究(任意で牛乳を飲まない人と飲む人とを比較する)が不可能になる.現在のような国を挙げての,強制加入の牛乳を飲ませる人体実験の状況では,牛乳が飲めない人は先天的に体質の弱い特殊な集団であるから,任意の状況での乳製品の効果を判定することはできない. これは乳製品の害が(もしあれば),日本が亡ぶまで子どもを蝕み続けるということを意味する.
ミシガン大学の2人の研究者バーナード・アグラノフとデイビッド・ゴールドバーグ(1974)は,米国における多発性硬化症死亡例26000例の分布を調べたが,多発性硬化症の発症頻度は,比較的少量の一人あたりの牛乳消費量と著明に相関していた.彼らは米国以外の21ヵ国についても調べたが,ここでも唯一の有意な相関が,多発性硬化症と平均牛乳消費量の間にみられた47).
またフランスのマロス(1992)らは,「我々は乳製品消費と多発性硬化症罹患率の関係を,世界中の27ヵ国29集団で検討したが,強い相関(r=0.836) が認められ,この相関は高度に有意であった(p<0.001)」と述べている48).
ヒューストンのベーラー大学の研究者は,25人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の種々の因子を分析し,同じく性・年齢・人種・経済状態・教育の状態が類似した25人の健康人のものと比較した.対照者と患者が異なる危険因子は,鉛と水銀への暴露の増加・スポーツ参加が多いこと・牛乳摂取量が多いことであった49).
★ 英国の医学雑誌ランセットは,編集者の概説で,低温殺菌をしてない牛乳をチンパンジーの赤ん坊に食べさせたところ,6匹中2匹が白血病となり死亡したと発表した50).チンパンジーの実験では,6匹の乳児が出生時から感染牛乳が与えられ,別の6匹は未感染の牛乳が与えられた.感染牛乳を与えられた2匹のチンパンジーは,6週間発病して34週,35週でそれぞれ死亡した.
★ 1981年のサイエンスの報告で,ペンシルバニア大獣医学部のファーラー博士は,ウシ白血病ウイルスに感染した24頭の乳牛から集めた牛乳あるいはその中の生きた細胞を,24頭の子羊に注射し,17頭に感染性のウイルスを見いだした.もし牛乳が低温殺菌されると,感染性は消失すると考えられた51).
★ また多数の症例を含む研究で,ウシ白血病とウシ白血病ウイルス感染症の発病率の高い領域で,人間の急性リンパ様白血病発症率が,統計学的に有意に高いことが示されている52).
牧場などで生の牛乳が混入する可能性のあるものを安易に食べないことが大切である.
最近では,教育的目的を標榜し(実際は牛乳を普及させる目的で),幼稚園児・小学生を対象にして,牧場などで搾乳体験などさせる向きがあるが,手などが汚染することによって,生乳が口から入る危険性が非常に大である.
イタリアのイアーコノらは,65人の慢性便秘の子供(年齢11ヵ月~72ヵ月)で牛乳と豆乳を用いて,二重盲検交差研究をした.豆乳の投与によって65人の子供たちのうちの44人(68パーセント)が回復し,牛乳の二重盲検によるチャレンジで悪化した53).
★ 牛乳の胃腸過敏症で腸から出血する子どもが多い 55)
ジョンホプキンス大学小児科主任教授であったフランク・オスキー博士は,臨床で牛乳の害を強く感じ,「あなたの牛乳を飲まないで(Don't drink your milk)」という本を書いている.筆者はまだ見てないが,「牛乳には危険がいっぱい?」という題で,東洋経済新報社から訳本が出ているようだ.
氏はその著書の中で「それほどドラマチックではない牛乳アレルギーの胃腸過敏症が認識されることが増えてきている.この型の過敏症は顕著な症状を示すことは稀であるが,ゆっくりと着実に失血する.この型の牛乳過敏症の子どもは,1日に1~5mlの血液を便から失う.ついには彼らは貧血になってしまう.毎日失われる血液の量は,簡単に見るだけの検査で見つけるのには少なすぎる量である.便の色は正常で,化学的な検査でしか見つからない.米国の乳児の鉄欠乏の半分が,主にこの形式の牛乳で誘発された消化管出血の結果であると推定される.この国の2歳以下の乳幼児の10~15%が鉄欠乏性貧血に罹患していることを考えると,この数字は驚くほど圧倒的なものである」と述べている54).
