思ひ出





力の戦い。
この、いまや記憶に留める者は極めて少ない大会戦で、遂にメルコールは捕らえられ、アイヌア達は久しい平和を目指して西での居を夢の様に仕上げました。
これはそんな平和が続くなかの、海を渡ったエルダールの伝承にも残っていない、ほんのささやかな出来事です。


アイウェンディル「家出したんだ」

オローリン「・・・・・・へぇ。アイウェンディル、君も家出なんてすることがあるんだね」
アイ「僕を馬鹿にしているのならオローリン、それは大きな過ちだよ。僕だって時に、この永の生に倦み疲れることがあるのさ」
アラタール「なんかさりげに自分の立場を自覚しちゃってんだな小鳥ちゃん。で、何があったんだ?」
アイ「・・・ヤヴァンナ様ったら、酷いんだよ。アウレ様のアンガイノオルじゃ満足できないらしくてね!僕の大切な茨達を、よりによってメルコールの冠にしようっていうんだ。・・罪人の冠に!茨は茨でも、僕が大事に育てた茨ちゃん達なんだよ!?毎日毎日五十年世話してやっと咲いたバラもあったんだ!それをよく満面笑顔であんな極悪人にやれなんて言えるよ!ひどすぎる!」

アラ「・・・珍しく、マジに怒ってるみたいだな」
オ「本当に珍しいなぁ。熱でもあるんじゃないか?」
アイ「だまれっ!!
(ここで灰色さんと青さんの二人は、鳥さんのあまりの剣幕にビクつきました)
いつもの漫才じゃないんだよ二人ともっ!真剣な話だ!君達、そんなおちゃらけでよくアラタアルの使いなんかやってられるよ!・・・・・ごほん。そんなわけで僕はヤヴァンナ様の牧草地を飛び出してきたわけだ」
クルモ「で、何故揃いも揃ってウチにいる



アラ「たまり場だから
オ「大戦後だってのに冷暖房完備なんて、アウレ様の館以外ないんです」
ク「ウチの電気代と私の疲労感を、貴様らは考えたことがあるかっ!?先日やっとアノール・ソーラーシステムに成功したというに(注:現在アノール誕生後時代ではありません)、電気代が減らないのは何故だ!貴様らがいるからだ!」
アイ「もうそんなことはどーでもいいんだよクルモ。それより僕の茨たちだ」
ク「何だと!
ならお前が電気代払え!

オ「・・・にしても信じられないなアイウェンディル。普通のひとの感覚だったら、それはそれは名誉なことだろうに」
アラ「そーだそーだ!あの
バカ禿親父の頭にトゲ刺せるちゅーなら、茨の百本や二百本、気前良く送ったれや!」
アイ「何言ってんの。これだから生え育つものへの愛情も持たない奴らはっ!ねぇクルモ!?」
ク「あ、ああ・・・(・・・なんか嫌な台詞のような・・)」
オ「(溜息)わかったよ、君の悲しみはよくわかった!で、結局何がしたいんだい」
アイ「僕はただ、僕の茨達を助けてやりたいだけなんだ!だって酷過ぎるじゃない!?」
アラ「わるい。俺にはようわからんわ〜」
アイ「そりゃ、君みたいなバカに何頼んでも良い結果得られないんだから、最初から期待なんかしてないよ!」
アラ「ブッ殺す★
アイ「何だよ事実だろー!」



オ「はぁ・・・・・。クルモ。貴方の殿に頼めないんですか?」

ク「はぁ?アウレ様に?」
オ「もしくは貴方でも結構です。確か生命についての研究もしてたでしょう」
ク「・・・何故知っている汗」
オ「禁忌の呪いを調べる時等は、特に背後に気をつけたほうが宜しいのでは(満面笑顔)?」
ク「(・・・怖い)アウレ様は大戦前から疲労の感が濃く、いまは一日14時間は睡眠という、痛ましい御身であらせられるのだ。・・・未だにあやつの裏切りに嘆いてもいらっしゃる。そのような時に、鳥マイア如きの、諸悪の根源に関係する話を耳に挟んだらまた悲しみが増すばかり。故に、余計な真似は控えて貰おうか」
オ「では貴方にお頼みしますよ。どうかその秀でた手の業でもってこの件を解決してください、とね」
ク「何故だ。あの戦闘バカに首を締められている鳥バカが、その拙い植物を差し出せば良いだけのこと。私が動く義理もない」
オ「随分悲しいことを言いますね!彼は貴方の弟分でしょう」
ク「っ!お前は、自分がどれほど無礼な事を言っているか解っていないようだな!あの裏切り者を兄と言った後は、あのバカが弟か!?」
オ「何マジ切れしてんですか。似合ってますよ」
ク「ほほぅ。ではお前は
エオンウェ殿を兄と認めることができるのだな

