区画整理の現況

T 復興土地区画整理事業から

  1. 1990年代初頭にバブル経済が崩壊し、長期の地価下落、景気低迷を脱したかに見える、昨今ではある。その間、我が国は、様々な経済的ショックを経験してきた。それは、まさに21世紀が始まる、2001年9月11日の同時多発テロから端を発し、2007年のサブプライム住宅ローンショック、2008年のリーマンショック、2009年のドバイショックなど世界の金融不安が我が国にも及んだ。そして、2011年3月11日、東日本大震災による津波が東北地方を襲った。
  2. 甚大な津波被害をもたらした地域には、「被災市街地復興推進地域」が指定された。津波被害から2年以内に、被災市街地復興土地区画整理事業が想定される地域である。今回の大震災は、阪神淡路大震災とは異なり、安全・安心の危険性が今後とも問われる地域として、地元住民の約3割が戻りたくないとの意向が示されている。
  3. 神戸は大震災から19年を経て、現在は、整備された多くの共同化住宅や一般の住宅地内には面影をみることが出来ない。整備されたオープンスペースとしてのポケットパークや公園などに設置された様々な記念碑等から復興をうかがい知ることができるのである。しかし、東日本大震災の津波にあった市街地は、どうであろうか。はたして、20年後、復興土地区画整理事業実施地区において、神戸市同様、市街地の復興の姿を見ることが出来るのであろうか。少子高齢社会は、さらに復興への足かせとなっていると言える。

U 組合区画整理事業の現状

  1. 1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、組合区画整理は、大きな後遺症を負ったと言える。
  2. 前述して、様々な経済金融ショックを経て、まさに、行政も住民も、「熱ものに懲りてなますを吹く」の状況である。
  3. 安陪のミクス金融緩和策等による、景気回復、地価の下げ止まり等は、多少、区画整理事業の触視を動かすかに思われるが、後遺症は、かなりのものである。
  4. 某政令市の担当市街地整備課職員いわく、何とか、これまでバブル期の7組合、7市施行の事業の収束を図るべく邁進し、その成果は1組合、3市施行(平成26年4月現在)となっている。しかし、整備を必要とする木造密集市街地などは存在しているが、事業の減少とあいまって職員も減ってきている。従って、現時点で手一杯である。
  5. バブル経済までは、郊外型の区画整理も盛んであったが、平成3年度以降は、首都圏近郊整備地帯(50キロ圏外)での区画整理の立ち上げは皆無である。まさに、都心回帰が始まり、利便性を優先とする居住指向ということが言えようか。また、施行規模は、極めて小規模化してきており、施行期間もできる限り短期に終えることとしている。
  6. バブル経済、破綻の憂き目を見た組合の現状はどうであろうか。数百億の負債による金融機関からの組合役員資産差し押さえ等の組合事業の経営は、それなりに、収束を迎えているようだ。しかし、その道のりは、かなり厳しいものであった。地権者の負担は、再減歩、賦課金徴収を伴い、さらには役員不在にして、総会開催を知事が招集するという事態となった。まさに、バブル崩壊からほぼ四半世紀が立ち、すさまじいまでの困窮組合がやっと終わりを迎えようとしている。
  7. 今後の区画整理事業は、新規宅地供給型から、コンパクトシティ・防災・都市改造型の区画整理事業へとシフトしていくことになる。

 V.集約型都市構造の形成に向けて

我が国の人口は、2010年以降、減少傾向に転じている。
それにともない、郊外市街地の賢い縮退( スマートシュリンク)の必要性が生じつつある。
 人口の減少や集約型都市構造への再編が進む中で、今後、交通の利便性の低い、
郊外市街地等では空地・空家の発生等の未利用地化が進行していくことが想定される。
ゴミの不法投棄等による生活環境の悪化や商業施設の衰退等による都市機能の低下で、
ひいては市街地の維持自体が困難となることも懸念される。
 こうした市街地における急激な密度低下による著しい生活環境の悪化が生じることとなれば、
郊外型住宅地域のスラム化が発生することとなる。
 当面、国では、情報提供・斡旋等による空地の適切な管理・活用等に取り組むこととしている。
 さらには、市街地整備手法による敷地の統合、集約化についても言及している。
 さて、長期的に我が国の市街地構造を想定するならば、既存の中心市街地においては、
安全・安心を前提とした木造密集市街地等の解消などによる、徒歩圏を前提とする集約型の都市構造が想定される。
 一方、郊外市街地の縮退として、住宅のスラム化を解消するべく、これまでとは逆の市街地化開発(自然に戻す等)を実施していくことが想定される。
この既存中心市街地と郊外市街地については、いわゆる「ツイン区画整理」による市街地形成が想定される。
今後、我が国が経験したことのない、換地手法を用いたツイン型の区画整理での市街地開発が大規模に展開される事になるのではないかと想像するのである。