インスリン依存性糖尿病(I型あるいは小児糖尿病)は乳製品の消費と関係がある.異なった国の疫学的研究で,乳製品消費とインスリン依存性糖尿病との間に,強い相関があることが示されている56).さらにトロント大学の研究者は,新たに糖尿病と診断された142人のフィンランドの子どものすべてが,乳漿蛋白ウシ血清アルブミン(BSA)に対する抗体価が高く,この抗体はヒト膵島ベータ細胞(インスリンをつくる細胞)に特有な蛋白と反応するので,自己免疫によってこの細胞が破壊されて発症すると考えている57).
アラバマ州の小児科開業医であるJ・ダン・バゲット博士の臨床経験を述べた手紙の一部がある54).
「1960年に私がアラバマ州・モントゴメリーで開業した時,食餌中の牛乳蛋白と湿疹の因果関係に気づいていた.またこれらの湿疹を持つ小児の多くが,食餌の操作によって湿疹を改善できていなければ,後になって喘息を発症することも知っていた.このことが私の新生児の臨床で,食餌によるアレルギー予防システムを始めることのきっかけとなった.9カ月までは牛乳・小麦・卵・柑橘類を含まない食餌だけを与えた.
…次第に私は,数種の呼吸器疾患・胃腸疾患と,食品の間の因果関係がわかるようになった.
… 1964年にサンフランシスコのウィリアム・ディーマー博士の経験を知る機会があった.彼は,『生長痛』と呼ばれる筋骨格痛が,牛乳蛋白と因果関係を示す頻度が高いことを指摘した.その時から,私は初期リュウマチ様関節炎と思われる数人の小児を,確信をもって注意深く食餌操作をして緩解に至らせた.
約6年前,私は全体として私の患者に,すべての乳製品を食餌から除くように説得を始めた.これに対しては,十代前と,十代の子どもを除き,私が予期したよりも皆協力的であった.
1963 年から1967年に至るまでは,年間4例の虫垂切除を紹介入院させた.最近5年半に,わずか2例の虫垂炎切除を紹介しただけで,最後の例は3年前である.この2例はともに牛乳狂を公言していた.この間,活動性喘息は1例もない.実際,私はこの疾患の処方を忘れてしまうほどだ.
私が知り得たことで最も顕著なことは,A群ベータ溶血性連鎖球菌は,完全に牛乳がない食餌では,決して感染症を起こさないことである.ここ2年半ほどは,これは例外が全くない.私の患者で溶血性連鎖球菌による咽頭炎・膿皮症を見たときは,必ず症状が出る5日以内に牛乳蛋白を摂取した既往を聞き出すことができる.
…私の授乳婦は…牛乳蛋白・チョコレート・コカ飲料・ピーナッツ・生タマネギを避けることを指示され,その他は子どもに悪くないものは全て食べてもよい.正しいことの経験が貯えられた…」
中耳炎(耳感染症)の基本的な原因はアレルギ-であり,これが耳内に液を貯留させ,これが細菌感染の豊富な栄養になる。小児の最も多いアレルゲンは牛乳と小麦である176).
筆者の外来でも,牛乳があるとたいていの疾患が悪化するのを感じている.
★
男性では乳製品摂取でパーキンソン病発症の危険率が1.8倍から2.3倍になる
ハーバード大学により,1986年以来の51,529人の男性保険専門家集団(40~75歳)(Health Professionals
Follow-up Study:HPFSコホート) と,1976年以来の121,700人の正看護婦集団(30歳~55歳)(Nurses' Health
Study:NHSコホート)で,乳製品摂取とパーキンソン病発症率の関係が追跡調査された(コホート前向き研究).その結果,男性で乳製品を1日コップ2.9杯以上摂る者は,1杯以下の者と比較して,パーキンソン病発症の危険率が1.8倍になり,また乳製品カルシウムで1.5倍,乳製品のビタミンDで1.6倍,乳蛋白で1.6倍,乳糖で1.8倍危険率が増した.ただ乳製品以外のカルシウムとビタミンDでは危険率の増加はなかった.また女性ではこのような乳製品とパーキンソン病危険率の関係はみられなかった179).