オ「・・・・・・・・・・・。
(考え込むこと約五分。その間、彼等の背後では二人の青年が死闘中)
・・・クルモ。我らには血なんて在りません。我らは独りです」
ク「またワケの解らんことを・・」
オ「とにかく!平和を好む貴方は、この問題を解決せねばなりません!放置するのは、アウレ様の安眠のためにも良くないはずです」
ク「う・・!←アウレに弱いマイア」
アイ「なになに!助けてくれるのクルモ!?君がいると心強いなぁ!←顔中青タンだらけ
アラ「やはり最年長のことだけはあるな!←顔中引っ掻き&噛み傷だらけ
ク「・・仕方ない。今回だけは、協力しよう」
アイ「わぁ!ありがとうクルモー!←泣きながらダイブ」
ク「ギャッ!←後ろに倒れるモヤシ男」

オ「・・・・・・・・・(満面の笑顔」
アラ「(?・・さ、寒い??)おいオローリン。なんか冷えてきてないか?」
オ「さぁ・・・・・・(満面笑顔)?」
アラ「そ、そうか(
な、なんかコワッ!)」


こうして、この茨をめぐる珍騒動は始まったのです。








クルモ「で、私に何をしろと?」
アイウェンディル「なんでもいいんだ!一番有り難いのは、君が僕の茨そっくりの物を造ることだけど」
オローリン「・・・凄いこと頼むもんだなぁ。言うなれば、二人のどちらが認められるか、って話になる」
アラタール「奴らの力量関係なんかハッキリしてると俺は思うけど?」
オ「いや、物事には元々それぞれ各々の分野と領分がある。アイウェンディルの要求はそれを越えている気がするんだ」
アイ「・・・賢明な人が頭を回転しだしたよ(悪いけどちょっとウザいなぁ←酷)」
「珍しい←酷」


アラ「んじゃあ、お前はどーゆーつもりでクルモなんかに頼んだよ」
オ「私は彼がバイオ関係の技術でもって茨のクローンを生成すれば、二人の分野も領分も損なわずに大団円だと思ったんだ」
アイ「それは・・・倫理的にどうなの」
ク「そうだ。それに我が殿でさえ御手を付けてはならぬ秘法を、私が使ってよいとは思えぬ」
オ「そうですか。では私には何も言えませんね。アイウェンディル、頑張れ
アイ「うぅ!・・・クルモぉ!なんとかならないのかい!?僕の子供達も同然なんだよ〜。僕が大切に育てたんだ〜(大泣き)」
ク「・・・わかったから泣くな。出来る限りのことはしよう」
アイ「!ほんとかい!?」
ク「私とて、自らの手で世に出したものへの愛情はあるからな」
アイ「!クルモ!ありがとうっ!!(再びダイブ)」
アラ「・・・何だかんだ言って、結局は手伝っちまうんだよなぁクルモあんちゃんは」
オ「・・・自分でも気付いてないとこで面倒見がいいんですよね」


ク「うるさいぞ。・・・さて。要するに被写体の複製を造ればいいのだな」
オ「簡単なことじゃありませんよ。メルコールの頭に置く茨の木です。大地の女王が求めるものでもありますし」
ク「ふむ・・・しかし、我が殿の安眠を妨げるような真似はしたくはな・・」
アウレ「うぅシクシク・・・クルモご飯〜!もう卵かけ御飯でいいから用意して・・・・・・て、あれ?
(シャキーン)
お前達。来てたのか」


アラ「・・・親っさんも相当なアホキャラだな」
オ「あれで三大ヴァラールのお一人なんだよ。まったくボケボケだよ」
アイ「だけどおっかさんはとっても怖い御人なんだよ」
ク「誰が誰だっ!!アウレ様!卵かけ御飯じゃないでしょう!いつも貴方が召し上がってらっしゃるのは、刺身定食です!」
ア「え〜。でも卵かけが好きなんだ〜
オ「庶民派なのですね匠の殿。ところで殿にお頼み申し上げたいつてがございます」
ク「オローリン!約束を違える気か!?」
オ「申し訳ありませんが、いま貴方が頭の中で思い描いておられるような約束はしておりませんね←ニッコリ」
ク「っ!(やはり策士!?)」
アイ「殿!我が主にして貴殿の奥方であらせられる、大地の女王についてご進言させて頂きとうございます!」

ア「なんだアイウェンディル。そんな切羽詰まって」
アラ「小鳥ちゃんにもあんな語り口調が出来たんだなぁ意外。」
オ「やっぱナメちゃいけないんだね」
ク「外野はうるさいぞ・・・(ぎろり)」

アラ「っはー!外野には誰かさんも含まれてると自覚なさってんのかね〜。今のうちに
卵でも用意したらいかが?

