エッセー
第8回
<多胎児養育家庭に対する支援策は?>

第4回では、双子の育児について書きましたが、今回はその支援策に焦点を当てて、再度述べてみたいと思います。

 はじめに、私が言うところの多胎児は双子も含むということをことわっておきます。なぜかというと、双子の場合は双生児、三つ子以上を多胎児と立て分けて使う場合もあるからです。
 双子をもって、また年齢の近い兄弟もいる中での子育ての大変さを実感してみて、今までこのような問題に政治家などが注目してこなかったことが不思議でなりませんでした。声は上がっていたとしても、具体策が講じられていないのはなぜだろうか。そんなことを考えてきました。

 少子高齢化ということは、ずばり高齢化と同時に少子化が進んでいるのです。親は孫を漢るのではなく、親を看るということが益々増えていきます。
 そんな中、少子化対策といって、いろんな制度も確立されつつありますが、その結果、多胎児の出生も増加傾向にあると分析されています。
 こういった中、多胎児(双生児を含む)養育家庭に対し、何ら特別な措置が施されていません。次の団体がこういった問題に積極的に取り組んでいるということが分かりました。
ABA 社団法人 全国ベビーシッター協会
と、
財団法人こども未来財団
の2団体です。
 ここでは、双生児家庭育児支援事業を行っており、双子・三つ子以上の育児支援事業も子育て支援の一環として行われています。
 しかし、対象者は、事業主に雇用されている社会保険適用の方で、自営業者や公務員は対象にならないとあります。
 また、ベビーシッター券を原則として、年度内に2回使用できるように、申請により支給されますが、ちょっとしたリフレッシュ目的という意味合いのようです。
 ですからこれも、毎日の育児を支える制度ではありません。毎日ベビーシッターに来てもらうとなると、莫大な費用がかかります。
 保育所や託児所に預ければいいと思われるかもしれませんが、そのように言う人は、物理的に無理があることに気付かれていません。
 まだ歩行ができない二人以上と、年の近い兄弟が居て、どうやって、抱えて、移動するというのでしょう。
 外出時には、歩行できない子供の人数分の人手が必要です。
 しっかりと歩けて、ある程度物事が理解できるようになるまでは、一人で複数の子供たちと、長時間、長距離出掛けるというのは不可能に近いです。子供を連れて出るということは、その分の荷物も半端な量ではありません。
 働きに出たいと思ってもそれすらできないのです。そこで、男性の育児参加が必要となるわけですが、現行法では、母体保護のための産後8週間しか認められておらず、通勤緩和も単胎児と同様の取り扱いです。また、この間、無給となれば、経済的にも逼迫し、生活が成り立たなくなってしまいます。
 多胎児の出生ということは、人数倍のミルク代、おむつ代をはじめ、全て複数倍です。うちは双子でしたが、水道局の人が「最近、何かありましたか?!」と驚いた様子で尋ねてこられました。水道代も今までの2倍以上になっていたのです。

 買い物にも出られず、睡眠や食事もままならず、大声で泣く二人を同時に抱くことも、同時にミルクを与えることもできず、いらいらが積もる中、用事は山ほど貯まっていきます。
 これでは、育児疲れで病気になったり、子供に暴力をふるってしまうといったことも起こらない方が不思議なぐらいです。
 事実、妻は精神的にも肉体的にも常に不調を訴えており、内臓に炎症を起こし3週間近く入院したこともありました。

 では、私たちがこのような状態をどうやって乗り越えてきたかということですが、とにかくいろんなところに相談し、あらゆる制度を当たり、広くボランティア(有償も含む)を募りました。累計すると、数十人の人達が私たちを支えてくださり、どうにかこうにか今日までくることができました。今でも、一部の人達は、継続して援助してくださっています。本当にありがたく感謝しています。

 買い物は全てネット通販、食材は宅配サービス、ミルクを作るための水にいたっても、宅配を利用しています。全て宅配でまかなっているといっても言い過ぎではありません。おかげで、宅配業者さんとは親戚以上によく顔を合わすようになり、「今日はありませんよ。」や、「後でまとめて持っていきます。」などが挨拶言葉のようになり、一日にいろんな宅配業者が行き交うといった様相でした。まとめて買うので、大きなダンボールがいくつも積み上げられ家の一部屋がベビー用品の倉庫のようでした。