同様にハワイの「ホノルル心臓プログラム(Honolulu Heart
Program)」では,45歳から68歳の男性7,504人の30年の追跡において,牛乳を1日473ml以上摂る人は,まったく摂らない人と比較して,パーキンソン病の発症率が2.3倍になると報告されている180).
乳製品が必要かどうかを述べる前に,指摘する必要があるのは,乳製品を長期に(おそらく1万年くらい)食餌に取りいれて来た人々が居るという事実である.特に北欧に起源をもつ人々(白色人種)がその代表例で,あとは砂漠のマサイ族,チベット・モンゴルなどの高地の人々もこれに属す.
全ての陸生の哺乳動物は離乳し,離乳後は乳を食べないが,それは離乳期になると乳糖を分解できなくなるからである.それを押してこれらの人々が乳食した理由について,宮崎大学の島田彰夫教授は,乾燥地であるか月間平均気温が20度に達することがない寒冷地で,作物が穫れないため,代用食として食べたのだろうと言う(インド人はヨーロッパ出身の人種である).
これらの人々は,長期に乳製品を摂ったため,身体にも変化が起こっている.たとえば白色人種は,通常のヒトや哺乳動物と異なり,乳糖分解酵素(ラクターゼ)が離乳後も残存するようになった59).ただ,乳糖のガラクトースは白人も分解することができず64),これが卵巣癌68)や白内障63)の原因として疑われている.
またマサイ族の身体にも異変が起こっている.彼らの食餌は大部分が発酵牛乳であるが,心筋梗塞・高血圧が少ないといわれ,そのため発酵乳製品が健康を害さない例として引き合いに出されてきた.
だが,1972年のヴァンダービルト大学ジョージ・マン教授による50人のマサイ族の剖検で,40歳以後の検体では米国の高齢者と同等の,高度で広範囲な動脈硬化が,大動脈や心臓の血管に見いだされたのである(図19).
この研究によって,なぜ彼らに心筋梗塞や高血圧がないのか,理由も明かになった.すなわち,彼らは心臓の血管に奇形があることや,血管が年齢とともに拡張するという特殊な体質を持つため,心筋梗塞になりにくいのだと思われる.彼らは加齢によって冠動脈内膜の厚みが3倍になっても,正味の動脈の内腔面積が増加し,閉塞や血圧上昇が起こらないのである.181).
また彼らは,食餌で多量のコレステロールを摂取しても,通常のヒトとは異なり,体内のコレステロール産生が減少するため,高コレステール血症が起きにくいことも示唆されている182).
つまり特殊な人々だけが生き残ったのであり,これを通常の人々に当てはめることはできない.さらに指摘すれば,マサイ族は牛乳で動脈硬化が起こる実証例とも言えるだろう.
ヨーロッパでも,19世紀には心筋梗塞などの成人病はあまりみられなかった.その理由は,この時代の人々は多くが飢えており,食べる量が少ないため害が出にくかったからだと思われる.このことを,マンチェスター大学のシーリ博士は,20世紀になって商業的な牛乳生産が始まり,乳製品が各家庭に行き渡った後,疾病が激増したと指摘している101).動物実験でも,食餌量を任意に食べる量の60%に制限すると,寿命は1.5倍になるのである95)96).
以前牛乳は完全食品と宣伝された.先に触れた,ジョンホプキンス大学小児科主任教授であったフランク・オスキー博士は,乳業メーカーが低脂肪乳を擁護しており,カゼイン(牛乳蛋白の85%を占める)を除去したホエイミルクをつくり,低乳糖の牛乳を生産している事実は,乳製品が完全食品とはほど遠いものであることを,メーカー自身が認めていることであるという54).つまり乳製品の脂肪・蛋白・糖質はいずれもヒトの健康に問題があるということだ.
★ わずかな例外を除き,全ての哺乳動物は離乳の後,乳糖とガラクトースという糖質の分解酵素が小腸から消失する58).つまり牛乳をのむことは自然でない
自然は,離乳した哺乳動物が乳を飲むように設計していないので,すべての哺乳動物は乳を食べないし,また食べないほうがよい.