ク「・・・殺す。
アラ「喧嘩上等。
オ「大人げない真似はやめてくださいよ二人とも!クルモも騒がさない方がいいですよ!あぁもう!知りませんからね!」

白さんが青さんと死闘を繰り広げるなか、アイウェンディルは巧の神に進言を済ませました。


アイ「・・・と、いうわけなのです」
ア「ふむ・・・ヤヴァンナも、無邪気に酷なことをする女だからなぁ」

アラ「そんなトコだけは似てんなぁ←ボロボロ」

アイ「恐ろしいこと言わないでおくれよ!アウレ様!どうか、どうかお力を!」
ア「ふぅむ。そうだなぁ。お前にはクルモが世話になっているしなぁ」

ク「アウレ様!私はこいつらのバカ騒ぎに巻き込まれているだけです!世話になどは断じて!」
オ「まぁまぁクルモ。そう余計なことは言わずに!」
ク「余計だと!?おま・・」
アラ「はい!ちと黙っとけ〜(瞬速手刀)」
ク「ぐっ!・・・!
アラ「わりぃなぁクルモ。せっかくの美声なんだけどよ。強めにやったし、明日まで声出ないから・・・ギャッ!
ク「!!」


アイウェンディルと真面目な話をしていたアウレでしたが、有無を言わさずにアラタールを力いっぱい殴りました。


ア「
ウチの子に何をする怒!
オ「うわ〜、よりによって、アウレ様の前で。殴られただけですんだのは幸運だと思いなよ」
アラ「フ、フォローになってない・・・(半死)」
アイ「アウレ様ァ!私の件はどうなるのですか!?」
ア「あ、ああ、そうだった。よし。力を貸そう、我が妃の下部よ!」
アイ「ああ!有難うございます!」
ア「しかし、私にヤヴァンナの意思を曲げることは出来ぬし(ヘタレ)、複製などは邪道だ」
オ「・・・では、一体どのような手が?」
ア「ふむ。そなたらの頭の中には、狭い定義しか描かれておらん様だ。アイウェンディルよ。そなたの茨とやら、見せてもらおうか」

アイ「え?でも・・・ヤヴァンナ様の牧草地ですよ」
ア「ふむ!!わかった。では最もシンプルかつ一瞬で片付く方にしよう。それならばここから動かずとも事は足りる。」
アイ「そのような方法があるのですか!是非お願いします!」
ア「うむ!クルモ。お前にも教えておこう。お前がこれを使うべきと思った時分に、解らず後で後悔しても困るからな」

クルモは素直に頷きました。











アウレ「よし。まず必要なのは鉄の大筒だ。出来る限りでかいやつを用意するのだぞ」
オローリン「大筒・・・。いきなり私には何をするのか見当もつきませんね」
アラタール「やっぱプロフェッショナーは違うちゅーことやろ。ほれ、大筒」

クルモ(なんだ、その言語は・・・)
アイウェンディル「心の中でツッコミ入れてるのは想像つくけどね、クルモ。生憎なんと言ってるのかサッパリだよ

ア「ほらほら若造ども!さっさとセッティングせぬか!さて、次はこれを使う」
オ「?何でしょうこの黒い物体は・・・」
ア「おぉと!他の奴らが触ってもオローリン、お前はこれに触れるのを控えろ」

オ「えぇ〜・・!何故に?いつもマンウェ様に叱られている腹いせですか?」
ア「
ちゃうわいドアホぅ!見せ場を残しといてやるから我慢しろ!」
アラ「しかし何故ですかな?
普段は私に絶対触らせないでしょう(壊すから)
ア「そのような自覚がある輩は普段の百倍は気を使え。さて、これを大筒に入れて・・さぁ、完成だ!」
アイ「うわぁ!なんか見るからに凄そうな装置ですね!私の為に、有難うございます!」
ア「なになに、今や虚空におわす我らの素晴らしい創造主よりの贈り物と見なすがよい」

アラ「ひゃー。でっかいなぁ」

ク(・・・・・・これは・・・・)
オ「何ボーッと突っ立ってるんですクルモ」
ア「さてさて、これをヤヴァンナの牧場に向けて、と。よし!さぁオローリンよ。そなたの任、今や至れり!そこの縄に神秘の火を点すのだ!!」

ク(!!)
オ「解りました。では、」

ク「や゛、め゛ろ゛ー!!
オ「ナウア アン エドライス アムメン!・・・は?