 一番困ったのが、上の子の幼稚園への送り迎えです。
 車通りが多い極めて危険な道を通っていかなくてはいけません。二車線ずつの大きな道にも関わらず、歩道もなく、狭い路側帯内を進むのに、双子用のベビーカーを押しながらというのは非常に危険です。雨が降ると全く太刀打ちできません。
 ですから、これもボランティアさんや、親が可能な時であれば親に頼み、連携を取りながら行ってきました。時には連携がうまくいかず、「どなたも迎えに来られないのですが。」と、幼稚園から電話が掛かってきたり、迎えが重複してしまったり、時間を間違えたりといろんなこともありました。

 妻が入院した時も大変でした。みなさんに無理を言って、最大限協力していただきました。当然私も仕事、家事、子育て、病院への往復とフル回転で動きました。
 この時、それまでに子育てに携わっていて本当に良かったと思いました。よくなついてくれていたので、妻のいない間でも子守は全くといっていいほど苦にはなりませんでした。

 さて、あえて自分では書く必要もないと思っているのですが、全盲のあなたがどうやって子守や家事ができるのですかという声も聞こえてきそうですので、簡単に書いておきます。
 ミルク作り、おむつ換え、入浴させる、簡単な食事をさせる、二人同時抱き、寝かせつけ、掃除、片付け、洗濯、炊事のみボランティア、などなど。
 当然危険の回避、安全確認のもと行うことができます。妻から言わせれば、家事はやはり、私がやると適当になるらしく、妻のようにはいきませんが、一人暮らしの経験もあるので、それなりにはOKかと。
 一つ一つのやり方まで記したいところですが、かなり細かくなりますので、ここではミルク作りの手順のみ紹介します。

 まず、殺菌消毒(煮沸または、消毒液)した後の哺乳瓶を2本、机の上に置き、計量スプーン(20・40・50・100cc用)で月齢に応じた分量を哺乳瓶に入れる。その後、予め計量(ミルクと合わせてできあがる量)した、保温機にある、ミルクを溶かすための適温になっている水(約60℃)を哺乳瓶に注ぎ、乳首を付け、よく振り完全に溶かす。その後、人肌の温度まで流水により少し冷ます。これを2本同時に行う。これでミルクはできあがり!
 頭を少し高くして寝かせ(吐き戻し防止まくらを多用していた)、乳首の方向を確認し、口にふくませる。その後、少し横を向かせタオルなどで適当な高さに調整した上に哺乳瓶を置き、固定する。二人ともこのスタイルで飲ませるか、一人は手持ちで飲ませることもある。同時に授乳しようと思ったら、こういう方法を用いるほかないと思います。
 最近は甘えて、手持ちでないと飲んでくれないので、二人を座らせたままで飲ませられる哺乳瓶を使い、両手に持ち、飲ませることもあります。泣き止ませる時は、この哺乳瓶を使い、縦抱きをしながらあげると泣き止むので、ゆっくりと座り、寝かせることもできます。
 私が家に居る時に、妻がミルク(フォローアップ)を作って本人達に哺乳瓶を持たせると、二人とも「はいっ」と言って、私に哺乳瓶を渡し、飲ませてくれとせがんできます。二人同時にあげるのですが、最近は独占欲も芽生えてきて、自分の方を向いてくれと、どちらかが不機嫌になってしまいます。どうしても欲求が強い方を優先しがちになってしまうので、これは気をつけなければと思っています。

 もう一つ、私の得意技は、寝かせつけです。まず、遮光カーテンをひき、部屋を真っ暗にします。二人を同時抱きし、歌を歌いながら、部屋をうろうろ、こういう時、視覚障害はとても便利です。真っ暗なところでも自由自在に移動、どんな作業でもできます(当たり前のことですが、この便利さを知らない人も多いので)。
 すると、数分もすればぐっすり寝てくれますので、二人をそのまま布団の上に、まくらを敷いてあげるだけです。その後、真っ暗な中でも何でもできるので、自分の用事をします。このように不便なことばかりではなく、真っ暗なところでも何でもできるというのは大きな利点です。この利点を活かして何かできないかなあとも思っています。

 元々、点字の由来はフランス軍が真っ暗な中での連絡をとるための暗号として考えられたのが起源だとか。

 最後になりましたが、もっともっと男性が育児に携われるような制度(当然有給での)を策定すべきだと訴えておきます。多胎児養育家庭には勿論、それに特化した制度の確立が急務です。頑張りましょう!!
 育児疲れで病気になったり、虐待に繋がらないように、次代を担う大切な子供たちのために、明るい未来が創造できるように!

*次回(第9回)は、障害者の恋愛・結婚の問題について書かせていただこうと思っております。
文章提供:中島敏明