1988年のアメリカ臨床栄養学雑誌でスクリムショウらは,「1960年代中頃に……幼児期のラクターゼ(乳糖分解酵素)活性の欠損または著しい減少が,広範囲にわたるという報告があった.実際今や急速に,このパターン(ラクターゼ非残存者)が遺伝的な標準(norm)であり,北部ヨーロッパまたは一部の地中海起源の集団(白人)だけが,成人になっても大多数がラクターゼ活性を保持することが明瞭になった」と述べ,ラクターゼを持たない正常の人々に対する「乳糖不耐症」という病名を排除して「ラクターゼ非残存者」と命名し,白人などラクターゼを持つ人々を「ラクターゼ残存者」とした59).
つまり学術用語の変更がなされたのである.ところが不思議なことに,この論文は最後まで「ラクターゼ活性を調べる検査の乳糖の投与量が多すぎる」,「国連児童基金UNICEFと他の機関が,発展途上国の幼稚園と学童の補充栄養に関係したとき,一旦彼らがそれに慣れたら,定期的に240mLの牛乳が受けいれられない集団はなかった」などと述べて,何とかして牛乳を飲ませることに終始している59).これは様々な「白人」の事情によるのであろう.
1996年のアメリカ栄養協会(American Dietetic Association)雑誌は,離乳後のラクターゼ活性消失は世界人口の約75%に起こり,米国人口の20~25%に生じると述べている60).
宮崎大学の島田彰夫教授は,乳製品を摂る人々は,平均気温が20℃に達する月がない寒冷地・高地や砂漠など,作物の生育に適さない地方の人々であり,乳製品は代用食であろうというが61),白人の事情によるUNICEFなどの発展途上国への牛乳普及にもかかわらず,現在世界人口の約65%が乳製品を摂取していない62).牛乳を飲まないことが生理的に自然である.
★ 分解できない乳糖のガラクトースは白内障の原因となる可能性がある63)
カリフォルニア大学・地理学部門のシムーン博士の報告は,インド北西部では,白内障摘出などを目的としたアイキャンプが設けられるほど白内障が多く,牛乳消費量も西欧並みに多いが,東インドでは牛乳消費が非常に少なく白内障も少ないことから,牛乳の摂取が白内障の原因であろうと疑っている64).
乳糖はラクターゼによりブドウ糖とガラクトースに分解されるが,ガラクトースについてみると,米国白人の赤血球ガラクトキナーゼ活性(ガラクトースを分解する酵素)は有色人種よりも有意に高いものの,乳児期の1/3から1/4に過ぎず,白人を含めた全ての人種でガラクトースを分解することが困難な可能性がある64).このため一部の人々で時々高ガラクトース血症が生じる可能性があり,このガラクトースがある種の酵素で還元されて,分解不能のガラクチトールとなり,眼のレンズに蓄積して白内障になる63).
また別の径路で,ガラクトースが蛋白質のリジン残基と結合し,蛋白質を変性させて「糖化最終産物」というものに変え,これが活性酸素を発生させ,組織を酸化させて白内障になる65) 66) 67).
ヨーグルトはガラクトースを吸収しやすく,またこの組織の酸化は蓄積して老化に関与するので,1杯のヨーグルトなら心配ないとする根拠は何もない.
ハーバード大学のダニエル・W・クレイマー博士は,乳糖,特にガラクトースを分解する能力の低い婦人が,ヨーグルトを摂取することによって,卵巣がん発症の危険率が約3倍となるが,これはガラクトースが卵巣を障害して,早期卵巣機能不全となるためではないかと推測している68).
同じくハーバード大のクレーマー博士は,1人あたりの乳製品摂取量は,加齢に伴う妊娠率低下(不妊傾向)と相関するという.彼は,これはガラクトース暴露が増えるための,卵巣機能障害のためと推測している69).
NASAラングレー研究所のグラント博士は,32カ国の国家統計を用いて,食餌と虚血性心疾患・冠状動脈疾患の死亡率の関係を調べたところ,65歳から74歳の男性で,牛乳炭水化物(主に乳糖)が虚血性心疾患死亡率と高度に有意に相関することを見いだした136).(図7)
すべての哺乳動物で,離乳後は糖質(乳糖・ガラクトース)を分解できなくなるので,全ての離乳した哺乳動物は乳を食べない.
ヒトにおいても,分解できないガラクトースが,組織の酸化,発癌促進,白内障などに関与するおそれがあり,自然の摂理に反して乳製品を摂る必要はないと思われる.