シュボッ。

次の瞬間、遥か彼方の南西に、
爆発の華が咲きました。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・。』



ア「我らアイヌアが争わなくてはならぬような厄災は、滅びるが吉なのだ。しかしこれでまた平和な大地が傷ついてしまった・・。どうかこのようなことが以後起こらぬよう、我らが主に祈るのみ・・」
アイ「なっ、なっ、何やってんだこの大ボケヴァラがー!僕の茨がーっ!!」
ア「む。そなたが珍しく嘆願する故に、諸悪の根源イバラとやらを一掃してやったのだぞ。・・ヴァラに向かってボケとは何事じゃコラー!
アラ「だーはははははっ!!すげぇ!
お前の殿様は究極のバカだぜクルモー!
ク(反論出来ん・・・涙)
オ「ヤ、ヤヤヤ、ヤヴァンナ様に殺される・・・!」
アラ「やべぇ!マジウケる!ぎゃはははは!」
アイ「喧しい!バカがバカ笑いして笑ってんじゃない!」
アラ「
・・・なんだと鳥ー!
ア「待てアラタール!そいつはマンドスのリングにかけてもまだ足りぬ暴言を吐いたのだ!私の獲物だ八つ裂きだ!!」
アイ「審判の輪にはアンタがかけられるに一万レンバス!
ア「マンドス並の予言をするなー!
オ「ヤヴァンナ様をキレさせる=愛人のマンウェ様(え)キレる=ヴァルダ様キレる=メルコールほくそ笑む・・ぶつぶつ」
ク(・・・こんな日常、忘れてしまいたい・・・泣)



その後はまさに、地獄絵図そのものでした。
ヴァラールの、ヴァラールによる、ヴァラールの為だけの殴り合いです(この格言は何万年か経た後、あるアタニに引用された、哀しくも由緒在る言葉です)。
特に何千回目かになるアウレとヤヴァンナの夫婦ゲンカは、壮絶なものがありました。しかし結局はヤヴァンナが勝利を収めたのです(ちゃぶ台返しを武器としたアウレでしたが、ヤヴァンナの画鋲仕込みの平手打ちには敵いませんでした)。
それはマンドスの砦に幽閉されている暗黒の王の耳にも入りましたが、「なーんでこんな奴らと真面目に喧嘩なんかしてんだろわし」と屈辱的な感情を持たせ、精神的ダメージを与えたものです。

が、誰も冥王に逆ギレ出来ぬ、悲しいお話なのでした。









「・・・それで怒りの戦いのとき、モルゴスは去ったと思ったら、今度はサウロンのバカが調子に乗り出しておるという。あの生活に心底嫌気がさしていたわしは自ら立候補して中つ国行きを決めたのじゃ。したらなんということか!青の奴も来るという。マンウェは灰の姿をいちいち探させて命令しよるし、ヤヴァンナは茶を同行させよなどと言ってくる・・。当時はそれこそ御心と自分に言い聞かせておったが、多彩なりし今は解る。あれは職権濫用というものだ」

「はぁ・・随分とご苦労なさったのですねぇ」
「誠難儀した。その時のことを先日ふと思い出してのぅ。アウレの大砲とは行かずとも、素晴らしい調合であった爆弾に関わらず、ウルク=ハイどもは失敗しよった!ローハン側にフオルン達がいただけに、口惜しいことじゃ!」

「あれはバクダンと名のつくものなのですか。人の子の身でこれを知れたことは、わたくしだけの栄誉でしょうなぁ・・←汁けたっぷりにウットリ」
「まったく、二百年かけて造った杖は折られるし、容赦ない水責めにはあうし!わしがいったい何をしたと言うんじゃけしからん!蛇!もっとワインをもて!」
「お体に障りますよ殿・・・」

「えぇい、やかましいわボケっ!!」



これは赤表紙本にも載っていないほんのささいなお話です。真実かどうかは、今や誰にも解りません。




会話文のみ!!こういうのだったら非常に楽でかつ楽しくていいのになー。
アイヌア勢は完全なる妄想像なので信じちゃいけません〜。