またエール大学の研究者も16ヵ国34の文献を検討した結果,同様にアメリカ・スウェーデン・フィンランドなど肉や牛乳や他の動物食を摂取する国に骨粗しょう症の骨折が多く (図10) ,カルシウム摂取量の少ない菜食の国に骨折がほとんど見られないことを報告した(図9).この研究では,南アフリカ黒人(バンツー族)はカルシウム摂取量が非常に少ない(わずか196mg)にもかかわらず,骨折率は10万人に対しわずか6.8人であり,アフリカ系アメリカ人(カルシウムは1000mg以上)の60.4人,白人系アメリカ人の118.3人と較べてはるかに骨折率が低いことが示された71).
またカルシウムを摂取する国は,国民の平均骨密度の高い国であり72),骨密度の高い国に骨粗しょう症が多いということになる.
1986年と,1992年にハーバード大とエール大が,カルシウムを1000mg 摂る国に骨粗しょう症が多いことを指摘したが,驚いたことにアメリカ国立衛生研究所(NIH)の指導指針は,「平均的な思春期の少女は1日800mgのカルシウムしか摂取しておらず……1994年6月の最適なカルシウム摂取量に関するNIH合意会議の推奨量132)よりも700mgも少ない」と述べ,カルシウムを1500mgも摂れと勧めた137).
現在までカルシウム摂取が骨折率を低下させるという証拠はない73).またWHOの報告では,FAO/WHO共同専門家協議会の勧告において,カルシウムパラドックス(カルシウムを摂る国に骨粗しょう症が多いこと)が強調されており,解明されなければならない問題としている74).
先にも述べたが,骨粗しょう症の多発する国は,国民の平均骨密度の高い国である72).現在わが国の整形外科学会は,「若いときに骨密度を高くして骨粗しょう症を予防しよう」と指導しているが,「若いときに骨密度の高い人々が骨粗しょう症が少なくなる」というデータは存在しない.何を根拠にこのような指導がなされているのか,非常に不思議である.骨密度を高くすることは,身体によくないかも知れないのである.
12年にわたり78,000人の婦人を調べたハ-バ-ド大学の看護婦健康研究(計画研究)では,ほとんどのカルシウムを乳製品で摂った婦人のほうが,ほとんど乳製品を摂らない婦人よりも,より骨折をすることが多かった75).またこの研究では,主なカルシウム(1日450㎎以上)を乳製品で摂る人達は,大腿骨骨折の危険性が2倍となった76).
また1994年のシドニー大学の老年男女の研究(症例対照研究)でも,乳製品の消費量が増すと骨折の頻度が増え,最も消費量の多い群では,最も消費量の少ない群の2倍の骨折率を示した77).
科学的に根拠が確立されてないのに,日本の公共の報道や指導が骨粗しょう症の予防に,牛乳でカルシウムを摂るように指導するのは非常に問題がある.今までみてきたことからすれば,最悪の場合これらの指導によって,骨粗しょう症が増加する恐れがあるのだ.
ガンビアの8.3歳から11.9歳の160人の子どもに,カルシウムサプルメント(1日1000 mg週5日12ヵ月)が行われたが,身長・体重・橈骨の骨幅に有意の影響を及ぼさなかった78).
乳児は人生で最大生長を示す期間であるが,ヒトの母乳のカルシウム含有量は,野菜よりも少ないレベル(100ccあたり32mg:牛乳は120mg)にあるので,生長のためにカルシウムを摂れという指導は適切ではないと思われる.
またヒトの母乳には蛋白質が非常に少なく(野菜よりも少ないレベル),ハーバード大のヘッグステッド教授は,ヒト(霊長類)では生長に余分な蛋白が必要でないというが79),後に述べるようにエネルギー密度(カロリー)が生長に主要な役割を持っているようだ80) 81).
コーネル大学のコリン・キャンベル教授らの中国のデータでも,成人身長は植物蛋白と相関しており,動物食品は総カロリーの3~6%しかない低蛋白食であったが,幼児期の生長速度は日本のそれ82)と実質的に同じ率で,1950年から1980年まで10年毎に増加した83).それゆえキャンベル教授は,「良好な成長速度のためには,動物食品が必要」とする見方は支持されないと述べている.
筆者の経験では,牛乳をやめると急速に身長が伸びた例が何例もあったが,これは牛乳の胃腸に対する負担がとれたためと解釈している.
動物食品摂取はカルシウム排泄をまねき,カルシウムの必要量が増す97) 98) 99).これは含硫アミノ酸の酸負荷によるものと考えられている.酸を中和するため,アルカリのカルシウムが酸とともに尿中に排泄されるのであり,これは牛乳でも同じである100).
疫学的な観察では,1日のカルシウムの摂取が200~400mgの国では動脈の疾患は存在せず,一般的に血圧は年齢と共に増加しない101).このような国は図10からもわかるように,ほとんど菜食の国である.皆さんは驚いただろうが,カルシウム摂取の少ない国では,動脈硬化と骨粗しょう症がほとんどないのである73).
ラットで,思春期の間中カルシウム摂取量を極度に少なくしても,骨基質に沈着するためのカルシウムは欠乏しない102).ヒトにおいてもカルシウムが少ないため問題が生じることはないようで,1962年に世界保健機関専門家グループ は,カルシウム欠乏の正確な徴候がわかっていないとした103).また,南アフリカ医学研究所のアレキサンダー・ウォーカー博士も「カルシウム欠乏症が人類に存在するという確実な証拠はない」とこれに賛同している104).
反対に,より多量のカルシウムが骨に吸収されると,これを沈着させる骨基質がつくられなければならない.そのため骨芽細胞と破骨細胞の両方の産生と活性が増加するが105) 106) 107),活性化して分裂した骨芽細胞の50~70%は,新しい骨基質をつくる過程で死滅する108).細胞が一生の間に分裂できる回数は決まっているので,多量のカルシウムを摂取すれば,より早く細胞分裂能が尽きてしまう.もし再生能が尽きてしまえば(これを骨粗しょう症という)死滅した細胞を置き換えることができず,微小骨折が修復できなくなる109) 110).強いてカルシウムを吸収させることは,老化過程(aging process)を加速することにほかならず,これが骨密度が高い国で骨粗しょう症が多くなる理由であろう72).
(西欧社会のカルシウム摂取量900mgは,若年者の必要量の2倍,高年者の必要量の5倍),カルシウムを摂る人々の健康状態はよくない. 101)
★ マンチェスター大学のスティーブン・シーリ博士は,ニューヨーク科学アカデミーのメンバーにも選ばれたが,体内でのカルシウム代謝から見て次のように指摘している.西欧世界のカルシウム摂取量900mgは,若年の必要量の2倍,高齢者の必要量の5倍も高い.博士によれば,このような多量のカルシウム摂取は,動脈への石灰化を引きおこし,弾性が減少して高血圧となるとともに,冠血流量が低下する.一般的な観察では,1日のカルシウムの摂取が200~400mgである国では動脈の疾患は存在しない.血圧は,年齢と共に増加しない.1日の摂取量が800mgである国では,動脈の疾患は,死亡率の主要な原因である.
カルシウムは代謝の過程で分解されるようなものでなく,常に補充が必要な栄養素ではない.カルシウムの1%は,種々の機能を発揮するため使われるが,その主なものは細胞内の小胞体に貯蔵され,筋肉収縮などの機能を発揮するときに遊離されるが,終わると元に回収される.
残り99%は骨に貯蔵され大体1100gある.骨は35歳まではサイズと重さを増すので,そのため1日あたり80mgずつ必要になる.35歳から47歳までの12年は骨は最大サイズで骨格はカルシウムを必要としない.その後の老年期はカルシウム喪失を伴う骨サイズの減少が始まる.この喪失量は1日10~20mgである(老年期ではこの量は食餌で摂取したのと同じことになる).
全ての体液は100mg/lのイオン性,あるいは蛋白質結合性カルシウムを含む.この一部が尿や汗から失われるが,尿で失われる量は1日100mg,汗で失われるのは70mgもありうる.合計損失量は1日170mgということになる.
従って35歳までは,骨に必要な80mgと損失量170mg合計250mgが食餌で必要である.35歳から47歳までは損失量の170mgのみ,それ以後は汗の損失量も減り骨から遊離される量を差し引くと130mgくらいが必要量となろう.これに30%増しで考慮すると,3つの年齢層のカルシウム摂取必要量は,それぞれ325,220,170mgになる101).
★ 香港大学のクンらは111),日常のカルシウム摂取が500mg以下の中国南部の婦人を調べたが,食餌カルシウム量を300mg以下にしても,骨粗しょう症患者も対照者も,日常の食餌の時と統計的に有意には変わらない210mgくらいの量が吸収された.ただ骨粗しょう症患者では,カルシウムの喪失量が増加していた.
600mgあるいは1200mgの補給をすると,600~700mgくらいまで吸収が増加したが,前述したようにこれがよいことかどうか疑問である.以上の事実からカルシウムの少ない食餌は,骨にとって問題はなく,老化という面からは利点があるかも知れない72).
カリフォルニア大学デボラ・セルマイヤー博士は,初老女性の骨損失率が食餌の植物蛋白に対する動物蛋白の比率と劇的な相関関係があることを示しており,(動物蛋白の)比率が高いグループの女性は,低いグループの女性と比較して3倍の骨損失率を持ち,ほとんど4倍の股関節部骨折率を示している174).菜食の国に骨粗しょう症が少なく70) 71),菜食が骨の老化を予防すると思われる.
★ オレゴン健康科学大学の研究者たちは,世界保健機構年間人口動態統計と国連食糧農業機関のデ-タベ-スを用いて,40カ国の食糧摂取と冠状動脈疾患死亡率の関係を検討した.その結果飽和脂肪摂取は,有意にかつ明確に冠状動脈疾患死亡率と相関したが,フィンランドとフランスは飽和脂肪摂取量は同程度であるのに,フィンランドの死亡率は4倍も高かった.そこでこの違いを調べるため,コレステロ-ルと飽和脂肪を一致させてみると,種々の乳成分(乳脂肪, 牛乳蛋白, 牛乳由来のカルシウム, リボフラビン)と総カルシウム量が,すべての40カ国で死亡率と明確に相関した112).
牛乳はカルシウムが異常に多く,マグネシウムが非常に少ないので,この説によれば牛乳は冠疾患を引きおこす食品の代表的なものとなる.
ハーバード大学が行った,スウェーデンの前立腺がん患者 526人 と 対照者 536 人の症例対照研究で,カルシウム摂取が1183mg以上のものは,825 mg以下のものと比較して,前立腺がん危険率が1.91倍になった.また牛乳の多量摂取で前立腺がんの発症率が50%増加した113) 114) 115)
ヒトの母乳は100mlあたり,32mgのカルシウムが含まれている.
食品100gあたりのカルシウム含有量は,サツマイモ35mg,ニンジン41mg,オレンジ42mg,キャベツ43mg,エンドウ50mg,セロリ80mg,納豆90mg,豆腐120mg,大豆201mg,こまつな290mg,胡麻783mgなどであり,ヒトの母乳のカルシウム含有量は野菜よりも少ないレベルにあるので,とくにカルシウムを摂る必要はないと思われる.
とにかく人類において,カルシウム摂取不足によるカルシウム欠乏症が存在することは,確認されていないのである104).
「カルシウムを摂るため牛乳を飲みなさい」という指導は,カルシウムの害を考慮すると,適切なものでないことがおわかりだろう.
★ アレルギー 116)
牛乳の蛋白質は,約85パーセントのカゼインと15パーセントの乳漿蛋白(ラクトアルブミンとラクトグロブリン)からなり,特に乳漿蛋白はアレルギーの原因として,小児糖尿病・不眠・自閉症などが起こることを述べたが,牛乳蛋白は普遍的なアレルギーの原因である.
カナダのJ・W・ジェラード博士は,(1)持続性或いは再発性の鼻充血(鼻づまり),喘息発作,胸部感染症.(2)持続性あるいは再発性の皮膚発疹.(3)嘔吐下痢(再発性或いは持続性)でその原因がみあたらない乳児について,その1項目以上あれば牛乳アレルギーを疑って,除去・再投与によってその有無を確かめた.入院した787人の乳児を引き続き観察してアレルギーの頻度をみたところ,59人が牛乳アレルギーと診断され,全体の発症率は7.5%であった116).
これを皆さんは少ないと思うだろうか,多いと思うだろうか.
これでも非常に高率である.
だが実際はこんなものではない.カリフォルニア大学小児科教授ウイリアム・ディーマー博士のグループが述べているように117),牛乳アレルギーはほとんどが遅延型といって(IgE抗体はない),食べ物を食べて何日もしてから症状が出るもので,簡易な検査法がないため,一般には見逃される.上の診断は鼻・呼吸器・消化器症状についてだけなされたもので,自閉症・多動症・疲労・学習障害・偏頭痛・筋骨格の不快感・関節炎・寝小便・睡眠障害・再発性感染症・体重増加・おりもの・蛋白尿・頻尿・便潜血など,知られている驚くべき数のアレルギー症状が検査されていないからである.
どのくらい牛乳アレルギーの頻度があるのか? 結論は「不明」である(体系的な研究が不可能に近い)118).
だが,牛乳アレルギーが将来にわたって,その子どもに影響を与えることは分かっている(アレルギー行進 = 別のアレルギーが取って代わる).
1985年に,デンマークのオーデンセ大学病院で生まれた1,749人の新生児の集団について,牛乳アレルギーの発症とその後の経過が追跡されたが(コホート前向き研究),生後1年までに呼吸器症状・皮膚症状・胃腸症状・乳児疝痛・発育障害のどれかが有る場合,入院して診断がなされ,39人(集団の2.2%)が牛乳アレルギーと確定診断を受けた119).
この患者を追跡すると,もとの牛乳アレルギーは牛乳の除去によって次第に改善し(牛乳を投与してももとの症状が出ない),15歳で97%改善した(筆者の考えでは改善というより,わかりにくい症状に変化したのではないかと疑う.例えば疲労感・不眠など).だが,10歳の時点で喘息またはアレルギー性鼻炎をもつ者が48%,喘息だけのものが41%,他の食餌アレルギーが18%など,他のアレルギーに変化する『アレルギー行進』が起こることが確認された.
「最近乳製品を食べられるようになった」は危険,隠れたアレルギーは持続する
「アレルギーだった牛乳が最近食べられるようになった」という言葉を聞かれたことがあるだろう.これを「経口耐性」と言い,食べてすぐ起こっていた胃腸症状(即時型反応=IgEによる)などがなくなることである.ただこれはかなり危険なことである.吐き気などの急性の警告症状がなくなるのに,遅延型の慢性症状は耐性ができないので,慢性病(たとえば自己免疫病の小児糖尿病など)の形で持続する.これを先のディーマー教授は「一般に信じられているのとは反対に,殆どの牛乳アレルギー(その他食品も)はレアギン(IgE)によるものではない.牛乳アレルギーは乳児に限定されるものではなく,小児や成人にも見られ,しばしばおそらく生長して(outgrown)持続する」と述べている117).
英国ブラッドフォード大学のガードナー博士は言う「いまだに腸管の上皮が,巨大分子(未消化の蛋白やホルモン)を吸収させない絶対のバリアーと考える傾向があるが,今やこの考え方を支持できない圧倒的な証拠がある」,「このような未消化の蛋白の吸収が起こるメカニズムには,腸管の炎症・アレルギー・精神障害などが含まれる」120) 143).
またこの透過性亢進の問題について,クームズとマクラフリンは「胃腸管の(未消化の抗原性のある)食餌蛋白の吸収は免疫学的に2つの面で重要である.(1)それ自体がアレルギー状態を引きおこす(2)その後のその食品の(反復した)チャレンジによって,種々のメカニズムによりアレルギー反応が変化し,ある種の『食餌アレルギー病』を生じる」と総括している121). たとえば腸の炎症性疾患である「クローン病」に,乾癬・関節症・仙骨炎・強直性脊椎炎などが合併するのがこの類である.
前にも述べたが,牛乳蛋白の85%を占めるカゼインは,糊のような性質で非常に消化が悪く,種々の蛋白分解酵素を抑制する物質をつくる31) 32).従ってカゼインの存在は,未消化蛋白を吸収させ,新たなアレルギーをつくり,アレルギーの病態を複雑にする原因となる.またホルモンなどを未消化のまま吸収させて,影響を及ぼすことが知られている.
一例を挙げると,1998年にハーバード大の研究者により,IGF-I(インスリン様生長因子)が前立腺癌の強力なリスクファクタであるという決定的証拠が示されたが33),このIGF-Iは,牛乳の生産量を増やすため牛に注射される「遺伝子組み換えウシ生長ホルモン」によって,牛乳中に最大10倍も増え,前立腺癌,結腸直腸癌,閉経前の乳癌と肺癌の危険を増すとされている34).牛乳のカゼインは,このIGF-Iという巨大分子を未消化のまま吸収させる力があるという34) 35) 36).ただ日本ではウシ生長ホルモンの使用は認められていない.